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2.伯爵令嬢リンシアは魔道具作りが楽しい
17話:少し早めのサプライズハロウィーン
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流石に、屈辱だと感じる感性はあるらしい。
今までセーブしていたけれど、もう構うものか。だいたい、ここで会ったのはいい機会だったのよ。この際だわ。言わせてもらおうじゃない。
「先日のお話、お聞きしてよ。……レオナルドは、聖女様のお気に召しました?」
「レオナルド、ああ、あなたの弟ね?とても可愛らしいわね。少し抱きしめただけで赤く──」
「弟は屈辱だったそうですわよ。よりによって、あなたに触れられた、というのは」
レオナルドは、ハッキリそう言ってなかったが、嫌がっていたのは間違いない。私が多少アレンジして言うと、セリーナの顔がぽかんとした。
「……は?」
「可哀想に。屈辱で顔が赤くなってしまったのね。レオナルドには悪いことをしたわ。聖女様がカミロと良い仲でさえなければ、レオナルドも悪感情は抱かなかったでしょうに」
「なっ……!私が悪いと言いたいの!?」
「悪いでしょう」
何を当然のことを、と私はハッキリと言った。セリーナの目が見開かれる。
「だから、最終試験でお披露目した魔道具……魔法のカメラは今、審議に入っているのですわ。なぜ陛下はこの件を保留にしていると思っていらっしゃるの?魔道具が本物だった場合、あなたに罰を与えなければならないからよ」
「──」
セリーナが目を見開く。
驚くのはこちらの方だわ。
(まさか本気で、自分には何の非もないと思っているの?)
あの魔道具が本物だと認められる、ということは即ち、あのセリーナの暴言も実際にあったと証明されることになる。
それだけではない。彼女が婚約者のいる紳士と親密な関係であったことを裏付けるものにもなるのだ。
彼女には聖女としての利用価値がある。
だからこそ、立場まで奪われることはないだろうけれど、今のような自由はもう許されなくなるだろう。
聖女の権威の失墜は、王家としても避けたいところのはず。だからこそ、これが真実だと知れたらそれこそ王家は、こんなことが二度と起きないようにセリーナを幽閉するだろう。
私は笑みを消して、彼女を見た。
首を傾げると、表情のない私が気味悪かったのか、セリーナは一歩後ずさった。
「ねえ、聖女様」
「な、何よ……」
「あなたは確かに聖女という立場にありますけれど……それは、薄氷の上だと知っていて?」
トン、と彼女の胸元を指で触れた。
ちょうど、心臓の上あたり。
突然触れられたことにセリーナは驚きに息を呑んだ。そして、彼女は不穏な言葉に顔を上げた。
呆気に取られているようだった。
「【聖女】なんて、あなたが逃げないように国に縛り付ける首輪に過ぎないのに。そのお詫びに、あなたには様々な特権が与えられている。だけど」
そう言うと、私は手を離す。
すると、まるで見えない糸で縛られていたように硬直していたセリーナが、ハッとしたように身じろいだ。顔をひきつらせる彼女を見て、私はにっこり笑みを浮かべた。
「あまりオイタをしていると、その首輪。酷いものになりましてよ?見えない首輪が、見える首輪に変わるのは……聖女様もお嫌でしょう?」
「なっ……なっ……!!」
セリーナは、返す言葉がないようだった。おどろおどろしい言い方は十分に彼女の恐怖心を煽ったのだろう。咄嗟に首に手をやっているあたり、相当怖かったらしい。
少し早いハロウィンということで、良かったじゃない。楽しめたでしょう?
私は笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。
「今は【貢献】という形ですけれど。それがいつか【搾取】に変わらないといいですわね。まあ、これも、聖女様の行い次第、というところでしょうか」
「──っ……!」
「豊穣祭が近いでしょう?悪しき魔物に魅入られないよう、僭越ながら私から忠告ですわ」
にっこりと、意図的に睨むようにしながら微笑みを浮かべれば、セリーナの顔はみるみるうちに顔面蒼白となった。もはや白を通り越して青白い。彼女は微かにくちびるを震えさせたが、それは言葉にはならなかった。
私は、完全にセリーナを無力化したと判断して、白けた思いで彼女から視線を外した。
そして、その時、思い出した。
そういえば、この場には私とセリーナ以外に、ルーズヴェルト卿もいるのだったわ……と。
ルーズヴェルト卿を見ると、彼は女同士の(というか、私の)苛烈な口撃に若干引いているようだった。でも、構わない。
私は笑みを浮かべ、ルーズヴェルト卿に声をかけた。
「聖女様はお務めに戻れるそうですわ。行きましょうか」
今までセーブしていたけれど、もう構うものか。だいたい、ここで会ったのはいい機会だったのよ。この際だわ。言わせてもらおうじゃない。
「先日のお話、お聞きしてよ。……レオナルドは、聖女様のお気に召しました?」
「レオナルド、ああ、あなたの弟ね?とても可愛らしいわね。少し抱きしめただけで赤く──」
「弟は屈辱だったそうですわよ。よりによって、あなたに触れられた、というのは」
レオナルドは、ハッキリそう言ってなかったが、嫌がっていたのは間違いない。私が多少アレンジして言うと、セリーナの顔がぽかんとした。
「……は?」
「可哀想に。屈辱で顔が赤くなってしまったのね。レオナルドには悪いことをしたわ。聖女様がカミロと良い仲でさえなければ、レオナルドも悪感情は抱かなかったでしょうに」
「なっ……!私が悪いと言いたいの!?」
「悪いでしょう」
何を当然のことを、と私はハッキリと言った。セリーナの目が見開かれる。
「だから、最終試験でお披露目した魔道具……魔法のカメラは今、審議に入っているのですわ。なぜ陛下はこの件を保留にしていると思っていらっしゃるの?魔道具が本物だった場合、あなたに罰を与えなければならないからよ」
「──」
セリーナが目を見開く。
驚くのはこちらの方だわ。
(まさか本気で、自分には何の非もないと思っているの?)
あの魔道具が本物だと認められる、ということは即ち、あのセリーナの暴言も実際にあったと証明されることになる。
それだけではない。彼女が婚約者のいる紳士と親密な関係であったことを裏付けるものにもなるのだ。
彼女には聖女としての利用価値がある。
だからこそ、立場まで奪われることはないだろうけれど、今のような自由はもう許されなくなるだろう。
聖女の権威の失墜は、王家としても避けたいところのはず。だからこそ、これが真実だと知れたらそれこそ王家は、こんなことが二度と起きないようにセリーナを幽閉するだろう。
私は笑みを消して、彼女を見た。
首を傾げると、表情のない私が気味悪かったのか、セリーナは一歩後ずさった。
「ねえ、聖女様」
「な、何よ……」
「あなたは確かに聖女という立場にありますけれど……それは、薄氷の上だと知っていて?」
トン、と彼女の胸元を指で触れた。
ちょうど、心臓の上あたり。
突然触れられたことにセリーナは驚きに息を呑んだ。そして、彼女は不穏な言葉に顔を上げた。
呆気に取られているようだった。
「【聖女】なんて、あなたが逃げないように国に縛り付ける首輪に過ぎないのに。そのお詫びに、あなたには様々な特権が与えられている。だけど」
そう言うと、私は手を離す。
すると、まるで見えない糸で縛られていたように硬直していたセリーナが、ハッとしたように身じろいだ。顔をひきつらせる彼女を見て、私はにっこり笑みを浮かべた。
「あまりオイタをしていると、その首輪。酷いものになりましてよ?見えない首輪が、見える首輪に変わるのは……聖女様もお嫌でしょう?」
「なっ……なっ……!!」
セリーナは、返す言葉がないようだった。おどろおどろしい言い方は十分に彼女の恐怖心を煽ったのだろう。咄嗟に首に手をやっているあたり、相当怖かったらしい。
少し早いハロウィンということで、良かったじゃない。楽しめたでしょう?
私は笑みを浮かべたまま、言葉を続けた。
「今は【貢献】という形ですけれど。それがいつか【搾取】に変わらないといいですわね。まあ、これも、聖女様の行い次第、というところでしょうか」
「──っ……!」
「豊穣祭が近いでしょう?悪しき魔物に魅入られないよう、僭越ながら私から忠告ですわ」
にっこりと、意図的に睨むようにしながら微笑みを浮かべれば、セリーナの顔はみるみるうちに顔面蒼白となった。もはや白を通り越して青白い。彼女は微かにくちびるを震えさせたが、それは言葉にはならなかった。
私は、完全にセリーナを無力化したと判断して、白けた思いで彼女から視線を外した。
そして、その時、思い出した。
そういえば、この場には私とセリーナ以外に、ルーズヴェルト卿もいるのだったわ……と。
ルーズヴェルト卿を見ると、彼は女同士の(というか、私の)苛烈な口撃に若干引いているようだった。でも、構わない。
私は笑みを浮かべ、ルーズヴェルト卿に声をかけた。
「聖女様はお務めに戻れるそうですわ。行きましょうか」
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