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新生活
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新しくマクスウェルをパーティに迎え、メンバー全員で共同生活をするべく以前ロザリーが使っていた家を訪れるため“ザグレスの森”へとやってきたスズネたち。
しかし、いざ目的地に到着してみると、十年以上にわたり放置していたこともあり、ホームにする予定でいた家は荒れ果てており、とても人が住めるような状態ではなくなっていた。
そんな状況に頭を悩ませていたスズネたちに対し、『一度このボロ家を壊して、新しい家を建てる』という思いもよらない提案をするクロノなのであった ───── 。
「えっ!?そんなことが出来るの?クロノ」
「何を驚くことがあるんだ。ただ壊して、整地して、その上に新しいのを建てるだけだろ。そのくらいババアでも出来んだろ」
唐突の提案に驚きを隠せないでいるスズネたちであったが、そんな反応にも、今のこの状況にも、クロノは不思議そうにしている。
「いや、木材なんかを用意して一時的な雨避けの小屋くらいなら作れなくもないが、そんな職人みたいに精密なことまでは私にも無理さね」
「ふん。ババアもまだまだ鍛錬が足りんようだな」
みんなが凄い凄いと言って讃えるロザリーよりも自身の方が優れている部分があると分かり、これでもかと満足気に鼻をグングン伸ばすクロノであった。
「はいはい。アンタがとんでもなく凄いことは分かったから、さっさと取り掛かりなさいよ」
「なんだと。俺が家を建ててやらんと困るだろ。もっと感謝して讃えろ」
「まぁ~感謝はするけど、困るのはアンタも同じでしょ。全員仲良く野宿生活になるわよ」
「クッ・・・」
得意顔から不満顔へと変化していったクロノの顔は、ミリアからの的確な指摘によってさらに歪められたのだった。
「圧縮」
「異空間収納」
「風刃」
「水平化」
「創作」
「形成」
・
・
・
クロノはいくつもの魔法を駆使しながら、ボロ家の圧縮、荒れた土地の整地、木材や石材の加工などなど次々と作業を進めていく。
「クロノ、すっごーーーい」
「想像以上ね」
「さすがは旦那様なのじゃ」
「なんとも洗練された魔法操作。これ程とは・・・」
「こいつは…惚れ惚れしちまうね」
そんなクロノの姿に驚愕しっぱなしのスズネたちのことなど一切気にすることなく、クロノは黙々と作業を進めていく。
そして、当初に自らが言っていた通り、たった三十分で全ての作業を終えたのだった。
────────────────
まさに圧巻の光景であった。
あれよあれよという間に見事な二階建ての家が出来上がったのだった。
その手際と完成度の高さに、スズネたちは感嘆の声を漏らす。
「本当に三十分で出来ちゃったね」
「完成度も高過ぎ!?欠陥住宅なんてことはないでしょうね」
ミリアの言うことも理解出来る。
急いで組み立てるあまり、後々になって不具合が起きるというのはよくあることである。
「ふん。この俺が作ったものに欠陥などあるはずがない。外装・内装も抜かりはない。外装に関して言えば、完全物理防御結界と完全魔法防御結界を施してある」
「「「「「おお~~~~~」」」」」
───── パチパチパチパチ ─────
クロノの説明を聞き、スズネたちは拍手と合わせて改めてクロノへ賞賛を送ったのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
クロノが建てた新しいホームが完成してから数日が経ち、スズネたちは新生活をスタートさせていた。
「う~~~ん。はぁ~今日も良いお天気」
一日の始まり。
今日もガルディア王国は晴天に恵まれ、スズネたちの新宅がある“ザグレスの森”にも穏やかな陽の光が降り注いでいる。
そんな森の中で小鳥たちが朝の歌を歌い、その美しい歌声を耳にした獣たちもぞくぞくと目を覚ましていく。
「おはよう。スズネ」
スズネが振り返ると寝惚け眼のミリアが立っていた。
「ミリア、おはよう。昨日も夜遅かったの?」
「まぁ~ね。部屋の整理に武器や防具の手入れなんかしてたら遅くなっちゃったのよね」
───── サァ~~~~~~ ─────
そんなミリアの眠気を取り払うかのように爽やかな風が森の中を吹き抜ける。
「はぁ~気持ちいい。最高の朝ね」
ググ~ッと背筋を伸ばしたミリアは、パッチリと目を開きスズネに笑顔を向ける。
それに応えるようにスズネもまたミリアへと笑顔を返した。
───── ガサガサガサ ─────
スズネとミリアが音のする方へと視線を向けると、草木の間を通り抜けてマクスウェルが姿を現した。
「お二人共おはようございます」
「マクスウェル君、おはよう。こんな朝早くから何処に行ってたの?」
「あっ、はい、朝の鍛錬に行ってました」
そう答えるマクスウェルの手には鞘に収められた剣が握られている。
「朝っぱらから鍛錬なんて、引っ越して来たばかりなんだから、朝くらいゆっくり寝てればいいのに」
感心しているのか、はたまた呆れているのか、どちらとも取れるような態度を見せるミリア。
そんなミリアの言葉に対し、マクスウェルはどこか気恥ずかしそうに返答する。
「いや…一日でも欠かすと感覚が鈍るというか、ルーティンになっているのでやらないとどこか落ち着かないというか…」
「毎日なんてマクスウェル君は本当に偉いね。ミリアもよく鍛錬してるけどそれ以上だね」
スズネは手をパチパチとさせながら、感嘆した様子でマクスウェルに笑顔を向けるのだった。
「まぁ~アタシは天才だからね!さらに鍛え上げて必ず剣聖まで昇り詰めてみせるわ」
常日頃から自信満々のミリアではあるが、その才能に溺れて慢心することはない。
彼女自身の中に目指すべき目標があり、その先にある目的をしっかりと見据えているからだ。
そこには曖昧な夢や憧れといったようなものは存在しない。
その力強い言葉と眼差しにマクスウェルは圧倒される。
「ははは…凄いな。僕は心身共にまだまだ未熟ですね」
自身の発言に対して弱気な言葉を発したマクスウェルをミリアが一喝する。
「マクスウェル…さては、アンタ馬鹿ね。人間なんてみんな未熟に決まってんでしょ。完成された人間なんて一人として存在しないわ!!何故なら、完成したらそれ以上が無いってことでしょ。そんな人生つまんないじゃない」
「な…なるほど」
「そ・れ・か・ら、言葉っていうのはね、意志を宿すものなのよ。弱音ばっかりだと気持ちも落ちていっちゃうし、そんな人がやる事なんて何ひとつ上手くいきっこないわ。今出来るから言葉にするんじゃないの、今出来ないから言葉にして実現させていくのよ!!分かった?」
「はい。以後、気をつけます」
“よろしい” ───── そう発したミリアの表情は満足感の漂う清々しいものであった。
「あはははは。マクスウェル君、頑張ってね」
「はい。必ず聖騎士になってみせます!!」
スズネとミリアからのエールを受け取り、先程までの控えめな様子ではなく、力強い返事で応えるマクスウェルなのであった。
「それじゃ二人共、クロノとラーニャちゃんも呼んで朝ごはんにしよう」
そこからの日々はあっという間に過ぎていく。
慣れない共同生活に悪戦苦闘しながらも協力し合い、そんな中でもそれぞれが鍛錬に励み各々のレベルアップを図りつつ、いくつものクエストをこなしていった。
────────── 六ヶ月後 ──────────
「ハッ」
───── キーン ─────
「グッッッ」
森の中に剣と剣がぶつかり合う剣戟の音が響き渡る。
「そろそろ観念しなさいよマクスウェル。今日はアタシの勝ちよ」
嬉々として剣を打ち下ろし、マクスウェルを追い詰めるミリア。
その表情は口元をニヤリと緩ませており本当に楽しそうである。
「世迷い事を…勝負はまだまだこれからですよ。ミリア」
そう言うと、マクスウェルはより一層の力を込めて押し返す。
「二人共~朝ごはんが出来たよ~」
おおよそ鍛錬とは思えないほどに激しく剣を交わす二人の元へとスズネがやって来た。
どうやら二人に朝食の準備が整ったことを知らせに来たようだ。
「ハッ!?スズネさん」
突然姿を現したスズネに気を取られ動揺するマクスウェル。
そして、その一瞬の隙をミリアは見逃してはくれない。
「隙あり!!唸れ、炎帝の剣」
ミリアの言葉と同時にその手に握られた剣の刀身が真紅に染まっていき、その周りをグルグルと螺旋状に炎が巻き付いていく。
「ちょっ…ちょっと待った」
慌てた様子を見せるマクスウェルであったが・・・。
───── 時すでに遅し。
「問答無用」
───── ドン!! ─────
土煙が立ち上る。
あまりの衝撃にマクスウェルは吹き飛ばされ、数メートルほど離れた所で息を切らしながら大の字になって倒れている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「マクスウェル君、大丈夫?」
息も絶え絶えの状態にあるマクスウェルの元へスズネが駆け寄っていく。
「は…はい…だいじょ…!?」
必死に息を整えようとするマクスウェルが目を開くと、目の前にスズネの顔が現れる。
マクスウェルは飛び跳ねるように起き上がり、顔を真っ赤に染めながらあたふたし始める。
「スズネさん!?おはようございます。この程度は何の問題もありません。擦り傷ですよ、擦り傷。アハハハハ…」
それなりのダメージを受けているはずだが、スズネがいる手前必死になって余裕を見せようとするマクスウェル。
「マクスウェル、アンタもうこの生活始めて半年も経ってんのよ。いい加減慣れなさいよね」
「うるさいな。僕は至って正常だ」
マクスウェルは呆れた様子のミリアからの言葉を振り払い、まるで自分に言い聞かせるかのように言い放つ。
「えっ!?マクスウェル君、何か困ってることでもあるの?初めての王都以外での生活で慣れないことも多いと思うけど、私でよかったら協力するから何でも言ってね」
これは一番タチが悪い。
スズネだけが気付いていない。
そして、無意識かつ本心からそう言っているのだ。
「これは相当骨が折れそうね。まぁ~せいぜい頑張んなさい」
そう言うと、ミリアはマクスウェルの肩をポンポンと叩いた。
「それにしても二人共凄い打ち合いだったね。ミリアは大丈夫なの?」
「愚問よ、スズネ。アタシを誰だと思ってるの。こんな見習い騎士ごときに遅れを取る事なんてないわ」
ミリアは余裕の笑みを見せ、両手を腰に当てて仁王立ちしながら、見下すような視線をマクスウェルへと向ける。
「何を言う。戦績は五分五分だろ」
「違います~。今の勝利でアタシの八十八勝八十七敗。勝ち越しよ!!か・ち・こ・し」
「ほとんど五分じゃないか」
「な~に~負け惜しみ~」
「クッ、次こそは ───── 」
地に膝を付け、苦虫を噛み潰したような顔をしているマクスウェル。
その姿を眺めるミリアは満足気に勝ち誇った表情をしている。
「二人は仲良しだね~。カップルみたい」
「「それはない(わ・です)」」
これでもかと全力で否定するミリアとマクスウェル。
「あはははは。息ピッタリ」
そんな二人の反応など全く意に介さないスズネ。
むしろ二人の掛け合いを見て手をパチパチと叩きながら嬉しそうにしている。
「はぁ~スズネには敵わないわ。さぁ、帰って朝食にしましょ」
「そうだ、それで二人を呼びに来たんだった。マクスウェル君も行こ」
「あっはい」
先に歩を進めるスズネとミリアを追うようにしてマクスウェルも急いで駆け出す。
「スズネ、アンタもうちょっと恋愛について勉強したほうがいいわよ」
「えっ!?私に恋愛なんて早いよ。ミリアみたいに人気があるわけでもないし、相手なんて見つからないよ~」
何ひとつとして理解していないスズネを前にして、“はぁ~”と大きく溜め息をつくしかないミリアなのであった。
しかし、いざ目的地に到着してみると、十年以上にわたり放置していたこともあり、ホームにする予定でいた家は荒れ果てており、とても人が住めるような状態ではなくなっていた。
そんな状況に頭を悩ませていたスズネたちに対し、『一度このボロ家を壊して、新しい家を建てる』という思いもよらない提案をするクロノなのであった ───── 。
「えっ!?そんなことが出来るの?クロノ」
「何を驚くことがあるんだ。ただ壊して、整地して、その上に新しいのを建てるだけだろ。そのくらいババアでも出来んだろ」
唐突の提案に驚きを隠せないでいるスズネたちであったが、そんな反応にも、今のこの状況にも、クロノは不思議そうにしている。
「いや、木材なんかを用意して一時的な雨避けの小屋くらいなら作れなくもないが、そんな職人みたいに精密なことまでは私にも無理さね」
「ふん。ババアもまだまだ鍛錬が足りんようだな」
みんなが凄い凄いと言って讃えるロザリーよりも自身の方が優れている部分があると分かり、これでもかと満足気に鼻をグングン伸ばすクロノであった。
「はいはい。アンタがとんでもなく凄いことは分かったから、さっさと取り掛かりなさいよ」
「なんだと。俺が家を建ててやらんと困るだろ。もっと感謝して讃えろ」
「まぁ~感謝はするけど、困るのはアンタも同じでしょ。全員仲良く野宿生活になるわよ」
「クッ・・・」
得意顔から不満顔へと変化していったクロノの顔は、ミリアからの的確な指摘によってさらに歪められたのだった。
「圧縮」
「異空間収納」
「風刃」
「水平化」
「創作」
「形成」
・
・
・
クロノはいくつもの魔法を駆使しながら、ボロ家の圧縮、荒れた土地の整地、木材や石材の加工などなど次々と作業を進めていく。
「クロノ、すっごーーーい」
「想像以上ね」
「さすがは旦那様なのじゃ」
「なんとも洗練された魔法操作。これ程とは・・・」
「こいつは…惚れ惚れしちまうね」
そんなクロノの姿に驚愕しっぱなしのスズネたちのことなど一切気にすることなく、クロノは黙々と作業を進めていく。
そして、当初に自らが言っていた通り、たった三十分で全ての作業を終えたのだった。
────────────────
まさに圧巻の光景であった。
あれよあれよという間に見事な二階建ての家が出来上がったのだった。
その手際と完成度の高さに、スズネたちは感嘆の声を漏らす。
「本当に三十分で出来ちゃったね」
「完成度も高過ぎ!?欠陥住宅なんてことはないでしょうね」
ミリアの言うことも理解出来る。
急いで組み立てるあまり、後々になって不具合が起きるというのはよくあることである。
「ふん。この俺が作ったものに欠陥などあるはずがない。外装・内装も抜かりはない。外装に関して言えば、完全物理防御結界と完全魔法防御結界を施してある」
「「「「「おお~~~~~」」」」」
───── パチパチパチパチ ─────
クロノの説明を聞き、スズネたちは拍手と合わせて改めてクロノへ賞賛を送ったのであった。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆
クロノが建てた新しいホームが完成してから数日が経ち、スズネたちは新生活をスタートさせていた。
「う~~~ん。はぁ~今日も良いお天気」
一日の始まり。
今日もガルディア王国は晴天に恵まれ、スズネたちの新宅がある“ザグレスの森”にも穏やかな陽の光が降り注いでいる。
そんな森の中で小鳥たちが朝の歌を歌い、その美しい歌声を耳にした獣たちもぞくぞくと目を覚ましていく。
「おはよう。スズネ」
スズネが振り返ると寝惚け眼のミリアが立っていた。
「ミリア、おはよう。昨日も夜遅かったの?」
「まぁ~ね。部屋の整理に武器や防具の手入れなんかしてたら遅くなっちゃったのよね」
───── サァ~~~~~~ ─────
そんなミリアの眠気を取り払うかのように爽やかな風が森の中を吹き抜ける。
「はぁ~気持ちいい。最高の朝ね」
ググ~ッと背筋を伸ばしたミリアは、パッチリと目を開きスズネに笑顔を向ける。
それに応えるようにスズネもまたミリアへと笑顔を返した。
───── ガサガサガサ ─────
スズネとミリアが音のする方へと視線を向けると、草木の間を通り抜けてマクスウェルが姿を現した。
「お二人共おはようございます」
「マクスウェル君、おはよう。こんな朝早くから何処に行ってたの?」
「あっ、はい、朝の鍛錬に行ってました」
そう答えるマクスウェルの手には鞘に収められた剣が握られている。
「朝っぱらから鍛錬なんて、引っ越して来たばかりなんだから、朝くらいゆっくり寝てればいいのに」
感心しているのか、はたまた呆れているのか、どちらとも取れるような態度を見せるミリア。
そんなミリアの言葉に対し、マクスウェルはどこか気恥ずかしそうに返答する。
「いや…一日でも欠かすと感覚が鈍るというか、ルーティンになっているのでやらないとどこか落ち着かないというか…」
「毎日なんてマクスウェル君は本当に偉いね。ミリアもよく鍛錬してるけどそれ以上だね」
スズネは手をパチパチとさせながら、感嘆した様子でマクスウェルに笑顔を向けるのだった。
「まぁ~アタシは天才だからね!さらに鍛え上げて必ず剣聖まで昇り詰めてみせるわ」
常日頃から自信満々のミリアではあるが、その才能に溺れて慢心することはない。
彼女自身の中に目指すべき目標があり、その先にある目的をしっかりと見据えているからだ。
そこには曖昧な夢や憧れといったようなものは存在しない。
その力強い言葉と眼差しにマクスウェルは圧倒される。
「ははは…凄いな。僕は心身共にまだまだ未熟ですね」
自身の発言に対して弱気な言葉を発したマクスウェルをミリアが一喝する。
「マクスウェル…さては、アンタ馬鹿ね。人間なんてみんな未熟に決まってんでしょ。完成された人間なんて一人として存在しないわ!!何故なら、完成したらそれ以上が無いってことでしょ。そんな人生つまんないじゃない」
「な…なるほど」
「そ・れ・か・ら、言葉っていうのはね、意志を宿すものなのよ。弱音ばっかりだと気持ちも落ちていっちゃうし、そんな人がやる事なんて何ひとつ上手くいきっこないわ。今出来るから言葉にするんじゃないの、今出来ないから言葉にして実現させていくのよ!!分かった?」
「はい。以後、気をつけます」
“よろしい” ───── そう発したミリアの表情は満足感の漂う清々しいものであった。
「あはははは。マクスウェル君、頑張ってね」
「はい。必ず聖騎士になってみせます!!」
スズネとミリアからのエールを受け取り、先程までの控えめな様子ではなく、力強い返事で応えるマクスウェルなのであった。
「それじゃ二人共、クロノとラーニャちゃんも呼んで朝ごはんにしよう」
そこからの日々はあっという間に過ぎていく。
慣れない共同生活に悪戦苦闘しながらも協力し合い、そんな中でもそれぞれが鍛錬に励み各々のレベルアップを図りつつ、いくつものクエストをこなしていった。
────────── 六ヶ月後 ──────────
「ハッ」
───── キーン ─────
「グッッッ」
森の中に剣と剣がぶつかり合う剣戟の音が響き渡る。
「そろそろ観念しなさいよマクスウェル。今日はアタシの勝ちよ」
嬉々として剣を打ち下ろし、マクスウェルを追い詰めるミリア。
その表情は口元をニヤリと緩ませており本当に楽しそうである。
「世迷い事を…勝負はまだまだこれからですよ。ミリア」
そう言うと、マクスウェルはより一層の力を込めて押し返す。
「二人共~朝ごはんが出来たよ~」
おおよそ鍛錬とは思えないほどに激しく剣を交わす二人の元へとスズネがやって来た。
どうやら二人に朝食の準備が整ったことを知らせに来たようだ。
「ハッ!?スズネさん」
突然姿を現したスズネに気を取られ動揺するマクスウェル。
そして、その一瞬の隙をミリアは見逃してはくれない。
「隙あり!!唸れ、炎帝の剣」
ミリアの言葉と同時にその手に握られた剣の刀身が真紅に染まっていき、その周りをグルグルと螺旋状に炎が巻き付いていく。
「ちょっ…ちょっと待った」
慌てた様子を見せるマクスウェルであったが・・・。
───── 時すでに遅し。
「問答無用」
───── ドン!! ─────
土煙が立ち上る。
あまりの衝撃にマクスウェルは吹き飛ばされ、数メートルほど離れた所で息を切らしながら大の字になって倒れている。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「マクスウェル君、大丈夫?」
息も絶え絶えの状態にあるマクスウェルの元へスズネが駆け寄っていく。
「は…はい…だいじょ…!?」
必死に息を整えようとするマクスウェルが目を開くと、目の前にスズネの顔が現れる。
マクスウェルは飛び跳ねるように起き上がり、顔を真っ赤に染めながらあたふたし始める。
「スズネさん!?おはようございます。この程度は何の問題もありません。擦り傷ですよ、擦り傷。アハハハハ…」
それなりのダメージを受けているはずだが、スズネがいる手前必死になって余裕を見せようとするマクスウェル。
「マクスウェル、アンタもうこの生活始めて半年も経ってんのよ。いい加減慣れなさいよね」
「うるさいな。僕は至って正常だ」
マクスウェルは呆れた様子のミリアからの言葉を振り払い、まるで自分に言い聞かせるかのように言い放つ。
「えっ!?マクスウェル君、何か困ってることでもあるの?初めての王都以外での生活で慣れないことも多いと思うけど、私でよかったら協力するから何でも言ってね」
これは一番タチが悪い。
スズネだけが気付いていない。
そして、無意識かつ本心からそう言っているのだ。
「これは相当骨が折れそうね。まぁ~せいぜい頑張んなさい」
そう言うと、ミリアはマクスウェルの肩をポンポンと叩いた。
「それにしても二人共凄い打ち合いだったね。ミリアは大丈夫なの?」
「愚問よ、スズネ。アタシを誰だと思ってるの。こんな見習い騎士ごときに遅れを取る事なんてないわ」
ミリアは余裕の笑みを見せ、両手を腰に当てて仁王立ちしながら、見下すような視線をマクスウェルへと向ける。
「何を言う。戦績は五分五分だろ」
「違います~。今の勝利でアタシの八十八勝八十七敗。勝ち越しよ!!か・ち・こ・し」
「ほとんど五分じゃないか」
「な~に~負け惜しみ~」
「クッ、次こそは ───── 」
地に膝を付け、苦虫を噛み潰したような顔をしているマクスウェル。
その姿を眺めるミリアは満足気に勝ち誇った表情をしている。
「二人は仲良しだね~。カップルみたい」
「「それはない(わ・です)」」
これでもかと全力で否定するミリアとマクスウェル。
「あはははは。息ピッタリ」
そんな二人の反応など全く意に介さないスズネ。
むしろ二人の掛け合いを見て手をパチパチと叩きながら嬉しそうにしている。
「はぁ~スズネには敵わないわ。さぁ、帰って朝食にしましょ」
「そうだ、それで二人を呼びに来たんだった。マクスウェル君も行こ」
「あっはい」
先に歩を進めるスズネとミリアを追うようにしてマクスウェルも急いで駆け出す。
「スズネ、アンタもうちょっと恋愛について勉強したほうがいいわよ」
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