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一抹の希望(フィル視点)
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僕、フィルは闇属性持ちだ。この世界では、闇属性は不吉で呪われた力だとされている。僕の家族は、僕のことをとても愛してくれていた。僕が闇属性だとわかっても、少しも変わらずに大切にしてくれた。
元々病弱だった母が亡くなったときは、本当に辛かった。でも、家族で支え合って、悲しみを乗り越えることができた。しかし、家族以外からは、冷たい視線に晒されてきた。母が亡くなったことで、さらに視線は厳しくなり、「闇属性の呪われた子」と罵られるようになった。
父さんもウィルも「そんなわけない」と慰めてくれたけど、もし僕が闇属性でなければ、母は亡くなることはなかったかもしれない……。ただの魔力に呪いとか、そんな馬鹿なことはあり得ないとわかっているのに、自分のことを信じきれず、自分自身が嫌いになっていった。
そんな僕だったけど、もしかしたら僕のことを冷たい視線で見ずに、友人として接してくれる人がいるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて、勇気を出して魔術学園へ入学することにした。父さんもウィルも「辛いなら学園なんて行く必要はない」と気遣って言ってくれたけど、僕は「行ってみたいんだ。逃げてばかりじゃダメなんだ」と伝えた。そうしたら、二人とも大泣きしながら「僕が護るから!」と誓ってくれた。本当に大好きで温かい家族だ。
ドキドキした気持ちで迎えた入学式。門をくぐると、僕が闇属性だからと「なんでお前がこの学園に入学するんだ。今すぐ辞めろ!」と絡んでくる人がいて、ウィルが反論して護ってくれたけど、入学式に遅れることになってしまった。入学式の途中だから、こっそり入ろうとウィルと話して扉を開けたが、僕たちは嫌でも目立ってしまう。ほぼ全員の視線がこちらを向き、ざわざわとしてしまった。ウィルには羨望の眼差し、僕には冷たい視線が注がれた。
(やっぱり、友達を作るなんて僕には夢の夢だったんだな……)
そう思っていると、温かい声が聞こえた。
「入学式に間に合わないと、焦りますよね。席が見つからないようでしたら、こちらの隣が空いています。よろしければ、一緒にいかがですか?」
そう声をかけてくれたのが、キート様だった。
キート様を含め、ライオネル殿下やヘドワート様は、驚くほど優しく接してくれた。御三方、僕たち伯爵家の人間が軽々しく近づいてはいけない存在だ。そんな人たちと会話できるだけでもすごいことなのに、仲良くさせていただけるなんて奇跡だ。
もしかしたら、僕たち双子の属性魔術目当てかもしれない。それでも、友達が欲しかった僕には夢のような経験をさせてもらっているんだから、ありがたいことだ。
5人でランチをしたり、分からない問題を教えあったり……きっと叶わないと思っていた日常を過ごしている。キート様のつくる料理はどれも絶品だ。特に野菜のキッシュというものは、僕のお気に入りになった。
そんな僕たちの様子を見て、少しずつだけど話しかけてくれるクラスメイトが増えた。キート様が作ってくれたお菓子をもぐもぐ食べていると、「よかったら、私の作ったクッキーも感想を聞かせてください」と話しかけてくれる人もいた。
その僕の様子を見て、5人が嬉しそうに見守ってくれていることに気がついた時、堪らなく幸せで、僕にも幸せになっていい権利があるんだと思った。
――だから忘れていた。僕は闇属性持ちであり、闇属性が悪の力だと一般的には捉えられていることを……
ある日、僕の元に手紙が届くようになった。
『君は、世界に嫌われている。不吉な存在だと罵られ、遠ざけられている。そんな世界に、君は愛想が尽きただろう?』
『我々、シャドウ・オーダーと共に来ないか。我々は、君の力を必要としている。君の闇の力は、この世界を変える力だ』
『もし君が仲間にならないのなら、君のお友達がどうなるか分からないよ?』
その文を見て、僕は焦った。
僕のせいでみんなを危険な目に遭わせたら、もう友達でいてくれないかもしれない。やっと話せるようになったクラスメイトも、もう会話をしてくれなくなるかもしれない。
その手紙が来てから、僕はみんなからなるべく離れるようになった。心配して話しかけてくれたみんなに、僕は「大丈夫」としか言えなかった。これは、自分への言い聞かせでもあり、これ以上みんなと会話したら「助けて」と口から出してしまいそうだったからだ。
どうしたらいいかと思っていた時、いつも通り来る手紙に『我々は、今宵、古城にて待つ』とあり、迷わず直接誘いを断りに行こうと決めた。
古城は少し街外れにあるため、家族に何も言わず、こっそり乗合馬車を乗り継ぎ、古城へ到着した。門が閉ざされており、どうやって入ろうかと思っていると、ギギギッと音を鳴らしながら一人でに門が開いた。まるで僕の到着を歓迎するようだった。広い庭を通り古城へ入ると、中にいたのは、真っ黒なローブを着て顔が見えない人間が数人だった。
「ようこそ、お待ちしておりました、フィル様」
案内された部屋に着くと、彼らは誘いに乗るか改めて僕に聞いてきた。
「僕は、仲間にはならない。世界中の人間が僕のことを嫌いであろうと、僕はもう世界のことを憎んでいないから」
僕が強く言い切ると、彼らは一瞬黙り、やがて、一番前に立っていた男が嘲笑った。
「残念だな。せっかく、この世界を変える力を手に入れる機会をくれたというのに」
「僕にとって、僕を信じてくれる友達の方が、ずっと大切なんだ」
僕の言葉に、男は顔色を変えた。
「貴様!!闇属性風情が、調子に乗るな!!」
男が怒鳴り散らし、拳を振り上げて、僕を殴ろうとした、その時だった。
拳が僕の頬を捉え、鈍い痛みが走った。視界が揺れ、床に崩れ落ちる。意識が遠のいていく中、僕は、みんなに、僕のせいで危険な目に遭わないでほしいと、ただそれだけを願った。
目が覚めると、僕は薄暗い部屋にいた。体は縄で縛られ、身動きが取れない。男の冷たい声が、僕の耳に届いた。
「お目覚めか。貴殿の考えが変わるまでは、ここから出すつもりはない」
「僕の考えは変わらない。みんなを危険に遭わせるくらいなら、僕がどうなっても構わない」
僕がそう強く言い切ると、男は怒りで顔を歪ませた。
「貴様ぁ!!いい加減にしろ!!」
男が再び拳を振り上げる。今度こそ、意識を保てないほどの衝撃が来ると、僕は身構えた。
その瞬間だった。
男が突然、何かに突き飛ばされたように吹き飛んでいった。
「「大丈夫か?!フィル!!」」
大好きな二人の声が聞こえた。ウィルと、そしてキート様。
僕は、安堵のあまり、その場に崩れ落ちた。
元々病弱だった母が亡くなったときは、本当に辛かった。でも、家族で支え合って、悲しみを乗り越えることができた。しかし、家族以外からは、冷たい視線に晒されてきた。母が亡くなったことで、さらに視線は厳しくなり、「闇属性の呪われた子」と罵られるようになった。
父さんもウィルも「そんなわけない」と慰めてくれたけど、もし僕が闇属性でなければ、母は亡くなることはなかったかもしれない……。ただの魔力に呪いとか、そんな馬鹿なことはあり得ないとわかっているのに、自分のことを信じきれず、自分自身が嫌いになっていった。
そんな僕だったけど、もしかしたら僕のことを冷たい視線で見ずに、友人として接してくれる人がいるかもしれない。そんな淡い期待を抱いて、勇気を出して魔術学園へ入学することにした。父さんもウィルも「辛いなら学園なんて行く必要はない」と気遣って言ってくれたけど、僕は「行ってみたいんだ。逃げてばかりじゃダメなんだ」と伝えた。そうしたら、二人とも大泣きしながら「僕が護るから!」と誓ってくれた。本当に大好きで温かい家族だ。
ドキドキした気持ちで迎えた入学式。門をくぐると、僕が闇属性だからと「なんでお前がこの学園に入学するんだ。今すぐ辞めろ!」と絡んでくる人がいて、ウィルが反論して護ってくれたけど、入学式に遅れることになってしまった。入学式の途中だから、こっそり入ろうとウィルと話して扉を開けたが、僕たちは嫌でも目立ってしまう。ほぼ全員の視線がこちらを向き、ざわざわとしてしまった。ウィルには羨望の眼差し、僕には冷たい視線が注がれた。
(やっぱり、友達を作るなんて僕には夢の夢だったんだな……)
そう思っていると、温かい声が聞こえた。
「入学式に間に合わないと、焦りますよね。席が見つからないようでしたら、こちらの隣が空いています。よろしければ、一緒にいかがですか?」
そう声をかけてくれたのが、キート様だった。
キート様を含め、ライオネル殿下やヘドワート様は、驚くほど優しく接してくれた。御三方、僕たち伯爵家の人間が軽々しく近づいてはいけない存在だ。そんな人たちと会話できるだけでもすごいことなのに、仲良くさせていただけるなんて奇跡だ。
もしかしたら、僕たち双子の属性魔術目当てかもしれない。それでも、友達が欲しかった僕には夢のような経験をさせてもらっているんだから、ありがたいことだ。
5人でランチをしたり、分からない問題を教えあったり……きっと叶わないと思っていた日常を過ごしている。キート様のつくる料理はどれも絶品だ。特に野菜のキッシュというものは、僕のお気に入りになった。
そんな僕たちの様子を見て、少しずつだけど話しかけてくれるクラスメイトが増えた。キート様が作ってくれたお菓子をもぐもぐ食べていると、「よかったら、私の作ったクッキーも感想を聞かせてください」と話しかけてくれる人もいた。
その僕の様子を見て、5人が嬉しそうに見守ってくれていることに気がついた時、堪らなく幸せで、僕にも幸せになっていい権利があるんだと思った。
――だから忘れていた。僕は闇属性持ちであり、闇属性が悪の力だと一般的には捉えられていることを……
ある日、僕の元に手紙が届くようになった。
『君は、世界に嫌われている。不吉な存在だと罵られ、遠ざけられている。そんな世界に、君は愛想が尽きただろう?』
『我々、シャドウ・オーダーと共に来ないか。我々は、君の力を必要としている。君の闇の力は、この世界を変える力だ』
『もし君が仲間にならないのなら、君のお友達がどうなるか分からないよ?』
その文を見て、僕は焦った。
僕のせいでみんなを危険な目に遭わせたら、もう友達でいてくれないかもしれない。やっと話せるようになったクラスメイトも、もう会話をしてくれなくなるかもしれない。
その手紙が来てから、僕はみんなからなるべく離れるようになった。心配して話しかけてくれたみんなに、僕は「大丈夫」としか言えなかった。これは、自分への言い聞かせでもあり、これ以上みんなと会話したら「助けて」と口から出してしまいそうだったからだ。
どうしたらいいかと思っていた時、いつも通り来る手紙に『我々は、今宵、古城にて待つ』とあり、迷わず直接誘いを断りに行こうと決めた。
古城は少し街外れにあるため、家族に何も言わず、こっそり乗合馬車を乗り継ぎ、古城へ到着した。門が閉ざされており、どうやって入ろうかと思っていると、ギギギッと音を鳴らしながら一人でに門が開いた。まるで僕の到着を歓迎するようだった。広い庭を通り古城へ入ると、中にいたのは、真っ黒なローブを着て顔が見えない人間が数人だった。
「ようこそ、お待ちしておりました、フィル様」
案内された部屋に着くと、彼らは誘いに乗るか改めて僕に聞いてきた。
「僕は、仲間にはならない。世界中の人間が僕のことを嫌いであろうと、僕はもう世界のことを憎んでいないから」
僕が強く言い切ると、彼らは一瞬黙り、やがて、一番前に立っていた男が嘲笑った。
「残念だな。せっかく、この世界を変える力を手に入れる機会をくれたというのに」
「僕にとって、僕を信じてくれる友達の方が、ずっと大切なんだ」
僕の言葉に、男は顔色を変えた。
「貴様!!闇属性風情が、調子に乗るな!!」
男が怒鳴り散らし、拳を振り上げて、僕を殴ろうとした、その時だった。
拳が僕の頬を捉え、鈍い痛みが走った。視界が揺れ、床に崩れ落ちる。意識が遠のいていく中、僕は、みんなに、僕のせいで危険な目に遭わないでほしいと、ただそれだけを願った。
目が覚めると、僕は薄暗い部屋にいた。体は縄で縛られ、身動きが取れない。男の冷たい声が、僕の耳に届いた。
「お目覚めか。貴殿の考えが変わるまでは、ここから出すつもりはない」
「僕の考えは変わらない。みんなを危険に遭わせるくらいなら、僕がどうなっても構わない」
僕がそう強く言い切ると、男は怒りで顔を歪ませた。
「貴様ぁ!!いい加減にしろ!!」
男が再び拳を振り上げる。今度こそ、意識を保てないほどの衝撃が来ると、僕は身構えた。
その瞬間だった。
男が突然、何かに突き飛ばされたように吹き飛んでいった。
「「大丈夫か?!フィル!!」」
大好きな二人の声が聞こえた。ウィルと、そしてキート様。
僕は、安堵のあまり、その場に崩れ落ちた。
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