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父上へのお願い
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俺の記憶といっても、思い出せているのはとあるBLゲームに関する部分だけである。
前世の名前も思い出せないし、どういった暮らしをしていたのかも分からない。普通こんな状態なら本当に自分の記憶かも怪しむところだが、魂がこの記憶を元に絶対彼を助けると叫んでいる。
彼というのはフィル・ウィースリーという人物だ。どうやら前世の俺は彼を助けるために何度もこのゲームをやり直し、全てのルートを終わらせたが失敗したようだった。彼はどのルートでも断罪されてしまった…確かに彼が悪人であり、罰せられるべきことをしているのならば俺も諦めていたかもしれない。だがしかし、どこにも彼が罰せられるべき非道な行為をしたという描写はなかったのだ。
なのに、周りは皆んなから好かれる主人公を羨み彼が主人公を虐めたというのだ。
断罪シーンでは、彼が主人公を虐める場面を目撃したという証言者がワラワラと登場してきた。物的証拠もなく、主人公も虐められてないし彼がそのようなことをする人物ではない!と必死に訴えていたにも関わらず、彼は断罪された。
「そうだよ…僕はずっと髪と目の色が違うだけなのに皆んなから愛されているウィルが羨ましいと思って嫉妬していた。ウィル、今までごめんね…僕はこの世界に居ない方が良いみたいだ……」
そう言って寂しげに双子の弟である主人公に話しかける彼の苦しそうな顔が忘れられない。
彼は主人公のことを虐めたと自白したという訳でもないにも関わらず、この発言のせいで自白と認められ騎士に連行されていくのだ。
おかしい…こんなもやもやしたゲームは初めてで何処かに彼が救済されるシーンはないか夢中でゲームをしまくっていた。ゲームを何度もしていく中で彼への応援する気持ちから全てが愛おしいという気持ちへと変わっていた。
そんな愛おしいと思う俺の推しがいるBLゲームはもしかしたら今世の世界かもしれないと気付いたのは、さっき「ライオネル」「ヘドワート」という2人の人物の名前を言葉として発した時だった。
この2人は今世では幼馴染であり悪友として仲良くしている。しかし、前世でゲーム越しに見た彼らは主人公に恋し、周りが見えておらず俺の推しを悪として断罪する憎き攻略対象者であった。
同じ人物とはとても思えない。ゲームの世界だと主人公大好きなアホ連中の一員となってしまっていたのだ。今見ている彼らは優秀で未来のこの国を支えていく人間で間違いないと言える素晴らしく頼もしい親友だ。
彼らにあんな馬鹿みたいな断罪劇をしてほしくないし、俺は何よりも今回こそは直接推しを救いたい。となれば、まず俺がすべきことは…
「キートオオオオ!!大丈夫かぁぁあ!!!」
おーおー凄い響く声が急激に近づいてくる。余程心配させてしまったみたいだ。急に目の前で倒れられたら驚くし心配するよな、そりゃ。
ドアがバーンと凄い勢いで開き、父上が慌てた様子で部屋に入って来た。
「キート!腹が空いてないと聞いたが本当か?まさかお前がそんな訳ないよな…いつも私でも驚く程の量を食べてるお前が、腹が空いてないだって?!やはり何処か悪いんだな?直ぐに医者が来るからな!!」
そんな腹が空いてないだけで重症扱いになることある?って思うけどこの筋肉バカの体は病気知らずでよく体を動かしていた事もあって毎食周りにドン引きされるくらい食べてたからな…いや、でもさっき倒れたのは記憶を思い出したせいであり、重症扱いされるような事ではないのは自分が一番分かっている。
「父上、先程は急に倒れてご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。今は寝込んで体を動かしてないこともあり、腹が減ってないだけです…なんとも無いのでご安心ください」
「そうか、キート。お前が大丈夫というなら少し安心だが、医者は呼んであるから一応診てもらえ。お前が寝込む姿なんて見る事が来るとは思わなかったからな」
「はい、ありがとうございます。そんなことよりもお願いがあるのですが…」
武力命な父上が許してくれるか分からないが、この願いを通す事は絶対に推しを救う為には必要不可欠である。
「おぉ、なんだ改まってお前の願いなら父は権力を使ってでも通す!」
いや、そんな自信満々でやばい事言わないで欲しい。公爵家当主であり現騎士団長な父上が言うと洒落にならん。
「父上お気持ちは嬉しいですけど、騎士として悪い事をしてる父上は見たくありません」
「うむ、お前がそういうなら権力は使わず正々堂々と行くとする。それで願いとはなんだ?」
それでこそ、キートが…俺が尊敬する父上だ。
「はい、そうしてください。それでお願いなんですけど…父上!私は士官学校ではなく魔術学園に入学します!!!」
そう言い切り、恐る恐る父上の方を見上げると目を見開き固まってしまっていた。
「父上?どうされたのですか…」
「医者を直ぐに呼ばねば!!キートが魔術を学びたいなんて!!!」
はっと動き出したと思ったらまた病人扱いされてしまった。いやー確かに魔術なんて絶対に学ばないと言い続けて来た人間が、魔術学びたい!なんて言い出したらどうした?!ってなるよな。だけど、飛び出して行かないで欲しい。
「父上!少々お待ちください!!私の考えを聞いて頂きたいです」
引き止める声を聞いて父上が戻って来てくれた。
「あぁ、そうだよな…すまない、お前がそんな事言うはずがないと動揺してしまった。魔術など学ぶ気がなかったというお前の考えが変わった訳を聞かせてくれ」
引き止めたは良いものの、推しの事を話す訳にはいかないから何と説明したら良いものか…うーん、そうだな。
前世の名前も思い出せないし、どういった暮らしをしていたのかも分からない。普通こんな状態なら本当に自分の記憶かも怪しむところだが、魂がこの記憶を元に絶対彼を助けると叫んでいる。
彼というのはフィル・ウィースリーという人物だ。どうやら前世の俺は彼を助けるために何度もこのゲームをやり直し、全てのルートを終わらせたが失敗したようだった。彼はどのルートでも断罪されてしまった…確かに彼が悪人であり、罰せられるべきことをしているのならば俺も諦めていたかもしれない。だがしかし、どこにも彼が罰せられるべき非道な行為をしたという描写はなかったのだ。
なのに、周りは皆んなから好かれる主人公を羨み彼が主人公を虐めたというのだ。
断罪シーンでは、彼が主人公を虐める場面を目撃したという証言者がワラワラと登場してきた。物的証拠もなく、主人公も虐められてないし彼がそのようなことをする人物ではない!と必死に訴えていたにも関わらず、彼は断罪された。
「そうだよ…僕はずっと髪と目の色が違うだけなのに皆んなから愛されているウィルが羨ましいと思って嫉妬していた。ウィル、今までごめんね…僕はこの世界に居ない方が良いみたいだ……」
そう言って寂しげに双子の弟である主人公に話しかける彼の苦しそうな顔が忘れられない。
彼は主人公のことを虐めたと自白したという訳でもないにも関わらず、この発言のせいで自白と認められ騎士に連行されていくのだ。
おかしい…こんなもやもやしたゲームは初めてで何処かに彼が救済されるシーンはないか夢中でゲームをしまくっていた。ゲームを何度もしていく中で彼への応援する気持ちから全てが愛おしいという気持ちへと変わっていた。
そんな愛おしいと思う俺の推しがいるBLゲームはもしかしたら今世の世界かもしれないと気付いたのは、さっき「ライオネル」「ヘドワート」という2人の人物の名前を言葉として発した時だった。
この2人は今世では幼馴染であり悪友として仲良くしている。しかし、前世でゲーム越しに見た彼らは主人公に恋し、周りが見えておらず俺の推しを悪として断罪する憎き攻略対象者であった。
同じ人物とはとても思えない。ゲームの世界だと主人公大好きなアホ連中の一員となってしまっていたのだ。今見ている彼らは優秀で未来のこの国を支えていく人間で間違いないと言える素晴らしく頼もしい親友だ。
彼らにあんな馬鹿みたいな断罪劇をしてほしくないし、俺は何よりも今回こそは直接推しを救いたい。となれば、まず俺がすべきことは…
「キートオオオオ!!大丈夫かぁぁあ!!!」
おーおー凄い響く声が急激に近づいてくる。余程心配させてしまったみたいだ。急に目の前で倒れられたら驚くし心配するよな、そりゃ。
ドアがバーンと凄い勢いで開き、父上が慌てた様子で部屋に入って来た。
「キート!腹が空いてないと聞いたが本当か?まさかお前がそんな訳ないよな…いつも私でも驚く程の量を食べてるお前が、腹が空いてないだって?!やはり何処か悪いんだな?直ぐに医者が来るからな!!」
そんな腹が空いてないだけで重症扱いになることある?って思うけどこの筋肉バカの体は病気知らずでよく体を動かしていた事もあって毎食周りにドン引きされるくらい食べてたからな…いや、でもさっき倒れたのは記憶を思い出したせいであり、重症扱いされるような事ではないのは自分が一番分かっている。
「父上、先程は急に倒れてご心配をお掛けしてしまい申し訳ございません。今は寝込んで体を動かしてないこともあり、腹が減ってないだけです…なんとも無いのでご安心ください」
「そうか、キート。お前が大丈夫というなら少し安心だが、医者は呼んであるから一応診てもらえ。お前が寝込む姿なんて見る事が来るとは思わなかったからな」
「はい、ありがとうございます。そんなことよりもお願いがあるのですが…」
武力命な父上が許してくれるか分からないが、この願いを通す事は絶対に推しを救う為には必要不可欠である。
「おぉ、なんだ改まってお前の願いなら父は権力を使ってでも通す!」
いや、そんな自信満々でやばい事言わないで欲しい。公爵家当主であり現騎士団長な父上が言うと洒落にならん。
「父上お気持ちは嬉しいですけど、騎士として悪い事をしてる父上は見たくありません」
「うむ、お前がそういうなら権力は使わず正々堂々と行くとする。それで願いとはなんだ?」
それでこそ、キートが…俺が尊敬する父上だ。
「はい、そうしてください。それでお願いなんですけど…父上!私は士官学校ではなく魔術学園に入学します!!!」
そう言い切り、恐る恐る父上の方を見上げると目を見開き固まってしまっていた。
「父上?どうされたのですか…」
「医者を直ぐに呼ばねば!!キートが魔術を学びたいなんて!!!」
はっと動き出したと思ったらまた病人扱いされてしまった。いやー確かに魔術なんて絶対に学ばないと言い続けて来た人間が、魔術学びたい!なんて言い出したらどうした?!ってなるよな。だけど、飛び出して行かないで欲しい。
「父上!少々お待ちください!!私の考えを聞いて頂きたいです」
引き止める声を聞いて父上が戻って来てくれた。
「あぁ、そうだよな…すまない、お前がそんな事言うはずがないと動揺してしまった。魔術など学ぶ気がなかったというお前の考えが変わった訳を聞かせてくれ」
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