魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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ザイオン

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スズネたちの登場により新手が来たのかとセロフトは面倒臭そうにするが、そん背後に立つクロノの存在に気づき歓喜の声を上げる。


「おお~これはこれはクロノ様、まさかご無事だったとは。僕は喜びのあまり身震いが止まりませんよ」

「あ?誰だお前?とりあえず魔族のようだな。ここで何をしている」

「何を?これはまた不思議なことをお聞きになりますね。そんなの再び魔族がこの地を統べるために決まってるじゃないですか」

「俺はそんなことを指示した覚えはないぞ」

「それはそうでしょうね。この計画はザイオン様からの指示ですから」

「ザイオン・・・」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


三年前 ──────── 。
魔王城、宰相執務室。


「お呼びですか~ザイオン様」

「セロフトか。魔王様の様子はどうだ?」

「う~ん。特に変わりはないですかね。これといって何かをしようって感じには見えないです」

「はぁ~、あやつはいったい何を考えているのだ」

「駄目ですよ~。いくら宰相様といえども魔王様を“あやつ”呼ばわりなんてしちゃ~」


クロノは父である先代魔王を打ち倒しその座を手に入れてからというもの一切魔族再興に向けての動きをみせることはなかった。
それは千年前にヒト族に敗れ、大陸の南部へと追いやられた魔族たちにとっては耐え難いものであった。
中でもヒト族撲滅を掲げ邁進していた先代魔王を崇拝し、ヒト族に対して攻勢を掛けるために着々と準備を進めていた勢力の者たちからしては到底納得の出来るものではなかった。
そしてその筆頭とでもいうべき者こそ、我の強い魔族たちを一手にまとめ上げ魔王の右腕ともまで呼ばれた宰相ザイオンであった。
そんなザイオンに呼ばれたセロフトはさっそく用件を尋ねる。


「それで今日は何の用なんですか?」

「セロフト、貴様に行ってもらいたい場所がある」

「え~面倒臭いのは勘弁してくださいよ。それで何処なんです?」

「この地より北東に位置する島。名を“グリーンアイランド”という。今この時より貴様にはその地にて極秘の任務に就いてもらう」

「了解。で、その“グリーンアイランド”でしたっけ?そこには何があるんです?」


唐突に告げられた極秘任務に対して迷うことなく即答で引き受けるセロフト。
それは“危険”と“快楽”を天秤に掛けた時に“快楽”を求めるセロフトにとっては当然の選択なのであった。


「龍族だ。その島に四天龍の一角“緑龍ラフネリアス”がいるという情報が入った」

「!? ────── なんですかその面白そうな話。それで、僕はその龍族を殺せばいいんですか?」

「馬鹿を言うな。貴様ごときの力では龍族の相手になどなりようもないわ。さらに相手は四天龍。このワシであってもまともにぶつかれば勝機は薄いだろう」


さすがの魔族といえど龍族を相手に真っ向から戦いを挑むような馬鹿な真似はしない。
それは龍族という存在の強大さと圧倒的な力を物語っている。


「へぇ~、それじゃそんな化け物を相手に僕は何をしたらいいの?」

「力を削げ。時間を掛けてじっくりじわじわとその力を奪え。最後はこちらで何とかする」

「まぁ~そのくらいなら僕にでも出来るか。やり方は僕に任せてもらえるんですよね」

「ああ、そこは貴様に一任する。ワシの知る限り卑劣さと狡猾さでは貴様が一番だからな」

「アハハハハ。龍族か~どうやって痛ぶってやろうかな ──────── 」


◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


ザイオンからの指令を受けて任務に就くこと三年。
セロフトの仕事も最終段階へと突入する。

島の守護者である“緑龍ラフネリアス”を弱体化させるために狙いをラフネリアス本体ではなくグリーンアイランドにしたことでラフネリアスを含めた島全土を朽ち果てさせることに成功した。
そして、さらにそこに行方知れずとなっていたクロノが現れたのだ。
まさに天の計らい ──────── 。
セロフトはそう思った。
これで計画は盤石となり、“緑龍ラフネリアス”を捕えることは確実だと確信したのだった。


「クロノ様、この地に住まう“緑龍ラフネリアス”を捕らえ、僕と共に魔族領へ帰還しましょう。そして今一度大陸の頂点に君臨するのです」


クロノの姿を目にしたことにより喜びから笑みが溢れるセロフト。
そんな彼が告げた提案を耳にしスズネたちはクロノへと視線を向けた。


「はぁ?そんなもんに興味はない。やりたければ勝手にすればいい。だが、間違っても俺の邪魔だけはするなよ」


セロフトの提案はあっさりと拒否されてしまう。
そのまさかの返答に驚き開いた口が塞がらない様子のセロフトは怒りのあまり小刻みに震えだす。
そして、クロノの言葉に絶望するセロフトはスズネたちがクロノを惑わせている原因だと判断したのだった。


「お前らか?どうやって取り入ったのかは知らないけど、ヒト族のことだからどうせ卑怯な手でも使ったんだろ!」

「ちょっと、アイツなんか勘違いしてるわよ」

「よく分かんないっすけど、なんかブチ切れてるっすよ」

「あのーーー私たちは別にクロノを騙してなんかいませんよーーーーー」

「五月蝿い、うるさい、ウルサイ、ウルサイ!!お前らも他の奴らと同じように皆殺しにしてやる」

「なんかヤバそうですよ」

「あやつさっきからごちゃごちゃと五月蝿いのじゃ。先にやっつけた方が早いんじゃないのか?」

「そ…それが出来たらいいんですけど、恐らくあの魔族の方は私たちよりも格段に強いですよ」

「消し飛べ!! ──────── 地獄の業火ヘルファイア


ブウォォォォォゴォォォォォ ──────── 。


「フンッ、くだらん」


フウォン ──────── 。


セロフトによる紫黒色の炎がスズネたちを襲うが、クロノによって容易くいなされる。
冒険者たちを葬った強力な魔法攻撃もクロノにとっては大したものではなく、軽く右手を振り払っただけで易々とかき消されたのだった。


「反逆行為ですよ」

「はぁ?」

「この計画は宰相であるザイオン様直々の指令です。それを妨害するということは僕たち魔族に対する反逆行為となりますよ」

「それがどうした。俺は魔族を統べる王だ。お前ごときにつべこべ言われる筋合いはない」


魔王であるクロノに対して強気な姿勢を取るセロフト。
あろうことかクロノに対して反逆者のレッテルを貼ろうというのだ。
これにはクロノも苛立ちを見せたのだが、それを見てもセロフトはその姿勢を崩そうとはしなかった。


「あなたは何も分かっていない」

「あぁ?どういう意味だ」

「すでにあなたは魔王ではないんですよ」


!? !? !? !? !? !? !?


その一言に衝撃が走る。
そして、その言葉を聞いた瞬間スズネたちはセロフトの言っている意味を理解することが出来なかった。
ヒト族の認識として現魔王はクロノであり、クロノ本人も自身が魔王であると明言している。
しかし、今目の前にいる魔族の男は確かにクロノが魔王ではないと言ったのだ。


「アハハハハハ、さすがに驚きますよね~。ですが、当然といえば当然でしょ。あなたが行方不明となってから随分と経ちましたからね。いつまでも生きているかも分からない者を王の座に座らせておくわけにはいきませんよ」

「で、今の王は誰だ」

「気になります?そりゃ~気にもなりますよね」

「さっさと言え」

「はいはい。ほんとせっかちだなぁ~。現魔王は“オロック様”ですよ」


・・・・・。


「え~と・・・誰?」

「っていうか、さっきからずっと話に出てきてるザイオンって人も誰なんすか?ウチ全く話についていけてないんすけど」

「クロノ、オロックっていうのは・・・」


スズネたちからの質問を受け、クロノはフゥーと大きく息を吐くと静かに答え始める。


「ザイオンは魔族の宰相であり、先代魔王の右腕だった男だ。そして、オロックというのは ────── 俺の弟だ」


!? !? !? !? !? !?


「アンタの弟!?」

「クロノ、弟なんていたんすか!?」

「そんなに驚くことか?」


次から次へと押し寄せる衝撃に驚きを通り越して呆れてしまうスズネたち。
そんな彼女たちのことなど気にも止めずセロフトはクロノとの会話を続ける。


「クロノ様、こちらに戻って来てください。そいつらはいつか必ずあなたを裏切りますよ」


改めてクロノに魔族領への帰還を求めるセロフト。
ヒト族によって傷付けられた魔族のプライドを取り戻すためにはその根源であるヒト族を滅ぼす他なく、そのためには歴代最強と云われるクロノの力が不可欠。
そして、魔族によるにはを含めた他種族への侵攻準備は着々と進められており、その手始めがグリーンアイランドに住む“緑龍ラフネリアス”の力を得ることなのだという。
龍の力を取り込み魔族という存在を更なる高みへと昇華させる。
今回の計画はそのための第一歩なのだ。


「そ…そんな事のために緑豊かだったグリーンアイランドを灰まみれにしたんですか!それに無抵抗のラフネリアスさんまで・・・。こんな事、今すぐ止めてください」

「黙れ!ヒト族風情がこの僕に指図するな!!」


自分たちが強くなるためだけにラフネリアスを弱体化させ、さらにグリーンアイランド全土を灰まみれの異常な状態にしたということに憤りを感じ、今すぐ止めるようにいうスズネ。
しかし、ヒト族に対する魔族の憎悪は深く、セロフトはスズネを睨みつけ邪悪な殺気を飛ばすのであった。


「フゥー、フゥー、まったくふざけた女だ。お前らも周りに転がってる奴らと同じように焼け焦げた肉塊にしてあげるよ。準備は出来てるからね。火山を噴火させて最後の仕上げといこうか!!」


セロフトは三年にも及ぶ計画を完遂するために最後の仕上げに入ることを高らかに宣言する。
その言葉を聞き周囲を見渡すスズネ。
知り合ったばかりとはいえ道中にもいろんな話をして親交を深めた人たち。
そして今、何よりも大切な仲間たちと共にかつてない強敵を前にして生きるか死ぬかの瀬戸際に立っている。
さらに、このまま目の前の魔族を放置すればラフネリアスもグリーンアイランドも殺され、いずれその脅威はガルディア王国全土へと広がるだろう。
その光景が脳裏に浮かびスズネは静かに涙を流す。


「スズネ、泣いてるの?大丈夫?」

「えっ!?あれ?なんだろう。こんな時に…なんで?」


ミリアから言われるまで自分が泣いていることに気づいていなかったスズネは何故泣いているのかと驚きながら溢れ出る涙を拭う。


「さぁ~さぁ~、フィナーレだよ」

「どうするんすか。噴火なんてされたらウチらひとたまりもないっすよ」


シャムロムの言う通りである。
そして、そのことはセロフトも重々承知している。
噴火による熱と溶岩は魔族である自身とクロノは耐えられたとしてもヒト族であるスズネたちは耐えられはしない。
さすがにクロノの力をもってしても今からそれを阻止するには圧倒的に時間が足りない。

そして、不敵な笑みを浮かべセロフトが両手を掲げて最後の仕掛けを起動させる。


「それじゃ~始めようか ─────── 山の怒りエラプション


ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ ────────── 。


重く深い地鳴りが始まると同時に地面が大きく震えだす。
もはやここまでかと誰もが思い、クロノでさえも緊急回避の準備に取り掛かっていたその時 ──────── 。


ブウォン ─── ブウォン ─── ブウォン ───  。


周りの喧騒とは対照的にスズネの身体が静かに淡い緑色の光に包まれ輝きを放つのであった。


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