異世界キャンプ チートどころか低スペックのまま転移させられた妖精は楽しい旅にする為にモンスターを美味しく料理してやろうと思います~

綾川鈴鹿

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4話、ラーナのカミングアウト(1)

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「革鎧……思っていたよりも、食べごたえが、あるわね」

 口を動かしながらも、リリが皮肉を多分に込めて言う。
 1時間近く噛み続けているというのに、居座る革鎧は無くなる気配すらない。

(顎がもう鉛みたいに重い……今更ながら、こんな物を食べるなんて、正気の沙汰じゃない!)

 苦痛過ぎて、心の中で文句を言うリリ、対してラーナの表情は明るい。

「そう? ボクは結構、気に入ったよ? いつも食べてたファイヤリザードのステーキみたーい」

 さらっとそう言い放つラーナに、リリは唖然とする。

(っえ、よく食べてたの!?)

「ファイヤリザードって、こんなに硬いの?」
「っあ! うん……」

 急に押し黙るラーナ。
 今の会話でなにかに気づいたのだろう。
 リリは異変に全く気づかずそのまま喋り続けた。

「ラーナさんは、すっごく歯と顎が強いのねー。わたしはもう、顎の感覚が無いわよ?」
「……そうだね」

 口ごもるラーナに、ようやく異変に気づいたリリ。
 しかし表情を変えることなく思案した。

(あれっ? なにか聞いちゃいけないこと聞いた? あれぇ?)

 聞くのも無粋だろうと、リリは空気を読み、静かに口の中の革鎧と格闘をする。

(これ、柔らかくなってるのよね? 無理矢理にでも飲み込んだ方が……っあ、無理だわ)

「「……」」

 能天気に革鎧と格闘するリリ。
 対して、黙ってしまったラーナ。
 二人の間には、なんとも言えない沈黙が流れた。

「ボク……ハイ・オークなんだ、だから……」

 沈黙を破ったのはラーナであった。
 意を決した様にマントのフードを託し上げ、今までずっと隠していた顔をあらわにする。

(ハイ・オーク! おでこに角が生えてる、これこそファンタジー!!)

「可愛い顔ね!」

(まぁ、わたしは知ってたんだけどねー)

「角を隠す為に、モグモグ、フードを被っていたのね、モグモグ」
「怯えないの?」
「っえ? なんで怯えるの?」

(何を言ってるの? ファンタジーに鬼っ子はド定番じゃない!)

「なんでってリリ、本当にオークって知ってる?」
「もっちろん! 馬鹿にしないで、モグモグ」
「……じゃあ、なんで……」
「オークって鬼でしょ? 物凄い力が強いのよね! 羨ましいわ!」

 悲壮感を纏うラーナだか、リリはあっけらかんと答えた。

(鬼って魔王側の可能性は高いけど、わたし勇者じゃないしー、むしろどちらかと言うとモンスター枠よね、ピクシーって)

「それだけ?」

 ラーナの想像を遥かに超えた予想外の態度。
 不可思議な物でも見ているかの様に目をパチクリとさせながら、リリに問いかけた。

(えっ! 説明が足りなかった? えー、あー、んー)

「ほかー、モグモグ……お、大きい、そう大きい! そんなイメージがあるわ!」

 なんだか催促されているように感じたリリは、焦りながら、ドギマギと答えた。
 リリの返答を聞いて、ラーナはフゥーっと長く細く息を吐き話しを続けた。

「ボク、そんな反応初めてだよ」
「っえ? わたし何か間違えちゃった?」
「いやっ、そうじゃないんだけど……良いの?」

 ラーナの表情は真顔であったが、恐らくはこれが素の表情なのであろう。
 先程からの漂う哀愁も、出会ったときから貼り付けられていた明るさも無い。

「良いも何も……っあ、もしかしてオークとピクシーは仲が悪かったりする?」
「そんなことは……なくもないんだけど」

 口調や態度は落ち着いている。
 それでもいつになく歯切れの悪いラーナに、リリの疑問は更に深まる。

(んん? そんなに変なこと言ったかぁ?)

 思い返しても特に変なことは言ってない、はずだ。

「……モグモグ、じゃあわたしからも聞きたいんだけど、いい?」
「いいよ?」
「先に謝っとくわ、不躾なこと聞くけど、モグモグ」
「うん、なに?」
「なぜ街から追い出されることになったの?」

 出会った時のリリはいろんな意味でテンパっていた。
 気になっていた、しかしタイミングを外し聞くに聞けなかった疑問。
 それを、この機会にぶつけることにした。

「街に入れない理由……ね」
「無理には言わなくてもいいわよ?」
「……リリは、本当に何も知らなかったんだねー」
「……?? モグモグ」
「まぁいいよ、助けてくれたリリには話すつもりだったし」

(ラーナさんは、見た目も態度も普通だと思うんだけど? むしろ可愛らしい方よね?)

「ラーナさんは、街から追い出されるような何かをしたの?」
「なにかって?」
「特別な因縁? みたいな?」

 リリは素直に気になっていたことを聞いた、そこに悪意どころか善意もない。
 異世界への多少の期待感はあっただろう。
 しかしピクシーライフを楽しもうという気持ちのみ。。

(転生物ならよくある展開! 出会った人が特別な人だった! 良いわね!)

 ラーナは、ハイオークと分かっていながら悪意のない言葉を投げかけられたのは久々だ。
 なのでとても歯切れが悪い。

「なんで、リリが聞くのさ……」
「だってー、何かって言われても、思いつかないもん!」

(もしかしたらオークの姫とか? こんなに可愛いんだもの!)

 妄想をすればするほどリリの心は高揚していく

(それは燃える展開じゃない。姫を救う大魔法使いの妖精……良い! 萌える!)

 ラーナから返ってきた返事は、リリの思いもよらないものだった。

「特に何もしてない」
「してないのに街から追い出されたの?」
「まぁね」
「それはひどくない? 怒ってもいいのよ?」
「まぁいつものことだから」
「いつもって、割り切れるものじゃないわよ!」
「気にするだけ無駄だからね」

 言葉の節々から垣間見える厳しい境遇、しかし他人事かの様に達観した態度で話すラーナ。

「ひどいとか思わないの?」
「思わない……しょうがないからね」
「えー、わたしならイラッとしちゃうわ、もーってね、モグモグ、モグモグ」

 過酷な環境、それを気にしていないラーナ、どちらに対してかは分からないがリリの中で怒りが湧き上がる。

「ありがとう、でもこれは当たり前だから、気にしないでいいよ」
「そんなこと言っても、気にするわよ!」
「ボクはハイ・オークだからね」
「ハイ・オークだから? 角があるからってなんだって言うの?」
「……そっか」

 ラーナの目は真剣で、覚悟をもって打ち明けてきたであろうことはわかる。
 それでも、リリにはなぜそうなっているのかが理解できないのだ。

(やっぱり魔王側だからってこと? ファンタジーじゃ大抵そうだし)
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