238 / 271
第0部「RINNE -友だち削除-」&第0.5部「RINNE 2 "TENSEI" -いじめロールプレイ-」
RINNE 2 "TENSEI" -いじめロールプレイ- プロローグ 県立八十三高校1年2組担任・棗弘幸
しおりを挟む
気が重い。学校へ行くのが憂鬱だった。
夏休みが明け、二学期が始まり、もう2ヶ月になる。
11月。季節は秋ももうすぐ終わりを告げようとしていた。。
そろそろ冬の寒さが近づいてきていて、スーツだけでは少し肌寒い。通勤の間だけでもコートを着るべきなのかもしれない。
今年は異常気象で、先月半ばまでは夏のように暑く、毎週のように日本列島には大型の台風が上陸し、各地に甚大な被害を与えていたのもまだ記憶に新しい。
幸いここN市八十三(やとみ)町は、私の両親が子供の頃に経験したという伊勢湾台風以来、大きな堤防が作られたおかげで、台風や暴雨による河川の決壊などこれといった災害の被害をまぬがれ続けているいるけれど。
いっそ、世界が終わってしまうような、災害に見舞われて死んでしまいたい、そんな気分にこの数ヶ月私はさせられていた。
死ぬのは私だけでいいから。
夏休みからある事情で私は仕事に忙殺され、ストレスから精神は不安定になり、不眠症にもなっていた。
学年主任の教師から心療内科にかかることを勧められ、私は多少抵抗はあったが医師の診断を受けた。
うつ病よりは比較的軽いうつ状態と診断された。医師は最低1ヶ月は仕事を休んだ方がいいと言い、診断書を書いてくれようとしたが、仕事を休むわけにはいかなかったので、私はそれを拒んだ。
私には抗うつ剤をはじめとする精神安定剤と睡眠薬が処方されたが、精神安定剤のおかげで躁状態に近い状態を維持できたのは飲み始めの数日だけで、それがすぎると薬を飲んでもあまり効果があるようには思えなかった。
飲まなければ不安になるから一応飲んではいたけれど。病気を治すために処方された薬が、さしたる効能も示さず、飲まないと逆に精神不安定になる。本末転倒な話だった。
睡眠薬も最初こそ効果があったが、医師に処方された四種類の薬を就寝前に一錠ずつ飲むだけでは、すぐに効果がなくなり、ぼくは二錠ずつ飲むことでなんとか睡魔に身を任せるようにできるようになった。それでも一日の睡眠時間は三時間ほどしかとることができなかった。
原因はわかっている。
ひとつは私が担任を務める教室で、女子の中心的グループが同じグループの生徒をいじめていたのは一学期の時点でわかってはいたのだが、確たる証拠がなく、私はなんの対応もできなかった。そのせいで、夏休みにそのいじめはエスカレートし、よりにもよって売春強要事件が起きてしまった。
ぼくの出世はその事件のおかげでもはや閉ざされたに等しいだろう。もっともぼくは一教師として教壇に立つのが性にあっている(病気を患ってしまった今、性にあっているかどうか甚だ疑問ではあるけれど)し、出世欲なんてものは持ち合わせていなかったからそれはそれで別に問題はなかった。
二つ目も夏休みの間に起きた。サッカー部の部員たちが集団で覚醒剤に手を染めてしまった。その中に私のクラスの生徒も含まれており、クスリ漬けになってしまったからか、元々そういう生徒たちだったのかはわからないが、彼らは集団で女子マネージャーをレイプするという事件を起こしてしまった。
ぼくはそれらの事件の事後処理に追われていた。
2学期に入ってからは授業の合間に刑事たちから事情聴取を受ける日々が続いていた。
私、棗弘幸がこのように病んでしまったのは他ならぬ愛すべき生徒たちのせいだった。
県立八十三(やとみ)高校1年2組は、この他にも問題児ばかりのクラスだった。
中学時代に同じテニス部の同級生をいじめており、自殺に追い込んでいた生徒もいた。高校ではおとなしくしているが、そのいじめの首謀者は彼だったという話だから、いつ彼がまた人を自殺に追いやるか気が抜けない。
八十三町を拠点とする新興宗教の教祖の三女がいて、次期教祖にでもなるつもりなのか学校内で父親の教えを広めている。学校内での信者の数は把握しきれていない。
ある生徒の双子の兄は、春に起きたN市八十三町児童連続殺傷事件の犯人・少年Aだった。少年A自体は我が校の生徒ではないし、その生徒はおとなしい生徒だったが、少年が逮捕されたあとマスコミはその家族の生活ぶりをテレビや新聞、雑誌などで伝えようとしており、逮捕から半年が過ぎた今もなお我が校の前には連日マスコミが押しかけてきている。
小学生時代に誘拐されたことがあることがある生徒もいた。五年前八十三町で起きた連続誘拐殺人事件の犯人は裁判で無罪を勝ち取り、無罪判決を受けた直後、マスコミの取材に対し、その生徒を再び誘拐すると宣言している。その生徒はそれを待ち望んでいる様子だから手に負えない。
大学院を卒業したあと、八十三高校に日本史教師として勤務するようになって、5年が過ぎていた。
大学では教授に散々反対され、研究室に残るよう何度も説得された。教師になるのが子供の頃からの夢であったから、教授には申し訳なかったが、ぼくは研究者ではなく教師になる道を選んだ。こんなことなら大学で研究を続けていればよかったと今更ながら後悔している。
「高校の先生ともあろうお方が、どうしてそんな憂鬱そうな顔をしてらっしゃるのです?」
校門をくぐる私に声をかけた男がいた。
「まるでいじめを苦に自殺を考えている生徒のように見えますよ」
「あなたは?」
どうせマスコミの人間だろう。普段なら声をかけられても無視するところだったが、その日の私はなぜか足を止め、彼に返答していた。男がスーツではなく、喪服を着ていたからだった。これから葬式にでも行くのだろうか。
「要といいます。この国のある研究所に属する者です」
彼は胸に手をあててそう自己紹介すると、
「マスコミじゃないのか?」
そう訊ねる私に、その手を返し手品のように名刺を差し出した。
差し出された名刺には、
「要雅雪(かなめまさゆき)
国立デュルケーム研究所 情報部
特権諜報員『零零七式』」
と、あった。
「国立デュルケーム研究所?」
聞いたことのない名前だった。特権諜報員、零零七式とはなんだろう? 0、0、7……007か。質の悪い冗談だ。
「悪いが、私はつまらない冗談に付き合うほど、今は心に余裕がなくてね。君も早く葬儀に行きたまえ」
私はそう言うと、
「葬儀の予定はありません。この喪服はわたしが所属する組織の制服のようなものです」
彼は名刺を差し出した手とは別の手で、今度は赤い携帯電話を私に手渡した。スマートフォンだ。どこの携帯会社のものか、製造元も、機種名もどこにも記されていなかった。
その携帯電話の画面を見ると通話状態になっていた。
「あなたに大切なお話があります、棗弘幸先生。すでにあるお方と通話状態になっております」
なぜこの男は私の名前を知っているのだろう。
名乗った覚えはない。初対面のはずだった。
「待ってくれ。何の話だ? あるお方とは誰だ?」
私の問いに、
「棗先生は確か大学は文久大学でしたね? 宇宙考古学の権威である佐野教授が手放すのを惜しまれたほど、優秀な学生だったとか」
男はそう答えた。
確かに私は大学で佐野教授のもと、宇宙考古学という学問の研究をしていた。
私が大学で学んだ宇宙考古学とは、人類史上の古代または超古代に宇宙人が地球に飛来し、人間を創造し、超古代文明を授けたという科学の一説だ。宇宙考古学と名を冠してはいるが、正式には学問として認められてはいない。
私の恩師である佐野教授も、大学では法学部で法哲学や法思想史を教える法律学者だった。私は教授の講義ではなく、教授が顧問を務める宇宙考古学研究会というサークルで宇宙考古学を学んだ。
宇宙考古学は、別名を「古代宇宙飛行士説」、「太古宇宙飛行士来訪説」、「宇宙人考古学」とも言い、この範疇でキリスト宇宙人説も唱えられている。
巨大な考古学遺跡やオーパーツは、宇宙人の技術で作られた。
宇宙人は、類人猿から人類を創った。
世界各地に残る神話の神々は、宇宙人を神格化したもの。
など、宇宙考古学の研究は多岐に渡り、学生時代の私はこの学問に夢中だった。
しかし、なぜそれをこの男は知っているのだろう?
「電話のお相手は、この国の歴史を二千年以上前から操り続けてきた一族のお方、と言えばお分かりになりますか?」
男は言った。
その言葉に、私は身震いした。
宇宙考古学において、イエスは古代宇宙飛行士、つまり宇宙人であったとされている。
イエスはこの星で一番優秀な知的生命体である人間の文明を正しく導くために外宇宙から遣わされた存在であった。
古代宇宙飛行士の存在はイエスだけではない。
ムー大陸やアトランティスをはじめとした古代文明や、ピラミッドやナスカの地上絵などの建築物、これらの当時の人類には到底なし得ることのできないものはすべて、古代宇宙飛行士によってもたらされた高度な科学によるものである。
二千年前、ゴルゴダの丘で処刑されたイエスは、3日後に息を吹き返し、その後数人の使者を連れてこの島国に渡ったとされる。
日本人のユダヤ人始祖説である。
イエスはこの島国でキリスト教にかわる新たな教えを使者たちに説いたという。
イエスは西洋でキリスト教を説いた。
しかし、イエスは処刑され、その教えも後の世の時の権力者たちによって都合のいいように改ざんされていった。
キリスト教はもともと男尊女卑の教えだったが、女性信者を増やすために後になってマリアを聖母にまつりあげたように。
そのため、この島国に渡ったイエスは、自らの教えを使者の一族のみに伝えることにした。
そして傀儡の宗教として神道を作り、傀儡の王として天皇をまつりあげた。
アダムとイブ、イザナギとイザナミをはじめとして、遠い異国の宗教であるはずのふたつの宗教の神話に共通点が多く見られるのはこのためだ。
イエスは使者たちに新たに教えを説いた後、別の知的生命体が存在する惑星へと旅立った。
聖書に記されるイエスが起こした数々の奇跡、それはすべて外宇宙の高度な科学文明によるものであった。
イエスは旅立つ際に、それらの技術を埋め込んだ体を使者の一族に託した。一般的に魂と呼ばれるエネルギー体だけになってこの星を旅立った。
それらの技術は二千年前にすでに進化の袋小路に迷い込んでいた人類を更に進化させるためのものであった。
イエスの使者の一族は、イエスが遺した肉体を四八の部位に分け、二千年の時をかけて分析と解析を行っているとされる。
そして使者の一族は以来二千年に渡ってこの国の歴史を影で操ってきたという。
その使者たちの名を、
「まさか十三評議会が実在するのか?」
私は口にしていた。
「話のわかる方で助かります」
要という男はうれしそうにそう言うと、私に差し出した携帯電話を受け取るよう促した。
私は震える手で受け取ると、
「棗弘幸です」
電話に出た。
しかし、キイイインという耳鳴りのような音しか聞こえない。
故障か?
私はそう思う。
男の顔を見るが、貼り付いたような作り物の笑顔を浮かべているだけだ。
そして、私の意識はそこでプツリと途絶えることとなった。
夏休みが明け、二学期が始まり、もう2ヶ月になる。
11月。季節は秋ももうすぐ終わりを告げようとしていた。。
そろそろ冬の寒さが近づいてきていて、スーツだけでは少し肌寒い。通勤の間だけでもコートを着るべきなのかもしれない。
今年は異常気象で、先月半ばまでは夏のように暑く、毎週のように日本列島には大型の台風が上陸し、各地に甚大な被害を与えていたのもまだ記憶に新しい。
幸いここN市八十三(やとみ)町は、私の両親が子供の頃に経験したという伊勢湾台風以来、大きな堤防が作られたおかげで、台風や暴雨による河川の決壊などこれといった災害の被害をまぬがれ続けているいるけれど。
いっそ、世界が終わってしまうような、災害に見舞われて死んでしまいたい、そんな気分にこの数ヶ月私はさせられていた。
死ぬのは私だけでいいから。
夏休みからある事情で私は仕事に忙殺され、ストレスから精神は不安定になり、不眠症にもなっていた。
学年主任の教師から心療内科にかかることを勧められ、私は多少抵抗はあったが医師の診断を受けた。
うつ病よりは比較的軽いうつ状態と診断された。医師は最低1ヶ月は仕事を休んだ方がいいと言い、診断書を書いてくれようとしたが、仕事を休むわけにはいかなかったので、私はそれを拒んだ。
私には抗うつ剤をはじめとする精神安定剤と睡眠薬が処方されたが、精神安定剤のおかげで躁状態に近い状態を維持できたのは飲み始めの数日だけで、それがすぎると薬を飲んでもあまり効果があるようには思えなかった。
飲まなければ不安になるから一応飲んではいたけれど。病気を治すために処方された薬が、さしたる効能も示さず、飲まないと逆に精神不安定になる。本末転倒な話だった。
睡眠薬も最初こそ効果があったが、医師に処方された四種類の薬を就寝前に一錠ずつ飲むだけでは、すぐに効果がなくなり、ぼくは二錠ずつ飲むことでなんとか睡魔に身を任せるようにできるようになった。それでも一日の睡眠時間は三時間ほどしかとることができなかった。
原因はわかっている。
ひとつは私が担任を務める教室で、女子の中心的グループが同じグループの生徒をいじめていたのは一学期の時点でわかってはいたのだが、確たる証拠がなく、私はなんの対応もできなかった。そのせいで、夏休みにそのいじめはエスカレートし、よりにもよって売春強要事件が起きてしまった。
ぼくの出世はその事件のおかげでもはや閉ざされたに等しいだろう。もっともぼくは一教師として教壇に立つのが性にあっている(病気を患ってしまった今、性にあっているかどうか甚だ疑問ではあるけれど)し、出世欲なんてものは持ち合わせていなかったからそれはそれで別に問題はなかった。
二つ目も夏休みの間に起きた。サッカー部の部員たちが集団で覚醒剤に手を染めてしまった。その中に私のクラスの生徒も含まれており、クスリ漬けになってしまったからか、元々そういう生徒たちだったのかはわからないが、彼らは集団で女子マネージャーをレイプするという事件を起こしてしまった。
ぼくはそれらの事件の事後処理に追われていた。
2学期に入ってからは授業の合間に刑事たちから事情聴取を受ける日々が続いていた。
私、棗弘幸がこのように病んでしまったのは他ならぬ愛すべき生徒たちのせいだった。
県立八十三(やとみ)高校1年2組は、この他にも問題児ばかりのクラスだった。
中学時代に同じテニス部の同級生をいじめており、自殺に追い込んでいた生徒もいた。高校ではおとなしくしているが、そのいじめの首謀者は彼だったという話だから、いつ彼がまた人を自殺に追いやるか気が抜けない。
八十三町を拠点とする新興宗教の教祖の三女がいて、次期教祖にでもなるつもりなのか学校内で父親の教えを広めている。学校内での信者の数は把握しきれていない。
ある生徒の双子の兄は、春に起きたN市八十三町児童連続殺傷事件の犯人・少年Aだった。少年A自体は我が校の生徒ではないし、その生徒はおとなしい生徒だったが、少年が逮捕されたあとマスコミはその家族の生活ぶりをテレビや新聞、雑誌などで伝えようとしており、逮捕から半年が過ぎた今もなお我が校の前には連日マスコミが押しかけてきている。
小学生時代に誘拐されたことがあることがある生徒もいた。五年前八十三町で起きた連続誘拐殺人事件の犯人は裁判で無罪を勝ち取り、無罪判決を受けた直後、マスコミの取材に対し、その生徒を再び誘拐すると宣言している。その生徒はそれを待ち望んでいる様子だから手に負えない。
大学院を卒業したあと、八十三高校に日本史教師として勤務するようになって、5年が過ぎていた。
大学では教授に散々反対され、研究室に残るよう何度も説得された。教師になるのが子供の頃からの夢であったから、教授には申し訳なかったが、ぼくは研究者ではなく教師になる道を選んだ。こんなことなら大学で研究を続けていればよかったと今更ながら後悔している。
「高校の先生ともあろうお方が、どうしてそんな憂鬱そうな顔をしてらっしゃるのです?」
校門をくぐる私に声をかけた男がいた。
「まるでいじめを苦に自殺を考えている生徒のように見えますよ」
「あなたは?」
どうせマスコミの人間だろう。普段なら声をかけられても無視するところだったが、その日の私はなぜか足を止め、彼に返答していた。男がスーツではなく、喪服を着ていたからだった。これから葬式にでも行くのだろうか。
「要といいます。この国のある研究所に属する者です」
彼は胸に手をあててそう自己紹介すると、
「マスコミじゃないのか?」
そう訊ねる私に、その手を返し手品のように名刺を差し出した。
差し出された名刺には、
「要雅雪(かなめまさゆき)
国立デュルケーム研究所 情報部
特権諜報員『零零七式』」
と、あった。
「国立デュルケーム研究所?」
聞いたことのない名前だった。特権諜報員、零零七式とはなんだろう? 0、0、7……007か。質の悪い冗談だ。
「悪いが、私はつまらない冗談に付き合うほど、今は心に余裕がなくてね。君も早く葬儀に行きたまえ」
私はそう言うと、
「葬儀の予定はありません。この喪服はわたしが所属する組織の制服のようなものです」
彼は名刺を差し出した手とは別の手で、今度は赤い携帯電話を私に手渡した。スマートフォンだ。どこの携帯会社のものか、製造元も、機種名もどこにも記されていなかった。
その携帯電話の画面を見ると通話状態になっていた。
「あなたに大切なお話があります、棗弘幸先生。すでにあるお方と通話状態になっております」
なぜこの男は私の名前を知っているのだろう。
名乗った覚えはない。初対面のはずだった。
「待ってくれ。何の話だ? あるお方とは誰だ?」
私の問いに、
「棗先生は確か大学は文久大学でしたね? 宇宙考古学の権威である佐野教授が手放すのを惜しまれたほど、優秀な学生だったとか」
男はそう答えた。
確かに私は大学で佐野教授のもと、宇宙考古学という学問の研究をしていた。
私が大学で学んだ宇宙考古学とは、人類史上の古代または超古代に宇宙人が地球に飛来し、人間を創造し、超古代文明を授けたという科学の一説だ。宇宙考古学と名を冠してはいるが、正式には学問として認められてはいない。
私の恩師である佐野教授も、大学では法学部で法哲学や法思想史を教える法律学者だった。私は教授の講義ではなく、教授が顧問を務める宇宙考古学研究会というサークルで宇宙考古学を学んだ。
宇宙考古学は、別名を「古代宇宙飛行士説」、「太古宇宙飛行士来訪説」、「宇宙人考古学」とも言い、この範疇でキリスト宇宙人説も唱えられている。
巨大な考古学遺跡やオーパーツは、宇宙人の技術で作られた。
宇宙人は、類人猿から人類を創った。
世界各地に残る神話の神々は、宇宙人を神格化したもの。
など、宇宙考古学の研究は多岐に渡り、学生時代の私はこの学問に夢中だった。
しかし、なぜそれをこの男は知っているのだろう?
「電話のお相手は、この国の歴史を二千年以上前から操り続けてきた一族のお方、と言えばお分かりになりますか?」
男は言った。
その言葉に、私は身震いした。
宇宙考古学において、イエスは古代宇宙飛行士、つまり宇宙人であったとされている。
イエスはこの星で一番優秀な知的生命体である人間の文明を正しく導くために外宇宙から遣わされた存在であった。
古代宇宙飛行士の存在はイエスだけではない。
ムー大陸やアトランティスをはじめとした古代文明や、ピラミッドやナスカの地上絵などの建築物、これらの当時の人類には到底なし得ることのできないものはすべて、古代宇宙飛行士によってもたらされた高度な科学によるものである。
二千年前、ゴルゴダの丘で処刑されたイエスは、3日後に息を吹き返し、その後数人の使者を連れてこの島国に渡ったとされる。
日本人のユダヤ人始祖説である。
イエスはこの島国でキリスト教にかわる新たな教えを使者たちに説いたという。
イエスは西洋でキリスト教を説いた。
しかし、イエスは処刑され、その教えも後の世の時の権力者たちによって都合のいいように改ざんされていった。
キリスト教はもともと男尊女卑の教えだったが、女性信者を増やすために後になってマリアを聖母にまつりあげたように。
そのため、この島国に渡ったイエスは、自らの教えを使者の一族のみに伝えることにした。
そして傀儡の宗教として神道を作り、傀儡の王として天皇をまつりあげた。
アダムとイブ、イザナギとイザナミをはじめとして、遠い異国の宗教であるはずのふたつの宗教の神話に共通点が多く見られるのはこのためだ。
イエスは使者たちに新たに教えを説いた後、別の知的生命体が存在する惑星へと旅立った。
聖書に記されるイエスが起こした数々の奇跡、それはすべて外宇宙の高度な科学文明によるものであった。
イエスは旅立つ際に、それらの技術を埋め込んだ体を使者の一族に託した。一般的に魂と呼ばれるエネルギー体だけになってこの星を旅立った。
それらの技術は二千年前にすでに進化の袋小路に迷い込んでいた人類を更に進化させるためのものであった。
イエスの使者の一族は、イエスが遺した肉体を四八の部位に分け、二千年の時をかけて分析と解析を行っているとされる。
そして使者の一族は以来二千年に渡ってこの国の歴史を影で操ってきたという。
その使者たちの名を、
「まさか十三評議会が実在するのか?」
私は口にしていた。
「話のわかる方で助かります」
要という男はうれしそうにそう言うと、私に差し出した携帯電話を受け取るよう促した。
私は震える手で受け取ると、
「棗弘幸です」
電話に出た。
しかし、キイイインという耳鳴りのような音しか聞こえない。
故障か?
私はそう思う。
男の顔を見るが、貼り付いたような作り物の笑顔を浮かべているだけだ。
そして、私の意識はそこでプツリと途絶えることとなった。
0
あなたにおすすめの小説
無尽蔵の魔力で世界を救います~現実世界からやって来た俺は神より魔力が多いらしい~
甲賀流
ファンタジー
なんの特徴もない高校生の高橋 春陽はある時、異世界への繋がるダンジョンに迷い込んだ。なんだ……空気中に星屑みたいなのがキラキラしてるけど?これが全て魔力だって?
そしてダンジョンを突破した先には広大な異世界があり、この世界全ての魔力を行使して神や魔族に挑んでいく。
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
【完結】すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ
一終一(にのまえしゅういち)
ファンタジー
俺こと“有塚しろ”が転移した先は巨大モンスターのうろつく異世界だった。それだけならエサになって終わりだったが、なぜか身に付けていた魔法“ワンオペ”によりポンコツ鎧兵を何体も召喚して命からがら生き延びていた。
百体まで増えた鎧兵を使って騎士団を結成し、モンスター狩りが安定してきた頃、大樹の上に人間の住むマルクト王国を発見する。女王に入国を許されたのだが何を血迷ったか“聖騎士団”の称号を与えられて、いきなり国の重職に就くことになってしまった。
平和に暮らしたい俺は騎士団が実は自分一人だということを隠し、国民の信頼を得るため一人百役で鎧兵を演じていく。
そして事あるごとに俺は心の中で呟くんだ。
『すまない民よ。その聖騎士団、実は全員俺なんだ』ってね。
※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しています。
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
異世界をスキルブックと共に生きていく
大森 万丈
ファンタジー
神様に頼まれてユニークスキル「スキルブック」と「神の幸運」を持ち異世界に転移したのだが転移した先は海辺だった。見渡しても海と森しかない。「最初からサバイバルなんて難易度高すぎだろ・・今着てる服以外何も持ってないし絶対幸運働いてないよこれ、これからどうしよう・・・」これは地球で平凡に暮らしていた佐藤 健吾が死後神様の依頼により異世界に転生し神より授かったユニークスキル「スキルブック」を駆使し、仲間を増やしながら気ままに異世界で暮らしていく話です。神様に貰った幸運は相変わらず仕事をしません。のんびり書いていきます。読んで頂けると幸いです。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
ファンタジー
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる