ひとりの少女を守るために70億の命を犠牲になんてできないから、ひとりの少女を犠牲にしてみた結果、事態がさらに悪化した件。

あめの みかな

文字の大きさ
59 / 123

第7章 第4話

しおりを挟む
 ヘリコプターのドアからパイロットたちの死体らしきものが、外にふたつ放り投げられた。
 パイロットがいなくても、遣田は自分で運転が可能ということだろう。

 一条は確かヘリの運転が出来た。
 遣田ハオトは憑依した相手の記憶や能力を利用することができるのかもしれない。
 タカミが尾行に使ったドローンや監視カメラを拳銃で正確に撃ち抜いていたのも、一条の記憶や能力を利用したものだったのだろう。

「じゃあ、私は先にアリステラに行っていますね」

 その言葉は明らかに、タカミに向けてのものだった。

「本当は一条さんのふりをして、アリステラまであなた方に同行しようと思っていたのですが、その必要ももうなくなりました」

 アリステラの放送の発信源がヤルダバの首都アルコンであることもまた、遣田は一条の記憶から知ったのだろう。

「あなた方がアリステラに着く頃には、もうすべてが終わっていますよ」

 と、遣田はタカミに告げた。

 ヘリが上空に舞い上がっていく光景を、タカミはパソコンのモニター越しに見つめることしかできなかった。


 ヘリが去った後、タカミはドローンを公園に飛ばした。
 自ら出向きたいところだったが、暴徒に出くわしでもしたら、生れてこのかた殴り合いの喧嘩ひとつしたことのない自分は生きて帰れないことを彼は知っていた。真夜中に出歩けるショウゴや、数十キロ離れた土地から車でひとりやってきた一条とは違うのだ。無論、このどこからやってきたかわからない遣田という男とも。

 遣田ハオトに殺されたヘリのパイロットらふたりの所持品などを確認したかったが、ドローンにそこまでの機能はない。顔写真を撮影し、そこから彼らについて調べた。
 ふたりは千のコスモの会の後継団体のひとつ、「宇宙卵生教会」の信者だということがわかった。
 後継団体は宇宙卵生教を含め9つ存在し、それぞれ朝倉現人の子どもたちを新たな教祖としていた。しかし、宇宙卵生教は教祖不在のため後継団体として、他の8つに認められていなかった。
 そのため、朝倉現人の最後の子であるアナスタシアを教祖に担ぎ上げようとしているのだが、彼女がそれを頑なに拒んでいる、というのが現状インターネットやハッキングで入手可能な災厄前の情報だった。


 翌日の昼過ぎにはショウゴは目を覚ましたが、アナスタシアはさらに3日間眠り続けた。

 ショウゴが目を覚ました日には、タカミはマンション周辺に落ちていた一条のリュックから、彼の愛車のキーを手に入れていた。マンション周辺ですらショウゴについてきてもらわないと出歩くことができないのは情けなかったが。
 リュックのすぐそばには、一条の服や包帯なども落ちていた。
 車の運転を覚えるのには1日もかからなかった。ショウゴに教えることも出来た。
 1階ロビーのタンクローリーをマンションの外に出すのには苦労させられたが、それも何とかなった。
 丸1日爆発しなかったのだから、もう爆発することはないだろうが念のためだ。そんなことよりもアンナの遺体を弔うためということが多きかった。
 彼女の遺体を藤公園に埋葬するのは、アナスタシアが目を覚ましてからにするべきかどうか迷ったが、翌日になっても目を覚まさなかったため、ショウゴとふたりで遺体を運び埋葬した。

「ここはユワが好きだった場所なんだ」

「ユワも好きだったんですね。だったら一度くらい一緒に来ればよかった。
 俺もここには小さい頃に家族と一度だけ来たことがあって、好きだったんですよ」

 タカミは、その場所には「雨合羽の男」としてショウゴが救いたかったが救えなかった、彼やユワの中学生時代の友人や、暴徒によって一家5人を殺害された家族が眠っていることを知らされた。
 アナスタシアを教祖にしようとしている宇宙卵生教会のヘリパイロットたちもまたその場所に埋めた。

 その間、タカミはハッキングプログラム「機械仕掛けの魔女ディローネ」に、雨野市周辺にある飛行機やヘリを探させていた。
 ディローネは、パソコンやスマホをはじめとするあらゆる情報端末をハッキングし、企業や個人が所有するプライベートジェット機やヘリを数機と、運転が可能な者も何人か探し出してくれた。

 企業で所有しているのは、「ユークロニア」という時計の製造・販売をする会社だった。親会社に「スレイプニル」という企業があるようだ。
 スレイプニルとは、北欧神話の主神オーディンが駆る8本足の軍馬の名前であり、その名の通りこの会社には8つの脚となる子会社が存在し、ユークロニアはそのうちのひとつらしかった。
 雨野市周辺にあるのはユークロニアだけであり、他の7つの企業と親会社は他県にあった。

 個人では、2000年代のはじめの大規模な市町村合併で雨野市の一部となった旧・返璧隣(たまがえしのとなり)村地区にある返璧(たまがえし)家。
 ユワの友人のマヨリという女の子が、確か同じ苗字だった。
 それから、破魔矢リサ(はまや りさ)というペンネームの芥川賞作家だった。
 彼女の小説を読んだことはなかったが、話には聞いたことがあった。ショウゴやユワ、そして世界が辿るであろう未来を預言していたとしか思えない内容の小説があったことから「1000年にひとりの合法ロリ預言者」と呼ばれていた女性だ。

 企業がひとつ、個人がふたり、雨野市周辺でプライベートジェット機を所有していた。

 その情報もやはり災厄前のものだったため、一度その企業や個人の元へ足を運ぶ必要があった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。

昼寝部
キャラ文芸
 俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。  その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。  とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。  まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。  これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

処理中です...