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4.伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
5話:面の皮が厚いのはどちらかしら?
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「今度こそ、身に覚えがありそうで何よりですわ。……失礼、この場をお借りして、検めたいことがございますの。クラインベルク様、こちらに」
手を挙げると、当初の予定通り控えていたクラインベルク様が証拠品を手にやってきた。
(本当は、セリーナの違法魔道具使用を暴露した後は、そのまま上手いことカミロとの婚約を纏めるつもりだったのだけど……)
まさか、魅了ではなく魔力増幅の違法魔道具とは、想定外だったわ。おかげで、私の計画も狂うというものだ。流石に聖女の肩書きを失った罪人と、伯爵令息の婚約は無理だろう。
私はクラインベルク様から書類を受け取ると、それをカウニッツ伯爵に突きつけた。
「どうかしら?あなたのお探しのものは、こちらでしょう?カウニッツ伯爵。あなたは契約書の偽造から、違法魔道具の密輸罪。さらには、まあ怖い。金貸し屋のようなことまでなさっているとか!ご存知です?我が国には、貸金業規制法というものが存在しましてよ?」
わざとらしいほど大仰に私は言った。カウニッツ伯爵は目を皿のようにして私の手に持つ書類を凝視している。
(ふふ。わざわざ、相手の家を荒してまで探し回っていたようだもの。まさかそれがここにあるなんて思わなかったみたいね)
カウニッツ伯爵も、表に出ればまずいと自覚していたのだろう。借金地獄に陥った相手の家を取り上げる度に、彼は必ず書類を入手しては焼却していた。
だけど、誰もがいいようにされてきたわけではない。
窮鼠猫を噛む、とはよく言ったものでカウニッツ伯爵の搾取に抗い、一矢報いてやろうという人たちもいたのだ。今、私の手にあるこの書類の数々はそんな彼らからの提供によるものだった。
ルーズヴェルト卿の調査では、彼らは「証拠品を託すから必ずカウニッツ伯爵に報いを』と言ったらしい。カウニッツ伯爵家は、多くの人から恨まれている。
カウニッツ伯爵が絶句した時、まるで見計らっていたかのように靴の音が響いた。振り向くと、そこには国王ご夫妻と、王太子殿下の姿がある。
(役者は揃ったわ)
あとはシナリオ通りに動かすだけ。
現れた王太子殿下は、まるで初めてこの件を知ったかのように眉を寄せると、私たちに問いかけた。
「これは何の騒ぎかな?」
それに答えたのは、それまで静かに場を見守っていたフェルスター卿だ。
「リンメル伯爵家による、カウニッツ伯爵の悪事の暴露、といったところですかね」
「なっ…………!!」
それに、カウニッツ伯爵が目を見開いた。
動揺しているのだろう。カウニッツ伯爵が激しく怒鳴りつけた。
「何を言いますか!!フェルスター卿。これはれっきとした偽造罪です!!こんなのは、偽りの証拠品だ。レディ・リンシア。あなたは多少頭が回ると思っていましたが……まさかこんなものまで用意するとは!ハハ、ついに金が尽きましたか!」
それに、私は淑やかに微笑んでみせる。
何も後暗いところはない、と示すように。こういうのは、堂々したもの勝ちだもの。
「何の話をしていらっしゃるの?これが偽物かどうかは、筆跡鑑定すればわかる話では?カウニッツ伯爵……罪が暴かれて追い詰められているのかもしれませんが、嘘を吹聴するのはさらにご自身の首を絞める行いでしてよ」
私の言葉に、カウニッツ伯爵が額に青筋を立てた。
それもそうだろう。先程のカウニッツ伯爵と同じ振る舞いを、私はしているのだから。先程はお父様がカウニッツ伯爵に罪状を突きつけたが、今度はカウニッツ伯爵が我がリンメル伯爵家の恥を暴露しようとしている。だけど、私はそれを嘘だと断定することで一方的な言いがかりだと示してみせたのだ。
同じ言葉を返されるのは、カウニッツ伯爵からしたら相当腹が立つだろう。
お怒りの彼の様子に、私は内心ほくそ笑んだ。
(人は感情的になればなるほど本性を表すもの。致命的な失言、期待しているわよ、カウニッツ伯爵)
せっかくだからサービスしてさしあげましょうか。
そう思った私は、カウニッツ伯爵を見て目を細めて微笑んだ。挑発的な私の笑みに、予想通り煽られてくれたのだろう。彼は鬼の形相で、ここがどこかも忘れたらしく、紳士に有るまじき暴言を吐いた。
「貴様、このクソ女が!!お前は悪魔のような女だ!リンシア・リンメル!!多少口が回るらしいが、賢しらで生意気なだけだ!!お前のような女は決して誰にも選ばれない!高慢ちきめ!カミロが他の女に取られたのも納得というものだな!」
「ち、父上……!!」
さすがにまずいと思ったのか、カミロが静止する。しかしそれすら耳に入らないのか、カウニッツ伯爵は鼻で笑ってまくし立てた。
「ハッ!そもそもの話だぞ、ラインハルト!?お前には借金があるはずだ!?我が、カウニッツ伯爵家へのな!!それを無かったことにしようというのか!?ええ!?踏み倒す気か、おい!!」
(わあ、チンピラみたい!)
私が思い描いていたチンピラによく似ているわ……!あまりの再現率の高さにちょっと感動する。私はそれに、悠然と首を傾げて言った。
「まあ、怖いですわ。嘘も程々になさいませ」
「何……!?」
紳士の会話に割り込むのはマナー違反だけど、もはや今更だろう。今、カウニッツ伯爵と話しているのは私だもの。固まっているお父様の代わりに、私はカウニッツ伯爵を見据えて言った。
「嘘はいけませんわ、カウニッツ伯爵。さらにご自身の品位を貶めましてよ。それに……借金、って何ですの?契約書があるのなら見せていただけます?」
「──」
私の言葉に、カウニッツ伯爵が言葉に詰まった様子を見せた。契約書なんて、表に出せるはずがない。なぜならそれは、彼の罪の証にもなるからだ。あの契約書が公になれば、カウニッツ伯爵は貸金業規制法違反で摘発される。
言葉を失うカウニッツ伯爵に、私はふたたび微笑んでみせた。
(ふふ、期待に応えてくださってありがとう)
私の目論見通り、カウニッツ伯爵は言葉を滑らせてくれた。カウニッツ伯爵は返す言葉を失って、その場に静寂が広がる。
そこで、王太子殿下が片手を挙げた。
手を挙げると、当初の予定通り控えていたクラインベルク様が証拠品を手にやってきた。
(本当は、セリーナの違法魔道具使用を暴露した後は、そのまま上手いことカミロとの婚約を纏めるつもりだったのだけど……)
まさか、魅了ではなく魔力増幅の違法魔道具とは、想定外だったわ。おかげで、私の計画も狂うというものだ。流石に聖女の肩書きを失った罪人と、伯爵令息の婚約は無理だろう。
私はクラインベルク様から書類を受け取ると、それをカウニッツ伯爵に突きつけた。
「どうかしら?あなたのお探しのものは、こちらでしょう?カウニッツ伯爵。あなたは契約書の偽造から、違法魔道具の密輸罪。さらには、まあ怖い。金貸し屋のようなことまでなさっているとか!ご存知です?我が国には、貸金業規制法というものが存在しましてよ?」
わざとらしいほど大仰に私は言った。カウニッツ伯爵は目を皿のようにして私の手に持つ書類を凝視している。
(ふふ。わざわざ、相手の家を荒してまで探し回っていたようだもの。まさかそれがここにあるなんて思わなかったみたいね)
カウニッツ伯爵も、表に出ればまずいと自覚していたのだろう。借金地獄に陥った相手の家を取り上げる度に、彼は必ず書類を入手しては焼却していた。
だけど、誰もがいいようにされてきたわけではない。
窮鼠猫を噛む、とはよく言ったものでカウニッツ伯爵の搾取に抗い、一矢報いてやろうという人たちもいたのだ。今、私の手にあるこの書類の数々はそんな彼らからの提供によるものだった。
ルーズヴェルト卿の調査では、彼らは「証拠品を託すから必ずカウニッツ伯爵に報いを』と言ったらしい。カウニッツ伯爵家は、多くの人から恨まれている。
カウニッツ伯爵が絶句した時、まるで見計らっていたかのように靴の音が響いた。振り向くと、そこには国王ご夫妻と、王太子殿下の姿がある。
(役者は揃ったわ)
あとはシナリオ通りに動かすだけ。
現れた王太子殿下は、まるで初めてこの件を知ったかのように眉を寄せると、私たちに問いかけた。
「これは何の騒ぎかな?」
それに答えたのは、それまで静かに場を見守っていたフェルスター卿だ。
「リンメル伯爵家による、カウニッツ伯爵の悪事の暴露、といったところですかね」
「なっ…………!!」
それに、カウニッツ伯爵が目を見開いた。
動揺しているのだろう。カウニッツ伯爵が激しく怒鳴りつけた。
「何を言いますか!!フェルスター卿。これはれっきとした偽造罪です!!こんなのは、偽りの証拠品だ。レディ・リンシア。あなたは多少頭が回ると思っていましたが……まさかこんなものまで用意するとは!ハハ、ついに金が尽きましたか!」
それに、私は淑やかに微笑んでみせる。
何も後暗いところはない、と示すように。こういうのは、堂々したもの勝ちだもの。
「何の話をしていらっしゃるの?これが偽物かどうかは、筆跡鑑定すればわかる話では?カウニッツ伯爵……罪が暴かれて追い詰められているのかもしれませんが、嘘を吹聴するのはさらにご自身の首を絞める行いでしてよ」
私の言葉に、カウニッツ伯爵が額に青筋を立てた。
それもそうだろう。先程のカウニッツ伯爵と同じ振る舞いを、私はしているのだから。先程はお父様がカウニッツ伯爵に罪状を突きつけたが、今度はカウニッツ伯爵が我がリンメル伯爵家の恥を暴露しようとしている。だけど、私はそれを嘘だと断定することで一方的な言いがかりだと示してみせたのだ。
同じ言葉を返されるのは、カウニッツ伯爵からしたら相当腹が立つだろう。
お怒りの彼の様子に、私は内心ほくそ笑んだ。
(人は感情的になればなるほど本性を表すもの。致命的な失言、期待しているわよ、カウニッツ伯爵)
せっかくだからサービスしてさしあげましょうか。
そう思った私は、カウニッツ伯爵を見て目を細めて微笑んだ。挑発的な私の笑みに、予想通り煽られてくれたのだろう。彼は鬼の形相で、ここがどこかも忘れたらしく、紳士に有るまじき暴言を吐いた。
「貴様、このクソ女が!!お前は悪魔のような女だ!リンシア・リンメル!!多少口が回るらしいが、賢しらで生意気なだけだ!!お前のような女は決して誰にも選ばれない!高慢ちきめ!カミロが他の女に取られたのも納得というものだな!」
「ち、父上……!!」
さすがにまずいと思ったのか、カミロが静止する。しかしそれすら耳に入らないのか、カウニッツ伯爵は鼻で笑ってまくし立てた。
「ハッ!そもそもの話だぞ、ラインハルト!?お前には借金があるはずだ!?我が、カウニッツ伯爵家へのな!!それを無かったことにしようというのか!?ええ!?踏み倒す気か、おい!!」
(わあ、チンピラみたい!)
私が思い描いていたチンピラによく似ているわ……!あまりの再現率の高さにちょっと感動する。私はそれに、悠然と首を傾げて言った。
「まあ、怖いですわ。嘘も程々になさいませ」
「何……!?」
紳士の会話に割り込むのはマナー違反だけど、もはや今更だろう。今、カウニッツ伯爵と話しているのは私だもの。固まっているお父様の代わりに、私はカウニッツ伯爵を見据えて言った。
「嘘はいけませんわ、カウニッツ伯爵。さらにご自身の品位を貶めましてよ。それに……借金、って何ですの?契約書があるのなら見せていただけます?」
「──」
私の言葉に、カウニッツ伯爵が言葉に詰まった様子を見せた。契約書なんて、表に出せるはずがない。なぜならそれは、彼の罪の証にもなるからだ。あの契約書が公になれば、カウニッツ伯爵は貸金業規制法違反で摘発される。
言葉を失うカウニッツ伯爵に、私はふたたび微笑んでみせた。
(ふふ、期待に応えてくださってありがとう)
私の目論見通り、カウニッツ伯爵は言葉を滑らせてくれた。カウニッツ伯爵は返す言葉を失って、その場に静寂が広がる。
そこで、王太子殿下が片手を挙げた。
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