断罪されるはずの推し(悪役令息)を、俺が全力で幸せにしてみせます

月乃

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運命の光

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俺はゆっくりと目を閉じた。

神像に手をかざし、心臓が高鳴るのを感じる。体中の血が熱を帯び、全身の魔力が一か所に集まっていくようだ。


(どうか彼を救う力を…!)


強く、強く念じる。もし、この身に魔術の適性がなかったら、どうやって推しを救えばいいのか。そんな不安を打ち消すように、俺はただひたすら、力が欲しいと祈り続けた。

その祈りが届いたのだろうか。
手をかざしている神像から、優しい光が溢れ出し俺を温かく包んだように感じた。そして、俺の体の奥底に眠っていた魔力が、まるで水を得た魚のように活発に動き出すのを感じた。


「こ、これは……」


神官が驚きの声を上げる。
だが、その声はすぐに、ざわめきとどよめきに変わった。
何が起こったのか。不安と期待が入り混じったまま、俺はゆっくりと目を開けた。
最初に目に飛び込んできたのは、驚愕の表情を浮かべる神官と、祭壇からふよふよと離れた場所で宙に浮く、二つの眩い光の球だった。
熱く燃えるような赤色の球と、暖かく包み込むような金色の球。


「火属性と……光属性……!二つの属性を宿しただと……!?」


神官が、信じられないものを見たかのように声を震わせた。
その言葉に、俺は思わず息をのんだ。火属性は予想していたが、光属性……?
俺の脳裏に、前世のゲームの記憶が蘇る。
光属性は、この世界でゲームの主人公だけが持つ、特別な属性だったはずだ。


「なんと、光属性が、この時代に二人も発現するとは……!この世界の歴史上、前例がありません……!」


その言葉に、ざわめきはさらに大きくなった。
俺になぜ光属性が?…まさか、俺が転生者だからかだろうか。
俺がこの属性を得たのは、何かの運命の示唆なのだろうか。神が、俺に推しを救うための使命を与えたということか?
俺が何が起きているのか事態を飲み込めず呆然としていると、少し離れたところで見守ってくれていた母が駆け寄ってきた。感嘆の息を漏らし、俺の顔にそっと触れた。


「キート、あなたの瞳が……!」


俺の瞳は、燃えるようなルベル家伝統の赤色だったはず。何が変わったというんだ?


「真っ赤な瞳も好きだけど、金色になったあなたの瞳も……とっても綺麗だわ」


母の言葉に、父も大きく頷いた。


「ああ、実に美しい……。まさか、キートが光属性を持つとは……。歴史上でも珍しい光属性を持ち、二つの属性を持つ者は初だ。今後キートしかいないかもな。実に誇らしいぞ、我が息子よ……!これで更に強くなれる」

父の声は興奮に満ちていた。

瞳の色を確認したく、鏡が欲しいと思っているとルベル家の優秀な執事が手鏡を渡してくれた。そこには、赤色と金色の光を宿した、まるで宝石のような瞳を持つ俺がいた。
確かに、瞳の色が、燃えるようなルベル家の色から、まばゆい金色へと変わっている。


「キート、本当にすごいわ!火属性で戦って、光属性で治せるなんて……あなた、もう敵なしね!」


お茶目な笑顔で、嬉しそうに母が俺を抱きしめる。
 

「ははっ、本当にそうだ!剣に火を纏わせると、それはもうかっこよくて強くなる。母上からの魔術特訓を終えたら、父が直々に剣と炎の特訓をつけてやる。覚悟しておけ!」


父もまた、最高の笑顔で俺の肩を叩いた。

俺の属性が光属性だと分かっても、両親は全く動じることなく、ただただ俺の才能を喜んでくれている。この家族の温かさが、俺の心に安らぎを与えてくれた。

その後、俺は神官から別室に案内された。

「キート・ルベル様、この度は大変おめでとうございます。光属性は大変希少な属性でございます。この国で発現した者は、貴方が2人目。光属性の魔術についての文献も、非常に少ないのが現状です。よろしければ、今まで光属性を持っていた方が綴られた魔術文献の写しを差し上げます。今後の魔術の習得にお役立てください」


そう言って神官が差し出したのは、羊皮紙で作られた、ずっしりと重い書物だった。
それは、ゲームの世界の主人公が光属性の魔術を習得する際にもらったものと、まったく同じものだった。
やはり、俺が光属性を持ったのは、この世界で主人公の役割を担うということなのだろうか。
いや、違う。俺の目的は、主人公に成り代わることじゃない。
推しを救うことだ。
この光の力を、彼のために使う。
この力は、きっとそのためのものだ。
俺はしっかりとその書物を受け取ると、もう一度強く心に誓った。


「ありがとうございました。この書物は、大切にいたします」


俺は丁寧に頭を下げた。
こうして、俺の適性属性を調べる儀式は終わった。
外に出ると、太陽の光が一段と眩しく感じられた。

いくら強い属性を持っていようとも使いこなせなければ意味がない。母と父という素晴らしい講師のもとでゲームの世界へ行く前に強くなっておかなければならない。どのような脅威にも立ち向かえる力を身につけておかなければ…
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