異世界キャンプ チートどころか低スペックのまま転移させられた妖精は楽しい旅にする為にモンスターを美味しく料理してやろうと思います~

綾川鈴鹿

文字の大きさ
104 / 115

17話、激闘とその先(1)

しおりを挟む
 デザートプレデターと出会ってから半日ほど経っただろうか?
 馬車で逃げ、死闘を尽くし、ギルドの討伐隊までが手助けをしてくれた。
 それでも残りの一体は、まだリリたちの目の前で、ウロウロとしている。

「流石に、この一体はあたし達でやるしかないか」

 アンが大盾を置きロングソードを両手で構える

「ごめんなさい、わたしがもう少し人を呼べたら良かったんだけど……」

 申し訳無さそうに俯くリリ。
 クリスタはナイフを改めて握り直すと淡々と話し出した。

「いえっリリ様は充分に仕事をしてくださいました、時間はかかるでしょうが、残りは私とアン様でなんとかしてみせます」

(二人でどうにかなるのかな? 大丈夫って言ってるけど)

 リリの心配をよそに、クリスタはデザートプレデターへとジリジリ歩を進める。
 アンも連動してゆっくりと挟み込むように裏に回りだした。

(わたしもやれることをやらなくちゃ)

「……イヴァ! 急いで焚き火用のサボテンと燻製の鶏肉、あとなんでもいいから布を出して、お腹空いた!」

 仰向けに倒れながら、ラーナがイヴァのローブの袖を引く。

「ふぁ? 急にどうしたのじゃ?」

 素っ頓狂な声を上げたイヴァは振り返るとラーナに聞く。
 ラーナはゆっくりと起き上がると、真剣な目でイヴァをまっすぐ見ている。

「早く! あの二人じゃ勝つのは難しい……ボクも戦う」
「っえ? 今なんて?」

(まさかまだ闘うの? 無茶よ)

 ラーナを改めて見ると、傷だらけで地球に生きてきたリリには見るに耐えない姿だった。
 二人を見守りながら、横になったラーナを見てリリは決意した。

「そんな傷で……右手なんて結構な出血よ!?」
「こんなのは傷にすらならないよー」

 リリの言葉に、当り前かのように答えたラーナ。
 イヴァが出した布を口で細く切り裂いては、簡素ながら傷口を手際よく止血する。

「こうやってえ血を止めて、無くした分の血は食べて戻さなきゃね」
「食べても、直ぐには意味ないでしょ!」
「小鬼の意見に賛成ですわ、やれることは何でもやるべきですわ」

 ラーナの謎理論が飛び出すが、フラフラになりながらも、馬車にもたれかかり横で聞いていたクラウディアも賛同した。

「クリスタは正面戦闘が得意なタイプではないのよ、早く助けに行かないと」
「でもクラウディア、顔が真っ青よ? 無理よ」

 頬を両手で掴みリリが言う。
 それをクラウディアは手で弾き、言い返す。

「うるさい妖精ですわね」
「心配してるのよ!」
「これぐらいなんてことないわ! こんなのただの魔力切れで……」
「でも……」
「少し休めば剣ぐらいは振れるわ!」

 リリの心配をよそに、クラウディアはレイピアの手入れを始め、ラーナは焚き火の火にナイフを数本かざして炙り出す。

「じゃあ、リリのウォーターヒールで出した水を飲んでみたら? クラウディアも多少は魔力が戻るかもよ?」

 そのまま首だけ振り返ると、ありえない提案をして来た。

「「っえ!?」」

 あまりの一言に二人の声が揃う。

「ウォーターボールは飲んでるじゃん」

(確かに……回復させる魔法だしなんとかなるのかなぁ、危険な気がするしクラウディアは絶対に嫌がる気が……)

 魔法でだしたもの、しかも亜人であるリリの出した水を、クラウディアが許可するとはリリは思っていなかった。

「良いですわ、やれることはやっておくべきですもの」
「っえ!? いいの?」

(絶対に断ると思ってたわー)

「なんです? わたくしだって優先順位ぐらいはありますわ!」

 恥ずかしそうにしつつも、少し声を荒げたクラウディアに、リリは相当な覚悟を感じ取った。

「わかったわ、なら少しでも体調に良さそうなものを作るわね」
「そのまま食べられるよー」
「燻製肉をそのままなんて消化に悪いし、力にもならないでしょ?」

 リリの言葉を聞いたクラウディアは、少し考えると、軽く頷き「……わかりましたわ」と言葉を零すと、糸の切れた人形のように意識を手放した。

「やっぱり相当無理してたんじゃない」
「ラーナは大丈夫?」
「大丈夫! でも血は止めなきゃ」

 血を止めようと右腕にはきつく巻いた布、それでも滴り落ちる程に血が流れていた。
 ラーナはゆっくりと胸当ての袖をまくり袖を嚙む。

「何をする気?」

 リリの言葉を聞き流したラーナは、火にくべ熱した赤みがかったナイフを傷に押し当てた。
 あまりに躊躇なく当てるので、リリは呆けてしまった。
 ジューッという音と、肉が焼ける匂いと共にあたり一帯に溢れたところで、呆けていた頭が正気に戻り叫ぶ。

「ラ、ラーナ! 何をしてるの?」
「大丈夫、慣れてるから」
「慣れてるって言っても……」
「細かい傷はいいとしても、この右手血は止めないと戦えないからね」

 ラーナは次々とナイフを持ち替えては傷口へと当てる。
 表情一つ変えずにナイフを当て続けるラーナに、リリは恐怖を覚えると共に圧倒されてしまいその場で立ち尽くしていた。

「っあ、でも、後でボクにもウォーターヒールしてね」
「わ、わかったわ」

 リリはラーナが当り前のように振舞うので、気持ちを切り替えることにする。
 今の最優先はアンやクリスタと対峙しているデザートプレデターだ、ラーナの行動もそのためのもの、リリも覚悟を決めた。

(とりあえず作らなきゃ、いつまで持つのかわからないし、時間をかけてる暇はない)

 いつも以上に気合を入れ、イヴァに向かって早口で話し出したリリ。

しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...