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【第二部 異世界転移奇譚 RENJI 2 】「気づいたらまた異世界にいた。異世界転移、通算一万人目と10001人目の冒険者。」
第174話 アンフィマスイブ
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「我々」を壊滅させ、その後始末とも言うべき匣の回収を目的とした旅を始めてから、1ヶ月半以上が過ぎていた。
前の世界でのブライとの戦いの後、レンジとショウゴはリバーステラに帰還しようとした。
そしてピノアの粋なはからいでステラが彼らを追いかけることになった。
しかし、たどりついた先はリバーステラではなく、11番目のテラだった。
その日は、リバーステラの暦でいうクリスマスイブ、12月24日のことだった。
クリスマスは、英語表記にすると「Christmas」。
Christがキリスト、masはミサ、つまり礼拝という意味だ。
クリスマスとは「キリストのミサ」という意味であり、世界のキリスト教国ではキリストの降誕を祝う日だ。
そして、「クリスマスイブ」の「イブ」とは英語の「evening(夜)」と同じ意味の古語「even」のことであり、クリスマスイブとは「クリスマスの前夜」ではなく「クリスマスの夜」を意味する。
これには、キリスト教の前身にあたるユダヤ教の暦であるユダヤ暦が大きく関わっている。
ユダヤ暦では、日没が一日の変わり目とされており、そのため、12月24日の日没から25日の日没までが「クリスマス」となる。
だから、クリスマスイブは、すでにクリスマスに含まれている24日の日没から深夜までということになる。
テラの暦においては、11番目のテラだけかもしれないが、クリスマスはアンフィマスとなっていた。
彼の誕生日もまた12月25日であったからだ。
だがテラの暦は、ユダヤ暦のような一日の変わり目を採用しておらず、西暦と同じで一日の変わり目は、真夜中の午前0時であったから、12月24日の夜はアンフィスマスイブではなく、25日に誕生祭が行われた後の日没から23時59分までがアンフィマスイブであった。
日付が12月25日に変わり、アンフィマスの日を迎えた頃、レンジたちは彼らよりも1ヶ月ほど前に転移させられていたステラや、前の世界の記憶を取り戻した者たちを解放するため、エテメンアンキでのはじめてのダンジョン攻略を行った。
そして、無事ステラや囚われていた人々を解放し、前の世界からアンフィスやニーズヘッグらを召喚した。
アンフィスの誕生日をちゃんと祝ってあげたかった。
だが、状況が許さなかった。
レンジは、原初のテラの神である秋月蓮治に、この世界を生み出した者としての責任をこの時代でとらせようと考えた。
100年近い時を原初のテラで過ごし、そして、そこにいる秋月蓮治がテラを作った神でもなければ、秋月蓮治のイミテーションでしかないこと、そして自分こそが、秋月蓮治がリバーステラの歴史を二度作り替え、三度目の世界に産まれた秋月蓮治なのだということを知った。
レンジはまだ秋月蓮治の記憶を取り戻してはいなかったが、秋月蓮治のイミテーションと共に原初のテラに存在していた、草詰アリスをこの時代へと連れてきた。
彼女は、「我々」に産み出された存在でありながら、秋月蓮治を愛し、世界を作り替える手伝いをした少女であり、原初のテラは「我々」が彼女を閉じ込めるためだけに作った牢獄の箱庭の世界だったからだ。
原初のテラから帰還した後、アンフィマスイブに、「我々」との最終決戦が行われた。
その戦いで、アンフィスは、その存在をテラの歴史から消されてしまった。
アンフィスの存在は今だ消えたままだった。
ステラとアリスはまだ戻らず、年が明け、そして2月14日を迎えていた。
バレンタインデーだった。
レンジとピノアは、召喚魔法大国ヘブリカにいた。
ふたりはすでに24個の匣を回収していた。
ショウゴとイルルは17個、単独で動いているサトシとサタナハマアカはそれぞれ10個ずつ回収しているということだった。
残る匣は1個。
そして、その最後の一個は、間もなくアメノトリフネにいるふたりの女王の元に到着するということだった。
到着する、という表現が少し気になったが、おそらくはアベノ・セーメーか誰かが見つけたのだろう。
レンジたちには至急アメノトリフネに戻るよう連絡があり、そしてエウロペの飛空艇エゥデュリケが迎えにやってきていた。
昨日まで、レンジは今日が2月14日であることを気にもしていなかった。
レンジは何かを期待していたわけではなかったが、朝からなんとなくそわそわしていた。
ピノアとは、もう1ヶ月以上もふたりきりで旅を続け、寝食を共にしていたからだ。
これからはステラだけを見ていくと、ステラに約束をした。
だが、ピノアを愛おしいと思う気持ちは変わらなかった。
ピノアもキスこそはしてこなかったが、レンジの手をよく握ってきた。
握り返すとうれしそうに笑った。
もしテラにもバレンタインがあったなら、ピノアがどんなことをしかけてくるのかわからなかった。
だが、どうやらテラにはバレンタインという風習はないようだった。
ほっとする一方で、少し寂しかったのは、レンジがバレンタインに妹と祖母以外からチョコをもらったことがなかったからだ。
きっとそうだ。
そうにちがいない。
レンジはそう思い込むことにし、飛空艇に乗り込んだ。
「お待ちしておりました、ピノアお姉さま、レンジ様。
私ソラシドから、お二方にお願いがございます」
前の世界でのブライとの戦いの後、レンジとショウゴはリバーステラに帰還しようとした。
そしてピノアの粋なはからいでステラが彼らを追いかけることになった。
しかし、たどりついた先はリバーステラではなく、11番目のテラだった。
その日は、リバーステラの暦でいうクリスマスイブ、12月24日のことだった。
クリスマスは、英語表記にすると「Christmas」。
Christがキリスト、masはミサ、つまり礼拝という意味だ。
クリスマスとは「キリストのミサ」という意味であり、世界のキリスト教国ではキリストの降誕を祝う日だ。
そして、「クリスマスイブ」の「イブ」とは英語の「evening(夜)」と同じ意味の古語「even」のことであり、クリスマスイブとは「クリスマスの前夜」ではなく「クリスマスの夜」を意味する。
これには、キリスト教の前身にあたるユダヤ教の暦であるユダヤ暦が大きく関わっている。
ユダヤ暦では、日没が一日の変わり目とされており、そのため、12月24日の日没から25日の日没までが「クリスマス」となる。
だから、クリスマスイブは、すでにクリスマスに含まれている24日の日没から深夜までということになる。
テラの暦においては、11番目のテラだけかもしれないが、クリスマスはアンフィマスとなっていた。
彼の誕生日もまた12月25日であったからだ。
だがテラの暦は、ユダヤ暦のような一日の変わり目を採用しておらず、西暦と同じで一日の変わり目は、真夜中の午前0時であったから、12月24日の夜はアンフィスマスイブではなく、25日に誕生祭が行われた後の日没から23時59分までがアンフィマスイブであった。
日付が12月25日に変わり、アンフィマスの日を迎えた頃、レンジたちは彼らよりも1ヶ月ほど前に転移させられていたステラや、前の世界の記憶を取り戻した者たちを解放するため、エテメンアンキでのはじめてのダンジョン攻略を行った。
そして、無事ステラや囚われていた人々を解放し、前の世界からアンフィスやニーズヘッグらを召喚した。
アンフィスの誕生日をちゃんと祝ってあげたかった。
だが、状況が許さなかった。
レンジは、原初のテラの神である秋月蓮治に、この世界を生み出した者としての責任をこの時代でとらせようと考えた。
100年近い時を原初のテラで過ごし、そして、そこにいる秋月蓮治がテラを作った神でもなければ、秋月蓮治のイミテーションでしかないこと、そして自分こそが、秋月蓮治がリバーステラの歴史を二度作り替え、三度目の世界に産まれた秋月蓮治なのだということを知った。
レンジはまだ秋月蓮治の記憶を取り戻してはいなかったが、秋月蓮治のイミテーションと共に原初のテラに存在していた、草詰アリスをこの時代へと連れてきた。
彼女は、「我々」に産み出された存在でありながら、秋月蓮治を愛し、世界を作り替える手伝いをした少女であり、原初のテラは「我々」が彼女を閉じ込めるためだけに作った牢獄の箱庭の世界だったからだ。
原初のテラから帰還した後、アンフィマスイブに、「我々」との最終決戦が行われた。
その戦いで、アンフィスは、その存在をテラの歴史から消されてしまった。
アンフィスの存在は今だ消えたままだった。
ステラとアリスはまだ戻らず、年が明け、そして2月14日を迎えていた。
バレンタインデーだった。
レンジとピノアは、召喚魔法大国ヘブリカにいた。
ふたりはすでに24個の匣を回収していた。
ショウゴとイルルは17個、単独で動いているサトシとサタナハマアカはそれぞれ10個ずつ回収しているということだった。
残る匣は1個。
そして、その最後の一個は、間もなくアメノトリフネにいるふたりの女王の元に到着するということだった。
到着する、という表現が少し気になったが、おそらくはアベノ・セーメーか誰かが見つけたのだろう。
レンジたちには至急アメノトリフネに戻るよう連絡があり、そしてエウロペの飛空艇エゥデュリケが迎えにやってきていた。
昨日まで、レンジは今日が2月14日であることを気にもしていなかった。
レンジは何かを期待していたわけではなかったが、朝からなんとなくそわそわしていた。
ピノアとは、もう1ヶ月以上もふたりきりで旅を続け、寝食を共にしていたからだ。
これからはステラだけを見ていくと、ステラに約束をした。
だが、ピノアを愛おしいと思う気持ちは変わらなかった。
ピノアもキスこそはしてこなかったが、レンジの手をよく握ってきた。
握り返すとうれしそうに笑った。
もしテラにもバレンタインがあったなら、ピノアがどんなことをしかけてくるのかわからなかった。
だが、どうやらテラにはバレンタインという風習はないようだった。
ほっとする一方で、少し寂しかったのは、レンジがバレンタインに妹と祖母以外からチョコをもらったことがなかったからだ。
きっとそうだ。
そうにちがいない。
レンジはそう思い込むことにし、飛空艇に乗り込んだ。
「お待ちしておりました、ピノアお姉さま、レンジ様。
私ソラシドから、お二方にお願いがございます」
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