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教会へ
しおりを挟む教会への道、そして運命の儀式へ…
俺は無事、元気復活!であると母上へ示すことができ適正属性を調べに行くことができることとなった。
馬車が揺れるたびに、革張りの座席が微かに軋む。正面には、優しく微笑む両親の姿があった。
「キート、本当に嬉しいわ。あなたが魔術を学ぶと言ってくれた時、正直、驚いたけれど……あの時はごめんなさいね。貴方から聞くことはないと思っていた魔術を学びたいという言葉が出てきて、まだ体調が悪いとつい疑ってしまっていたわ。でも体調が治った今日も魔術を学びたいという強い意志を貴方から感じるわ」
「ああ、俺もまさかキートから魔術を学びたいとは聞くとは思わずお前の本心からの言葉と信じていなかった…お前の決意を聞くまではな、すまなかったな」
「いえ、私も魔術は学ばないと言っていた人間が倒れてから突然魔術を学びたいとか言い出したら信じれませんよ。それにしても…ふふふっ。2人して大声で医者を呼ぼうとするのだから、驚きましたよ」
母が、俺の手をそっと握りしめる。母の髪はまるで雪解け水のように薄い氷色で、彼女の属性、氷とぴったり一致する。俺が魔術を学びたいと告げた昨日、両親は驚きつつも心から喜んでくれた。特に、代々剣士として名高いルベル家の次期当主である俺が、魔術を学ぶことは、更にこの国を守護する力を強めるからというのもあるかもしれない。
「ふふふっ。本当に驚いたのよ。咄嗟に医者を呼ぼうとしていたわ。それにしてもキートの適正属性はなにかしらね。私は氷属性だから、同じだったら教えやすくて嬉しいわね。そうでなくてもしっかりと教え込むけど」
「しかし、我がルベル家は代々火属性。私も火属性だ。キートも俺譲りの燃えるような真っ赤な髪と瞳を持っている。きっと火属性だろうが、そうでなくとも、お前が魔術を学んでくれるだけで、父としてもルベイ家当主としても、これ以上の喜びはない」
「そうね、何属性であろうと…たとえ属性を授かっていなかったとしても大切な息子よ」
力強い父の声と母上の優しい眼差しに、俺は胸が熱くなった。
「ありがとうございます…とても嬉しいです。私も2人が大切で誇り高き両親です」
(ああ、なんて温かいんだろう)
キートの家族は、こんなにも温かく俺を愛してくれていた。その記憶があるからこそ、俺はこの世界で迷うことなく、推しを救うという道を選べたのかもしれない。彼らはキートのことを大切に思い、俺のためなら全力で手を差し伸べてくれる。そんな両親の元へ生まれてきたことをとても幸せに思う。
家族の温かさを改めて認識しつつ、適正属性について前世でのゲームの記憶を含めつつ整理する。先程父上がおっしゃっていたとおり、髪や瞳の色に適正属性は大きく関わってくる。なので、真っ赤な髪と瞳を持つ俺は火属性の可能性が高いのではないか、ということだ。それか、何も持たない無属性か…そうなると魔術を学ぶのはなかなか厳しい。
しかし、例外も存在した。
俺が前世で熱中したBLゲームの主人公と、その双子の兄である俺の推し。彼らは元々、顔も髪も瞳もそっくりで、父親譲りの風属性を示す薄緑の髪と瞳を持っていた。だが、魔術の適性属性を調べに行った日を境に、誰も彼らを見間違えなくなった…
なぜなら、主人公の髪と瞳は光を宿した金色に、そして俺の推しの髪と瞳は、闇を湛えた漆黒に変化したからだ。
これが、彼らが双子でありながら、運命が分かたれる始まりだった。
主人公は光の属性を授かり、周囲から愛され大切にされた。
一方、推しは闇の属性を授かり、周りから嫌われ、避けられるようになった。
たかが、髪と瞳の色が違うだけだろう?そう思うかもしれない。だが、この世界には大昔から根強く残る固定概念がある。それは、闇属性は悪であり、周りを不幸にするという、真偽不明の馬鹿げた言い伝えだ。
彼の家族が彼がどんなに優しい性格で、家族がどれほど幸せであると訴えたところで、周りは「洗脳されている」「脅されている」と決めつけ、誰も彼らの言葉を信じなかった。
ゲームで描かれていた推しの絶望、孤独…
(それでも俺は、彼を信じるよ)
どんなに世界が彼を否定しても、ゲーム越しに見た彼の辛そうな瞳が忘れられない。
俺が彼の隣で、二人で笑い合える未来を掴む。そして、周りの馬鹿げた固定概念をぶっ壊してやる!
絶対に彼を救う。
再び、心に強い決意をみなぎらせると、馬車がゆっくりと止まった。馬車を降りて見上げると、神聖な空気を纏う教会の巨大な扉が目の前にそびえ立っている。
扉をくぐると、ひんやりとした空気が俺の肌を包んだ。ステンドグラスから差し込む光が、床に虹色の模様を描き、その先には純白の祭壇と、慈愛に満ちた表情をした神像が鎮座している。
既に何人かの人々が、儀式を終えていた。
「よかった!お母様と同じ、水属性でしたわ!」
「俺は土属性!父さんの跡を継ぐことができそうだ!」
安堵と歓喜の声が、堂内に響く。一方で、期待とは違う結果が出たのだろうか、落胆した表情で教会を後にする家族もいた。
(もし、適正属性がなかったら……?)
突然、不安が胸をよぎる。いくら必死に魔術の勉強をしても、適性属性がなければ魔術師として生きていくことはできない。
(もしそうなったら、俺はどうやって彼を救えばいい?)
剣術だけでは、ゲームの強制力に抗うことはできないだろう。というかそもそも魔術学園に通えるかも怪しくなる。あの、絶望に満ちた結末を、再び見ることになるのか?
…いや、そんなことは絶対にさせない。
彼を救うために、俺はこの世界へ来れたに違いないと思っている。
ーー神様、もし本当にいるのなら、どうか俺に力をください。
そう心の中で強く祈っていると、神官が俺の名を呼んだ。
「キート・ルベル様、こちらへ」
全身から緊張が走る。ついに、俺の番だ。
祭壇へと続く道を一歩ずつ進む。父と母が、心配と期待の入り混じった表情で俺を見つめているのが分かった。
神像の前に立つと、神官が恭しく言った。
「さあ、神像に手をかざし、あなたの魂に宿る魔術の属性を明らかになさい」
俺は大きく息を吸い込み、神像へと手を伸ばした。ひんやりとした石の感触が、手のひらに伝わる。
そして、神官の指示に従い、ゆっくりと瞳を閉じた。
心臓がドクドクと高鳴り、全身の血が熱を帯びていくようだ。
(俺の適正属性が、彼を救う鍵になりますように…神様お願い!)
強く、強く念じる。この身体に宿る魔力が、今、試されようとしていた。
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