魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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王の器

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王城の謁見の間にてガルディア王国国王と対面したスズネたち。
さっそく一悶着ありながらも、なんとかひと段落ついたかと思いきや、クロノが発した衝撃的な一言により波乱は続くのであった。


「ちょっと待って、国王様じゃないってどういうこと!?それじゃあ、目の前にいるこの人は誰なのよ」


スズネたちの中で、ひと際困惑した様子を見せるミリア。
まぁ~無理もない。
一般人からすると、王城に呼び出されるだけでも通常のことではない。
さらに、国王との謁見という慣れない状況。
緊張し気を張り続けていた中で、国王だと思っていた人物が実は本物の国王ではないと言われたのだ。
そんなミリアと比べると、スズネはどこか落ち着いているように見える。


「ねぇ~クロノ、この方が国王様じゃないんだったら、本物の国王様はどこにいるの?」

「スズネ、そんなことはどうでもええわい。此奴らは、わっちらを騙したんじゃ。消し炭じゃ消し炭」


先程までの置いてけぼり感はどこへやら・・・。
にわかに活気付くスズネたち一行。


「お前らうるさいぞ。何ひとつ理解してないんだったら少し黙ってろ」


クロノに一喝され黙り込む三人。
そんな三人を横目で見ながら、クロノが声をかける。


「安心しろ。この国の王ならこの場にいる」


そう断言するクロノに対し、もはや半ばキレ気味のミリアが問う。


「もういったい何なの。国王様がいるってんならどこにいるのよ」


その問いに応えるように、クロノは文官たちの並ぶ列へと身体を向ける。
そして、スッと右手を上げると列の後方に向けて指を刺した。


「後ろから数えて三番目の金髪の男。お前が王だな」


クロノがそう言うと、一瞬まるで時が止まったかと錯覚するほどの静寂に包まれる。
そして、次の瞬間 ───── 。


「クハハハハハハハハッ」


それまで沈黙を保っていた金髪の男が、突然大きな声で笑いだした。
歳は三十代後半といったところか。
端正な顔立ちをしており、細身ではあるが背が高く、そして何より豪快な性格であることが見て取れる。


「よくぞ見破った、魔族の王よ。完璧に気配を消して潜り込んでいたつもりだったんだがな」


一通り楽しんだ様子の男は、スタスタと玉座に向けて歩き出した。
そして、玉座に腰掛けると意気揚揚とした様子を見せる。


「いや~失礼をした。改めて名乗らせてもらおう。我がガルディア王国第二十五代国王レオンハルト・ノービスである」


ただ名乗っただけである。
決して威圧したわけではない。
それでもスズネたちは圧倒され、身体が鉛のように重くなり、自分の身体なのに上手く動かすことが出来ない…そんな感覚を覚えたのだった。


「おい、うちの下っ端共を威圧してんじゃねぇ~よ」


クロノは少し不機嫌そうに国王へと告げる。


「すまん、すまん。そういうつもりは微塵も無かったんだ。許せ」


そう言って王が爽やかな笑顔を見せると、スズネたちの元へ身体の自由が戻った。


「ビックリしたね」

「ビックリどころの話じゃないわよ、生きた心地がしなかったわ」

「不覚…あんな色白のもやしみたいなやつに・・・」


ほんの数秒のことであったのに、三人は額から汗を流し疲労感を漂わせる。


「それはそうと、魔族の王よ ───── 」

「クロノでいい」

「そうか。それではクロノ殿、すまんがそろそろ我が家臣も自由にしてやってくれんか」


あ~そういえば…というような表情を見せたクロノは、床に転がる男の方をチラリと見る。
完全にその存在を忘れていたようだ。
そして、フゥーと一息吐くと右手をサッと払った。
すると、男は呪縛から開放され身体の自由を取り戻し、疲れた様子で上体を起こした。

ハァ…ハァ…ハァ…フゥー

息を整え終えると、男はゆっくりと立ち上がった。
この場をこれ以上乱してはいけないと懸命に怒りを押し殺しているのが誰の目から見ても明らかである。
しかし、国王はあえて触れることなく話を進める。


「さて、やっと場が落ち着いたかな」

「全ての元凶はお前だけどな」

「クハハハ、クロノ殿の言う通りだな。してクロノ殿、どうして分かった?我が国の聖騎士長にして我が一番の友でもある、このアーサーも良き王を演じていたと思うのだが」


よほど楽しいのか、元からこういう性格なのかは分からないが、上機嫌な様子の国王は嬉しそうな顔でクロノに問いかける。


「おいおい、王であるお前がそれを聞くのか?愚問だろ。強いて言うならば、俺が王だからだ」


─────  《 全く意味が分からない 》 ─────


この時声には出さないが、その場にいる全員が同じことを思ったのだった。
ただ一人、ガルディア王国国王レオンハルトを除いては ───── 。


「あの~クロノ、もう少し私たちにも分かるように説明してもらえるかな?」

「ホント、何ドヤ顔で“この俺が王だからだ”よ!!意味不明だわ。アンタ説明する気あんの?」

「そんな旦那様も素敵なのじゃ」


皆の思いを代弁するかのようにスズネが苦笑いを浮かべつつ問いかける。
限界突破したミリアは、周囲のことなど気にすることなくキレ始める。
なぜかラーニャは顔を赤らめうっとりしている。


───── 《 実に面倒だ・・・ 》 ─────


クロノの顔にはっきりとそう書いてあるのが分かる。


「お前ら三人揃って馬鹿だな。少しは頭を使えよ。今この場で理解出来ていないのは、おそらくお前らだけだぞ」


そう言われたスズネたちはスッと騎士たちの方へ視線と向ける。
すると、騎士たちは一斉にサッと視線を逸らした。

続けてスズネたちは文官たちの方へと視線を向けるも、先程と同様に文官たちもまたサッと視線を逸らしたのだった。


─────  《 絶対みんな分かってない 》 ─────


スズネたちは心の中でそう叫んだ。
その様子を呆れ顔で見ていたクロノが、はぁ~と溜め息を吐いた後で話し始めた。


「仕方がないから無知なお前らのために説明してやる」

「「「《 くぅ~なんで私たちだけ~ 》はい、お願いします」」」

「まずそこの偽物だが、まぁ~俺の足元にも及びはしないが、まぁまぁそこそこの強さではある。人間のレベルだと“英雄”と呼ばれるくらいにはなれるんじゃないか」

「「「 英雄!? 」」」

「だが、“ 王の器 ”ではない」

「「「 王の器?? 」」」


“英雄”に“王に器”と自分たちには縁もゆかりもない言葉の連続に、さっそく話についていけないスズネたち。
しかし、そんなことはお構いなしにクロノは話を続ける。


「王とは、己が覇道をもって民を導く者だ。その根幹となる“王たる信念”が、その者の気に宿り“覇気”となる。覇気なき者に王は務まらん」

「う~ん。分かったような…分からないような…」


説明を聞いても尚、微妙な表情を見せるスズネ。
その状況にクロノは困った様子で頭をポリポリと掻く。


「はぁ~・・・まぁ~簡単に言うと、王ってのはただ強いだけじゃダメで、自分が治める国や土地に住む全ての者のことを守り、導く覚悟がないといけないってことだ」

「なるほど。みんなのことを大事に想う気持ちが大事ってことだね」


スズネの返答を受け、クロノは何とも言えない複雑な表情を見せる。
周囲を見回してみると、スズネとラーニャ以外はある程度理解したようだ。
その事を確認したクロノは、「もう、それでいい」と一言ボヤいたのであった。


「まぁ~そういう訳だ。偽物の男は、強くはあるが覇気が足らん。そして金髪の男は、気配を消してはいたが強大な覇気までは消せていなかった。よって、金髪の男がこの国の王だ」


一通りの説明を終えたクロノが一息ついていると、楽しそうに話を聞いていた国王レオンハルトが口を開く。


「いや~なかなか興味深い話であった。聖騎士長の力をもってしても、覇気が足りないってよ。アーサー」


無邪気な子供のような笑顔を見せる国王。


「いやいや、そもそも王になんてなる気もありませんので、こんな無茶振りは金輪際やめてくださいよ。陛下」


国王とは対照的に、アーサーと呼ばれるその男は冷静な表情で答える。
その後正面に向き直った国王は、変わらぬ様子でクロノに話しかけた。


「さて、前置きが少々長引いてしまったな。して、魔王クロノよ。此度貴殿を呼んだのは他でもない、これからの貴殿の処遇について話をするためだ」


クロノが召喚命令を受けた時点で分かっていたことではあるが、改めて国王の口から告げられると妙な緊張感を感じずにはいられないスズネたちなのであった。


「さて、どうしたものかな・・・。ん~~~~~。魔王クロノよ、お主、とりあえず死んどくか」


!?

!?

!?


穏やかな表情と口調ではあるが強烈なセリフが飛んできたことに、スズネたちは驚きと同時に突差に身構える。


「待ってください!!」


緊張が走る中、慌てた様子でスズネが声を上げる。


「クロノは確かに乱暴なところはあるし、口は悪いし、怒りっぽかったりしますけど、私が召喚契約をしてから何ひとつ悪いことはしていません。モアの街の人たちとも仲良くしています。なので…どうか考え直してください。お願いします」


そして、スズネは深々と頭を下げた。
目をギュッと瞑り、身体の前で重ねられた手は強く握り締められており、身体中に力が入り強張っているのが傍から見てもよく分かるほどであった。
その姿を隣で見ていたミリアとラーニャもすぐに立ち上がり、スズネと共に頭を下げたのだった。
その光景を見た国王は、さらに嬉しそうに頬を緩ませる。


「クロノ殿はえらく慕われているようだな」

「知るか。コイツらが勝手にやっているだけだ」


素っ気ない態度を取るクロノの姿を微笑ましく思いながら、国王はスズネたちに優しく声を掛ける。


「三人共、面を上げよ」


国王の言葉に従い、三人はゆっくりと顔を上げる。


「安心せよ、ただの冗談だ。そんな乱暴なことをするつもりなど微塵もない」


国王の言葉を聞いてホッとした三人は、身体から一気に力が抜け、それと同時に大きく息を吐き出したのだった。


「クハハハハ、少々刺激が強すぎたかな。クロノ殿の件に関しては、ロザリー先生からも報告を受け、手荒な真似はするなと釘を刺されておるからな。今回は、単純に我が会って話してみたかっただけで、それ以上の意図など無いから安心するといい」


───────── ん??


スズネとミリアが首を傾げながら不思議そうな顔をして国王を見つめている。


「申し訳ありませんが国王様、ロザリー先生というのは ───── 」


スズネが恐る恐る質問する。


「うん?なんだ知らんのか。お主の祖母であるロザリーは、我とここにいるアーサーの魔法の師匠だ。もっと言うと、元ガルディア王国筆頭魔法師でもある」


「「えっ!?」」

「「えっ!?」」

「「え~~~~~っ!?」」


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