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第1章 第6話 真鶴マサト著「偽書から読み解く『アリステラ王国』」より
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アリステラ王国は、かつて大陸全土を支配した巨大な軍事国家であった。
だが、その支配はわずか百年ほどと長くは続かず、数百年前に滅亡したとされている。
しかしながら、一度は大陸全土を支配したにも関わらず、アリステラについて記された文献はとても少ない。
アトランティスやムー大陸、レムリア、メガラニカに代表されるような、紀元前1万年以前に存在したとされる伝承や創作上の超古代文明と違い、アリステラはわずか数百年前の国家にも関わらず、大陸の国々の歴史書にその名が全く残っていないのである。
アリステラが滅ぼした国家群も、アリステラを滅ぼした国家の名前すら何一つ判明していない。
数百年前というのが、200年前なのか500年前なのか、あるいは900年前なのか、それすら定かではなかった。
日本には「空白の四世紀」と呼ばれる時代があり、その間に邪馬台国が滅亡し、ヤマト王権が始まったとされる。
これについては、漢字伝来以前の日本には文字が存在しなかったため、邪馬台国についての記述が魏志倭人伝にしかなく、邪馬台国の国力が弱まり魏との国交が途絶えたのが原因だろうとされている。
しかし、数百年前の大陸には漢字を始め、様々な国家の文字が存在している。
にも関わらず、大陸の国々の歴史書にアリステラの名が記されていないのはあまりにも不自然と言わざるを得ない。
そもそもの問題として、アリステラが大陸の歴史に入る余地がどこにもないのだ。
一部の研究家はアリステラに関するあらゆる書物が、後に成立した国家によって焚書が行われたからではないかと考えているが、大陸全土の規模でそんなことが可能なのか甚だ疑問である。
アリステラは、昭和初期から中期に日本国内で発見されたいくつかの古文書にのみ、その名が登場する。
発見者である民俗学者・秋月零時(あきつき れいじ)の名を取り「秋月文書(あきつきもんじょ)」と名付けられた古文書をはじめ、「富嶽文書(ふがくもんじょ)」「比良坂暦(ひらさかこよみ)」「サタナハマアカ」の計四書に、アリステラについての記述がある。
いずれもわずか数百年前のことが、わざわざ漢字伝来以前の古代日本で使用されていたとされる「神代文字」にて記されているのが特徴であり、秋月零時ら発見者たちによって現代語訳されている。
使用された神代文字は、仮にそれが本当に存在したならば、日本の歴史に空白の四世紀などという時代が存在することや、わざわざ漢字を輸入し、漢字を元に仮名を作るようなまねを何故したのかという疑問が生じる。
そのため、研究者たちの多くは神代文字についてその存在自体に否定的立場であり、神代文字で書かれた古文書はすべて偽書であるとする見方が根強い。
このように偽書の疑いが非常に高い四書であるが、発見された場所がそれぞれ異なるわりに(本州で2書、四国で1書、九州で1書、発見されている)、アリステラについての記述は非常に似通っている。
いずれの古文書も、アリステラが大陸全土を支配できたのは、数人の巨人の戦士を有していたためとある。書によってその人数はまちまちである。
首都ノアレスをはじめ、主要な都市には、その巨人たちが使用したとされる天にも届くほど巨大な槍が大地に突き立てられていたという。
天まで届くほどとは、長さにして数千メートルはあると思われるが、仮に5000メートルとした場合、通常の槍を2.5メートルとするならば200倍の長さである。
それを扱う巨人の身長もまた人の200倍だとするなら、その身長は3~4000メートルとなり、あまりに荒唐無稽な数字である。
また、その槍は戦いを終えた巨人たちの墓標であり、大地の下には巨人たちの死体が埋まっているのだという。
そのためアリステラは土地が肥え、緑豊かな大地は飢饉を知らず、農作物が毎年よく取れ、家畜もよく育ったとある。
昭和後期になると、かつて秋月零時らの元で学んだ藤南敬寛(ふじなみ けいかん)らにより、あまりに不自然な時代背景と巨大すぎる巨人と槍について、新たな解釈がなされた。
アリステラが栄えた時代は、数百年前ではなく数千年前の誤りであり、紀元前5000年前後である。
大陸の国々の歴史書にその名が登場しないのは、秦の始皇帝の時代に行われた焚書により、アリステラに関する古文書がすべて失われたためである。
秋月文書をはじめとする四書は、日本国内で神代文字が使用されていた時代、空白の四世紀以前に記されたものである。
しかし、現人神であるミカドによる統治は紀元前7世紀から始まり、その歴史は高天ヶ原の神々の時代から脈々と続いているという建国神話と、神話上のミカドの時代に実際に日本を治めていた邪馬台国の存在が矛盾する。
そのため、邪馬台国について記された国内の書物は焚書の対象となったが、すべての書物を焼き払ったとは断言できず、後に発見されても読むことができないよう、神代文字の使用が禁じられた。
神代文字の読み書きができたのは朝廷のごく限られた者のみであったため、文字を失って困る者は少数の役人たちだけであった。
彼らは神代文字に代わる文字の作成を命じられたため、代用文字として漢字を取り入れることにした。
アリステラの巨人とは、強大な軍事力を比喩したに過ぎず、実際に巨人が存在したわけではない。
ただし、身長2メートル以上ある兵士を巨人と表現した可能性はある。
主要な都市に刺された槍とは、実際には槍ではなく巨大な塔であり、本当に天(宇宙)まで届く高さがあった。
槍は、超古代文明による軌道エレベーターであり、その先にはスペースコロニーが存在した。
平成の世になり、炭素年代測定によって、秋月文書をはじめとする四書はすべて昭和初期から中期に書かれたものであることが判明した。
秋月零時、藤南敬寛らの子孫・弟子らは、四書共に四世紀以前には存在しない紙に記されていたことから、炭素年代測定をするまでもなく、すべてが原本ではなく写本であるとわかっていた、と主張した。
あくまで原本でないだけであり、偽書ではないというのが彼らの主張である。
(真鶴マサト著「偽書から読み解く『アリステラ王国』」より)
だが、その支配はわずか百年ほどと長くは続かず、数百年前に滅亡したとされている。
しかしながら、一度は大陸全土を支配したにも関わらず、アリステラについて記された文献はとても少ない。
アトランティスやムー大陸、レムリア、メガラニカに代表されるような、紀元前1万年以前に存在したとされる伝承や創作上の超古代文明と違い、アリステラはわずか数百年前の国家にも関わらず、大陸の国々の歴史書にその名が全く残っていないのである。
アリステラが滅ぼした国家群も、アリステラを滅ぼした国家の名前すら何一つ判明していない。
数百年前というのが、200年前なのか500年前なのか、あるいは900年前なのか、それすら定かではなかった。
日本には「空白の四世紀」と呼ばれる時代があり、その間に邪馬台国が滅亡し、ヤマト王権が始まったとされる。
これについては、漢字伝来以前の日本には文字が存在しなかったため、邪馬台国についての記述が魏志倭人伝にしかなく、邪馬台国の国力が弱まり魏との国交が途絶えたのが原因だろうとされている。
しかし、数百年前の大陸には漢字を始め、様々な国家の文字が存在している。
にも関わらず、大陸の国々の歴史書にアリステラの名が記されていないのはあまりにも不自然と言わざるを得ない。
そもそもの問題として、アリステラが大陸の歴史に入る余地がどこにもないのだ。
一部の研究家はアリステラに関するあらゆる書物が、後に成立した国家によって焚書が行われたからではないかと考えているが、大陸全土の規模でそんなことが可能なのか甚だ疑問である。
アリステラは、昭和初期から中期に日本国内で発見されたいくつかの古文書にのみ、その名が登場する。
発見者である民俗学者・秋月零時(あきつき れいじ)の名を取り「秋月文書(あきつきもんじょ)」と名付けられた古文書をはじめ、「富嶽文書(ふがくもんじょ)」「比良坂暦(ひらさかこよみ)」「サタナハマアカ」の計四書に、アリステラについての記述がある。
いずれもわずか数百年前のことが、わざわざ漢字伝来以前の古代日本で使用されていたとされる「神代文字」にて記されているのが特徴であり、秋月零時ら発見者たちによって現代語訳されている。
使用された神代文字は、仮にそれが本当に存在したならば、日本の歴史に空白の四世紀などという時代が存在することや、わざわざ漢字を輸入し、漢字を元に仮名を作るようなまねを何故したのかという疑問が生じる。
そのため、研究者たちの多くは神代文字についてその存在自体に否定的立場であり、神代文字で書かれた古文書はすべて偽書であるとする見方が根強い。
このように偽書の疑いが非常に高い四書であるが、発見された場所がそれぞれ異なるわりに(本州で2書、四国で1書、九州で1書、発見されている)、アリステラについての記述は非常に似通っている。
いずれの古文書も、アリステラが大陸全土を支配できたのは、数人の巨人の戦士を有していたためとある。書によってその人数はまちまちである。
首都ノアレスをはじめ、主要な都市には、その巨人たちが使用したとされる天にも届くほど巨大な槍が大地に突き立てられていたという。
天まで届くほどとは、長さにして数千メートルはあると思われるが、仮に5000メートルとした場合、通常の槍を2.5メートルとするならば200倍の長さである。
それを扱う巨人の身長もまた人の200倍だとするなら、その身長は3~4000メートルとなり、あまりに荒唐無稽な数字である。
また、その槍は戦いを終えた巨人たちの墓標であり、大地の下には巨人たちの死体が埋まっているのだという。
そのためアリステラは土地が肥え、緑豊かな大地は飢饉を知らず、農作物が毎年よく取れ、家畜もよく育ったとある。
昭和後期になると、かつて秋月零時らの元で学んだ藤南敬寛(ふじなみ けいかん)らにより、あまりに不自然な時代背景と巨大すぎる巨人と槍について、新たな解釈がなされた。
アリステラが栄えた時代は、数百年前ではなく数千年前の誤りであり、紀元前5000年前後である。
大陸の国々の歴史書にその名が登場しないのは、秦の始皇帝の時代に行われた焚書により、アリステラに関する古文書がすべて失われたためである。
秋月文書をはじめとする四書は、日本国内で神代文字が使用されていた時代、空白の四世紀以前に記されたものである。
しかし、現人神であるミカドによる統治は紀元前7世紀から始まり、その歴史は高天ヶ原の神々の時代から脈々と続いているという建国神話と、神話上のミカドの時代に実際に日本を治めていた邪馬台国の存在が矛盾する。
そのため、邪馬台国について記された国内の書物は焚書の対象となったが、すべての書物を焼き払ったとは断言できず、後に発見されても読むことができないよう、神代文字の使用が禁じられた。
神代文字の読み書きができたのは朝廷のごく限られた者のみであったため、文字を失って困る者は少数の役人たちだけであった。
彼らは神代文字に代わる文字の作成を命じられたため、代用文字として漢字を取り入れることにした。
アリステラの巨人とは、強大な軍事力を比喩したに過ぎず、実際に巨人が存在したわけではない。
ただし、身長2メートル以上ある兵士を巨人と表現した可能性はある。
主要な都市に刺された槍とは、実際には槍ではなく巨大な塔であり、本当に天(宇宙)まで届く高さがあった。
槍は、超古代文明による軌道エレベーターであり、その先にはスペースコロニーが存在した。
平成の世になり、炭素年代測定によって、秋月文書をはじめとする四書はすべて昭和初期から中期に書かれたものであることが判明した。
秋月零時、藤南敬寛らの子孫・弟子らは、四書共に四世紀以前には存在しない紙に記されていたことから、炭素年代測定をするまでもなく、すべてが原本ではなく写本であるとわかっていた、と主張した。
あくまで原本でないだけであり、偽書ではないというのが彼らの主張である。
(真鶴マサト著「偽書から読み解く『アリステラ王国』」より)
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