異世界キャンプ チートどころか低スペックのまま転移させられた妖精は楽しい旅にする為にモンスターを美味しく料理してやろうと思います~

綾川鈴鹿

文字の大きさ
28 / 115

6話、デザートフィッシュ(1)

しおりを挟む
 ≪ドラーテム王国≫南西部、生き物の住めないような荒野。
 故に死の大地と呼ばれるサエウム荒原の中にも、水があふれ出るオアシスに作られた都市≪カルラ・オアシス≫へと向かう二人。

「ラーナ? 結構な距離を歩いたわよね?」
「4日かなっ! もうすぐ着くと思うよ」
「もうすぐって、昨日も聞いたんだけどぉー」

 周りを忙しなく飛び回る羽根妖精を気にも留めず、コートで身を包むラーナは軽くスキップしながら言い返す。

「馬車じゃないんだから、4日ぐらいじゃ着かないよー」
「っえぇ!? 日差しは強いし、照り返しもきつい! わたしもうやだぁー」
「やだぁーって、そんな丸出しだからでしょ?」
「その丸出しって言い方止めてもらえる?」

(ラーナの言い方だと、わたしが裸みたいじゃない!)

 ラーナはマントで全身を包んでいるが、リリはよほど砂漠には似つかわしくない格好をしている。
 転移したままのロングドレスなので、上半身は肩が出ており、スカートは自分の魔法でひらひらと棚引かせている。

「日焼けしちゃうー」
「はいはい」
「返事が雑すぎない!?」
「ボクには関係ないし」
「わたしには重要なことなの!」
「……じゃあ、フードはいる?」
「っえ? あぁー……うん」

 フードを広げて提案するラーナ。
 リリはおずおずとフードに入り、ラーナの首元に座った

「ところで今向かってる《カルラ・オアシス》ってどんなとこなの?」
「ボクも知らなーい」

 明るくそう答えたラーナ。

「ふーん、まっいっか。それよりわたし、そろそろお肉が食べたいわ、お肉!」
「たぶんだけど、いっぱいあるんじゃない? 亜人も暮らせる多種族都市らしいしね」
「亜人ってなに?」
「ざっくり言うと、人族以外の人型種族のこと」
「それって、獣人とか、エルフとか、ヴァンパイアとか?」

(正統派イケメンのエルフ! 可愛らしいケモミミショタ! クールで物憂げなヴァンパイア! きゃー夢が広がるー!)

 心の中で飛び跳ねるリリを知ってか知らずか、ラーナは残酷な事実を突きつける。

「ここは辺境だし、獣人はともかくエルフはいないんじゃない?」
「ならヴァンパイアは? イケメンは!?」
「ヴァンパイアは敵性亜人だよ?」
「まじか!」
「マジだねっ! イケメンは……運が良ければいるんじゃない?」
「ならだいじょーぶ!! わたしラッキーガールだから!」
「あーはいはい、そうだねー」
「信じていないわね?」

 和気あいあいと喋りながら、二人は歩を進める。
 リリは座っているだけだが……

「ご飯まだ? お腹すいたよー、リリー!」

[このかしましい、おっと……訂正、訂正、天真爛漫な少女。
 全身をボロボロのマントで身を包み、足場が不安定な砂漠をスキップで難なく進んでいる童女。
 実際には童女というほど若くもないのだが、その偽童女の名はスヴェトラーナ・ヴォルコヴァ。
 訳あって天涯孤独となったハイ・オークの娘だ]

「残念ながらもうありません!」
「えー!!」
「ラーナったら、あるもの全部食べちゃうじゃない」
「干物は?」
「たくさん作ったのに、干物もラーナが食べきったじゃない」

[ラーナの顔の前で、フィクションの女教師が注意するようなポーズをリアルで決め、恥ずかしげもなく、ぶりっ子を決め込んでいるピクシーの女の子。
 家でダラダラと漫画を読んでいたら、これといった意思も決意なく、異世界に転移させられた少女(26)残念ながら主人公である]

(ちょっとー、ラーナとわたしの紹介に差がない? 流石にわたしも26歳にもなってあのポーズはキツイかもなーとは思ってたけど、転生した今は0歳だし、みんな許してくれるわ!)

「あれは美味しかったから、ボクもついつい食べ過ぎちゃった!」
「食べすぎちゃった、じゃないでしょ!」

 舌をペロッとだしたラーナに、リリは言い返した。

「でもー、リリも一緒に食べてたじゃんかー」
「わたしはピクシーだから良いの! だってピクシーだもん!」
「それはずるくない?」
「わたしのお腹いっぱいは、ラーナの一口分でしょ」
「まぁ」
「だからわたしは良いんですー。見てよ、この小ささ!」

 ラーナの前をからかうかのようにヒラヒラと飛ぶリリ、ラーナはムッとして言い返す。

「そんなに食べて、寝て、グータラしてると太るからね!」
「だいじょうぶ、ですぅー」
「飛べなくなっても、ボク知らないからっ!」
「ピクシーは妖精だから問題ありませんー」
「もぅ、いい!!」

 ラーナはプイッっとそっぽを向くと、そのままハァーッと大きなため息を付く。
 しかし、一瞬でテンションが戻ったラーナはリリに提案をする。

「っあ! じゃあリリ、食べ物を狩りに行こうっ!」
「食べ物? なにを狩るの?」
「一日で食べきれないぐらい、おーっきいの!」
「そんなの簡単に見つかるの?」

(居たら苦労してないでしょうに)

「ボク、良さそうな所、知ってるんだー」

 後ろの腰辺りで手を組んだラーナは、あっけらかんと答えた。

「じゃあ真っすぐカルラ・オアシスに向かわないの?」

 リリ達は街に向かっている、理由はもちろんお金だ。
 調味料やスパイスも欲しい、無一文に少しのスパイスじゃあ旅を続けるのにも限界がある。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...