魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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謁見

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王宮からの召喚命令を受けたクロノ。
それに伴い、スズネたちも王国聖騎士団軍団長の一人であるガウェインに連れられ、王都メルサを訪れていた。
そして今、謁見の間の扉の前に立ち、いよいよガルディア王国国王との謁見の時が近づく。



スローモーションのようにゆっくりと扉が開く。
部屋の中から眩いばかりの光が飛び込んできたことにより目の前が真っ白になる。

一歩部屋の中に足を踏み入れると、正面には玉座があり、その前に一人の男が立っている。
所々に細やかな装飾が施された赤いマントを羽織っているところを見るに、おそらくこの男が国王なのであろう。
部屋の方へ目を移すと、相変わらず見上げるほど高い天井に大理石で作られた床や柱、そして扉から玉座に至るまでの間には真っ赤な絨毯が一直線に敷かれている。

そして、玉座の前には赤い絨毯を挟むようにして、王宮の人間たちが左右に列を成して並んでいる。
スズネたちから向かって右側には綺麗な装いをした文官たちが並んでおり、左側には兜を外した状態のフルプレートアーマーを装備した騎士たちが並んでいる。
騎士たちの装いがガウェインと同じことから、彼らこそが王国聖騎士団において一から十二のナンバーを与えられし十二名の騎士団長たち、通称“十二の剣ナンバーズ”の面々で間違いなさそうである。

その場にいる者たち全員の視線を浴びつつ、ガウェインに連れられ玉座の前まで歩を進めるスズネたち。
そして、四人を玉座の前まで連れてくると、ガウェインは国王に対し一礼し騎士団の列へと加わった。
王への謁見など当然初めてであるスズネたちが、この後どうすればいいのか分からず呆然と立ち尽くしていると、文官側の先頭に立つ男が大声で怒鳴りつけた。


「王の御前であるぞ!!跪かぬか、この無礼者」


急な大声に肩をビクッとさせたスズネとミリアは、すぐさま男の言葉通りその場に片膝を立てた状態で跪く。


「なんじゃあのジジイは、いきなり大声を出しよって。貴様の方がよっぽど無礼じゃろ。消し炭にしてやろうか」


ラーニャはどこへ行こうとラーニャであった。
目をギラギラさせ、およそ十歳の少女とは思えないほどの目付きで、文官の男に対しガンを飛ばしている。
そんなラーニャの言動に慌てたミリアは、急いでラーニャのマントの裾をグイグイと引っ張る。


「な…なんじゃ、止めんか」

「うっさい。今は大人しくアタシと同じようにしてて」


そう言うと、目を見開いた状態のミリアが半ばキレ気味でラーニャを無理矢理跪かせる。
その光景をずっと見ていた文官の男は、眉間にシワを寄せ、顳顬をピクピクさせながらも必死に耐えている状態でなんとか押し黙っている。

しかし、このパーティーにおいて問題児は一人ではない。
三人が跪いても尚クロノだけは胸の前で腕を組み、仁王立ちした状態で国王を見つめている。
そして、少しの沈黙の後ゆっくりと口を開いた。


「おい、お前はなぜこの俺を見下ろしているんだ?頭が高いぞ。殺されたいのか?」

「「◯◇※♭☆♯◆◎□★≠%?!」」


国王に対してあまりにも失礼な物言いに、スズネとミリアは言葉にならない言葉を発しながら、クロノの服を両側から必死になって引っ張り座らせようとする。
すると、先程からの失言の連続に対し、文官の男の堪忍袋の緒が切れる。


「この無礼者がーーー!!頭が高いのは貴様だ。死罪に値する」


再び声を荒げる男に対し、クロノはスッと視線を向ける。
そして、静かで冷たい口調をもって言葉を返す。


「おい、そこの髭面のジジイ、さっきから騒がしいぞ。これは“王と王の対話”だ。一家臣ごときが割って入るなど・・・分をわきまえろ。相手がどこの誰だろうと関係ない。俺は俺だ!!」


クロノがそう言い終えると同時に、文官の男の身体がまるで一本の針金の如くピンッと硬直し、口を開くことすら許されぬまま転がるように倒れた。
突然のことに周りの文官たちは慌てふためき一同に動揺が広がる。
倒れた文官の男は、意識はあるものの身体の自由を奪われ、混乱はしているがそれを表現することは一切許されなかった。

そして、一連の騒動が起きた瞬間に、それまで一切微動だにせず直立不動で並んでいた騎士団長たちが一斉に己が武器に手をかけ瞬時に臨戦態勢を取る。
何が起こったのかは分からないが、目の前に立つ魔王クロノが“何か”をしたことは確かであった。
万が一の事が起こってからでは遅い。
それは歴戦の猛者である騎士団長たちが一番理解している。
もしクロノがこれ以上怪しい動きをしようものならば、一斉に斬りかかる心積もりである。

まさに一触即発の事態。

そんな状況となり、スズネたちが慌てた様子で周囲をキョロキョロと見回していると ────── 。


「止めい!!」


国王の一言により騎士団長たちは一斉に武器から手を離し元の体勢へと素早く戻した。
その光景を見たラーニャが「お~~~」と声を上げ、目をキラキラさせながら自分もやりたいと言わんばかりにミリアの服の裾を引きながら騒いでいる。


「申し訳ない、クロノ殿。我が家臣たちの非礼をお詫びする」


国王は胸に手を当て、軽く頭を下げて謝意を示す。
まさかの光景である。
国王が自ら謝意を示すことなどこれまでほとんど無く、側近の者たちでさえ記憶を探っても見つけられるかどうかというほどであった。
それをましてや魔族に対して行うなんて・・・。
その場にいた王宮の者たちは一様に驚きを表す。


「気にするな。羽虫が飛んだくらいのことで騒いだりはせんよ。それより、人族の王が魔族に対して自ら詫びるなど・・・お前の家臣どもが動揺しているぞ」


その言葉通り動揺を隠せずにいる王宮の者たちを横目に、クロノは嘲笑うかのように言葉を並べる。


「ハッハッハ。小事、小事。真に己に非があるならば、その非礼を詫びることに王も魔族も関係なかろう」


国王が豪快な笑いで応える。


「英断だな。もし、あの時お前が止めていなければ、この部屋がコイツらの血で染められていたかもしれんからな」


そう言いながら、クロノは本当に背筋が凍ったかと錯覚してしまうほどに冷たく重い殺気を騎士団長たちへと飛ばした。
騎士団長たちの頬を冷や汗が伝う。
外目には何ともないように映ってはいるが、当の本人たちは身体の芯からくる震えを強靭な精神で抑え込み、周囲の者たちには悟らせまいと必死になって平静を保っている状態なのであった。


『命を懸けて国を、そして国王を守る』


それは騎士にとって当然のことである。
そんな騎士たちの中で最上位に位置する彼らであってさえも気圧されするほどの強烈なプレッシャーであった。


・・・ ポカン ───── 。


緊迫した空気が漂う中、なんとも不釣り合いな音が鳴り響く。
音の発生源に目をやると、クロノが自らの頭を摩っており、隣ではスズネが自身のロッドを逆さにして握っている。
どうやらスズネがロッドの柄の部分でクロノの頭を叩いたようだ。


「ダメだよ、クロノ。みんな困ってるでしょ」

「痛ぇ~な。ちょっとからかってやっただけじゃね~かよ。なにもぶっ叩くことないだろ」

「今日は国王様とお話をしに来たんだから、争い事は無し!!分かった?」

「分かったよ。チッ、なんで俺だけなんだよ」


相手から仕掛けてきたことなのに自分だけが怒られることとなり、不満いっぱいのクロノであったが、こうなったスズネは止められない。
それが分かっているからこそ、クロノは渋々ながらも引き下がる。


先程までの緊張感はなんだったのだろうか。
このやり取りに慣れているミリアとラーニャに驚きはないが、その他の者たちにとっては異様な光景でしかない。

それはそうである。
歴代最強と言われ、同じ魔族からも恐れられているとされるあの魔王クロノが、一人の少女に頭を叩かれ注意まで受けた上、それに対してバツが悪そうに言い訳を並べながら頭を摩っているのだ。
これを異様な光景と言わず何と言う。


「アッハッハ」


再び国王が笑う。


「何がおかしい」


クロノは少し照れ臭そうにしながらも国王を睨みつける。


「いや~これはまた失礼をした。長い魔族の歴史において最強と言われ、同じ魔族の者からも恐れられているとされたあの魔王クロノが、よもやこのような少女一人に頭が上がらんとは・・・意外であった」


国王からの言葉を前に、クロノは悔しそうな表情を見せつつ、誰にも聞こえないほどの小さな声で「うるせぇ」と一言漏らしたのだった。


────────────────────────


「いや~愉快、愉快。さて、それでは存分に楽しんだところで、そろそろ本題に ───── 」

「おい、ちょっと待て」


意気揚々とした様子を見せる国王の言葉を遮るようにクロノが口を挟んだ。


「ん?どうかされたかな、クロノ殿」


国王が不思議そうに尋ねる。


「本題に入るのはいいが、その前に一つ聞きたい」


その場にいる全員が不思議そうにクロノへと視線を向ける。


「いったいいつまでこの茶番に付き合えばいいんだ?」


クロノの言葉の意味が全く分からないスズネたちはキョトンとした顔をしている。
しかし、その言葉の真意を理解した王宮の者たちは一様に眉を顰めた。


「え~と、クロノ…茶番ってどういうこと?」


自分たちだけが置いてけぼりの状態であることを察したミリアが尋ねる。


「言葉の通りだ。今のこの状況の全てが茶番だと言っているんだ。お前たちは馬鹿で鈍感だから気づいていないんだろうが・・・目の前に立っている男は、この国の王ではない」


───── えぇぇぇぇーーーーーーーーーっ。


国王との対面を果たしたクロノ及びスズネたち。
一悶着ありつつも、ようやく場も落ち着き、いよいよ本題に入ろうかとしたところで、クロノから飛び出したまさかの言葉。
慌てふためくスズネたち。
そんなスズネたちとは対照的に冷静を装いつつも緊迫した様子を見せる王宮の者たち。

そんな周囲のことなどお構い無しにニヤリと口元を緩め、お互いに余裕な表情をみせながら視線を交わす国王とクロノなのであった。


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