7 / 80
02-2 なぜこんなにも胸がかき乱される(2) 破られし結界
しおりを挟む
南の山脈に近づくにつれ、地鳴りのような咆哮が大気を震わせた。
空を覆う炎の翼、そして反対に冷気を纏った白銀の巨体。
二体の竜が、黒雲を裂いて姿を現す。
「……うっ! まさか本当に同時に現れるとは」
ルカが思わず息を呑む。
そのとき、山道の先から数十人の兵とともに一人の青年が姿を現した。
長い銀髪を後ろで結い、蒼い瞳は澄み切っている。
細身ながら気品ある立ち姿に、誰もが目を奪われた。
「お待ちしておりました。私の名はセリオス。封印術を受け継ぐ一族の者です」
朗々と名乗りを上げると、兵たちが「セリオス様!」と声を揃えた。
「この二体の竜、私が封印いたしましょう。聖者殿には……ご助力いただくまでもないかと」
レオンハルトは片眉を上げ、ニヤリと笑った。
「へぇ、イケメン術士様の登場ってわけか。派手にやってくれるのを期待してるぜ」
セリオスは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに静かな笑みを返す。
「封印とは繊細なもの。力任せでは竜を鎮められません。どうか兵の指揮をお願いできますか」
レオンハルトは肩をすくめて「はいはい」と応じる。
そんな二人のやり取りを、ルカは興味深そうに見守っていた。
(殿下が見たら、またご機嫌を損ねるだろうな……)
セリオスは深呼吸し、両手を広げる。
その周囲に光の紋様が次々と浮かび上がり、巨大な魔法陣を形作っていった。
「封印術式――双竜結界!」
空を覆うような陣が展開し、竜たちを包み込もうとする。
兵士たちから歓声が上がる。
「すごい……!」
「これなら勝てる!」
だが――次の瞬間。
火竜が大地を焼き、氷竜が空気を凍らせた。
相反する力が衝突し、術式は激しく軋む。
「ぐっ……制御が……!」
セリオスの顔が苦痛に歪む。
炎と氷の奔流が魔法陣を押し破り、轟音とともに爆ぜ散った。
兵士たちが悲鳴を上げて倒れ込む。
「な、なんだと……!?」
セリオスは愕然と膝をつく。
彼の自信に満ちた瞳が、初めて揺らいだ。
そんな彼の肩に、大きな手がぽんと置かれる。
「よくやったな。あとは任せとけ」
振り返れば、余裕の笑みを浮かべたレオンハルトが立っていた。
背後で竜の咆哮が轟く。
空気を震わせるその威圧感に兵士たちは震え上がったが、レオンハルトだけは一歩も引かない。
「さぁ、暴れ足りねぇ竜ども。俺が相手だ」
その背中に、セリオスは言葉を失った。
(……なぜだ。恐怖よりも、あの背に……魅了されてしまう……)
空を覆う炎の翼、そして反対に冷気を纏った白銀の巨体。
二体の竜が、黒雲を裂いて姿を現す。
「……うっ! まさか本当に同時に現れるとは」
ルカが思わず息を呑む。
そのとき、山道の先から数十人の兵とともに一人の青年が姿を現した。
長い銀髪を後ろで結い、蒼い瞳は澄み切っている。
細身ながら気品ある立ち姿に、誰もが目を奪われた。
「お待ちしておりました。私の名はセリオス。封印術を受け継ぐ一族の者です」
朗々と名乗りを上げると、兵たちが「セリオス様!」と声を揃えた。
「この二体の竜、私が封印いたしましょう。聖者殿には……ご助力いただくまでもないかと」
レオンハルトは片眉を上げ、ニヤリと笑った。
「へぇ、イケメン術士様の登場ってわけか。派手にやってくれるのを期待してるぜ」
セリオスは一瞬だけ眉をひそめたが、すぐに静かな笑みを返す。
「封印とは繊細なもの。力任せでは竜を鎮められません。どうか兵の指揮をお願いできますか」
レオンハルトは肩をすくめて「はいはい」と応じる。
そんな二人のやり取りを、ルカは興味深そうに見守っていた。
(殿下が見たら、またご機嫌を損ねるだろうな……)
セリオスは深呼吸し、両手を広げる。
その周囲に光の紋様が次々と浮かび上がり、巨大な魔法陣を形作っていった。
「封印術式――双竜結界!」
空を覆うような陣が展開し、竜たちを包み込もうとする。
兵士たちから歓声が上がる。
「すごい……!」
「これなら勝てる!」
だが――次の瞬間。
火竜が大地を焼き、氷竜が空気を凍らせた。
相反する力が衝突し、術式は激しく軋む。
「ぐっ……制御が……!」
セリオスの顔が苦痛に歪む。
炎と氷の奔流が魔法陣を押し破り、轟音とともに爆ぜ散った。
兵士たちが悲鳴を上げて倒れ込む。
「な、なんだと……!?」
セリオスは愕然と膝をつく。
彼の自信に満ちた瞳が、初めて揺らいだ。
そんな彼の肩に、大きな手がぽんと置かれる。
「よくやったな。あとは任せとけ」
振り返れば、余裕の笑みを浮かべたレオンハルトが立っていた。
背後で竜の咆哮が轟く。
空気を震わせるその威圧感に兵士たちは震え上がったが、レオンハルトだけは一歩も引かない。
「さぁ、暴れ足りねぇ竜ども。俺が相手だ」
その背中に、セリオスは言葉を失った。
(……なぜだ。恐怖よりも、あの背に……魅了されてしまう……)
10
あなたにおすすめの小説
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
次元を歪めるほど愛してる
モカ
BL
白い世界で、俺は一人だった。
そこに新しい色を与えてくれたあの人。感謝してるし、大好きだった。俺に優しさをくれた優しい人たち。
それに報いたいと思っていた。けど、俺には何もなかったから…
「さぁ、我が贄よ。選ぶがいい」
でも見つけた。あの人たちに報いる方法を。俺の、存在の意味を。
オメガバースの世界に転生!?アルファに生まれ変わってパパになります
みたらしのだんご
BL
オメガバースの世界に転生します。村でのびのびします。
ボーイズラブ要素はゆっくり出していきますのでしばしお待ちを
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる