98 / 271
第98話 10000という数字の意味
しおりを挟む
大艦隊や戦闘機がゲートの向こう側、リバーステラに押し戻されはじめていた。
アルビノの魔人として覚醒したステラの力だった。
ステラの覚醒と同時に、レンジの身体にもまた覚醒と呼べる異変が起きていた。
ステラと同様に使えなかった魔法が使えるようになっていたのだ。
だから彼が使う魔法剣は、初歩の魔法ではなく、最上級攻撃魔法をまとわせたものだった。
アルマを狙っていたミサイルをすべて撃墜できたのは、魔法剣の威力が城下町でヒト型のカオスを倒したときとは桁違いだったからだ。
レンジの父・富嶽サトシも、彼らが知るブライ・アジ・ダハーカも、おそらくはまだ見ぬオリジナル・ブライも、10000という数字にこだわっていた。
レンジが10000人目の来訪者であり、彼を導く巫女もまた10000人目とするために、ステラとピノアのふたりがつけられた。
来訪者が巫女に導かれ、エウロペの国王に謁見する際に渡される支度金は、10000ρ(ロー)だ。
オリジナル・ブライは9999人のコピー・ブライを作り、ブライは10000人存在した。
ステラの覚醒によって、レンジもまた覚醒するように仕組まれていた。
だからこそ、ふたりは互いに10000人目でなければならなかったのだ。
オリジナル・ブライもまた、本来は1人目であったが、順番を入れ替えて10000人目になっているのだろう。
そして、ステラの覚醒によって、レンジと同様にブライもまた覚醒しているに違いなかった。
では、父は?
父もまたどこかで生きているということは、ブライと同じようにコピーが9999人いるということだろうか?
父もまた、覚醒しているということだろうか?
飛空艇にはアルマとヨルムンガンドが戻っていた。
アンフィスとレオナルドもまた、ニーズヘッグとケツァルコアトルを連れて戻っていた。
ピノアとアンフィスがふたりを治療していた。
あとは、目の前にあるゲートの先にいるオリジナル・ブライを倒すだけだ。
そう思っていた。
だが、つい先ほどまで感じていたブライらしき気配は、もう感じなかった。
父の気配を感じた。
優しく温かい目で父がこの先から自分を見つめている。
そして、レンジを呼んでいた。
だからレンジは、
「ごめんね、みんな。
ちょっと行ってくるよ」
遠くにいる皆に聞こえるはずもない小さな声でそう言うと、
「すぐ戻るから。心配いらないよ」
ゲートをくぐった。
やはりそこは、レンジがゲートを産み出したときに真っ先に想像した、リバーステラのホワイトハウスと呼ばれる場所ではなかった。
ダークマターに満ち満ちた別次元だった。
やはり、レオナルドの考えていた通り、そのような場所が存在したのだ。
そして、そこには、やはりブライではなく、父がいた。
「悪いな、レンジ。ブライじゃなくて。
お前が父さんの剣を使って、ゲートを開いたのがわかったから、次元の精霊の魔法で行き先を、ここに変えさせてもらった」
父の体は、ピノアが倒したコピー・ブライと同様に、全身の細胞が混沌化し、カオス細胞となっていた。
魔王になっていた。
「時の精霊の魔法で、死ぬ直前にこの世界に来た瞬間に戻ることを、9999回繰り返してきた。
だが、10000回目もこの様だ。
前回までの記憶や力を持ったまま、『強くてニューゲーム』を繰り返し続けてきた。
その度にこの世界で100年を生きた。
百万年生きてきたが、どうしても父さんは100年目に必ず魔王になり、必ず死ぬ運命にあるらしい」
父は、コピーを作っていたわけではなかった。
この100年を10000回も繰り返してきたのだ。
「お前にここに来てもらったのは、この世界における時間の概念を説明したかったからだ」
父はそう言った。
アルビノの魔人として覚醒したステラの力だった。
ステラの覚醒と同時に、レンジの身体にもまた覚醒と呼べる異変が起きていた。
ステラと同様に使えなかった魔法が使えるようになっていたのだ。
だから彼が使う魔法剣は、初歩の魔法ではなく、最上級攻撃魔法をまとわせたものだった。
アルマを狙っていたミサイルをすべて撃墜できたのは、魔法剣の威力が城下町でヒト型のカオスを倒したときとは桁違いだったからだ。
レンジの父・富嶽サトシも、彼らが知るブライ・アジ・ダハーカも、おそらくはまだ見ぬオリジナル・ブライも、10000という数字にこだわっていた。
レンジが10000人目の来訪者であり、彼を導く巫女もまた10000人目とするために、ステラとピノアのふたりがつけられた。
来訪者が巫女に導かれ、エウロペの国王に謁見する際に渡される支度金は、10000ρ(ロー)だ。
オリジナル・ブライは9999人のコピー・ブライを作り、ブライは10000人存在した。
ステラの覚醒によって、レンジもまた覚醒するように仕組まれていた。
だからこそ、ふたりは互いに10000人目でなければならなかったのだ。
オリジナル・ブライもまた、本来は1人目であったが、順番を入れ替えて10000人目になっているのだろう。
そして、ステラの覚醒によって、レンジと同様にブライもまた覚醒しているに違いなかった。
では、父は?
父もまたどこかで生きているということは、ブライと同じようにコピーが9999人いるということだろうか?
父もまた、覚醒しているということだろうか?
飛空艇にはアルマとヨルムンガンドが戻っていた。
アンフィスとレオナルドもまた、ニーズヘッグとケツァルコアトルを連れて戻っていた。
ピノアとアンフィスがふたりを治療していた。
あとは、目の前にあるゲートの先にいるオリジナル・ブライを倒すだけだ。
そう思っていた。
だが、つい先ほどまで感じていたブライらしき気配は、もう感じなかった。
父の気配を感じた。
優しく温かい目で父がこの先から自分を見つめている。
そして、レンジを呼んでいた。
だからレンジは、
「ごめんね、みんな。
ちょっと行ってくるよ」
遠くにいる皆に聞こえるはずもない小さな声でそう言うと、
「すぐ戻るから。心配いらないよ」
ゲートをくぐった。
やはりそこは、レンジがゲートを産み出したときに真っ先に想像した、リバーステラのホワイトハウスと呼ばれる場所ではなかった。
ダークマターに満ち満ちた別次元だった。
やはり、レオナルドの考えていた通り、そのような場所が存在したのだ。
そして、そこには、やはりブライではなく、父がいた。
「悪いな、レンジ。ブライじゃなくて。
お前が父さんの剣を使って、ゲートを開いたのがわかったから、次元の精霊の魔法で行き先を、ここに変えさせてもらった」
父の体は、ピノアが倒したコピー・ブライと同様に、全身の細胞が混沌化し、カオス細胞となっていた。
魔王になっていた。
「時の精霊の魔法で、死ぬ直前にこの世界に来た瞬間に戻ることを、9999回繰り返してきた。
だが、10000回目もこの様だ。
前回までの記憶や力を持ったまま、『強くてニューゲーム』を繰り返し続けてきた。
その度にこの世界で100年を生きた。
百万年生きてきたが、どうしても父さんは100年目に必ず魔王になり、必ず死ぬ運命にあるらしい」
父は、コピーを作っていたわけではなかった。
この100年を10000回も繰り返してきたのだ。
「お前にここに来てもらったのは、この世界における時間の概念を説明したかったからだ」
父はそう言った。
0
あなたにおすすめの小説
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる