断罪されるはずの推し(悪役令息)を、俺が全力で幸せにしてみせます

月乃

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光と闇、共鳴の始まり

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 昨日の殿下との話し合いでウィルの光属性の強化をサポートして欲しいとお願いがあり、もちろん全力でウィルと切磋琢磨しながら光属性の開花の手伝いをするつもりだ。


 しかし、俺の力だけでは、限界がある。そんな中、待ちに待った「適性属性魔術」の授業が始まった。
 この授業では、生徒それぞれの適性属性に合わせて、魔術の習得方法を学んでいく。俺は火も大切だが光属性の方が力をつけたいため主に光属性の授業を受けたいと申告してある。クラスメイトたちは、火や水、風、土といった一般的な属性別にグループを組んで、それぞれ教官の指導を受けていた。しかし、俺たち光と闇属性持ちの3人だけは、違った。



「キート、ウィル、そしてフィル。君たちは、私と一緒に来てくれ」



担当教官の声に、俺たちは顔を見合わせた。俺たち3人だけが、教官に連れられて、教室を後にした。
 案内されたのは、他の生徒が入ることができない、特別に設けられた個室だった。中に入ると、教官が真剣な表情で俺たちに向き合った。


「自己紹介から行おう。私の名前はレオニード・ヴァルマール。教官の中なら1番の古株だ。
 君たち3人が持つ属性は、この国でも極めて希少なものだ。そのため、適正者は残念ながら教官の中にはいない。私は魔術理論の探究において、学院で最も経験を積んでいるにすぎん。だからこそ、君たちの指導役に選ばれたのだ。未知の領域を前にしても、冷静に観察し、導けると判断された。これからよろしく頼む」



 レオニード教官はそう言うと、部屋の中央にある祭壇のような台座を指差した。そこには、光を放つ光の水晶と、闇を湛える闇の水晶が置かれていた。


「まず、魔術の基本概念について話そう。魔術とは、自然界の力を理(ことわり)に従い、意志をもって扱う術である。  
その力は単独で存在することもできる。周囲の環境、己の精神、――全てが絡み合って初めて、真の力となる魔力は、他の属性と互いに共鳴することで、より強力になる。しかし、同じ時代に光と闇の使い手が存在したことがないため、その共鳴がどうなるかは未知数だ」


 ゲームでも光と闇の共鳴についての話は出てきた。ーーしかし、それは成功できずに未知の力として終わってしまったのだ。この初めての適正属性魔術の授業で事件が起きてしまったからだ…



「だが、共鳴は魔術を極めた先にあるもの。まずは、魔力同士が互いに引き寄せ合うという、ごく初期の段階を試してもらう。ウィルとキートは光の水晶に、フィルは闇の水晶に触れてみてくれ。この水晶は、魔術基礎学で扱う水晶よりも自分の魔力が分かりやすくなっておる」



俺とウィルが光の水晶に触れると、水晶は眩い光を放ち、暖かな光が俺たちの体を包み込んだ。その光は、俺たちの体の中にある魔力と呼応し、魔力の流れをより明確に感じさせてくれた。



「すごい…!僕の体が、光に満たされていくみたいだ…」


ウィルは、感動したように呟いた。


「次に、フィル。君は、闇の水晶に触れてくれ」



フィルは、少し躊躇いながらも、闇の水晶に手を伸ばした。フィルが触れると、水晶は深い闇を放ち、ひんやりとした冷気がフィルを包み込んだ。


「ひっ…!」


フィルは、驚いて手を引っ込めた。


「大丈夫だよ、フィル。闇は、怖いものじゃない」


俺はそう言って、フィルの手を握った。俺の光の魔力が、フィルの手を伝わって、彼の体を優しく包み込む。

(やべっ、ナチュラルに触ってしまった。ドン引きされては…ないな、よし)

「キート様…ありがとう」


 フィルは、安心したように、再び闇の水晶に触れた。今度は、怯えることなく、闇の冷気を受け入れていた。


「素晴らしい。次の段階に移ろう。ウィルとフィル。君たちには、それぞれ自分の魔力と、相手の魔力を感じ取ってもらいたい。キートは、二人をサポートしてくれ」


レオニード教官の言葉に、ウィルとフィルは、向かい合い手を握り合って座った。


「フィル、目を閉じて、自分の光の魔力を感じてみてくれ。そして、フィルの闇の魔力を感じ取ってみてくれ」

ウィルは言われた通りに目を閉じた。


「光の魔力は、暖かい光の粒子の集合体だと思ってくれ。そして、フィルの闇の魔力は、冷たい闇の粒子の集合体だと思ってくれ。その二つの粒子が、互いに引き寄せられる感覚を掴むんだ」


ウィルは、しばらく目を閉じていたが、やがて、その額から汗が流れ出した。


「ダメだ…分からない…」


ウィルが弱音を吐いた、その時だった。


「ウィル…」


フィルの声が、静かに響いた。


「僕の闇の魔力は、怖いものじゃない。僕を、信じて…」



 フィルの言葉に、ウィルは決意が固まったようで頷きもう一度目を閉じた。ウィルの光の魔力と、フィルの闇の魔力が、互いに引き寄せられる。すると、ウィルから、小さな光の粒が溢れ出した。しかし、まだ弱々しく、フィルの闇の力が上回りそうになった瞬間、俺は二人の手の上に自分の手を重ねた。光の魔力を注ぎ込み、均衡を保つ。

――前世で見た光と闇の共鳴の失敗。
 ゲームの中では、ここでフィルの闇が強すぎたことで爆発が起き、ウィルは倒れ、教官も共鳴の話を二度と口にしなかった。そして、周囲からも更に避けられる原因となった、希望は幻のままだった。

…だが、今は違う。俺がいる。

「2人とも、恐れないで。俺が支える」 

熱を帯びた光がウィルの胸奥に流れ込み、フィルの闇とぶつからずに光の力も強くなったのを感じ手を離した。
二人の魔力が互いに引き寄せ合い、部屋の中央に淡い輝きが生まれる。 

「成功だ……!二人の魔力が安全に、互いを感じ取ることができたようだな」


教官が感心したように呟いた。


「しかし、キートがいなければ2人の力差により大変なことになっていたかもな。別室を用意しておいて良かった。ふむ、光と闇が混ざり合うとあんなにも眩しい光になるのだな。つまりは、共鳴しあうと光属性の強化された魔術が使えるということか?しかし闇属性の要素がないとおかしいよな……」

 ぶつぶつと言いながら、レオニード教官は自分のワールドに入ってしまった。この様子じゃしばらく戻ってこないかもな。
 ウィルとフィルは互いに顔を見合わせ、小さく笑う。

「……魔術バカだな、先生」

「ふふっ本当だね。さっきの冷静さはどっかに言行ってしまったみたい…でも、この人だから、僕たちも事故なくお互いの魔力を無事感じ取れたと思うな。勿論キートのサポートが1番だけどね。ありがとう、キート様」

「僕からもありがとね、キート様」

2人がそう言って、俺に微笑んだ。

「どういたしまして、何事もなくて良かったよ」

 俺は、この瞬間を一生忘れないだろう。ウィルとフィルの魔力が、初めて引き寄せ合い、新たな可能性を生み出した、この瞬間を。
 この日から、俺たち3人の特訓は、さらに本格的なものへと変わっていった。俺は、ウィルとフィルがそれぞれの魔力を、より深く理解できるようにサポートした。そして、俺たち3人の絆は、より一層深まっていった。
 


 ーーこの特訓が、今後の俺たちの運命を大きく左右するとは、この時の俺たちは、まだ知る由もなかった。
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