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【第三部 異世界転移奇譚 RENJI 3 - PINOA - 】「やったね!魔法少女ピノアちゃん大活躍!!編」
第183話 使えないはずの魔法
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タカミやミカナが11年を過ごした異世界からの来訪者は、ピノア・カーバンクルという名前らしかった。
バカっぽい言動だけでなく、かわいらしい外見も出会ったばかりの頃のミカナに似ていた。
真依は都会から来たミカナに憧れて、おしゃれをすることを覚えたから、10年以上前のミカナを今でもよく覚えていた。
タカミは、ピノアを真依にそう紹介すると、
「あ、いろいろあって、今はピノア・オーダー・ダハーカって名前になったんだ」
と言った。
異世界のことはよくわからなかったが、結婚をして苗字が変わったのかな、と真依は思ったが、
「やっぱりあの後、大厄災が起きたんだね」
と、タカミが言い、そうではないのだとわかった。
だが、大厄災とはなんだろうか?
スマホで調べてわかるものではないだろうとわかってはいたが、タクシーの中で一応調べてみるとゼルダの伝説というゲームが出てきた。
無論関係ないだろうが、ゲームに疎い真依にはちっともわからなかった。
ミカナもまた、一度は止めたはずの大厄災というものが起きたことを知らなかった。
だからだろうか、信じられないという顔をしていた。
「そーそー、せっかくタカミとミカナのおかげで、お父さんのオリジナルを倒せたのにさ、レンジやショウゴやステラをこっちに送り出して一安心してたらレンジのお父さんが大厄災を起こしちゃって、アンフィスはわたしに告るだけ告っといて消えちゃうし、わたしひとりだけ生き残っちゃうし、そのあと4000年も本当に来るのかどうかもわからないレンジやショウゴをずっと待ったりとか、ほんとにもう大変だったんだよ」
その言葉の内容とは真逆に、ピノアという少女はあっけらかんとしていた。
おそらくは、いろいろありはしたが無事解決したのだろう、とわかった。
「でも、君たちは、レンジ君の父が神となった新世界で、今度こそ大厄災を止めた。
ダークマターによる混沌化した時代と世界は終わり、あの世界は本来あるべき形である秩序を取り戻した。
だから、君はピノア・オーダー・ダハーカになったんだろう?」
「さすがはタカミだね。
わたしの名前だけでそこまでわかっちゃうんだ?」
「もうアカシックレコードにはアクセスできないから、なんとなくだけどね。
ステラちゃんは、オーダーじゃなくてコスモスってところかな」
ピノアは、あたり、と言った。
オーダーもコスモスも、タカミが口にした混沌、つまりはカオスとは真逆の秩序を意味する言葉だった。
「でも、変なんだ。
17年前に、わたしはあっちの世界から魔法やエーテルの存在を消したんだよね。
わたしもステラもアルビノの魔人をやめて、レンジと同じただの人になったんだ。
だから、髪も目も黒くなったし、34歳の仕事ができる大人の女になってたはずなんだけど……」
ピノアという少女は、髪や瞳の色が銀や赤になっているだけではなく、どう見ても十代の女の子にしか見えなかった。
「あ、そうそう、ステラがレンジの子どもを産んだよ。
サクラっていうの。今17歳。
わたしに似て、すっごくかわいいんだ」
話がすぐに脱線してしまうのも、ほほえましかった。
「君じゃなくてステラちゃんに似たんだろ?」
タカミは楽しそうに笑っていた。
ピノアも、そしてミカナも。
ふたりにとっては12年ぶり、ピノアにとっては4000年ぶりの再会なのだから仕方がないとはいえ、真依は同じタクシーの中にいても、なんだかひとり取り残されてしまった気がしていた。
「でもさ、どうしてピノアがこっちに来てるの?」
ミカナがようやく本題を切り出した。
「あと、こっちとあっちじゃ言葉が違って、エーテルによる順応化っていったけ?
おにーちゃんやわたしやメイ、それにレンジくんたちが、あっちの言葉がわかるようにしてくれてたでしょ?
ピノアはどうして、わたしたちと今普通に話せてるの?」
エーテルが何なのか、順応化とは何なのか、わからないことばかりだったが、ピノアはミカナに尋ねられるまで考えもしていなかったようだった。
「……もしかして、こっちにもエーテルがあるとか?」
ないない、とミカナは言ったが、ピノアは手のひらに何かを集め始めていた。
「あるっぽいね……でも魔法はさすがに使えないよね……」
「んー、どうだろ」
「運転手さん、すみません、ちょっと窓を開けてもらえますか?」
タカミに言われ、運転手が窓を開けると、ピノアはその手を窓のそとに向けた。
「一番弱い火力で、空に向けて頼むよ」
タカミの言葉を合図に、ピノアは手のひらから小さな火球を空に飛ばした。
「使えるね……魔法……」
「どういうことだ……?」
タカミもミカナも困惑していた。
真依は、ピノアが本当に手のひらから火球を、魔法を放ったことにただただ驚かされた。
「こっちの世界に来る前に、わたし、城のバルコニーにいたんだ。
よく覚えてないけど、レンジかステラかサクラを探してたと思う。
バルコニーに出た瞬間に何かに足をからめとられて、底無し沼に引きずり込まれるみたいな感覚だった。
で、気づいたら、こっちの世界にいたんだよね」
何かもわからないが、何かが起ころうとしていた。
それは、真依にもわかった。
バカっぽい言動だけでなく、かわいらしい外見も出会ったばかりの頃のミカナに似ていた。
真依は都会から来たミカナに憧れて、おしゃれをすることを覚えたから、10年以上前のミカナを今でもよく覚えていた。
タカミは、ピノアを真依にそう紹介すると、
「あ、いろいろあって、今はピノア・オーダー・ダハーカって名前になったんだ」
と言った。
異世界のことはよくわからなかったが、結婚をして苗字が変わったのかな、と真依は思ったが、
「やっぱりあの後、大厄災が起きたんだね」
と、タカミが言い、そうではないのだとわかった。
だが、大厄災とはなんだろうか?
スマホで調べてわかるものではないだろうとわかってはいたが、タクシーの中で一応調べてみるとゼルダの伝説というゲームが出てきた。
無論関係ないだろうが、ゲームに疎い真依にはちっともわからなかった。
ミカナもまた、一度は止めたはずの大厄災というものが起きたことを知らなかった。
だからだろうか、信じられないという顔をしていた。
「そーそー、せっかくタカミとミカナのおかげで、お父さんのオリジナルを倒せたのにさ、レンジやショウゴやステラをこっちに送り出して一安心してたらレンジのお父さんが大厄災を起こしちゃって、アンフィスはわたしに告るだけ告っといて消えちゃうし、わたしひとりだけ生き残っちゃうし、そのあと4000年も本当に来るのかどうかもわからないレンジやショウゴをずっと待ったりとか、ほんとにもう大変だったんだよ」
その言葉の内容とは真逆に、ピノアという少女はあっけらかんとしていた。
おそらくは、いろいろありはしたが無事解決したのだろう、とわかった。
「でも、君たちは、レンジ君の父が神となった新世界で、今度こそ大厄災を止めた。
ダークマターによる混沌化した時代と世界は終わり、あの世界は本来あるべき形である秩序を取り戻した。
だから、君はピノア・オーダー・ダハーカになったんだろう?」
「さすがはタカミだね。
わたしの名前だけでそこまでわかっちゃうんだ?」
「もうアカシックレコードにはアクセスできないから、なんとなくだけどね。
ステラちゃんは、オーダーじゃなくてコスモスってところかな」
ピノアは、あたり、と言った。
オーダーもコスモスも、タカミが口にした混沌、つまりはカオスとは真逆の秩序を意味する言葉だった。
「でも、変なんだ。
17年前に、わたしはあっちの世界から魔法やエーテルの存在を消したんだよね。
わたしもステラもアルビノの魔人をやめて、レンジと同じただの人になったんだ。
だから、髪も目も黒くなったし、34歳の仕事ができる大人の女になってたはずなんだけど……」
ピノアという少女は、髪や瞳の色が銀や赤になっているだけではなく、どう見ても十代の女の子にしか見えなかった。
「あ、そうそう、ステラがレンジの子どもを産んだよ。
サクラっていうの。今17歳。
わたしに似て、すっごくかわいいんだ」
話がすぐに脱線してしまうのも、ほほえましかった。
「君じゃなくてステラちゃんに似たんだろ?」
タカミは楽しそうに笑っていた。
ピノアも、そしてミカナも。
ふたりにとっては12年ぶり、ピノアにとっては4000年ぶりの再会なのだから仕方がないとはいえ、真依は同じタクシーの中にいても、なんだかひとり取り残されてしまった気がしていた。
「でもさ、どうしてピノアがこっちに来てるの?」
ミカナがようやく本題を切り出した。
「あと、こっちとあっちじゃ言葉が違って、エーテルによる順応化っていったけ?
おにーちゃんやわたしやメイ、それにレンジくんたちが、あっちの言葉がわかるようにしてくれてたでしょ?
ピノアはどうして、わたしたちと今普通に話せてるの?」
エーテルが何なのか、順応化とは何なのか、わからないことばかりだったが、ピノアはミカナに尋ねられるまで考えもしていなかったようだった。
「……もしかして、こっちにもエーテルがあるとか?」
ないない、とミカナは言ったが、ピノアは手のひらに何かを集め始めていた。
「あるっぽいね……でも魔法はさすがに使えないよね……」
「んー、どうだろ」
「運転手さん、すみません、ちょっと窓を開けてもらえますか?」
タカミに言われ、運転手が窓を開けると、ピノアはその手を窓のそとに向けた。
「一番弱い火力で、空に向けて頼むよ」
タカミの言葉を合図に、ピノアは手のひらから小さな火球を空に飛ばした。
「使えるね……魔法……」
「どういうことだ……?」
タカミもミカナも困惑していた。
真依は、ピノアが本当に手のひらから火球を、魔法を放ったことにただただ驚かされた。
「こっちの世界に来る前に、わたし、城のバルコニーにいたんだ。
よく覚えてないけど、レンジかステラかサクラを探してたと思う。
バルコニーに出た瞬間に何かに足をからめとられて、底無し沼に引きずり込まれるみたいな感覚だった。
で、気づいたら、こっちの世界にいたんだよね」
何かもわからないが、何かが起ころうとしていた。
それは、真依にもわかった。
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