魔王召喚 〜 召喚されし歴代最強 〜

四乃森 コオ

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開戦③

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~第三軍戦闘地~


第二、第四軍が激突前に舌戦を繰り広げていた中、第三軍の戦闘地では静かに場所取りと陣の形成が両軍によって粛々と進められていた。
しかし、その中で一箇所だけ王国軍第三軍がどれだけ欲しても手に入らない場所があった。
その場所とは ───── 上空である。
すなわち戦闘開始前から制空権は獣王国側に取られる形となったのだ。
そして、もちろんその場所を手にしたのは十二支臣が一人“飛翔バルバドール”。
そもそも幼少の頃より住み慣れたパスカル大山脈の中を自由に飛び回ることなど彼が率いる鳥獣部隊にとって造作もないのことであり、辺り一帯に立ち並んでいる木々の隙間を縫って飛び獲物を狩ることなど朝飯前なのである。

さて、この不利な状況の中でトリスタン率いる第三軍はどのようにして戦うつもりなのか ──────── 。


「よし、陣形は整いつつある。敵の主力は三名、“闘牛のブル”・“飛翔バルバドール”・“暴脚ホルス”。さて…制空権は完全にあちら側にあるわけだが、どう対処したものか・・・」


戦うための準備は整った。
しかし、当然ではあるが待ち構えていた獣王国軍の方が地形を味方につけ有利な状況であることは明白である。
その上制空権まで取られてしまっているのだから王国軍としては堪ったものではない。
それでも泣き言を言っている暇もなければ、それを聞き入れてくれるような相手でもないのだから本当に頭が痛い。


「トリスタンさん鳥獣どもなんですけど、俺の団がガッ!と行って、バッ!と飛び乗って、ガガガガッ!と倒してきましょうか?」


ここで第十席グリフレットが制空権を手にしている鳥獣部隊を担当すると志願したのだが、何とも抽象的な作戦であり、指揮を執るトリスタンとしては承諾に苦しむものであった。


「あ~面倒臭い・・・。こんか獣狩りなんて狩猟師ハンターどもにやらせておけばいいだろ・・・。はぁ~・・・なんかよく分からんが・・・それでってこいグリフレット・・・。ついでに他のやつもってこい・・・」

「ウッス!!」

「待つんだ二人とも。そんな考え無しの作戦では自分たちはおろか部下たちまで危険な目に遭うことになってしまう」

「それではどうするんスか?どのみち鳥獣どもは誰かがやらないといけないッスよ」

「ああ、もちろん分かっている。僕はその大役をベディヴィアに任せたいと思っている」


この第三軍の戦いにおいては何よりもまず奪われた制空権をなんとかしなければならない。
そのためにもなるべく早く相手の鳥獣部隊を打ち破ることが重要となる。
すなわち鳥獣部隊を率いるバルバドールを相手にする者がもつ重要度は計り知れない。
トリスタンはこの戦いにおける最も重要な大役をベディヴィアに任せると言ったのだ。
そして、そのような言葉を掛けられたベディヴィアはというと ──────── 。


「はぁ~・・・冗談だろ?・・・。相手の主力は三匹なんだ・・・トリスタンの団で二匹、グリフレットの団で一匹・・・そして、俺の団は後方支援・・・。これがベストな作戦だ・・・間違いない・・・」


いつにも増してやる気がない様子を見せるベディヴィア。
基本的に面倒事を避けたがる性格は今回の作戦においても健在である。
たった今立案された作戦もただ自分が楽をしたいがための苦し紛れのものであった。
しかし、物事に対して真っ直ぐに向き合う性格のグリフレットはそんなベディヴィアの言葉にさえも疑いの念を持つことはない。


「凄いッスね!ベディヴィアさんは後方支援まで出来るんスか!さすがッス!!」

「おっ…おう・・・まぁ~な。俺クラスの聖騎士にもなると・・・それくらい出来て当然だ・・・」


上体を前のめりにしながら目を輝かせるグリフレットを前にしてバツが悪そうな表情を浮かべるベディヴィア。
その様子を隣で見ていたトリスタンは呆れたように溜め息混じりで首を左右に振るのだった。


「ベディヴィア、君は後方支援なんてやらないだろ。第七聖騎士団の中でも特に君を含めた君の直属部隊が得意とするのは敵の殲滅。前線に立ってこそ力を発揮する」

「えっ!?俺のことを揶揄ったんスか?」

「はぁ~・・・面倒くせぇ~・・・」

「戦いが始まると敵は僕たちの頭上を縦横無尽に飛び回るだろう。こちらの現有戦力を考えた時にそれに対抗出来るのは、ベディヴィア…君の重力魔法だけだと思う」

「はぁ~・・・マジかよ・・・。でもなぁ~トリスタン・・・ここまでの行軍で俺は体力の九割を消費してしまった・・・。これでは ────── 」

「あれくらいの敵、君なら一割もあれば十分だろ?」

「いや・・・」

「僕は君の力を信じている」


真っ直ぐにベディヴィアを見つめるトリスタン。
その言葉には嘘や偽り、お世辞などの誤魔化しは存在しない。
そして、トリスタンから感じられるのはただただ誠実に相手と向き合うという思い。
それ以外には何もなかった。


「・・・ ─────── 。分かった・・・やればいいんだろ。ほんとお前には敵わないな・・・」

「ありがとうベディヴィア」


トリスタンからの要請に渋々ながら了承したベディヴィア。
あえてここで説明をしておくと、ベディヴィアは数多くいる聖騎士の中でも特に問題の多い騎士である。
まさに問題児。
その無精ぶしょうぶりや残虐性は騎士団の中でも度々問題視されてきた。
それでもその欠点を補って余りある才能と実力によって十二の剣ナンバーズという地位にまで駆け上がったのだ。
そして、そんな彼のことを他の誰よりも認め、十二の剣ナンバーズに推薦した人物こそがトリスタンなのである。
それ故にさすがのベディヴィアもトリスタンの言葉には耳を傾ける。
もちろんそのことをアーサーも知っており、だからこその第三軍への編成となったのだ。


「クソッ・・・。アーサーの野郎・・・次会った時にバラバラに刻んでやる・・・」


その意図を察したベディヴィアはアーサーに向けて静かに怒りの炎を滾らせるのであった。



◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ 


一方その頃、獣王国軍側はというと ──────── 。


「クワックワックワッ。上空はオレっちの部隊に任せればいいよん。ここはオレっちたちにとって庭みたいなもんだからねい」

「アタイはどいつの相手をすればいいんだい?先に仕掛けておいてやり返されたら攻め落とそうとする侵略者どもめ。全員蹴り殺して血祭りにしてやる」

「お前らあまりはしゃぎ過ぎるなよ。相手はあの十二の剣ナンバーズだ。そこそこやるらしいからな。油断するんじゃねーぞ」


これまでの十二支臣たちと同様にヒト族への怒りを募らせるブル・バルバドール・ホルスの三人。
もちろん彼ら三人だけではなく彼らの部隊に所属する獣人たちも同じ思いでいる。

そんな溢れんばかりの憎悪の念を帯びた凄まじい殺意。
これは各戦闘地だけに留まらず広大なパスカル大山脈中に広がっていた。
そのため王国軍は一歩足を踏み入れた瞬間から強烈なプレッシャーをかけられ続けていたのだった。


「それじゃ~野郎ども、そろそろ始めようか」

「「「「「 グオォォォォォーーーーー!!!!! 」」」」」


ブルによる静かな号令に対して轟音ともいえる咆哮で応える獣人族の戦士たち。
その声によって空気が震え、相対する聖騎士たちは恐怖と共にビリビリした刺激を肌に感じるのであった。


こうして第三軍の戦闘地でもいよいよ両軍による戦いの火蓋が切って落とされる。


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第三軍戦闘地


第三席トリスタン vs 闘牛のブル

第七席ベディヴィア vs 飛翔バルバドール

第十席グリフレット vs 暴脚ホルス



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