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メルティア視点
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今日はアグネスのお家へ遊びに行く日です。
エルとは一緒の馬車で行く事にしたわ。
一人より、エルと一緒の方が楽しいでしょう?
エルとは昔からの友達で、誰よりも信用しているのよ。
けれど、そんなエルにも言えない事があるの。
・・・たいした事ではないのよ。
ただ、エルの兄、アディエル様が好きな事を、エルに伝える事が出来ずにいるの。
この間、好きな人の話の時には焦ってしまったわ。
そう、思い出すとあれは、私が8歳の時。
エルとはお茶会で以前から知り合いだったのだけれど、アディエル様はそうではなかったの。
その日は、クリーヴランド家に母と招待されて来てみたら、庭にすごく綺麗な男の子が剣の素振りをしていたの。
思わず、ジッと見てしまったわ。
こんなに綺麗な人がいるのかしらって。
はしたなくも、案内をして頂いた執事に聞いてしまったの。
そうしたら、エルのお兄様だって言うのよ。
その時は好きとかではなく、綺麗な物が好きな私には、見ていたいと思う人だった。
それからは、クリーヴランド家に招待された時には無意識で探してしまったわ。
そうして過ごすうちに、機会がありアディエル様と挨拶をさせてもらう事ができたの。
実際に話してみたら、想像とは少し違っていて、繊細な見た目とは違い、自分の意思を貫いている方だったわ。
そして、とても、優しかった。
本当の意味で恋に落ちた瞬間だったわ。
でも、この気持ちをエルに話していいのかが分からないの。
嫌がられたらどうしよう・・・。
・・・ダメね。そんな事を考える事自体、エルに失礼だわ。
やはり、ちゃんと話をしましょう。
嫌がられたらショックだけれど、受け止めなくてはいけないわ。
そうこう考えていたら、クリーヴランド家に着いた。
馬車のドアが開き、エルかと思ったらアディエル様だったのよ。
「おはよう、メルティア譲。ごめんね。エルが少し遅れているから、もう少し待っていてくれるかい?
その間、僕と話でもしよう」
「あっ、おはようございます。よろしくお願いいたします」
なんでアディエル様が!?
心の準備が出来ていないわ!エル~早く来て!
「メルティア譲はこの休み、何をしていたんだい?」
「私は、帰省しておりました。いつも日帰りだったので、久々にゆっくりと過ごせましたの。
・・・エルは何をしていたのですか?」
他に話題が思いつかない私は、フェアリエルの事しか聞けなかった。
「ん?エルかい?何をしていたんだろうね。でも、最近は良く本を読んでいる事が多いかな。
後で詳しく聞いてみるといい。
それとメルティア譲、僕達も結構長い付き合いだと思うんだ。
もっと砕けた話し方でいいよ」
「そう言われましても。急には難しいです」
「それもそうか。では、徐々に慣れてくれると嬉しい。
今、エルが見えたから、そろそろ来るよ。待たせてしまって本当にごめんね。
道中、気を付けて行っておいで」
・・・嬉しい。
緊張して、なかなか上手く話せないけれど、もう少し気を抜いて話せる様になりたい。
私は『ありがとうございます』と微笑みを浮かべて返したのだ。
と、その時。
「メルー!待たせてごめんなさい。
お兄様もありがとう」
フェアリエルが小走りで馬車に近づいて来る。その後ろを大量の荷物を持った従僕がついて来た。
「大丈夫だ。とても楽しい時間だったよ。エル、忘れ物はないかい?」
「はい。今からメルの馬車に積んでもらいます」
「そうか。では二人とも、気を付けてね。アグネス譲にもよろしく伝えてくれ。
いっぱい楽しんでくるんだよ」
「行って参ります」
大量の荷を積み馬車が走り出す。
「メル待たせてごめんね」
「大丈夫よ。それより、何かあったの?」
私が聞くと、言い辛そうに口を開いた。
「あ、うん。アグネスの家に持って行く手土産の数が、なんかすごくて。
こんなに入らないって言ったんだけど、両親が持って行けって言うから、詰めていたら遅くなっちゃったの」
「・・・そうだったのね。でも、何故アディエル様が来たの?」
「間に合わないって言っていたら、お兄様がメルの所に行くって言ったのよ」
「そう、なのね」
「メル、どうかしたの?何かあった?」
私はアディエル様の事を話すのなら今だと思い、意を決して口を開く。
緊張で口がカラカラだ。
「いいえ、ただ、ずっと言えなかった事があって。
エルに言いたいのに、怖くて言えなくて。
・・・ふぅ。気持ちが昂っているわ。ごめんなさい。
実はね、私、アディエル様の事が好きなの。
・・・そんな、私の事を、どう思う?」
私は怖くて手を握り締めた。
「・・・あの、ごめんね。実は薄々気付いてはいたの。
メルがお兄様を好きな事に。そんな風に思い悩んでいるとは思っていなかったわ。
・・・気付いてあげられなくて、ごめんね。
もちろん、メルなら大賛成よ!そうなってくれたら嬉しいと、ずっと思っていたわ」
・・・ああ、いやだ。
安心したら手が震えてしまう。私は再度しっかり手を握り締めた。
「・・・ありがとうエル。気が緩んだら涙が出てきてしまったわ。
でもね、私、エルに協力して、と頼む事はしないわ。
自分の力で頑張ってみる。だから、見守っていてくれる?」
「もちろんよ!余計な事は一切しないわ。
メル、頑張ってね!」
「ふふっ、話してよかったわ」
本当に優しい兄妹だ。
私はそんな二人に出会えた事が一生の宝物だろう。
友情も、恋も、大切にしなくてはね。
そうして、気持ちを新たに馬車は進むのであった。
エルとは一緒の馬車で行く事にしたわ。
一人より、エルと一緒の方が楽しいでしょう?
エルとは昔からの友達で、誰よりも信用しているのよ。
けれど、そんなエルにも言えない事があるの。
・・・たいした事ではないのよ。
ただ、エルの兄、アディエル様が好きな事を、エルに伝える事が出来ずにいるの。
この間、好きな人の話の時には焦ってしまったわ。
そう、思い出すとあれは、私が8歳の時。
エルとはお茶会で以前から知り合いだったのだけれど、アディエル様はそうではなかったの。
その日は、クリーヴランド家に母と招待されて来てみたら、庭にすごく綺麗な男の子が剣の素振りをしていたの。
思わず、ジッと見てしまったわ。
こんなに綺麗な人がいるのかしらって。
はしたなくも、案内をして頂いた執事に聞いてしまったの。
そうしたら、エルのお兄様だって言うのよ。
その時は好きとかではなく、綺麗な物が好きな私には、見ていたいと思う人だった。
それからは、クリーヴランド家に招待された時には無意識で探してしまったわ。
そうして過ごすうちに、機会がありアディエル様と挨拶をさせてもらう事ができたの。
実際に話してみたら、想像とは少し違っていて、繊細な見た目とは違い、自分の意思を貫いている方だったわ。
そして、とても、優しかった。
本当の意味で恋に落ちた瞬間だったわ。
でも、この気持ちをエルに話していいのかが分からないの。
嫌がられたらどうしよう・・・。
・・・ダメね。そんな事を考える事自体、エルに失礼だわ。
やはり、ちゃんと話をしましょう。
嫌がられたらショックだけれど、受け止めなくてはいけないわ。
そうこう考えていたら、クリーヴランド家に着いた。
馬車のドアが開き、エルかと思ったらアディエル様だったのよ。
「おはよう、メルティア譲。ごめんね。エルが少し遅れているから、もう少し待っていてくれるかい?
その間、僕と話でもしよう」
「あっ、おはようございます。よろしくお願いいたします」
なんでアディエル様が!?
心の準備が出来ていないわ!エル~早く来て!
「メルティア譲はこの休み、何をしていたんだい?」
「私は、帰省しておりました。いつも日帰りだったので、久々にゆっくりと過ごせましたの。
・・・エルは何をしていたのですか?」
他に話題が思いつかない私は、フェアリエルの事しか聞けなかった。
「ん?エルかい?何をしていたんだろうね。でも、最近は良く本を読んでいる事が多いかな。
後で詳しく聞いてみるといい。
それとメルティア譲、僕達も結構長い付き合いだと思うんだ。
もっと砕けた話し方でいいよ」
「そう言われましても。急には難しいです」
「それもそうか。では、徐々に慣れてくれると嬉しい。
今、エルが見えたから、そろそろ来るよ。待たせてしまって本当にごめんね。
道中、気を付けて行っておいで」
・・・嬉しい。
緊張して、なかなか上手く話せないけれど、もう少し気を抜いて話せる様になりたい。
私は『ありがとうございます』と微笑みを浮かべて返したのだ。
と、その時。
「メルー!待たせてごめんなさい。
お兄様もありがとう」
フェアリエルが小走りで馬車に近づいて来る。その後ろを大量の荷物を持った従僕がついて来た。
「大丈夫だ。とても楽しい時間だったよ。エル、忘れ物はないかい?」
「はい。今からメルの馬車に積んでもらいます」
「そうか。では二人とも、気を付けてね。アグネス譲にもよろしく伝えてくれ。
いっぱい楽しんでくるんだよ」
「行って参ります」
大量の荷を積み馬車が走り出す。
「メル待たせてごめんね」
「大丈夫よ。それより、何かあったの?」
私が聞くと、言い辛そうに口を開いた。
「あ、うん。アグネスの家に持って行く手土産の数が、なんかすごくて。
こんなに入らないって言ったんだけど、両親が持って行けって言うから、詰めていたら遅くなっちゃったの」
「・・・そうだったのね。でも、何故アディエル様が来たの?」
「間に合わないって言っていたら、お兄様がメルの所に行くって言ったのよ」
「そう、なのね」
「メル、どうかしたの?何かあった?」
私はアディエル様の事を話すのなら今だと思い、意を決して口を開く。
緊張で口がカラカラだ。
「いいえ、ただ、ずっと言えなかった事があって。
エルに言いたいのに、怖くて言えなくて。
・・・ふぅ。気持ちが昂っているわ。ごめんなさい。
実はね、私、アディエル様の事が好きなの。
・・・そんな、私の事を、どう思う?」
私は怖くて手を握り締めた。
「・・・あの、ごめんね。実は薄々気付いてはいたの。
メルがお兄様を好きな事に。そんな風に思い悩んでいるとは思っていなかったわ。
・・・気付いてあげられなくて、ごめんね。
もちろん、メルなら大賛成よ!そうなってくれたら嬉しいと、ずっと思っていたわ」
・・・ああ、いやだ。
安心したら手が震えてしまう。私は再度しっかり手を握り締めた。
「・・・ありがとうエル。気が緩んだら涙が出てきてしまったわ。
でもね、私、エルに協力して、と頼む事はしないわ。
自分の力で頑張ってみる。だから、見守っていてくれる?」
「もちろんよ!余計な事は一切しないわ。
メル、頑張ってね!」
「ふふっ、話してよかったわ」
本当に優しい兄妹だ。
私はそんな二人に出会えた事が一生の宝物だろう。
友情も、恋も、大切にしなくてはね。
そうして、気持ちを新たに馬車は進むのであった。
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