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2.伯爵令嬢リンシアは魔道具作りが楽しい
15話:違法魔道具は正しく呪いのアイテム
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私が開いたページには、王家が把握している違法魔道具が羅列されていた。
それは問題ない。問題ないのだけど──
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
管理番号:第NJ=JGJ!UJH番
管理名:黒曜の手鏡
効果:願った姿を得る
代償:魂が吸収される
管理状態:管理
管理番号:第J*AJMKN*AX番
管理名:偽りのウェディングベール
効果:精霊を視認、また精霊の声を聞く
代償:使用者の状態異常(発狂)
管理状態:損壊(寿命)
管理番号:第KGJL*OKAM番
管理名:砂時計の腕輪
効果:魔力増幅
代償:使用者の寿命を使用する
管理状態:損壊(自壊)
管理番号:第AEM'NYN,JA番
管理名:影読みの花輪
効果:影を操る
代償:使用者の存在ごと影に吸収される
管理状態:不明
・
・
・
⋆┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⋆
(管理番号が数字ではないのは、万が一、部外者に見られた時のことを考えて。長い単語の羅列は、瞬間的に記憶するのが難しいもの)
それこそ、マリア先生とかでは無い限り。
違法魔道具の効果と代償についても知っていたので、これも予想範囲内。
問題は──
(損壊(自壊)って……何!?)
書類には、魔道具の管理名の横に
【不明】、【管理】、【損壊】
と三つに区分されているのだ。
そしてさらに損壊は【寿命】、【意図的破壊】、【自壊】と分けられている。
チラホラ、損壊(自壊)と書かれている魔道具があり、思わず私は書類から顔を上げた。
「この自壊、というのは?」
答えたのは、王太子殿下だった。
「話によると違法魔道具は寿命以外で、自ら機能を停止することもあるらしい。なぜそうなるかまではまだ、解明されていないようだけどね」
「このリストには、聖女が使っていると思われる違法魔道具はなさそうですわね……」
「そうなんだ。そこには、魅了効果のある違法魔道具の記載がない。だから、行き詰まっている」
王太子殿下が疲れたようにため息を吐いた。
書類は数ページに渡り、長々と書かれていたがその殆どが【損壊】とされていた。不明のものもいくつかあるが、それは私たちの探しているものではなさそうだ。
その後、私はさらに書類を読み込み、王太子殿下とルーズヴェルト卿は仕事が押しているということでそれぞれ仕事に戻って行った。
ルーズヴェルト卿が用意した書類には、セリーナの経歴が記されていた。
セリーナが生まれたのは名もない村だった。彼女は成人を迎えると、近くの街シュタインハーウェンに移動する。
シュタインハーウェンは、ザウアー公爵領なので、そこでザウアー公爵は彼女を見つけた、との事だった。
村での聞きこみ調査も行ったが、村の住民の反応は芳しくなく、セリーナを地味な少女、だと言った。
(……地味?)
落ち着いて見えるが、セリーナはとても顔の整った女性だ。凛とした美しさがある。
村では、上手くいっていなかったのだろうか。
(魅了は、女性には効かない?)
それとも、もしかして条件がある?対象範囲が限られている……?
書類に目を通し終わった時には、既に日はだいぶ傾いていた。いつの間にか、フェルスター卿も執務室にいた。彼は私と目が合うと、ウィンクをしてみせる。
どうでもいいが、対策本部の人達はよくウィンクをするわね……。と言っても、王太子殿下とフェルスター卿の2名だけだけど。
私が帰宅することを伝えると、ルーズヴェルト卿が馬車留めまで送ると申し出てくれた。彼と2人で(人目につきそうな場所を)歩くのは遠慮したかったが、既に2人での調査任務が確定してしまったところだ。
今更仕方ない気がして、私はその申し出を受け入れた。
執務室を出ると、ひんやりとした空気が頬に触れた。
「もう随分寒いですわね」
世間話のつもりで話を振ると、ルーズヴェルト卿が私に視線を寄越した。それから、感情を感じさせない声で答える。
「そうですね。それより、レディ・リンシア。急遽、私が付いていくこととなってしまい申し訳ありません」
「いいえ。人手が増えるのは助かりますもの。ルーズヴェルト卿こそ、突然のことで困ったのではありませんか?何せ、エルドラシアですもの。容易に行ける場所ではありませんわ」
「……いえ、私は」
そこで、ルーズヴェルト卿が足を止める。
不思議に思って顔を上げると、彼は私を真っ直ぐに見つめていた。
「あなたと一緒に行くことが出来て嬉しいと思っていますよ」
「──」
一瞬、何を言われているのか理解が追いつかなかった。思わず目を見開く。
瞬きを繰り返して困惑していると、ルーズヴェルト卿が微かに笑みを見せた。
「あなたの魔道具作りはとても楽しそうですから。いつか、近くで拝見したいと思っていたんです」
「ああ、そういう……」
(そういう意味ね!なるほどね!!)
一気に私は脱力した。
そして、意味深な言葉を口にした自覚がないのか、ルーズヴェルト卿が首を傾げて私を見てくる。
「……何か?」
「いえ。……エルドラシアでは調査が目的ですから、私が魔道具作りをする機会はないのではないかしら」
私の言葉に、ルーズヴェルト卿もなるほど、と思ったのだろう。彼は頷いて答えた。
「それでも、あなたといる精霊はいつも楽しそうだ。だから、私はあなたを見ていたいんですよ」
そう言われても、私には精霊が見えない。しかし、ルーズヴェルト卿に限って嘘を言うとは思えない。そもそもその必要が無いもの。
つまりこれは本心から言っているのだと思う。
ふと、気になって私は彼に尋ねた。
「……精霊って、どんな姿かたちをしていますの?」
「形?」
「私には見えませんもの。気になりますわ」
この疑問は私だけではなく、一般的なものだろう。だからこそ、精霊を視認できる、という違法魔道具も生まれたのだろうし。私の言葉にルーズヴェルト卿は難しそうに眉を寄せた。
「……気付いた時からそこにいましたので、上手く説明はできないのですが」
「何頭身ですか?」
「何頭身!?」
「聞き取れる周波数は?声域はどの程度ですの?オクターブは?」
どんどん疑問が湧いてしまい、思わずルーズヴェルト卿に質問責めをしてしまう。
「周波数?いえ、考えたことが……。オクターブ?」
困惑する彼を見ながらふと、私は先程の、王太子殿下との会話を思い出していた。
それはつまり──
「王太子殿下はああ仰ったけれど。意外と向いているんじゃないかしら……」
もちろん、色仕掛けの話である。
独り言のように小さな声だったので、ルーズヴェルト卿には聞こえなかったようだ。彼が不思議そうに首を傾げる。
それに、何でもありませんわ、と首を横に振って答える。
何せ、ルーズヴェルト卿は無自覚に口説き文句っぽいことを言うのだ。意外と、色仕掛けの適任者な気がしてならない。
そういえばこの人、あの時も紛らわしいこと言ってなかったかしら……。
『私のところに来ませんか?あなたが欲しい』というやつだ。
(……どこからどう聞いても、口説き文句よね!?)
本人には、その自覚がなさそうだけど。
私はため息を吐くと思考を切り変えた。そして、ずっと気になっていたものの、聞きそびれていたことを彼に尋ねた。
「申し訳ありません。話が逸れましたわね。聖女の件なのですが」
「──」
その名の口にした途端、ルーズヴェルト卿の纏う空気がピリついた。本当に、セリーナを嫌っているのがよく分かる。
彼には精霊が見えるとのことだし、精霊を無理に従わせるセリーナのことをよく思わないのはまあ、当然だろう。
そんな彼女に言い寄り、さらに今では追い回される立場になったというのは、彼の心情を思うと気の毒である。
「彼女が魅了の違法魔道具を使っていると仮定してのお話です。なぜ、ルーズヴェルト卿やフェルスター卿、王太子殿下には影響がないのでしょうか」
私の疑問に、ルーズヴェルト卿が目を瞬いた。
そういえば、まだ言ってなかったか、という顔である。聞いておりませんわ。
それは問題ない。問題ないのだけど──
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管理番号:第NJ=JGJ!UJH番
管理名:黒曜の手鏡
効果:願った姿を得る
代償:魂が吸収される
管理状態:管理
管理番号:第J*AJMKN*AX番
管理名:偽りのウェディングベール
効果:精霊を視認、また精霊の声を聞く
代償:使用者の状態異常(発狂)
管理状態:損壊(寿命)
管理番号:第KGJL*OKAM番
管理名:砂時計の腕輪
効果:魔力増幅
代償:使用者の寿命を使用する
管理状態:損壊(自壊)
管理番号:第AEM'NYN,JA番
管理名:影読みの花輪
効果:影を操る
代償:使用者の存在ごと影に吸収される
管理状態:不明
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(管理番号が数字ではないのは、万が一、部外者に見られた時のことを考えて。長い単語の羅列は、瞬間的に記憶するのが難しいもの)
それこそ、マリア先生とかでは無い限り。
違法魔道具の効果と代償についても知っていたので、これも予想範囲内。
問題は──
(損壊(自壊)って……何!?)
書類には、魔道具の管理名の横に
【不明】、【管理】、【損壊】
と三つに区分されているのだ。
そしてさらに損壊は【寿命】、【意図的破壊】、【自壊】と分けられている。
チラホラ、損壊(自壊)と書かれている魔道具があり、思わず私は書類から顔を上げた。
「この自壊、というのは?」
答えたのは、王太子殿下だった。
「話によると違法魔道具は寿命以外で、自ら機能を停止することもあるらしい。なぜそうなるかまではまだ、解明されていないようだけどね」
「このリストには、聖女が使っていると思われる違法魔道具はなさそうですわね……」
「そうなんだ。そこには、魅了効果のある違法魔道具の記載がない。だから、行き詰まっている」
王太子殿下が疲れたようにため息を吐いた。
書類は数ページに渡り、長々と書かれていたがその殆どが【損壊】とされていた。不明のものもいくつかあるが、それは私たちの探しているものではなさそうだ。
その後、私はさらに書類を読み込み、王太子殿下とルーズヴェルト卿は仕事が押しているということでそれぞれ仕事に戻って行った。
ルーズヴェルト卿が用意した書類には、セリーナの経歴が記されていた。
セリーナが生まれたのは名もない村だった。彼女は成人を迎えると、近くの街シュタインハーウェンに移動する。
シュタインハーウェンは、ザウアー公爵領なので、そこでザウアー公爵は彼女を見つけた、との事だった。
村での聞きこみ調査も行ったが、村の住民の反応は芳しくなく、セリーナを地味な少女、だと言った。
(……地味?)
落ち着いて見えるが、セリーナはとても顔の整った女性だ。凛とした美しさがある。
村では、上手くいっていなかったのだろうか。
(魅了は、女性には効かない?)
それとも、もしかして条件がある?対象範囲が限られている……?
書類に目を通し終わった時には、既に日はだいぶ傾いていた。いつの間にか、フェルスター卿も執務室にいた。彼は私と目が合うと、ウィンクをしてみせる。
どうでもいいが、対策本部の人達はよくウィンクをするわね……。と言っても、王太子殿下とフェルスター卿の2名だけだけど。
私が帰宅することを伝えると、ルーズヴェルト卿が馬車留めまで送ると申し出てくれた。彼と2人で(人目につきそうな場所を)歩くのは遠慮したかったが、既に2人での調査任務が確定してしまったところだ。
今更仕方ない気がして、私はその申し出を受け入れた。
執務室を出ると、ひんやりとした空気が頬に触れた。
「もう随分寒いですわね」
世間話のつもりで話を振ると、ルーズヴェルト卿が私に視線を寄越した。それから、感情を感じさせない声で答える。
「そうですね。それより、レディ・リンシア。急遽、私が付いていくこととなってしまい申し訳ありません」
「いいえ。人手が増えるのは助かりますもの。ルーズヴェルト卿こそ、突然のことで困ったのではありませんか?何せ、エルドラシアですもの。容易に行ける場所ではありませんわ」
「……いえ、私は」
そこで、ルーズヴェルト卿が足を止める。
不思議に思って顔を上げると、彼は私を真っ直ぐに見つめていた。
「あなたと一緒に行くことが出来て嬉しいと思っていますよ」
「──」
一瞬、何を言われているのか理解が追いつかなかった。思わず目を見開く。
瞬きを繰り返して困惑していると、ルーズヴェルト卿が微かに笑みを見せた。
「あなたの魔道具作りはとても楽しそうですから。いつか、近くで拝見したいと思っていたんです」
「ああ、そういう……」
(そういう意味ね!なるほどね!!)
一気に私は脱力した。
そして、意味深な言葉を口にした自覚がないのか、ルーズヴェルト卿が首を傾げて私を見てくる。
「……何か?」
「いえ。……エルドラシアでは調査が目的ですから、私が魔道具作りをする機会はないのではないかしら」
私の言葉に、ルーズヴェルト卿もなるほど、と思ったのだろう。彼は頷いて答えた。
「それでも、あなたといる精霊はいつも楽しそうだ。だから、私はあなたを見ていたいんですよ」
そう言われても、私には精霊が見えない。しかし、ルーズヴェルト卿に限って嘘を言うとは思えない。そもそもその必要が無いもの。
つまりこれは本心から言っているのだと思う。
ふと、気になって私は彼に尋ねた。
「……精霊って、どんな姿かたちをしていますの?」
「形?」
「私には見えませんもの。気になりますわ」
この疑問は私だけではなく、一般的なものだろう。だからこそ、精霊を視認できる、という違法魔道具も生まれたのだろうし。私の言葉にルーズヴェルト卿は難しそうに眉を寄せた。
「……気付いた時からそこにいましたので、上手く説明はできないのですが」
「何頭身ですか?」
「何頭身!?」
「聞き取れる周波数は?声域はどの程度ですの?オクターブは?」
どんどん疑問が湧いてしまい、思わずルーズヴェルト卿に質問責めをしてしまう。
「周波数?いえ、考えたことが……。オクターブ?」
困惑する彼を見ながらふと、私は先程の、王太子殿下との会話を思い出していた。
それはつまり──
「王太子殿下はああ仰ったけれど。意外と向いているんじゃないかしら……」
もちろん、色仕掛けの話である。
独り言のように小さな声だったので、ルーズヴェルト卿には聞こえなかったようだ。彼が不思議そうに首を傾げる。
それに、何でもありませんわ、と首を横に振って答える。
何せ、ルーズヴェルト卿は無自覚に口説き文句っぽいことを言うのだ。意外と、色仕掛けの適任者な気がしてならない。
そういえばこの人、あの時も紛らわしいこと言ってなかったかしら……。
『私のところに来ませんか?あなたが欲しい』というやつだ。
(……どこからどう聞いても、口説き文句よね!?)
本人には、その自覚がなさそうだけど。
私はため息を吐くと思考を切り変えた。そして、ずっと気になっていたものの、聞きそびれていたことを彼に尋ねた。
「申し訳ありません。話が逸れましたわね。聖女の件なのですが」
「──」
その名の口にした途端、ルーズヴェルト卿の纏う空気がピリついた。本当に、セリーナを嫌っているのがよく分かる。
彼には精霊が見えるとのことだし、精霊を無理に従わせるセリーナのことをよく思わないのはまあ、当然だろう。
そんな彼女に言い寄り、さらに今では追い回される立場になったというのは、彼の心情を思うと気の毒である。
「彼女が魅了の違法魔道具を使っていると仮定してのお話です。なぜ、ルーズヴェルト卿やフェルスター卿、王太子殿下には影響がないのでしょうか」
私の疑問に、ルーズヴェルト卿が目を瞬いた。
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