90 / 123
第10章 第3話
しおりを挟む
「一条さんには生きていてほしかったが、あんたの不完全な憑依能力じゃ、どのみち助からなかったわけか。
アンナさんの憑依能力の方が、同じ能力でもあんたのよりよっぽど優れてたんじゃないか?
あんたがアナスタシアって呼んでるレインは、彼女に一度憑依されたが全然ピンピンしてるぞ」
タカミの挑発に、遣田はユワの顔をしかめ、彼を睨み付けた。
「あんまりユワの顔で汚い表情をしないでもらえないか。
10万年も生きていたわりには、あんたは感情のコントロールは下手らしいな。
賢者と呼ぶにはやはりふさわしくない。あんたにお似合いの称号は愚者だ」
遣田は両の手のひらに、エーテルを集めはじめた。エーテルの扱いはレインよりもはるかに長けており、一瞬で巨大な火球がふたつ手のひらの上で燃え盛った。
「タカミさん、気をつけてください。
あれはアリステラの父ブライが編み出したものの、そのあまりの威力に封印した魔法のひとつ、『業火連弾(ごうかれんだん)』です」
「ああ、確かにやばそうだな」
「その通り。さすがはアリステラの真の最後の女王、アナスタシアさんですね。なんでもよくご存知だ。
エーテルを炎に変える魔法の中で最上級とされる『インフェルノ』を2発同時に放つことができたのは、アリステラの長い歴史の中でも三人だけ。そのうちのひとりが私です」
ユワの遺体や死を冒涜されることに怒りを覚えていたのはタカミだけではなかった。
「だからどうした?」
レインの注意を聞いていたのか聞く気がなかったのか、ショウゴは彼女がエーテルから精製した日本刀「白雪」を手に、遣田に斬りかかったのだ。
ショウゴがまさか、たとえ遣田に憑依されているとはいえユワの体に斬りかかるとは、タカミもレインも思ってもいなかったことだった。
「自分がタカミさんに言われたような愚者ではなく、賢者だと証明したいのか?」
白雪はふたつの火球を真っ二つに切り裂いていた。ショウゴはユワの体には傷ひとつつけてはいなかった。
「業火連弾を切り裂いただと!?
野蛮なホモサピエンス風情にそんなことができるはずが……」
「でも、できたな。あんたは憑依能力だけじゃなく、もしかして魔法も不完全なんじゃないのか? 何もかも全部」
業火は白雪に燃え移り、炎をまとった魔法剣のようになった。
「そういえば、ゲートを作るのも、体の骨をボキボキ折らなきゃできなかったよな。レインはもっと上手にできたぞ」
ショウゴは業火白雪とでも言うべき燃え盛る刀を、遣田の顔に向けた。
「そういえば、あんたは所詮、あんたが馬鹿にする野蛮なホモサピエンスに滅ぼされたようなネアンデルタール人の出だったもんな」
遣田の顔に冷や汗が浮かんでいた。
だが、その表情にはまだ余裕があるように見えた。
この男は知っているのだ。
ショウゴにはユワの体を傷つけることはできないということを。
「あまり私を怒らせるような発言は控えた方がいいですよ。
この体は、あなたの大切な恋人だった女性の体でしょう?」
やはり、そうだった。
「それに、雨野タカミさんの大切な妹さんの体でもある。
私が小久保ハルミさんか大和ショウゴさん、アナスタシアさん、あるいは雨野タカミさん、この場にいる誰かに憑依した瞬間、あなたの大切な大切な恋人の脳が焼き切れる。
今度こそこの世界から完全にいなくなってしまうんですよ?
私が憑依し続ければ、千年細胞を持つこの体の中で、恋人さんの魂も私と共に永遠に生き続けることができるんですがねぇ」
「ユワは4年前に死んでるんだろ?
その体は、そこにいる小久保ハルミとかいう人が作った千年細胞で無理矢理蘇生させられただけで、中身は空っぽなんだってな」
気づいていましたか、と遣田は嬉しそうに笑った。
「ですが、あなたにはやはり、この体に傷をつけることはできない」
その瞬間、ショウゴの体を無数の真空の刃が襲った。
「私を先ほどちゃんと殺しておかなかいから、あなたは死んでしまうんですよ」
アンナさんの憑依能力の方が、同じ能力でもあんたのよりよっぽど優れてたんじゃないか?
あんたがアナスタシアって呼んでるレインは、彼女に一度憑依されたが全然ピンピンしてるぞ」
タカミの挑発に、遣田はユワの顔をしかめ、彼を睨み付けた。
「あんまりユワの顔で汚い表情をしないでもらえないか。
10万年も生きていたわりには、あんたは感情のコントロールは下手らしいな。
賢者と呼ぶにはやはりふさわしくない。あんたにお似合いの称号は愚者だ」
遣田は両の手のひらに、エーテルを集めはじめた。エーテルの扱いはレインよりもはるかに長けており、一瞬で巨大な火球がふたつ手のひらの上で燃え盛った。
「タカミさん、気をつけてください。
あれはアリステラの父ブライが編み出したものの、そのあまりの威力に封印した魔法のひとつ、『業火連弾(ごうかれんだん)』です」
「ああ、確かにやばそうだな」
「その通り。さすがはアリステラの真の最後の女王、アナスタシアさんですね。なんでもよくご存知だ。
エーテルを炎に変える魔法の中で最上級とされる『インフェルノ』を2発同時に放つことができたのは、アリステラの長い歴史の中でも三人だけ。そのうちのひとりが私です」
ユワの遺体や死を冒涜されることに怒りを覚えていたのはタカミだけではなかった。
「だからどうした?」
レインの注意を聞いていたのか聞く気がなかったのか、ショウゴは彼女がエーテルから精製した日本刀「白雪」を手に、遣田に斬りかかったのだ。
ショウゴがまさか、たとえ遣田に憑依されているとはいえユワの体に斬りかかるとは、タカミもレインも思ってもいなかったことだった。
「自分がタカミさんに言われたような愚者ではなく、賢者だと証明したいのか?」
白雪はふたつの火球を真っ二つに切り裂いていた。ショウゴはユワの体には傷ひとつつけてはいなかった。
「業火連弾を切り裂いただと!?
野蛮なホモサピエンス風情にそんなことができるはずが……」
「でも、できたな。あんたは憑依能力だけじゃなく、もしかして魔法も不完全なんじゃないのか? 何もかも全部」
業火は白雪に燃え移り、炎をまとった魔法剣のようになった。
「そういえば、ゲートを作るのも、体の骨をボキボキ折らなきゃできなかったよな。レインはもっと上手にできたぞ」
ショウゴは業火白雪とでも言うべき燃え盛る刀を、遣田の顔に向けた。
「そういえば、あんたは所詮、あんたが馬鹿にする野蛮なホモサピエンスに滅ぼされたようなネアンデルタール人の出だったもんな」
遣田の顔に冷や汗が浮かんでいた。
だが、その表情にはまだ余裕があるように見えた。
この男は知っているのだ。
ショウゴにはユワの体を傷つけることはできないということを。
「あまり私を怒らせるような発言は控えた方がいいですよ。
この体は、あなたの大切な恋人だった女性の体でしょう?」
やはり、そうだった。
「それに、雨野タカミさんの大切な妹さんの体でもある。
私が小久保ハルミさんか大和ショウゴさん、アナスタシアさん、あるいは雨野タカミさん、この場にいる誰かに憑依した瞬間、あなたの大切な大切な恋人の脳が焼き切れる。
今度こそこの世界から完全にいなくなってしまうんですよ?
私が憑依し続ければ、千年細胞を持つこの体の中で、恋人さんの魂も私と共に永遠に生き続けることができるんですがねぇ」
「ユワは4年前に死んでるんだろ?
その体は、そこにいる小久保ハルミとかいう人が作った千年細胞で無理矢理蘇生させられただけで、中身は空っぽなんだってな」
気づいていましたか、と遣田は嬉しそうに笑った。
「ですが、あなたにはやはり、この体に傷をつけることはできない」
その瞬間、ショウゴの体を無数の真空の刃が襲った。
「私を先ほどちゃんと殺しておかなかいから、あなたは死んでしまうんですよ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
少しの間、家から追い出されたら芸能界デビューしてハーレム作ってました。コスプレのせいで。
昼寝部
キャラ文芸
俺、日向真白は義妹と幼馴染の策略により、10月31日のハロウィンの日にコスプレをすることとなった。
その日、コスプレの格好をしたまま少しの間、家を追い出された俺は、仕方なく街を歩いていると読者モデルの出版社で働く人に声をかけられる。
とても困っているようだったので、俺の写真を一枚だけ『読者モデル』に掲載することを了承する。
まさか、その写真がキッカケで芸能界デビューすることになるとは思いもせず……。
これは真白が芸能活動をしながら、義妹や幼馴染、アイドル、女優etcからモテモテとなり、全国の女性たちを魅了するだけのお話し。
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム
ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。
けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。
学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!?
大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。
真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる