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4.伯爵令嬢リンシアは勝手に幸せになることにした
8話:初恋の相手
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私はルーズヴェルト卿を見て、言った。
「……初恋ですの」
突然そんなことを言われたからか、ルーズヴェルト卿が目を瞬く。
「え?」
「私はまだ、誰にも恋をしたことがないのですわ」
「ですが、あなたはあの男と」
婚約していましたよね、と続けようとしたのだと思う。
その言葉を遮って、私は言った。
「確かに婚約はしておりましたわ。ですが、あの人に恋をする余地は1ミリもありませんでしたの。私の、好きになる努力が足りなかった、と言われたら確かにその通りなのでしょう」
そう言いきった私に、ルーズヴェルト卿は何か言おうとしたようだけど、私はそれを制止した。慰めが欲しかったわけではないからだ。
だから、私は微笑んで彼を見た。
「私は、彼の婚約者でしたわ。だから私には、彼が悪事に手を染めていたのなら、それを矯正する義務があった。もし、私に覚悟があったのなら……真実、彼と生涯を共にするつもりだったなら、この身を賭して、彼を支えるべきだった」
「……そこまであなたがやる必要はありません。彼も、いい大人です」
「家族になるつもりなら、最後まで見捨ててはいけなかったのですわ。私は早い段階で、彼を見限った。後悔しているわけではありません。ただ、私にも出来ることはあった。私はそれを放棄したのです」
後悔はしていない、本当だ。
だけどきっと、もっと違う結末もあったのだろうな、と思った。カミロがしたことは許せないし、彼に引導を渡したことにも私は納得しているし、満足している。
しかし、私が彼を本心から愛せていたのなら、彼を裁く方向ではなく、共に罪を背負う覚悟で支え合うこともあったのだろう、と思っただけだ。
それの是非は置いておいて、その可能性もあった、というだけの話。
本当は口にするつもりはなかった本心だけど、彼には打ち明けることにした。
誠実な彼に、私も誠実でいたい、と思ったから。
ルーズヴェルト卿は、何も言わなかった。
きっと、色々思うことはあるだろう。
それこそ、何で今その話を?とか、カミロに何か未練が?とか思われても仕方ない。
前者はともかく、後者の誤解だけは絶対にごめんだ。
だから私は、ふふ、と笑って言葉を続けた。
「ごめんなさい、話が逸れてしまいましたわ。つまり、私は、最初から彼と寄り添うつもりが、恐らくなかったのですわ。そこは、私が反省する点かと思います。それで、ですわね。ルーズヴェルト卿」
ようやく、本題に入る。名を呼ばれた彼が、私を見た。その青灰色の瞳を見つめて、私は緊張に息を呑んだ。それからゆっくり、口を開く。
「私がなぜ、あなたにこのお話をしたか、と言いますと……知りたいのですわ。あなたが、私が誤った方向に進んだ時、私を止めてくださるか、ということを」
私の言葉に、ルーズヴェルト卿が目を見開く。この話の着地点を察したのだろう。
(ルーズヴェルト卿は、信頼できる人だわ。人としても、尊敬している)
だから、信じてみよう、と思った。
何より、信じたい、と思ったのだ。
貴族だもの。恋愛結婚なんて考えてもいなかった。カミロと婚約破棄した後は仕事に邁進してオールドミスと呼ばれるか、あるいは家のための結婚をして、貴族らしい生涯を送るのかと思っていた。
別に私は、政略結婚を嫌っているわけではないのだ。ただ、人生を共にする以上、尊敬できる人がいい、とは考えていた。
私は、ルーズヴェルト卿を信頼している。
彼が誠実な人であることは既に知っていた。
こんな話をするのは慣れないので気恥ずかしい。誤魔化すように視線を落として、私は何とか言葉を紡いだ。
「……もちろん私も、あなたに対してそのように努めます。ですから、ですね」
そこで言葉を切ったが、沈黙が続けば続くほど、言い難くなる気がした。
(ええい、ここまで言ったのだもの!!最後まで言うのよ……!!)
女は度胸と言うじゃないの……!ここで言わずして、いつ言うの。
そんな気持ちで、私は勇気を振り絞って彼に言った。
「ルーズヴェルト卿。あなたが……私の、初恋の相手になってくださいますか?」
声は、固くなってしまった。驚くほど棒読みになってしまったし、ところどころ声が上ずってしまった。
だけどこれが、今の私の精一杯。
「……初恋ですの」
突然そんなことを言われたからか、ルーズヴェルト卿が目を瞬く。
「え?」
「私はまだ、誰にも恋をしたことがないのですわ」
「ですが、あなたはあの男と」
婚約していましたよね、と続けようとしたのだと思う。
その言葉を遮って、私は言った。
「確かに婚約はしておりましたわ。ですが、あの人に恋をする余地は1ミリもありませんでしたの。私の、好きになる努力が足りなかった、と言われたら確かにその通りなのでしょう」
そう言いきった私に、ルーズヴェルト卿は何か言おうとしたようだけど、私はそれを制止した。慰めが欲しかったわけではないからだ。
だから、私は微笑んで彼を見た。
「私は、彼の婚約者でしたわ。だから私には、彼が悪事に手を染めていたのなら、それを矯正する義務があった。もし、私に覚悟があったのなら……真実、彼と生涯を共にするつもりだったなら、この身を賭して、彼を支えるべきだった」
「……そこまであなたがやる必要はありません。彼も、いい大人です」
「家族になるつもりなら、最後まで見捨ててはいけなかったのですわ。私は早い段階で、彼を見限った。後悔しているわけではありません。ただ、私にも出来ることはあった。私はそれを放棄したのです」
後悔はしていない、本当だ。
だけどきっと、もっと違う結末もあったのだろうな、と思った。カミロがしたことは許せないし、彼に引導を渡したことにも私は納得しているし、満足している。
しかし、私が彼を本心から愛せていたのなら、彼を裁く方向ではなく、共に罪を背負う覚悟で支え合うこともあったのだろう、と思っただけだ。
それの是非は置いておいて、その可能性もあった、というだけの話。
本当は口にするつもりはなかった本心だけど、彼には打ち明けることにした。
誠実な彼に、私も誠実でいたい、と思ったから。
ルーズヴェルト卿は、何も言わなかった。
きっと、色々思うことはあるだろう。
それこそ、何で今その話を?とか、カミロに何か未練が?とか思われても仕方ない。
前者はともかく、後者の誤解だけは絶対にごめんだ。
だから私は、ふふ、と笑って言葉を続けた。
「ごめんなさい、話が逸れてしまいましたわ。つまり、私は、最初から彼と寄り添うつもりが、恐らくなかったのですわ。そこは、私が反省する点かと思います。それで、ですわね。ルーズヴェルト卿」
ようやく、本題に入る。名を呼ばれた彼が、私を見た。その青灰色の瞳を見つめて、私は緊張に息を呑んだ。それからゆっくり、口を開く。
「私がなぜ、あなたにこのお話をしたか、と言いますと……知りたいのですわ。あなたが、私が誤った方向に進んだ時、私を止めてくださるか、ということを」
私の言葉に、ルーズヴェルト卿が目を見開く。この話の着地点を察したのだろう。
(ルーズヴェルト卿は、信頼できる人だわ。人としても、尊敬している)
だから、信じてみよう、と思った。
何より、信じたい、と思ったのだ。
貴族だもの。恋愛結婚なんて考えてもいなかった。カミロと婚約破棄した後は仕事に邁進してオールドミスと呼ばれるか、あるいは家のための結婚をして、貴族らしい生涯を送るのかと思っていた。
別に私は、政略結婚を嫌っているわけではないのだ。ただ、人生を共にする以上、尊敬できる人がいい、とは考えていた。
私は、ルーズヴェルト卿を信頼している。
彼が誠実な人であることは既に知っていた。
こんな話をするのは慣れないので気恥ずかしい。誤魔化すように視線を落として、私は何とか言葉を紡いだ。
「……もちろん私も、あなたに対してそのように努めます。ですから、ですね」
そこで言葉を切ったが、沈黙が続けば続くほど、言い難くなる気がした。
(ええい、ここまで言ったのだもの!!最後まで言うのよ……!!)
女は度胸と言うじゃないの……!ここで言わずして、いつ言うの。
そんな気持ちで、私は勇気を振り絞って彼に言った。
「ルーズヴェルト卿。あなたが……私の、初恋の相手になってくださいますか?」
声は、固くなってしまった。驚くほど棒読みになってしまったし、ところどころ声が上ずってしまった。
だけどこれが、今の私の精一杯。
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