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2.伯爵令嬢リンシアは魔道具作りが楽しい
4話:呪いの手紙
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王太子殿下が鷹揚に頷き、言った。
「セリーナは、その魔力の高さから陛下に【聖女】の称号を与えられた。……そこまではいいんだ。だけど問題は──」
「その後、ということですわよね」
彼の言葉を引き継ぐようにして私が言うと、王太子殿下が頷いて答えた。
ルーズヴェルト卿が情報を整理するように淡々と話を続ける。
「【平民の少女が、公爵家に引き取られ、あっという間に貴族社会の仲間入り。そして、彼女は高位貴族に見初められて、幸せに暮らしました】……とは、まるでどこかの物語のようですね。だけどここは、現実社会。本来、有り得ないことです」
「有り得ない、というのは?」
「普通、そんな成り上がり方をしたら、嫌われるでしょう。貴族というのは、血筋にうるさい上に選民主義者が多い。ですが、カミロ・カウニッツを初め、ダミアン・ドゥンカーなど、様々な男が彼女に惹かれている。これは明らかにおかしい」
そういえば……聖女の取り巻きといえば──私は、いつも彼女を取り巻いている男性陣の顔を思い出した。
まず筆頭なのはやはり、フェリクス・フェルスターだろう。次にルシアン・ルーズヴェルト。この2人は王太子殿下の指示によるものだろうから除外するとして……。
他にはカミロ・カウニッツと、ダミアン・ドゥンカー。
ちなみに、このダミアンというのは、クララの婚約者でもある。
あの夜、彼女を置き去りにしたのはこのダミアンである。
(聖女の取り巻きとして有名なのはこの4人だけど……)
それは、彼女が自身に近づくことを許可しているのが、この4人なのだ。
ちなみにこの4人はもれなく全員、美形である。セリーナはカミロに負けず劣らず面食いだと思う。
私は状況を整理すると、頷いて答えた。
「状況は理解しましたわ。どこまでお役に立てるか分かりませんが……私も、最大限、助力させていただきます」
「ありがとう」
「それと──王太子殿下。とても恐れ多いことなのですか私からもひとつ、よろしいでしょうか」
私の言葉に、王太子殿下が目を瞬いた。
寝不足の彼にこんなお願い……もっといえば、取引を持ちかけるのは気が咎めたが、仕方ない。私もそうは言っていられない。
余裕なんて、ないのだから。
私の目下の悩み事──解決しなければならないトラブルといえば、カミロとの婚約と、そして、カウニッツ伯爵家とリンメル伯爵家間で結ばれた契約書の存在である。
あれが解決しないことには、どうしても私の意識はそちらに向いてしまう。
(エルヴァニアの民として、セリーナの件も解決しなければ、と思うけれど……)
でも、私にとって優先順位の高いのは、やはり家の事だ。
私は、王太子殿下を見つめると口を開いた。
「──」
王太子殿下は、私の話を聞くと、流石に驚いたように目を見開いた。眠気も吹き飛んだようだわ……。
彼は、顎に手をあてると、考え込むようにしながら、口を開いた。
「なるほど……分かった。その件は私の方で調べておく」
「ありがとうございます、王太子殿下」
私はお礼を言ってから胸を張った。そして、拳で胸元を叩いて見せる。
「これで私も、本腰を入れて調査ができるというものですわ。
『違法魔道具の件、私にお任せ下さい!!』
……とは流石に豪語できませんが。でも必ず、お役に立てて見せるとお約束いたします」
「頼もしい限りだね」
王太子殿下は苦笑すると、それから顔を上げてルーズヴェルト卿に視線を向ける。
「私が動きたいのは山々なんだけど……知ってのとおり、私は死ぬほど多忙だ。これ以上仕事が増えたら過労死待ったナシだ。叔父をどうにかする前に、私が過労で死ぬ」
「確かにね」
フェルスター卿が頷いた。
「だから、ルシアン。君に任せていい?」
「……ヴィンセント。お前は、俺が暇そうに見えるのか?」
「でもこういうことは、フェリクスより君の方が得意でしょう。ほら、この件については君に全権を預けるからさ。好きに使っていいよ、私の権力」
(サラッとこの人、凄まじいこと言ったわよ……)
私が慄いていると、ルーズヴェルト卿がため息を吐いた。そして、首を傾げる。さらりと、彼の銀髪が揺れた。
「……仕方ないですね。レディ・リンシア。それがあなたの協力を取り付ける条件だと言うのなら。私が動きましょう」
「お手数をお掛けしますわ……」
ただでさえ彼らは多忙なさの身なのである。余計な仕事を増やして申し訳ない、と私は頭を下げた。
でも、私も背に腹はかえられない。
この最大のチャンスを逃がしてはならない。お母様も動いてくれているだろうし、お父様は……ちょっと読めないけど。
だけど、この件を人任せにはできなかったし、するつもりもなかった。
そうして、私は王太子殿下と約束を取り付けると、私自身はセリーナの調査を行うこととなった。
馬車の中で、私は今後の算段を立てた。
(まずは、魔道具管理部で把握している違法魔道具一覧を確認させてもらって……)
だけど、エルヴァニアでできることはもうやり尽くしているに違いない。それでダメだったからこそ、私に白羽の矢が立ったのだと思う。
それなら……
(私に出来ること、といえば)
私にあるのはエルドラシアで得た知識と、そしてエルドラシア魔法学院で得た人脈である。後者に至っては、図書室の亡霊呼ばわりされていたので友人は1人もいないが。
でも、ガリ勉だったおかげで、教授とは仲が良かった。
……教授なら、何か知っているかもしれない。
(その線を、当たってみるとしましょうか!)
今後の算段を立てながら、リンメル伯爵邸に戻ると──カウニッツ伯爵家から、手紙が届いていた。
「セリーナは、その魔力の高さから陛下に【聖女】の称号を与えられた。……そこまではいいんだ。だけど問題は──」
「その後、ということですわよね」
彼の言葉を引き継ぐようにして私が言うと、王太子殿下が頷いて答えた。
ルーズヴェルト卿が情報を整理するように淡々と話を続ける。
「【平民の少女が、公爵家に引き取られ、あっという間に貴族社会の仲間入り。そして、彼女は高位貴族に見初められて、幸せに暮らしました】……とは、まるでどこかの物語のようですね。だけどここは、現実社会。本来、有り得ないことです」
「有り得ない、というのは?」
「普通、そんな成り上がり方をしたら、嫌われるでしょう。貴族というのは、血筋にうるさい上に選民主義者が多い。ですが、カミロ・カウニッツを初め、ダミアン・ドゥンカーなど、様々な男が彼女に惹かれている。これは明らかにおかしい」
そういえば……聖女の取り巻きといえば──私は、いつも彼女を取り巻いている男性陣の顔を思い出した。
まず筆頭なのはやはり、フェリクス・フェルスターだろう。次にルシアン・ルーズヴェルト。この2人は王太子殿下の指示によるものだろうから除外するとして……。
他にはカミロ・カウニッツと、ダミアン・ドゥンカー。
ちなみに、このダミアンというのは、クララの婚約者でもある。
あの夜、彼女を置き去りにしたのはこのダミアンである。
(聖女の取り巻きとして有名なのはこの4人だけど……)
それは、彼女が自身に近づくことを許可しているのが、この4人なのだ。
ちなみにこの4人はもれなく全員、美形である。セリーナはカミロに負けず劣らず面食いだと思う。
私は状況を整理すると、頷いて答えた。
「状況は理解しましたわ。どこまでお役に立てるか分かりませんが……私も、最大限、助力させていただきます」
「ありがとう」
「それと──王太子殿下。とても恐れ多いことなのですか私からもひとつ、よろしいでしょうか」
私の言葉に、王太子殿下が目を瞬いた。
寝不足の彼にこんなお願い……もっといえば、取引を持ちかけるのは気が咎めたが、仕方ない。私もそうは言っていられない。
余裕なんて、ないのだから。
私の目下の悩み事──解決しなければならないトラブルといえば、カミロとの婚約と、そして、カウニッツ伯爵家とリンメル伯爵家間で結ばれた契約書の存在である。
あれが解決しないことには、どうしても私の意識はそちらに向いてしまう。
(エルヴァニアの民として、セリーナの件も解決しなければ、と思うけれど……)
でも、私にとって優先順位の高いのは、やはり家の事だ。
私は、王太子殿下を見つめると口を開いた。
「──」
王太子殿下は、私の話を聞くと、流石に驚いたように目を見開いた。眠気も吹き飛んだようだわ……。
彼は、顎に手をあてると、考え込むようにしながら、口を開いた。
「なるほど……分かった。その件は私の方で調べておく」
「ありがとうございます、王太子殿下」
私はお礼を言ってから胸を張った。そして、拳で胸元を叩いて見せる。
「これで私も、本腰を入れて調査ができるというものですわ。
『違法魔道具の件、私にお任せ下さい!!』
……とは流石に豪語できませんが。でも必ず、お役に立てて見せるとお約束いたします」
「頼もしい限りだね」
王太子殿下は苦笑すると、それから顔を上げてルーズヴェルト卿に視線を向ける。
「私が動きたいのは山々なんだけど……知ってのとおり、私は死ぬほど多忙だ。これ以上仕事が増えたら過労死待ったナシだ。叔父をどうにかする前に、私が過労で死ぬ」
「確かにね」
フェルスター卿が頷いた。
「だから、ルシアン。君に任せていい?」
「……ヴィンセント。お前は、俺が暇そうに見えるのか?」
「でもこういうことは、フェリクスより君の方が得意でしょう。ほら、この件については君に全権を預けるからさ。好きに使っていいよ、私の権力」
(サラッとこの人、凄まじいこと言ったわよ……)
私が慄いていると、ルーズヴェルト卿がため息を吐いた。そして、首を傾げる。さらりと、彼の銀髪が揺れた。
「……仕方ないですね。レディ・リンシア。それがあなたの協力を取り付ける条件だと言うのなら。私が動きましょう」
「お手数をお掛けしますわ……」
ただでさえ彼らは多忙なさの身なのである。余計な仕事を増やして申し訳ない、と私は頭を下げた。
でも、私も背に腹はかえられない。
この最大のチャンスを逃がしてはならない。お母様も動いてくれているだろうし、お父様は……ちょっと読めないけど。
だけど、この件を人任せにはできなかったし、するつもりもなかった。
そうして、私は王太子殿下と約束を取り付けると、私自身はセリーナの調査を行うこととなった。
馬車の中で、私は今後の算段を立てた。
(まずは、魔道具管理部で把握している違法魔道具一覧を確認させてもらって……)
だけど、エルヴァニアでできることはもうやり尽くしているに違いない。それでダメだったからこそ、私に白羽の矢が立ったのだと思う。
それなら……
(私に出来ること、といえば)
私にあるのはエルドラシアで得た知識と、そしてエルドラシア魔法学院で得た人脈である。後者に至っては、図書室の亡霊呼ばわりされていたので友人は1人もいないが。
でも、ガリ勉だったおかげで、教授とは仲が良かった。
……教授なら、何か知っているかもしれない。
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今後の算段を立てながら、リンメル伯爵邸に戻ると──カウニッツ伯爵家から、手紙が届いていた。
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