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第66話 毒見
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ステラもピノアもすでに出かける支度を済ませていた。
ピノアは確か朝が弱かったはずだったが、その日レンジが起きたのは昼過ぎだった。
相当に疲れていたんだな、とレンジは思った。
ステラはレンジが目を覚ますのを3時間ほどそばで見ていたらしかった。
「あなたの部屋に入るつもりはなかったのだけれど……
鍵がかかってなかったから……
つい魔が差してしまって……」
申し訳なさそうにそう言った。
別に嫌ではなかったし、心配してくれてるのもわかったから嬉しかったが、やはり恥ずかしかった。
「イビキかいたり、変な寝言とか言ってなかった?」
「わたしの名前を二回呼んでくれてた。嬉しかった」
どんな夢を見ていたのか記憶になかった。
「だから、添い寝をしようかと思ったけど、それはなんとか我慢したわ」
我慢なんてしなくていいのに、と思った。
「でも、手を握らせてもらった。
それだけで、本当に幸せな気持ちになるの。不思議ね」
「そうだね。好きな人が、自分を好きでいてくれる。それだけで、何でもできちゃう気がする。
ステラに出会えて良かったって心から思うよ」
「わたしも……」
レンジはステラを抱きしめたくてしかたがなかった。
キスをしたくてしかたがなかった。
抱いてしまいたかった。
でも、今は手を握るだけにした。
「ピノアのこと、ちゃんと抱きしめてあげてくれた?」
レンジが尋ねると、ステラは恥ずかしそうにうなづき、
「あの子、いっぱい泣いて、それから赤ちゃんみたいにおっぱいを欲しがるから困ったわ。あげてみたけど、出なかった」
「あ、あげたんだ……」
「それから、わたしも抱きしめてもらった。たくさん泣いた」
「そっか……」
たった3日の間に、ステラにもピノアにも悲しい思いをたくさんさせてしまった。
悲しい思いをさせないですむくらい、強くならなければと思った。
焦らずに、少しずつ。
「支度が終わるまで部屋の外でピノアと待ってるわ」
ステラはそう言って部屋を出ていき、開いたドアからはアンフィスがピノアに話しかけているのが見えた。
ピノアは少し困った顔をしているように見えた。
ドアが閉まっても、声は聞こえた。
「ステラ、ピノアを借りていっていいか?」
彼はステラにそう尋ねていた。
「そういえば、あなたにもガイド役が必要だったわね」
「ニーズヘッグとアルマは、飛空艇でランスにこどもたちを送って行っちまったから、トカゲ顔でおまけにケツアゴの女しか残ってないんだよ」
「ピノアさえ良ければ別に構わないのだけれど、すごくいやそうな顔してるからたぶん無理よ」
「何回もやだって言ってるのに……こいつ、しつこい。嫌い」
「まぁ、俺は昨日ニーズヘッグたちと町を見て回ったから、ガイドはいらないんだけどな。少しふたりで話がしたかっただけだ。またにするよ」
そう言って、彼は去って行った。残念そうな声だった。
「きっと彼、ピノアと話がしたいのよ。
同じ世界に住んでいても、人が見てる世界と魔人が見てる世界は違うでしょう?
ピノアはたぶんわたしとは違う世界を見てる。
そして彼はピノアと同じ世界を見てると思う」
ステラは寂しそうにそう言い、
「そうかもしれないね……」
それを聞いたピノアもまた寂しそうに返事をした。
しかし、支度を終えたレンジが部屋を出ると、ピノアはニヤニヤしていた。
「ステラのおっぱいがどんなだったか、教えてあげよっか?」
なんでマウント取られてるんだろう、とレンジは思ったが、
「大きさとか、柔らかさとか、においとか、あと味!
レンジも知りたいよね?
毒味しといてあげた!!」
毒味て。
ステラが前回以上のげんこつをピノアの頭頂部に落としてくれたので、まぁいいかとレンジは思った。
ピノアは確か朝が弱かったはずだったが、その日レンジが起きたのは昼過ぎだった。
相当に疲れていたんだな、とレンジは思った。
ステラはレンジが目を覚ますのを3時間ほどそばで見ていたらしかった。
「あなたの部屋に入るつもりはなかったのだけれど……
鍵がかかってなかったから……
つい魔が差してしまって……」
申し訳なさそうにそう言った。
別に嫌ではなかったし、心配してくれてるのもわかったから嬉しかったが、やはり恥ずかしかった。
「イビキかいたり、変な寝言とか言ってなかった?」
「わたしの名前を二回呼んでくれてた。嬉しかった」
どんな夢を見ていたのか記憶になかった。
「だから、添い寝をしようかと思ったけど、それはなんとか我慢したわ」
我慢なんてしなくていいのに、と思った。
「でも、手を握らせてもらった。
それだけで、本当に幸せな気持ちになるの。不思議ね」
「そうだね。好きな人が、自分を好きでいてくれる。それだけで、何でもできちゃう気がする。
ステラに出会えて良かったって心から思うよ」
「わたしも……」
レンジはステラを抱きしめたくてしかたがなかった。
キスをしたくてしかたがなかった。
抱いてしまいたかった。
でも、今は手を握るだけにした。
「ピノアのこと、ちゃんと抱きしめてあげてくれた?」
レンジが尋ねると、ステラは恥ずかしそうにうなづき、
「あの子、いっぱい泣いて、それから赤ちゃんみたいにおっぱいを欲しがるから困ったわ。あげてみたけど、出なかった」
「あ、あげたんだ……」
「それから、わたしも抱きしめてもらった。たくさん泣いた」
「そっか……」
たった3日の間に、ステラにもピノアにも悲しい思いをたくさんさせてしまった。
悲しい思いをさせないですむくらい、強くならなければと思った。
焦らずに、少しずつ。
「支度が終わるまで部屋の外でピノアと待ってるわ」
ステラはそう言って部屋を出ていき、開いたドアからはアンフィスがピノアに話しかけているのが見えた。
ピノアは少し困った顔をしているように見えた。
ドアが閉まっても、声は聞こえた。
「ステラ、ピノアを借りていっていいか?」
彼はステラにそう尋ねていた。
「そういえば、あなたにもガイド役が必要だったわね」
「ニーズヘッグとアルマは、飛空艇でランスにこどもたちを送って行っちまったから、トカゲ顔でおまけにケツアゴの女しか残ってないんだよ」
「ピノアさえ良ければ別に構わないのだけれど、すごくいやそうな顔してるからたぶん無理よ」
「何回もやだって言ってるのに……こいつ、しつこい。嫌い」
「まぁ、俺は昨日ニーズヘッグたちと町を見て回ったから、ガイドはいらないんだけどな。少しふたりで話がしたかっただけだ。またにするよ」
そう言って、彼は去って行った。残念そうな声だった。
「きっと彼、ピノアと話がしたいのよ。
同じ世界に住んでいても、人が見てる世界と魔人が見てる世界は違うでしょう?
ピノアはたぶんわたしとは違う世界を見てる。
そして彼はピノアと同じ世界を見てると思う」
ステラは寂しそうにそう言い、
「そうかもしれないね……」
それを聞いたピノアもまた寂しそうに返事をした。
しかし、支度を終えたレンジが部屋を出ると、ピノアはニヤニヤしていた。
「ステラのおっぱいがどんなだったか、教えてあげよっか?」
なんでマウント取られてるんだろう、とレンジは思ったが、
「大きさとか、柔らかさとか、においとか、あと味!
レンジも知りたいよね?
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毒味て。
ステラが前回以上のげんこつをピノアの頭頂部に落としてくれたので、まぁいいかとレンジは思った。
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