異世界キャンプ チートどころか低スペックのまま転移させられた妖精は楽しい旅にする為にモンスターを美味しく料理してやろうと思います~

綾川鈴鹿

文字の大きさ
44 / 115

SS、ラーナ髪を切る

しおりを挟む
「髪を切りましょ!」

 ピクシーのリリが声を上げた。

「急にどうしたの? せっかく長くてきれいな金髪なのに、邪魔になっちゃった?」
「そうじゃないわ!」
「違うの?」
「ラーナの髪よ!」
「ボクの?」

 ラーナは自分の腰まである髪を、手で触る。
 確かに手入れは、ここ暫くしていなかったので、ボサボサに感じる。

「んー、確かに邪魔だねー」

 ラーナは一言そう言うと、おもむろに髪を束ねた。
 そして腰からナイフを取り出し、ザックリと切り落とそうとする。

「ちょっ、ちょっと!」

 ラーナの急な行動に、リリが焦って止める。
 しかし間に合わず、半分ほどになっていた。

「ん? どうしたの?」

 ラーナは、キョトンとした表情で聞き返した。

「そんなバッサリと」
「なにか、おかしかった?」
「んーそうじゃないけど……」

(おかしいわけじゃあないけど、もっとオシャレにとか考えよーよ、ねっ)

 リリは少しだけ思い悩んだが「っま、いっか」と零す。
 軽く整えるのみならまだしも、自分の髪を切ったことがないリリには、自分自身で切るとこんなもんか、と感じたからだ。

「それじゃ、わたしが可愛くしてあげるー」
「リリが切るの!?」
「何か問題でも?」
「だって、ナイフ持てるの?」
「っあ!」

 この世界の文明が、どこまで進んでいるのかは分からないが、確実に言えることがある。
 ラーナが戦闘に役に立たない、ハサミなんて持っているわけがない。

(あーそうだったー! ハサミ、無いんだったぁ)

 リリは再び「う~ん」と頭を悩ませる。

(でもラーナにだって、オシャレを楽しんでほしいわよねぇ)

「ボクは、このままでもいいよ?」
「えー、本当はオシャレしたいんでしょー」

 確信があるリリは、からかうように言った。
 ラーナは恥ずかしそうに、俯きながら答える。

「っま、まぁ……したい」
「やっぱりねぇ、そうだと思ったわ!」
「なんで分かった、の?」
「だってラーナの服、可愛いもの」

 ラーナの服装は、ピッチリ目の肌着に、真っ黒な腰布を垂らしている。
 胸当ては肩は空いているものの、手が隠れるほどの長さ。
 地球で言うところのチャイナドレスに近い様相だ。

(伝統的な服だとしても、実利的なラーナにしては華美だと思ってたのよねぇ)

 リリはおもむろにラーナの腰布を指差し聞く。

「こことか!」

 リリが指差した所は、赤い刺繍が施してある。

「そ、そうかなぁ?」
「そうそう、ここも!」

 リリが使い古されたマントめくると、裏地には紅い布が当ててある。

「見えない裏地にまで気を使うなんて、オシャレ上級者じゃない!」
「えっ、そう? えへへ……」

 褒められて嬉しかったのか、それとも見つかって恥ずかしかったのだろうか。
 ラーナは照れ笑いを浮かべ、リリに返事をした。

「ほらねっ! だからこそ髪型も可愛くしなくちゃね!」
「ボク、髪の毛を結うの苦手なんだよねー」
「そうなの?」
「なんか難しいよねー」
「じゃあ、わたしがやってあげる!」
「ホント!?」
「任せときなさい!」

 リリは、エッヘンと胸を張る。

「前髪を切るのは、自分で出来る?」
「それぐらいなら、出来るけど……」
「じゃあ前髪は任せたわ! かわいくしましょーねー」
「う、うん」

 ドギマギと、答えるラーナだったが表情は期待に満ち溢れていた。

「それじゃ、鏡を用意しないとね」

 ラーナが出したのは、よく手入れされた短剣だ。
 顔が映り込むほどに磨かれている、鏡の様な高級品を持っていないラーナには、鏡代わりになるのだろう。

(ワ、ワイルドね……)

 リリから見てもラーナの姿は堂に入っている。
 何度も鏡として使っていることが、容易に予想できる。

「わたしは編み込みをするけど、左側でいい?」
「いいよー」
「じや、やっちゃうねー」

 リリはラーナの髪の毛を引っ張り、三つ編みのように後方へと編み込んでいく。
 小さなリリにとっては、まるで綱引きだ。

「んーしょっと、なかなかにハードね……」
「無理しなくてもいいよ?」
「だいじょーーぶ、はいっ! これで終わりっ!」

 リリは最後に髪を紐で留めると、ポンポンッと叩く。
 ラーナはそれを手に取ると、他の髪とまとめて後ろで結んだ。

「どう? 良い感じ?」

 素っ気なく聞くラーナだが、見るからに顔が緩んでいる。
 相当にうれしかったのだろう、見ていたリリも嬉しくなってにやけてしまう。

「えぇ可愛いわ、それじゃ街に向かいましょー」
「ンフフッ、今度はボクがリリの髪を結んであげるね」
「ありがとっ!」

 それ以来リリが寝坊をして昼頃に起きると、たまに可愛くセットされることが増えた。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

「わざわざ始まるまでまたないで、今のうちに手を打ったってよくない?」

イチイ アキラ
恋愛
アスター公爵令嬢エステルは、夢をみる。それは先を映す夢。 ある日、夢をみた。 この国の未来を。 それをアルフレッド王太子に相談する。彼女を愛して止まない婚約者に。 彼は言う。 愛する君とぼくの国のためなら、未来を変えるのも仕方なくない?

処理中です...