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入学式、そして…
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本日は待ちに待った入学式。
真新しい制服に身を包んだ学生たちが、期待に胸を膨らませた表情で通り過ぎていく。彼──俺の推し、が悪役として断罪される魔術学園に、ついに俺も足を踏み入れたのだ。彼はいつ来るのだろうか…と、ソワソワしながら門の前で人波を目で追ってしまう。
(ねえ、あれキート様じゃない?)
(わっ、ほんと!あの噂本当だったんだ!キート様絶対、士官学校に通われると思ったのに……!)
(まさか、キート様までこちらの学園にいらっしゃるなんて。目の保養だらけで幸せですわ♡)
ふむ、なんだか凄くチラチラ見られているような気がする。しかも、やたらと頬を染めている女子生徒が多いのは気のせいだろうか? まあ確かにあの剣術筋肉バカな俺、キート・ルベルが魔術学園に通うなんて驚きだよな~、……俺のことなんだけど。
前世の記憶が蘇える前は、身体能力や剣術に特化していたが、推しを救うためにこの魔術学園へ入学する為必死に魔術の勉強をした。母上に魔術をこれでもかと叩き込まれたお陰だな…
その甲斐あって、無事、この学園に入学できたのだ。
「やあ、キート!おはよう。君と魔術学園に通えるなんて、本当に嬉しいよ。もしかして、私のことを待っていてくれたのかい?」
母上の地獄の様な訓練を思い出し遠い目をしていた俺にかけられた声の方へ意識を向けるとそこにいたのは、ゲーム中では主人公のことしか見えていない最悪の腹黒王子だったはずの、第一王子ライオネル殿下だ。ゲームの記憶を辿ると、俺の推しを悪だと決めつけ、断罪に加担した憎き相手。しかし、キートの記憶を覗く限り、欠点が一つもないくらい素晴らしく、誰に対しても平等で公平な、完璧な王子として映っている。なぜ彼はゲームであんな風になってしまったのか……ゲームの強制力か?それとも、主人公が持つ特殊な魅力の魔術か?まさか、俺の推しが本当に虐めていた、なんてことはないだろうが……それをこの目で確かめ、彼を幸せにするために、俺はここに来た。
「殿下、おはようございます。私も殿下と共に魔術を学ぶ日が来るとは思いませんでした。殿下を待っていた、と申しますか……いえ、お待ちしておりました。さあ、入学式に向かいましょう!」
待っていたのは殿下じゃなくて推しなんだけどな…まあ、殿下との仲を深めておくのも彼を護ることに繋がるかもしれない。
「なんだか、間があったが、まあいい。君が魔術学園に来ることになった訳を、向かいながら聞くとしよう」
ライオネル殿下は楽しそうに微笑んだ。その完璧な笑顔の裏に、あのゲームでの残忍な顔が潜んでいるのかとついつい思ってしまう。だが、今はまだ、その気配すら感じられない。
「はい、かしこまりました」
私たちは並んで入学式場へ向かった。
式典が始まると、俺はライオネル殿下の隣に座った。周囲の学生たちは、噂のルベル家の子息を興味津々に見てくるが、俺はそれどころではなかった。壇上で話す学園長の声も、耳には入らない。俺の目は、ひたすら、推しの姿を探していた。
ゲームでは、主人公と推しは、入学式に遅れて到着する。そして、彼らが姿を見せると、会場の雰囲気が一変するのだ。
そして、その瞬間は突然やってきた。
式典の扉が、ゆっくりと開く。
「……あれは?」
誰かがそう呟くと、会場のざわめきが、まるで波のように広がっていく。
キートの視線の先には、二人の人物が並んで立っていた。
一人は、金色の髪と瞳を持つ、眩いほどの美青年。
そして、その隣には、彼と瓜二つなのに、まるで夜を閉じ込めたような漆黒の髪と瞳を持つ青年。
(あれは……!)
俺の心臓が、ドクンと大きく鳴った。
ゲームの主人公と、俺の推し。彼らだ。
会場のざわめきは、次第に二つの異なる声に分かれていく。
「きゃー!あれが、噂の光属性の…!」
「なんて美しい……!まるで天使みたい……」
「やっぱり、光属性は違うわね!光属性を持っているだけで、あんなに神々しく見えるなんて……」
光属性の主人公に向けられるのは、憧れと羨望の眼差し。その視線は熱く、まるで崇拝しているかのようだった。
一方、俺の推しに向けられているのは、まったく異なる視線だった。
「な、なんだあの黒い髪は……?」
「闇属性……?まさか、本当にいるなんて……」
「やだ、不吉だわ……近づかないでおきましょう」
周囲の学生たちは、まるで汚いものでも見るかのように、推しから遠ざかっていく。彼らの間には、目に見えない壁が築かれていくようだった。
たかが、髪と瞳の色が違うだけだろう?そう思うかもしれない。だが、この世界には大昔から根強く残る固定概念がある。それは、闇属性は悪であり、周りを不幸にするという、真偽不明の馬鹿げた言い伝えだ。
ゲームで見た、この光景。
これが、彼が世界から理不尽に断罪される、最初の第一歩。
俺は、震える拳を強く握りしめた。
俺の愛する推しが、世界から嫌われ、遠ざけられる姿はもう二度と見たくない。
俺は、焦りで心臓をバクバクさせながらも、ライオネル殿下に小声で尋ねた。
「殿下、恐れ入りますが、あの二人…入学式の始まりに間に合わなかったようですが、席が見つからないようでしたら、こちらの隣にお誘いしてもよろしいでしょうか?」
ライオネル殿下は、俺の言葉に驚いた表情を浮かべた。
「キートが、彼らに……?」
殿下は、俺の真意を測ろうとするかのように俺の瞳をじっと見つめた。それは、一瞬のことでいつもの完璧な笑顔に戻り優しく言った。
「構わないよ。キートがそうしたいなら、ね。それに、私の周りは空席が多いから、ちょうど良いだろう」
「ありがとうございます!」
俺は、殿下の言葉に感謝しながら、双子の方へ向かって一歩踏み出した。
双子は、不安げな表情で会場を見回していた。特に、漆黒の髪を持つ俺の推しは、周りの学生たちが遠ざかる様子に、俯き加減になっていた。
俺は、彼らの目の前まで歩み寄り、笑顔で話しかけた。
「入学式に間に合わないと、焦りますよね。席が見つからないようでしたら、こちらの隣が空いています。よろしければ、一緒にいかがですか?」
俺は、ライオネル殿下と自分の席を指差した。
双子の二人が、驚いた表情で俺を見上げた。
彼らの瞳は、期待と警戒が入り混じっていた。
真新しい制服に身を包んだ学生たちが、期待に胸を膨らませた表情で通り過ぎていく。彼──俺の推し、が悪役として断罪される魔術学園に、ついに俺も足を踏み入れたのだ。彼はいつ来るのだろうか…と、ソワソワしながら門の前で人波を目で追ってしまう。
(ねえ、あれキート様じゃない?)
(わっ、ほんと!あの噂本当だったんだ!キート様絶対、士官学校に通われると思ったのに……!)
(まさか、キート様までこちらの学園にいらっしゃるなんて。目の保養だらけで幸せですわ♡)
ふむ、なんだか凄くチラチラ見られているような気がする。しかも、やたらと頬を染めている女子生徒が多いのは気のせいだろうか? まあ確かにあの剣術筋肉バカな俺、キート・ルベルが魔術学園に通うなんて驚きだよな~、……俺のことなんだけど。
前世の記憶が蘇える前は、身体能力や剣術に特化していたが、推しを救うためにこの魔術学園へ入学する為必死に魔術の勉強をした。母上に魔術をこれでもかと叩き込まれたお陰だな…
その甲斐あって、無事、この学園に入学できたのだ。
「やあ、キート!おはよう。君と魔術学園に通えるなんて、本当に嬉しいよ。もしかして、私のことを待っていてくれたのかい?」
母上の地獄の様な訓練を思い出し遠い目をしていた俺にかけられた声の方へ意識を向けるとそこにいたのは、ゲーム中では主人公のことしか見えていない最悪の腹黒王子だったはずの、第一王子ライオネル殿下だ。ゲームの記憶を辿ると、俺の推しを悪だと決めつけ、断罪に加担した憎き相手。しかし、キートの記憶を覗く限り、欠点が一つもないくらい素晴らしく、誰に対しても平等で公平な、完璧な王子として映っている。なぜ彼はゲームであんな風になってしまったのか……ゲームの強制力か?それとも、主人公が持つ特殊な魅力の魔術か?まさか、俺の推しが本当に虐めていた、なんてことはないだろうが……それをこの目で確かめ、彼を幸せにするために、俺はここに来た。
「殿下、おはようございます。私も殿下と共に魔術を学ぶ日が来るとは思いませんでした。殿下を待っていた、と申しますか……いえ、お待ちしておりました。さあ、入学式に向かいましょう!」
待っていたのは殿下じゃなくて推しなんだけどな…まあ、殿下との仲を深めておくのも彼を護ることに繋がるかもしれない。
「なんだか、間があったが、まあいい。君が魔術学園に来ることになった訳を、向かいながら聞くとしよう」
ライオネル殿下は楽しそうに微笑んだ。その完璧な笑顔の裏に、あのゲームでの残忍な顔が潜んでいるのかとついつい思ってしまう。だが、今はまだ、その気配すら感じられない。
「はい、かしこまりました」
私たちは並んで入学式場へ向かった。
式典が始まると、俺はライオネル殿下の隣に座った。周囲の学生たちは、噂のルベル家の子息を興味津々に見てくるが、俺はそれどころではなかった。壇上で話す学園長の声も、耳には入らない。俺の目は、ひたすら、推しの姿を探していた。
ゲームでは、主人公と推しは、入学式に遅れて到着する。そして、彼らが姿を見せると、会場の雰囲気が一変するのだ。
そして、その瞬間は突然やってきた。
式典の扉が、ゆっくりと開く。
「……あれは?」
誰かがそう呟くと、会場のざわめきが、まるで波のように広がっていく。
キートの視線の先には、二人の人物が並んで立っていた。
一人は、金色の髪と瞳を持つ、眩いほどの美青年。
そして、その隣には、彼と瓜二つなのに、まるで夜を閉じ込めたような漆黒の髪と瞳を持つ青年。
(あれは……!)
俺の心臓が、ドクンと大きく鳴った。
ゲームの主人公と、俺の推し。彼らだ。
会場のざわめきは、次第に二つの異なる声に分かれていく。
「きゃー!あれが、噂の光属性の…!」
「なんて美しい……!まるで天使みたい……」
「やっぱり、光属性は違うわね!光属性を持っているだけで、あんなに神々しく見えるなんて……」
光属性の主人公に向けられるのは、憧れと羨望の眼差し。その視線は熱く、まるで崇拝しているかのようだった。
一方、俺の推しに向けられているのは、まったく異なる視線だった。
「な、なんだあの黒い髪は……?」
「闇属性……?まさか、本当にいるなんて……」
「やだ、不吉だわ……近づかないでおきましょう」
周囲の学生たちは、まるで汚いものでも見るかのように、推しから遠ざかっていく。彼らの間には、目に見えない壁が築かれていくようだった。
たかが、髪と瞳の色が違うだけだろう?そう思うかもしれない。だが、この世界には大昔から根強く残る固定概念がある。それは、闇属性は悪であり、周りを不幸にするという、真偽不明の馬鹿げた言い伝えだ。
ゲームで見た、この光景。
これが、彼が世界から理不尽に断罪される、最初の第一歩。
俺は、震える拳を強く握りしめた。
俺の愛する推しが、世界から嫌われ、遠ざけられる姿はもう二度と見たくない。
俺は、焦りで心臓をバクバクさせながらも、ライオネル殿下に小声で尋ねた。
「殿下、恐れ入りますが、あの二人…入学式の始まりに間に合わなかったようですが、席が見つからないようでしたら、こちらの隣にお誘いしてもよろしいでしょうか?」
ライオネル殿下は、俺の言葉に驚いた表情を浮かべた。
「キートが、彼らに……?」
殿下は、俺の真意を測ろうとするかのように俺の瞳をじっと見つめた。それは、一瞬のことでいつもの完璧な笑顔に戻り優しく言った。
「構わないよ。キートがそうしたいなら、ね。それに、私の周りは空席が多いから、ちょうど良いだろう」
「ありがとうございます!」
俺は、殿下の言葉に感謝しながら、双子の方へ向かって一歩踏み出した。
双子は、不安げな表情で会場を見回していた。特に、漆黒の髪を持つ俺の推しは、周りの学生たちが遠ざかる様子に、俯き加減になっていた。
俺は、彼らの目の前まで歩み寄り、笑顔で話しかけた。
「入学式に間に合わないと、焦りますよね。席が見つからないようでしたら、こちらの隣が空いています。よろしければ、一緒にいかがですか?」
俺は、ライオネル殿下と自分の席を指差した。
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彼らの瞳は、期待と警戒が入り混じっていた。
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