66 / 80
13-4 お前を離さねぇよ(4) 嵐を切り裂く拳
しおりを挟む
ゾルダの号令に呼応するように、精霊たちが一斉に牙を剥いた。
炎の狼が群れをなし、燃え盛る牙を振るう。
水の巨人が地を揺らし、奔流の腕を振り下ろす。
風の鳥たちが空を覆い、刃の雨を降らせる。
兵士たちは震え上がり、盾を構えるが――その背に立つレオンハルトは、ただ不敵に笑った。
「上等だ。暴れるなら、俺の拳で正気に戻してやる」
拳が地を打ち抜いた瞬間、衝撃が広がり、炎の狼たちが一斉に吹き飛ぶ。
燃え盛る毛並みが散り散りに裂け、消えた火花が空に舞う。
「一匹や二匹じゃねぇ。百だろうが千だろうがまとめて来い!」
叫びと共に、彼の拳は次々と巨躯を砕いていく。
水の巨人が殴りかかれば、その拳を正面から受け止め、逆に打ち砕いた。
砕け散った水の雫が雨となって降り注ぎ、森を濡らす。
風の鳥が刃を放てば、腕を一振りして渦を裂き、拳圧で空を切り裂く。
嵐の中で、ただ一人、彼だけが揺らぐことなく立っていた。
****
「バカな……精霊をここまで力で抑え込むだと……!?」
ゾルダの顔に動揺が走る。
「精霊は操り人形じゃねぇ。元はお前らみたいに、自然を守るために存在してんだ。なら――」
レオンハルトは地を蹴り、ゾルダの目の前に迫る。
拳を握りしめ、叫んだ。
「鎖なんざ、ぶっ壊してやる!」
轟音と共に拳が大地を叩き割った。
その衝撃は根を伝い、精霊たちを縛る黒い鎖に届く。
パリン、と耳を劈く音が響き、炎も水も風も、その体を覆っていた暗黒の枷を失った。
「……あ……!」
ユリウスが息を呑む。
解き放たれた精霊たちは怒りを鎮め、静かにその場に立ち尽くした。
狼の瞳から炎が消え、水の巨人の姿は波となって溶け、風の鳥は羽音だけを残して霧散する。
森に訪れる静寂。
兵士たちが呆然とその光景を見つめる。
「や、やったのか……?」
「精霊が……止まった……!」
歓声が広がる中、ゾルダは顔を歪めた。
「馬鹿な……私の術を……! 数十年かけて築いた封印を、力で破壊するなど……!」
「お前のくだらねぇ術なんざ、ユリウスの想いの前じゃ紙切れだ」
レオンハルトはユリウスの方を振り返った。
その瞳は、確かな誇りに輝いていた。
「お前が精霊を信じたから、こいつらは縛られたままでいられなかったんだ。……ありがとな」
ユリウスは胸が熱くなり、言葉を失う。
ただ、頬を紅潮させながら必死に声を絞り出した。
「わ、私は……何も……! 戦ったのはお前で……!」
だが、レオンハルトは笑って首を振る。
「俺一人じゃ、ここまで来れなかった。お前の声が背中を押した。だから勝てたんだ」
その言葉に、ユリウスの瞳が潤む。
心臓が痛いほど高鳴り、胸の奥が震えていた。
****
「ふざけるなあああああああっ!」
ゾルダが叫び、最後の力を振り絞る。
黒い霧が彼の体を覆い、巨大な怪物へと変貌していく。
腕は木々をなぎ倒し、声は森全体を揺るがす。
「見せてやる! 力こそが全てだということを!」
兵士たちが怯え、後退する。
ユリウスも震えたが、その隣で拳を握る男の背が、あまりに大きく見えた。
「ユリウス、下がってろ」
「で、でも……!」
「大丈夫だ。お前は俺を信じてりゃいい」
レオンハルトの言葉は、不思議と揺るぎない安心を与えた。
ユリウスは剣を下ろし、彼の背を見守ることを選ぶ。
黒い怪物が咆哮を上げる。
レオンハルトは一歩踏み込み、拳を振り上げた。
「力が全て? なら教えてやる。俺にとっちゃ――」
その拳が振り下ろされ、衝撃が森を貫いた。
黒い怪物の体が粉砕され、霧が一瞬で霧散する。
「ユリウスを守ることが、全てだ!」
光が差し込み、森を包んだ闇が晴れていく。
兵士たちの歓声が、空へと響き渡った。
炎の狼が群れをなし、燃え盛る牙を振るう。
水の巨人が地を揺らし、奔流の腕を振り下ろす。
風の鳥たちが空を覆い、刃の雨を降らせる。
兵士たちは震え上がり、盾を構えるが――その背に立つレオンハルトは、ただ不敵に笑った。
「上等だ。暴れるなら、俺の拳で正気に戻してやる」
拳が地を打ち抜いた瞬間、衝撃が広がり、炎の狼たちが一斉に吹き飛ぶ。
燃え盛る毛並みが散り散りに裂け、消えた火花が空に舞う。
「一匹や二匹じゃねぇ。百だろうが千だろうがまとめて来い!」
叫びと共に、彼の拳は次々と巨躯を砕いていく。
水の巨人が殴りかかれば、その拳を正面から受け止め、逆に打ち砕いた。
砕け散った水の雫が雨となって降り注ぎ、森を濡らす。
風の鳥が刃を放てば、腕を一振りして渦を裂き、拳圧で空を切り裂く。
嵐の中で、ただ一人、彼だけが揺らぐことなく立っていた。
****
「バカな……精霊をここまで力で抑え込むだと……!?」
ゾルダの顔に動揺が走る。
「精霊は操り人形じゃねぇ。元はお前らみたいに、自然を守るために存在してんだ。なら――」
レオンハルトは地を蹴り、ゾルダの目の前に迫る。
拳を握りしめ、叫んだ。
「鎖なんざ、ぶっ壊してやる!」
轟音と共に拳が大地を叩き割った。
その衝撃は根を伝い、精霊たちを縛る黒い鎖に届く。
パリン、と耳を劈く音が響き、炎も水も風も、その体を覆っていた暗黒の枷を失った。
「……あ……!」
ユリウスが息を呑む。
解き放たれた精霊たちは怒りを鎮め、静かにその場に立ち尽くした。
狼の瞳から炎が消え、水の巨人の姿は波となって溶け、風の鳥は羽音だけを残して霧散する。
森に訪れる静寂。
兵士たちが呆然とその光景を見つめる。
「や、やったのか……?」
「精霊が……止まった……!」
歓声が広がる中、ゾルダは顔を歪めた。
「馬鹿な……私の術を……! 数十年かけて築いた封印を、力で破壊するなど……!」
「お前のくだらねぇ術なんざ、ユリウスの想いの前じゃ紙切れだ」
レオンハルトはユリウスの方を振り返った。
その瞳は、確かな誇りに輝いていた。
「お前が精霊を信じたから、こいつらは縛られたままでいられなかったんだ。……ありがとな」
ユリウスは胸が熱くなり、言葉を失う。
ただ、頬を紅潮させながら必死に声を絞り出した。
「わ、私は……何も……! 戦ったのはお前で……!」
だが、レオンハルトは笑って首を振る。
「俺一人じゃ、ここまで来れなかった。お前の声が背中を押した。だから勝てたんだ」
その言葉に、ユリウスの瞳が潤む。
心臓が痛いほど高鳴り、胸の奥が震えていた。
****
「ふざけるなあああああああっ!」
ゾルダが叫び、最後の力を振り絞る。
黒い霧が彼の体を覆い、巨大な怪物へと変貌していく。
腕は木々をなぎ倒し、声は森全体を揺るがす。
「見せてやる! 力こそが全てだということを!」
兵士たちが怯え、後退する。
ユリウスも震えたが、その隣で拳を握る男の背が、あまりに大きく見えた。
「ユリウス、下がってろ」
「で、でも……!」
「大丈夫だ。お前は俺を信じてりゃいい」
レオンハルトの言葉は、不思議と揺るぎない安心を与えた。
ユリウスは剣を下ろし、彼の背を見守ることを選ぶ。
黒い怪物が咆哮を上げる。
レオンハルトは一歩踏み込み、拳を振り上げた。
「力が全て? なら教えてやる。俺にとっちゃ――」
その拳が振り下ろされ、衝撃が森を貫いた。
黒い怪物の体が粉砕され、霧が一瞬で霧散する。
「ユリウスを守ることが、全てだ!」
光が差し込み、森を包んだ闇が晴れていく。
兵士たちの歓声が、空へと響き渡った。
0
あなたにおすすめの小説
オメガの僕が、最後に恋をした騎士は冷酷すぎる
虹湖🌈
BL
死にたかった僕を、生かしたのは――あなたの声だった。
滅びかけた未来。
最後のオメガとして、僕=アキは研究施設に閉じ込められていた。
「資源」「道具」――そんな呼び方しかされず、生きる意味なんてないと思っていた。
けれど。
血にまみれたアルファ騎士・レオンが、僕の名前を呼んだ瞬間――世界が変わった。
冷酷すぎる彼に守られて、逃げて、傷ついて。
それでも、彼と一緒なら「生きたい」と思える。
終末世界で芽生える、究極のバディ愛×オメガバース。
命を懸けた恋が、絶望の世界に希望を灯す。
次元を歪めるほど愛してる
モカ
BL
白い世界で、俺は一人だった。
そこに新しい色を与えてくれたあの人。感謝してるし、大好きだった。俺に優しさをくれた優しい人たち。
それに報いたいと思っていた。けど、俺には何もなかったから…
「さぁ、我が贄よ。選ぶがいい」
でも見つけた。あの人たちに報いる方法を。俺の、存在の意味を。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
完結・オメガバース・虐げられオメガ側妃が敵国に売られたら激甘ボイスのイケメン王から溺愛されました
美咲アリス
BL
虐げられオメガ側妃のシャルルは敵国への貢ぎ物にされた。敵国のアルベルト王は『人間を食べる』という恐ろしい噂があるアルファだ。けれども実際に会ったアルベルト王はものすごいイケメン。しかも「今日からそなたは国宝だ」とシャルルに激甘ボイスで囁いてくる。「もしかして僕は国宝級の『食材』ということ?」シャルルは恐怖に怯えるが、もちろんそれは大きな勘違いで⋯⋯? 虐げられオメガと敵国のイケメン王、ふたりのキュン&ハッピーな異世界恋愛オメガバースです!
【完結】『ルカ』
瀬川香夜子
BL
―――目が覚めた時、自分の中は空っぽだった。
倒れていたところを一人の老人に拾われ、目覚めた時には記憶を無くしていた。
クロと名付けられ、親切な老人―ソニーの家に置いて貰うことに。しかし、記憶は一向に戻る気配を見せない。
そんなある日、クロを知る青年が現れ……?
貴族の青年×記憶喪失の青年です。
※自サイトでも掲載しています。
2021年6月28日 本編完結
運命の息吹
梅川 ノン
BL
ルシアは、国王とオメガの番の間に生まれるが、オメガのため王子とは認められず、密やかに育つ。
美しく育ったルシアは、父王亡きあと国王になった兄王の番になる。
兄王に溺愛されたルシアは、兄王の庇護のもと穏やかに暮らしていたが、運命のアルファと出会う。
ルシアの運命のアルファとは……。
西洋の中世を想定とした、オメガバースですが、かなりの独自視点、想定が入ります。あくまでも私独自の創作オメガバースと思ってください。楽しんでいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる