〈完結〉伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした

ごろごろみかん。

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3.伯爵令嬢リンシアは共同戦線を張る

10話:伯爵令嬢リンシアは共同戦線を張る

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その後、違法魔道具、もとい悪魔たちは次々に情報を口にした。嬉々として仲間を売り始めたのである。

『それならもっと早くにそう言いなさいよ!!いくらでも教えてあげるわ』
『可哀想な悪魔がまた一匹増えるのか、哀れだのう哀れだのう。愉快だのう』
『早く連れてこいよ!そいつの情けない顔、拝んでやらぁ!』
『それでそれで?特徴は?ほら!わかってること全部吐きなさいって!!』

心底楽しんでいる様子だ。さすが悪魔だわ……。

(他人の不幸は蜜の味ってわけね)

フランクな物言いだけど、彼らは人ではない。悪魔は他人の──例えそれが同胞であっても、不幸を見るのが大好物なのだろう。本当、良い性格してるわ。私は自分のことを棚に上げてそんなことを考えた。



その後、私は違法魔道具たちから得られる情報を全て聞いてきたが、やはり最後の決め手に欠けていた。というのも、セリーナが使用している魔道具の形態が分からない以上、特定には至らないのだ。
困ったわね……と思っていると、ある違法魔道具が言った。

『そんな漠然としているんじゃあ特定は無理だね。もっとピンポイントで言ってくれないと』

「ピンポイントで分かっていたら、あなたたちに聞いてな──」

(……ピンポイント?)

そこで私は、あることを思いついた。
思わず、バッと顔を上げる。見えてるのか見えていないのか、違法魔道具たちが狼狽えたように声を出す。

『なっ、何だよ!?まさか本当に聖水でもかける気か!?』
『あれは勘弁してちょうだいな。滅ぼされるほどではないけどとっても苦しいのよ。やるならそこの、生意気な悪ガキにしてちょうだい』
『なんだとオバサン!』
『オバサンですって!?』

あっという間に、違法魔道具たちが口論を始めるのを唖然とした思いな聞く。それから私は、首を傾げて背後の二人に意見を求めた。
 
「あまり仲がよろしくないみたいですわね?」

「仲が良くない……というより、連携が絶望的のようですね。悪魔は利己的な生き物ですから」

「ああ、そういう……。連携プレーを求められたら、一気に瓦解しそうね……」

そんな取り留めのないことを話しながら、私は顔を上げた。そして、ルーズヴェルト卿に尋ねる。

「ルーズヴェルト卿。ひとつ、ご相談があるのですが──」






そしてふたたび地上に戻った私は、寮生活を送っていた時に使用していた研究室に向かった。ルーズヴェルト卿は、以前お世話になったという教授に挨拶に伺うそうだ。魔法管理部に在籍している人間の大半は、エルドラシア魔法学院への留学経験がある。ルーズヴェルト卿も例に漏れず、彼は交換留学という形でこの学院にお世話になったようだ。もっとも彼の専攻は魔法学なので、マリア先生との面識はなかったようだけど。

(期間は残り一ヶ月……)

帰りはエルドラシアの港までマリア先生の魔道具で送っていただくことになっているので、そこは計算しない。となると、帰国に必要日数はエルドラシア⇔エルヴァニア間の船旅十日。そして、そこから王都までの馬車旅七日を合わせて、計十七日。
王都に着いたらまず、王太子殿下に報告と詳細な打ち合わせをしなければ。

(何よりおあつらえ向きに最高の舞台・・・・・があるのだから、それに間に合うようにしなければね)

私の目的は、豊穣祭だ。
その夜会で、全て終わらせる。

間に合うかどうかはほぼ賭けだったけど、私は全力で例の準備に当たった。


先程、地下の禁書室で私がルーズヴェルト卿に言ったこと、というのは──

「魔法を無効化する魔道具を作ります」

「…………はっ?」

「ルーズヴェルト卿。あなたにお願いがありますの。魔道具は私が作りますから、それに無効化の魔法を付与していただきたいのですわ」

私の言葉に、ルーズヴェルト卿は心底驚いたのだろう。唖然としていた。

(それも当然かしら……)

なぜなら、魔法を無効化する魔道具など、私だって見たこともないし、聞いたこともない。恐らく、エルドラシアにもないだろう。実例のないものを作るのだ。しかも、期限は決められている。
難易度は遥かに高い。だけど、もう決めたのだ。あやふやな情報を手に調査を進めるより、ピンポイントで見つけてしまった方が絶対に話は早い。

私の言葉に、ルーズヴェルト卿は絶句していたが、やがて考えるようにまつ毛を伏せた。
そして、ふたたび顔を上げた彼は、既に決意していたようだった。

「分かりました。どこまでお力になれるかは分かりませんが、私も最大限ご助力します」

「ありがとうございます、ルーズヴェルト卿!大変心強いですわ!!何せ、あなたは文官筆記試験を満点合格なさったのですもの。私では気付かないことに気付いてくださるかもしれませんし、それに何より。あなたは魔法に造詣が深いでしょう?私ひとりでは、この計画を成し遂げるには無理がありますもの」

私の言葉に、ルーズヴェルト卿は驚いたように目を瞬いた。まさか筆記試験の件を私が知っているとは思わなかったのだろう。
でも、かなり有名な話だもの。魔法学に多少なりとも興味のある人間は全員知っていると思う。

彼の協力が得られるのは、大変、ほんっとうに有難かった。何せ、魔道具というのは基本、魔法の力を物に付与するものだからだ。
魔法を無効化する魔法など、そもそもあるのかどうかすら不明。

(でもきっと、探せばあるはずだわ。可能性はゼロじゃない)

しかし、あいにく私は魔法学の方面に疎い。私の専攻はあくまで魔道具科であって、魔法学ではないのだ。

だから、私一人でこの魔道具を作ろうとしていたら相当私は苦労していたはずだ。出来たとしても、かなり長い時間を要していたに違いない。そうなったら、期限を大幅に過ぎていた可能性が高い。

(ルーズヴェルト卿の協力を取り付けられたのは幸いだったわ)

何せ、彼のエルドラシア魔法学院の専攻は魔法学。これ以上ないほどの適任者である。

そういうわけで、私はその日から魔道具作りにかかりきりとなった。時間はあっという間に過ぎていく。気がつけば、十日、二十日、そして三十日が経過していた。
期限まで、残りあと一日。
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