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決勝戦、紛れる闇
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夜が明ける。
昨晩まで張り詰めていた空気は、決勝戦を前にしたスタジアムの熱気によって、かき消されたかのように見えた。観客席はすでに満員だ。煌びやかな貴族の衣装、興奮した生徒たちの声、色とりどりの旗が風にはためいている。何も知らない人々の笑顔が、眩しいほどに輝いていた。
俺たちは選手入場の通路に並んでいた。
「…すごいね、みんな楽しそう」
フィルの声がかすかに震えている。緊張ではない。きっと、希望に満ちた観客の笑顔を見て、彼の決意が揺るぎないものに変わったのだ。
「ああ。この人たちの笑顔を、守る」
ウィルが静かに隣で頷く。殿下とヘドワートも、いつも通り落ち着いた表情だが、その瞳の奥には鋭い光が宿っていた。
入場のアナウンスが響く。
『──続きまして、我が学園代表!一年生、キート・ルベル!そして、フィル・ウィースリー!ウィル・ウィースリー!ライオネル・エヴァンス!ヘドワート・フィッツジェラルド!』
割れんばかりの拍手と歓声が俺たちを包み込む。スタジアムの中心へと足を進める。俺たちの目の前に、今日の対戦相手が立っていた。
相手は、やはり強豪校の代表だ。しかし、その中に二つの視線がただウィルだけを見て、不気味な笑みを浮かべているのが気になった。決勝まで勝ち進んだ選手たちの中に紛れていた、シャドウ・オーダーの人間かと思われる。
(…まさか、ここにも紛れているとは)
俺は内心で呟き、昨夜決めた合図を全員に送った。微かに頷き合う。
試合開始の合図が鳴り響く。
俺は一気に前に出て、剣と魔術を融合させた攻撃を仕掛けた。
『フレイム・ブレード!』
剣から放たれる炎の刃が相手の陣形を崩す。その隙を突き、ヘドワートが雷を、ウィルが光を放つ。
ライオネル殿下は、相手の攻撃を水で受け止めながら、周囲の状況を冷静に見極めている。
しかし、相手もただの強豪ではなかった。彼らは完璧な連携で俺たちの攻撃を受け流し、カウンターを仕掛けてくる。
特に、シャドウ・オーダーと思われる二人の力は桁違いだった。
「闇属性…その力は、我らが主のものだ!」
一人が叫びながら、フィルに向かって氷の塊を放つ。
「フィル、気をつけろ!」
俺が叫ぶが、その速度は尋常ではなかった。
しかし、フィルは怯まない。彼はその氷を、自らの闇で受け止め、吸収した。
『シャドウ・イーター!』
フィルの闇が巨大な口を開け、相手の魔力を丸ごと飲み込む。
「な…なんだと!?」
相手は驚きを隠せない。その隙を見逃さない。俺たちは一気に畳み掛けた。
試合は、俺たちの勝利で幕を閉じた。
スタジアムは、俺たちの勝利に沸き立っていた。
その瞬間だ。
キィィィィィン──
耳障りな甲高い音がスタジアム中に響き渡り、結界がひび割れ、砕け散った。
(来たか…!)
俺は反射的に叫んだ。
「皆、作戦通りだ!観客を安全な場所に!」
観客席がざわつき、悲鳴が上がる。人々がパニックに陥り、出口に殺到し始めた。
通路の入り口から、何十人もの黒いローブを纏った人間がなだれ込んできた。彼らは皆、不気味な模様を顔に刻み、シャドウ・オーダーの紋章を身につけている。
「闇を我らが主のもとへ!邪魔立てする者は排除する!」
彼らはそう叫び、俺たちに向かって魔術を放ってきた。
「ヘドワート、観客の誘導を!」
ヘドワートは頷くと、巨大な雷を頭上に作り出し、通路の入口に放つ。
『サンダー・バリア!』
雷の壁が黒いローブの人間たちの前に立ち塞がり、彼らの足を止める。その隙に、ヘドワートは観客を安全な通路へと誘導し始めた。
「ウィル、光で奴らの幻術を剥がせ!」
ウィルは、両手に光の魔力を集中させ、スタジアム全体に光の網を張り巡らせた。
『ライト・ウィーブ!』
光が放たれると、黒いローブの人間たちが放った幻術や視界操作の魔法が次々と解除されていく。
「フィル!お前は俺たちの背後で、闇の盾を!」
俺の指示に、フィルは頷き、巨大な闇の盾を創造した。
『シャドウ・シールド!』
その盾は、黒いローブの人間たちが放つ魔術攻撃をことごとく吸収し、無効化していく。
「キート、私は観客の避難を優先する!」
ライオネル殿下は、そう言うと、水の魔術で観客の避難をサポートする。
『ウォーター・ロード!』
水の道が作られ、パニックに陥っていた観客たちは、安全な出口へと誘導されていく。
俺は、剣に炎の魔力を宿らせ、黒いローブの人間たちの前に立ちはだかった。
「お前たちの好きにはさせない!」
俺は、剣を振りかざし、炎の刃で敵を薙ぎ払う。
しかし、相手の数は多すぎた。次々と新たな敵が現れ、俺たちを追い詰める。
その時だった。
「このままではキリがない。皆、僕が囮になる!少し離れてほしい」
フィルが叫び、闇の力を全開にした。
フィルの体から、巨大な闇の波紋が広がり、周囲の人間を飲み込んでいく。
「フィル、やめて!」
ウィルが叫ぶ。
しかし、フィルの行動は、計算されたものだった。闇の波紋は、シャドウ・オーダーの人間たちを包み込み、彼らの動きを封じていく。
「今だ、ヘドワート!ウィル!」
俺の叫びに、ヘドワートが雷を、ウィルが光を、シャドウ・オーダーの人間たちに放つ。
『サンダー・ボルト!』
『ライト・ジャッジメント!』
雷と光が、シャドウ・オーダーの人間たちを次々と打ち倒していく。
ライオネル殿下と騎士団は、その隙に、シャドウ・オーダーの指揮官と思われる人物を拘束した。
戦いが終わり、スタジアムに静寂が戻った。
俺たちは、疲れ果てた表情で、互いを見つめ合った。
そして、誰もが安堵の息を漏らす。
「やったな、皆」
俺の言葉に、ウィル、フィル、ライオネル殿下、ヘドワートは、力強く頷いた。
俺たちは、この国を、そして大切な人々を守ったのだ。
そして、フィルの闇の力は、人々を恐怖に陥れるのではなく、希望を与える力であることを証明した。
昨晩まで張り詰めていた空気は、決勝戦を前にしたスタジアムの熱気によって、かき消されたかのように見えた。観客席はすでに満員だ。煌びやかな貴族の衣装、興奮した生徒たちの声、色とりどりの旗が風にはためいている。何も知らない人々の笑顔が、眩しいほどに輝いていた。
俺たちは選手入場の通路に並んでいた。
「…すごいね、みんな楽しそう」
フィルの声がかすかに震えている。緊張ではない。きっと、希望に満ちた観客の笑顔を見て、彼の決意が揺るぎないものに変わったのだ。
「ああ。この人たちの笑顔を、守る」
ウィルが静かに隣で頷く。殿下とヘドワートも、いつも通り落ち着いた表情だが、その瞳の奥には鋭い光が宿っていた。
入場のアナウンスが響く。
『──続きまして、我が学園代表!一年生、キート・ルベル!そして、フィル・ウィースリー!ウィル・ウィースリー!ライオネル・エヴァンス!ヘドワート・フィッツジェラルド!』
割れんばかりの拍手と歓声が俺たちを包み込む。スタジアムの中心へと足を進める。俺たちの目の前に、今日の対戦相手が立っていた。
相手は、やはり強豪校の代表だ。しかし、その中に二つの視線がただウィルだけを見て、不気味な笑みを浮かべているのが気になった。決勝まで勝ち進んだ選手たちの中に紛れていた、シャドウ・オーダーの人間かと思われる。
(…まさか、ここにも紛れているとは)
俺は内心で呟き、昨夜決めた合図を全員に送った。微かに頷き合う。
試合開始の合図が鳴り響く。
俺は一気に前に出て、剣と魔術を融合させた攻撃を仕掛けた。
『フレイム・ブレード!』
剣から放たれる炎の刃が相手の陣形を崩す。その隙を突き、ヘドワートが雷を、ウィルが光を放つ。
ライオネル殿下は、相手の攻撃を水で受け止めながら、周囲の状況を冷静に見極めている。
しかし、相手もただの強豪ではなかった。彼らは完璧な連携で俺たちの攻撃を受け流し、カウンターを仕掛けてくる。
特に、シャドウ・オーダーと思われる二人の力は桁違いだった。
「闇属性…その力は、我らが主のものだ!」
一人が叫びながら、フィルに向かって氷の塊を放つ。
「フィル、気をつけろ!」
俺が叫ぶが、その速度は尋常ではなかった。
しかし、フィルは怯まない。彼はその氷を、自らの闇で受け止め、吸収した。
『シャドウ・イーター!』
フィルの闇が巨大な口を開け、相手の魔力を丸ごと飲み込む。
「な…なんだと!?」
相手は驚きを隠せない。その隙を見逃さない。俺たちは一気に畳み掛けた。
試合は、俺たちの勝利で幕を閉じた。
スタジアムは、俺たちの勝利に沸き立っていた。
その瞬間だ。
キィィィィィン──
耳障りな甲高い音がスタジアム中に響き渡り、結界がひび割れ、砕け散った。
(来たか…!)
俺は反射的に叫んだ。
「皆、作戦通りだ!観客を安全な場所に!」
観客席がざわつき、悲鳴が上がる。人々がパニックに陥り、出口に殺到し始めた。
通路の入り口から、何十人もの黒いローブを纏った人間がなだれ込んできた。彼らは皆、不気味な模様を顔に刻み、シャドウ・オーダーの紋章を身につけている。
「闇を我らが主のもとへ!邪魔立てする者は排除する!」
彼らはそう叫び、俺たちに向かって魔術を放ってきた。
「ヘドワート、観客の誘導を!」
ヘドワートは頷くと、巨大な雷を頭上に作り出し、通路の入口に放つ。
『サンダー・バリア!』
雷の壁が黒いローブの人間たちの前に立ち塞がり、彼らの足を止める。その隙に、ヘドワートは観客を安全な通路へと誘導し始めた。
「ウィル、光で奴らの幻術を剥がせ!」
ウィルは、両手に光の魔力を集中させ、スタジアム全体に光の網を張り巡らせた。
『ライト・ウィーブ!』
光が放たれると、黒いローブの人間たちが放った幻術や視界操作の魔法が次々と解除されていく。
「フィル!お前は俺たちの背後で、闇の盾を!」
俺の指示に、フィルは頷き、巨大な闇の盾を創造した。
『シャドウ・シールド!』
その盾は、黒いローブの人間たちが放つ魔術攻撃をことごとく吸収し、無効化していく。
「キート、私は観客の避難を優先する!」
ライオネル殿下は、そう言うと、水の魔術で観客の避難をサポートする。
『ウォーター・ロード!』
水の道が作られ、パニックに陥っていた観客たちは、安全な出口へと誘導されていく。
俺は、剣に炎の魔力を宿らせ、黒いローブの人間たちの前に立ちはだかった。
「お前たちの好きにはさせない!」
俺は、剣を振りかざし、炎の刃で敵を薙ぎ払う。
しかし、相手の数は多すぎた。次々と新たな敵が現れ、俺たちを追い詰める。
その時だった。
「このままではキリがない。皆、僕が囮になる!少し離れてほしい」
フィルが叫び、闇の力を全開にした。
フィルの体から、巨大な闇の波紋が広がり、周囲の人間を飲み込んでいく。
「フィル、やめて!」
ウィルが叫ぶ。
しかし、フィルの行動は、計算されたものだった。闇の波紋は、シャドウ・オーダーの人間たちを包み込み、彼らの動きを封じていく。
「今だ、ヘドワート!ウィル!」
俺の叫びに、ヘドワートが雷を、ウィルが光を、シャドウ・オーダーの人間たちに放つ。
『サンダー・ボルト!』
『ライト・ジャッジメント!』
雷と光が、シャドウ・オーダーの人間たちを次々と打ち倒していく。
ライオネル殿下と騎士団は、その隙に、シャドウ・オーダーの指揮官と思われる人物を拘束した。
戦いが終わり、スタジアムに静寂が戻った。
俺たちは、疲れ果てた表情で、互いを見つめ合った。
そして、誰もが安堵の息を漏らす。
「やったな、皆」
俺の言葉に、ウィル、フィル、ライオネル殿下、ヘドワートは、力強く頷いた。
俺たちは、この国を、そして大切な人々を守ったのだ。
そして、フィルの闇の力は、人々を恐怖に陥れるのではなく、希望を与える力であることを証明した。
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