14 / 80
03-4 好きだなんて嘘だ(4) 心配と否定の狭間
しおりを挟む
王城の一室。
ユリウスは机に広げた地図を見つめながら、落ち着かない様子で椅子に腰掛けていた。
視線は紙の上をさまようばかりで、内容はまるで頭に入ってこない。
(……今頃、どうしている……?)
脳裏に浮かぶのは、無謀に笑って飛び出していった彼の背中。
あの時、止めたかった。けれど、止められなかった。
「……くそっ」
小さく吐き捨てる。
それでも胸の奥のざわめきは収まらない。
そこへ扉が叩かれた。
「失礼いたします、ユリウス様」
入ってきたのはルカだ。
顔には疲労が滲み、それでもきちんと礼をしてから口を開く。
「シュタイン王国軍の侵攻――聖者様が食い止められました」
「……っ!」
ユリウスは勢いよく立ち上がった。
胸を圧迫していた重しが、一瞬にして軽くなる。
「詳しく話せ!」
「はい。シュタイン軍は転移魔法で大軍を送り込もうとしましたが……聖者様が拳で魔法陣を破壊し、さらに敵将を打ち倒されました。その結果、軍は総崩れとなり退却を始めました」
「……拳で、魔法陣を……?」
呆れと驚愕、そして安堵が入り混じる。
彼ならやりかねない。だが、本当にやってしまうとは。
ルカは続ける。
「聖者様のおかげで、都市は守られました。犠牲も最小限で済んでおります」
ユリウスは椅子に崩れるように腰を下ろした。
胸の鼓動はまだ速く、しかし確かに温かさを帯びていた。
(……また、救われたのか。私は……この国は)
静かな沈黙が落ちる。
ルカが控えめに口を開く。
「ユリウス様。……お顔の色が優れておりません。どうかお休みを」
「いや、まだ……」
否定しかけて、ユリウスは気づいた。
疲れているのは確かだ。だがそれ以上に、胸を占めているのは別の感情。
(心配だった……。ただ、それだけだ。国のためではなく……あいつのために)
ハッと我に返る。
「ち、違う! 私は王子だぞ! 国のために心を乱しただけだ!」
思わず声を荒げると、ルカは目を瞬かせた。
「……もちろんでございます」
その穏やかな微笑みに、ユリウスは余計に落ち着かなくなる。
ルカにまで見透かされているような気がしてならなかった。
(私は……私は何を考えているんだ……!)
胸に手を当てる。
熱い鼓動が、彼の否定をあざ笑うかのように響き続けていた。
ユリウスは机に広げた地図を見つめながら、落ち着かない様子で椅子に腰掛けていた。
視線は紙の上をさまようばかりで、内容はまるで頭に入ってこない。
(……今頃、どうしている……?)
脳裏に浮かぶのは、無謀に笑って飛び出していった彼の背中。
あの時、止めたかった。けれど、止められなかった。
「……くそっ」
小さく吐き捨てる。
それでも胸の奥のざわめきは収まらない。
そこへ扉が叩かれた。
「失礼いたします、ユリウス様」
入ってきたのはルカだ。
顔には疲労が滲み、それでもきちんと礼をしてから口を開く。
「シュタイン王国軍の侵攻――聖者様が食い止められました」
「……っ!」
ユリウスは勢いよく立ち上がった。
胸を圧迫していた重しが、一瞬にして軽くなる。
「詳しく話せ!」
「はい。シュタイン軍は転移魔法で大軍を送り込もうとしましたが……聖者様が拳で魔法陣を破壊し、さらに敵将を打ち倒されました。その結果、軍は総崩れとなり退却を始めました」
「……拳で、魔法陣を……?」
呆れと驚愕、そして安堵が入り混じる。
彼ならやりかねない。だが、本当にやってしまうとは。
ルカは続ける。
「聖者様のおかげで、都市は守られました。犠牲も最小限で済んでおります」
ユリウスは椅子に崩れるように腰を下ろした。
胸の鼓動はまだ速く、しかし確かに温かさを帯びていた。
(……また、救われたのか。私は……この国は)
静かな沈黙が落ちる。
ルカが控えめに口を開く。
「ユリウス様。……お顔の色が優れておりません。どうかお休みを」
「いや、まだ……」
否定しかけて、ユリウスは気づいた。
疲れているのは確かだ。だがそれ以上に、胸を占めているのは別の感情。
(心配だった……。ただ、それだけだ。国のためではなく……あいつのために)
ハッと我に返る。
「ち、違う! 私は王子だぞ! 国のために心を乱しただけだ!」
思わず声を荒げると、ルカは目を瞬かせた。
「……もちろんでございます」
その穏やかな微笑みに、ユリウスは余計に落ち着かなくなる。
ルカにまで見透かされているような気がしてならなかった。
(私は……私は何を考えているんだ……!)
胸に手を当てる。
熱い鼓動が、彼の否定をあざ笑うかのように響き続けていた。
0
あなたにおすすめの小説
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
次元を歪めるほど愛してる
モカ
BL
白い世界で、俺は一人だった。
そこに新しい色を与えてくれたあの人。感謝してるし、大好きだった。俺に優しさをくれた優しい人たち。
それに報いたいと思っていた。けど、俺には何もなかったから…
「さぁ、我が贄よ。選ぶがいい」
でも見つけた。あの人たちに報いる方法を。俺の、存在の意味を。
オメガバースの世界に転生!?アルファに生まれ変わってパパになります
みたらしのだんご
BL
オメガバースの世界に転生します。村でのびのびします。
ボーイズラブ要素はゆっくり出していきますのでしばしお待ちを
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる