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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」
第141話 10番目の精霊 ②
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「ぼくはフォラス。次元の精霊だよ」
少年は、そう名乗った。
「オロバスちゃんは、どこ?
わたしは、時を巻き戻さなきゃいけないの」
だが、少女は聞いてはいなかった。
言葉はちゃんと届いていた。
そして、少年の言葉や存在を、ちゃんと理解してもいる。
「レンジやステラを、リバーステラに送った直後に時を巻き戻して、誰が大厄災を起こしたのかわからないけど、1ヶ月でどうにかなるかわからないけど、何度でもやり直してでも、絶対に止めなきゃいけないの。
それから、」
自分を愛してくれた男の気持ちに答えたいと少女は思った。
少女は今、取り乱してしまっていて、頭の中がぐちゃぐちゃなのだ。
少年は、そんな少女を見て、まるで昔の自分を見ているようだなと思った。
少年は、
「オロバスも、君をずっと気にかけている。
でも、ごめんね。
今は君に、オロバスの力を使わせることはできないんだ」
「どうして?」
少女は、小首を傾げた。
かわいいしぐさだった。
「だって、オロバスちゃんが力を貸してくれなかったら……」
「大厄災が起きてしまい、そして、大厄災後の世界に、術者以外で消滅を免れた者がいた場合、時を巻き戻してやり直すことはできない。
それは、どんな精霊にも、時を司るオロバスでさえも破ることができないルールなんだ。
ぼくのときには、オロバスがそれを告げに来た。
そして、今回はぼくの番。
ぼくは君に、大切なことを伝えにきたんだ」
「ぼくのとき……? 大切なこと……?」
少女のその反応もまた、オロバスが自分の目の前に現れたときと同じだな、と少年は思った。
「ぼくたち精霊は、皆、元々は君と同じようにして産まれたんだ。
君が大好きな女の子のように、アルビノの魔人の中から、強大すぎる力を持って産まれてくる者がいる。
何度も大厄災を迎えては、新たに始まるこの世界の人の歴史の中で、必ずひとりずつ、ね。
母親は必ず死に、父親はその子どもの力をふたつに分ける。
それは同時に、大厄災の訪れが近いことを意味する」
「大厄災が起きる前に、必ずわたしのような存在が産まれてくるってこと?」
「そうだよ。
だからね、この世界ではもう十回も大厄災が起きているんだ。
6柱の精霊の力をかけあわせた魔法以外にも大厄災を起こす方法があるんだ。
人は、必ず大厄災を起こしてしまう。
だから、ぼくたち精霊は、大厄災が起きない世界を作るためにその存在がある。
でも、また止められなかった。
だから、ごめんね」
少年は、悲しそうにそう言い、
「でも、君がいてくれたら、今度こそ人が大厄災を起こすことを止められるかもしれない。
君は、10番目の精霊になるために産まれてきたんだから」
少女は、ピノア・カーバンクルは、ようやく自分が産まれた意味を、そして、今この世界に存在する理由を理解した。
「ピノア、君は何を司る精霊になりたい?」
「わたしが決めていいの?」
「いいよ。精霊たちは皆、そうやって自ら精霊としての役割を決めてきたんだ」
ピノアは悩むことなく、
「命……」
と答えた。
「オロバスから聞いていた通り、君は優しい子なんだね。
じゃあ、今日から君は、命の精霊だ」
少年は、次元の精霊・フォラスは優しく微笑んだ。
「もう二度とこんなことが起きないようにしたいから……」
「それは、ぼくたちも同じ気持ちだよ」
そして、フォラスは、
「ピノア、大厄災が起きてしまった事実は変えられないし、時を巻き戻すこともできないけれど、新たに精霊になった者は、他の精霊の力を借りて、ひとつだけ願いをかなえることができるんだ。
君は今、何を願う?」
ピノアにそう尋ねた。
ピノアは、先ほどのようにすぐに答えは出さず、ゆっくりと答えを吟味した。
「わたしは、命を司る精霊であると同時に、ピノア・カーバンクルであり続けたい。
だから、命の精霊でありながらも、そのことを忘れて、だけどわたし自身は無意識に精霊としての役目を果たしながら、これからもピノア・カーバンクルとして生き続けていきたい。
この世界に産まれた、ひとりの人として、ピノア・カーバンクルとして、大厄災を今度こそ止めたい」
フォラスは、わかった、と言うと、
「ぼくもオロバスも、他の精霊たちも皆驚いている。
誰も、今までそんなことを思い付きもしなかったからね。
知ってしまえば、とても簡単なことだけど、君が教えてくれなければ、ぼくたちには気付けなかった。
ありがとう、ピノア。
ぼくたちも、君と同じように、精霊である前に、この世界に生きるひとりの人として、大厄災を起こす者と戦うよ」
ピノアの手をとり、その小指に自分の小指を絡ませた。
「指切りげんまんっていう、リバーステラの約束の仕方だよ」
それは、約束を破ったり、嘘をついたら、針を千本飲むっていう誓いなのだという。
フォラスが姿を消した後、ピノアは自分が命を司る精霊になったことを忘れてしまったが、指切りげんまんのことだけはそれから4000年もの長い時を生きる中で忘れたことはなかった。
約束の内容は覚えていなくても。
誰かと何かを約束した。
それを、ピノアはずっと覚えていた。
少年は、そう名乗った。
「オロバスちゃんは、どこ?
わたしは、時を巻き戻さなきゃいけないの」
だが、少女は聞いてはいなかった。
言葉はちゃんと届いていた。
そして、少年の言葉や存在を、ちゃんと理解してもいる。
「レンジやステラを、リバーステラに送った直後に時を巻き戻して、誰が大厄災を起こしたのかわからないけど、1ヶ月でどうにかなるかわからないけど、何度でもやり直してでも、絶対に止めなきゃいけないの。
それから、」
自分を愛してくれた男の気持ちに答えたいと少女は思った。
少女は今、取り乱してしまっていて、頭の中がぐちゃぐちゃなのだ。
少年は、そんな少女を見て、まるで昔の自分を見ているようだなと思った。
少年は、
「オロバスも、君をずっと気にかけている。
でも、ごめんね。
今は君に、オロバスの力を使わせることはできないんだ」
「どうして?」
少女は、小首を傾げた。
かわいいしぐさだった。
「だって、オロバスちゃんが力を貸してくれなかったら……」
「大厄災が起きてしまい、そして、大厄災後の世界に、術者以外で消滅を免れた者がいた場合、時を巻き戻してやり直すことはできない。
それは、どんな精霊にも、時を司るオロバスでさえも破ることができないルールなんだ。
ぼくのときには、オロバスがそれを告げに来た。
そして、今回はぼくの番。
ぼくは君に、大切なことを伝えにきたんだ」
「ぼくのとき……? 大切なこと……?」
少女のその反応もまた、オロバスが自分の目の前に現れたときと同じだな、と少年は思った。
「ぼくたち精霊は、皆、元々は君と同じようにして産まれたんだ。
君が大好きな女の子のように、アルビノの魔人の中から、強大すぎる力を持って産まれてくる者がいる。
何度も大厄災を迎えては、新たに始まるこの世界の人の歴史の中で、必ずひとりずつ、ね。
母親は必ず死に、父親はその子どもの力をふたつに分ける。
それは同時に、大厄災の訪れが近いことを意味する」
「大厄災が起きる前に、必ずわたしのような存在が産まれてくるってこと?」
「そうだよ。
だからね、この世界ではもう十回も大厄災が起きているんだ。
6柱の精霊の力をかけあわせた魔法以外にも大厄災を起こす方法があるんだ。
人は、必ず大厄災を起こしてしまう。
だから、ぼくたち精霊は、大厄災が起きない世界を作るためにその存在がある。
でも、また止められなかった。
だから、ごめんね」
少年は、悲しそうにそう言い、
「でも、君がいてくれたら、今度こそ人が大厄災を起こすことを止められるかもしれない。
君は、10番目の精霊になるために産まれてきたんだから」
少女は、ピノア・カーバンクルは、ようやく自分が産まれた意味を、そして、今この世界に存在する理由を理解した。
「ピノア、君は何を司る精霊になりたい?」
「わたしが決めていいの?」
「いいよ。精霊たちは皆、そうやって自ら精霊としての役割を決めてきたんだ」
ピノアは悩むことなく、
「命……」
と答えた。
「オロバスから聞いていた通り、君は優しい子なんだね。
じゃあ、今日から君は、命の精霊だ」
少年は、次元の精霊・フォラスは優しく微笑んだ。
「もう二度とこんなことが起きないようにしたいから……」
「それは、ぼくたちも同じ気持ちだよ」
そして、フォラスは、
「ピノア、大厄災が起きてしまった事実は変えられないし、時を巻き戻すこともできないけれど、新たに精霊になった者は、他の精霊の力を借りて、ひとつだけ願いをかなえることができるんだ。
君は今、何を願う?」
ピノアにそう尋ねた。
ピノアは、先ほどのようにすぐに答えは出さず、ゆっくりと答えを吟味した。
「わたしは、命を司る精霊であると同時に、ピノア・カーバンクルであり続けたい。
だから、命の精霊でありながらも、そのことを忘れて、だけどわたし自身は無意識に精霊としての役目を果たしながら、これからもピノア・カーバンクルとして生き続けていきたい。
この世界に産まれた、ひとりの人として、ピノア・カーバンクルとして、大厄災を今度こそ止めたい」
フォラスは、わかった、と言うと、
「ぼくもオロバスも、他の精霊たちも皆驚いている。
誰も、今までそんなことを思い付きもしなかったからね。
知ってしまえば、とても簡単なことだけど、君が教えてくれなければ、ぼくたちには気付けなかった。
ありがとう、ピノア。
ぼくたちも、君と同じように、精霊である前に、この世界に生きるひとりの人として、大厄災を起こす者と戦うよ」
ピノアの手をとり、その小指に自分の小指を絡ませた。
「指切りげんまんっていう、リバーステラの約束の仕方だよ」
それは、約束を破ったり、嘘をついたら、針を千本飲むっていう誓いなのだという。
フォラスが姿を消した後、ピノアは自分が命を司る精霊になったことを忘れてしまったが、指切りげんまんのことだけはそれから4000年もの長い時を生きる中で忘れたことはなかった。
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誰かと何かを約束した。
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