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翌日、稽古の後ビアンカを連れて登城した。宰相に理由を話し、陛下に会える様に計らって貰う。
綺麗に直した応接室に通される。どうやらここも被害を受けた様だ。
「今日は違う娘を連れているのだな。冒険者の格好と言う事は新しい弟子か?」
「そうですね。弟子は弟子でもこのビアンカは軍師として育てるつもりです。」
「ほう?軍師とは面白いな。卿が育てた軍師と言うのは私も興味がある。」
「まだ育てている最中なので、どうなるかは判りませんよ?」
「それにしても軍師を育てるのに女性を選ぶとは君は変わっているな。」
まあ、そうだろうな。この王城に女性の官僚は居ない。居るのはメイド位だろう。貴族にしても官僚にしてもなれるのは男性だけだ。この世界での女性の地位は低い。だからと言って女性が知能で男性に劣ると言う事は無い。
実際、偉そうにしている貴族でさえ奥さんには頭が上がらないと言う例は山ほどある。まあ、僕もその一人なんだけどね。
「今日来たのは宝物庫についてです。単刀直入に聞きますが、あの中に救済の箱舟が欲しがりそうなアーティファクトとかありませんか?」
「ふむ、アーティファクトか。私も宝物庫の中身を全部把握している訳では無いので何とも言えんな。自分の目で確かめてみるか?」
ん?それって僕が宝物庫に入っても良いって事?
「えっと、僕が入っても大丈夫なのでしょうか?」
「お主、自分の立場を忘れて無いか?公爵と言えば王族だ当然の事、宝物庫に入る資格がある。」
「僕も王族に含まれるんですか?血筋的には王族ではありませんよ?」
「それを言ったら私の妻、王妃も血筋的には王族では無くなってしまうぞ?」
なるほど、姻戚関係なら王族扱いになるんだな。って事はビアンカは入れないって事になるな。
「僕は入れるとして、ビアンカの扱いはどうなるのでしょうか?」
「王族が従者も連れずに行動するのは、普通ではありえない。この部屋にも宰相と近衛兵が控えておるだろう?」
「なるほど、僕の従者と言う扱いなら入っても構わないんですね?」
「そう言う事だ。ただし、近衛兵を一人護衛として付けるぞ。意味は解るな?」
つまり監視役って意味か。まあ僕がその気なら監視役なんて意味が無い事は陛下も解って居るだろう。おそらく形式的な物なんだろう。
陛下に礼を言って、宝物庫へ向かう。宝物庫は地下にある。
地下と言っても薄暗さや息苦しさは無い。恐らく採光や換気システムがあるのだろう。
さて、入ったは良いが何を見れば良いんだ?鑑定で見た物は解るが、数が圧倒的だ。この中から目的の物を探すのは一苦労だな。しかも何が目的の物なのか解って居ないし。あまり時間を掛ける訳にも行かないよね。
宝物庫はその名の通り宝の倉庫だ。飾られて居る物もあるが、大部分は箱に入れられ仕舞われている。部屋の広さは20畳程はあるだろうか、所狭しと物が置かれている。
目的の物が解って居てもここから探し出すのはかなりの時間が掛かりそうだ。
とりあえずサーチを掛けながら宝物庫を一周してみる。ビアンカは見る物全てが珍しい様で時々立ち止まっては何かに見入って居る。
近衛兵は入り口で僕らの動きを眺めている。まあ、出口は一つだから、それが正解だろう。
サーチには何も引っ掛からなかった。僕はもう一周、今度は見た目で使い道の解らなそうな物を探してみた。
「あ、これ。」
入り口の反対側の壁面。つまり宝物庫の一番奥でビアンカが小さな声を上げた。静かなので、小さな声の割にハッキリと聞こえた。
「どうした?」
僕はビアンカの方へ音を立てない様に歩いて行く。別に図書館では無いので静かにする必要は無いのだが、何となく音を立てるのを憚られる空気がある。
ビアンカの視線の先を見ると1メートル位の船の模型があった。なんで、宝物庫に模型?
「これを見て下さい。」
ビアンカが展示物の下にあるプレートを指さした。そこには展示物の名前であろう文字が書かれている。王国語で『救済の箱舟』と。
「これは、ビンゴかもしれないな。だが、これは何なんだ?ただの模型じゃ無いよな?」
「解りません。ですが、意味もなく宝物庫に、しかも展示されていると言う事は無いと思います。もしかしたら魔道具かもしれません。」
魔道具か、魔力を流してみるのは不味いよな?これは一度陛下に相談してみる必要があるな。
一旦宝物庫を出て、陛下に再び会いたい事を近衛兵に伝える。近衛兵は宰相に聞いて参りますので先程の応接室でお待ち下さいと、僕らを応接室に押し込んでから何処かへ走って行った。
10分程で再び陛下と相まみえた。
「どうした?緊急の用件かな?」
「陛下は、宝物庫に飾られている、船の模型はご存じでしょうか?」
「船の模型?はて、その様な物があった記憶は無いが?」
「宝物庫の一番奥の中心、かなり目立つ場所に1メートル程の船の模型があるのですが、ご存じ無いと?」
陛下は一瞬何かを考える素振りを見せる。
「宝物庫の一番奥は、確か初代国王の鎧が飾ってあったはずだが。」
「鎧ですか?その様な物はありませんでしたよ?船の模型が飾ってあり、プレートに『救済の箱舟』と明記されておりました。」
「何だと?それは本当か?」
今度は陛下と宰相も一緒に宝物庫へ行く事になった。
応接室から宝物庫へはそれ程遠くない。一旦下に降りるので階段があるが、それでも5分は掛からない。
陛下も含め皆駆け足になって居る。宝物庫へ着くと頑丈な鍵を近衛兵が開ける。
「この一番奥です。」
陛下と宰相が右から回ったので僕とビアンカは左から回る。ほぼ同時に目的地に着いた。
「これは、どう言う事だ?」
「それが知りたいのですが、これは元々ここにあった物では無いのですね?」
「ああ、ここには初代国王の鎧があった。私も最後に見たのはかなり前の事だが、こんな模型が無かった事は断言できる。」
「となると、ここに忍び込んだ物が居ると言う事になりますね。」
あの爆破騒ぎの時だろうか?でも、そうなると爆破の能力を持った長老が生きている可能性が高くなる。
「この宝物庫の鍵は国王と宰相しか持つ事が許されない。誰がどうやって鎧と模型を入れ替えたんだ?」
「鍵は2本しか無いんですね?となると前国王の側近に犯人が居たと言う事になりますね。」
「兄上の側近が犯人だと?」
「ええ、そしてその者はかなりの確率で救済の箱舟の長老の1人だと思います。」
「救済の箱舟の長老が王城に居たと言うのか?」
「はい。前国王陛下の側近で身元が解らない遺体あるいは行方不明の者が居ましたらリストを作って貰えませんか?」
宰相が頷いた。陛下はショックを隠し切れない様だ。
僕とビアンカは一旦王城を辞する事にした。リストは後日届けてくれるそうだ。これで何かが解れば良いのだが。
帰り道、ビアンカに聞かれた。
「公爵様、何故前国王陛下の側近で身元が解らない遺体あるいは行方不明の者のリストを要求したのですか?」
「その中に犯人が居るからだ。」
するとビアンカは一瞬首を捻った。
「何で、生きている者の中には犯人が居ないと思うのでしょうか?」
しまった。何で僕はそう思い込んでしまったのだろう?言われてみればそうだ。前国王の側近なら生きていようが行方不明だろうが一緒だ。僕らは正体を知らないのだから、生きている人間も容疑者に変わりは無い。
勝手に長老は姿を隠しているとばかり思いこんでいた。更に言えば僕は長老の性別さえ知らない訳だ。メイドだって容疑者になる。
長老と言う単語に誤魔化されて居たのかもしれない。幾ら若返りの秘薬を飲んでいるとは言え、ある程度の年配の紳士を想像していた。
王城に潜り込むなら、若いメイドの方が正体がバレにくい。実際、家族団らんの場に居合わせるなら男性より女性の方が自然だ。
まあ、執事と言う線もあるが、確か執事の遺体は見つかっているはずだ。
固定概念と言う奴だな。もう一度一から調べなおす必要がある様だ。
綺麗に直した応接室に通される。どうやらここも被害を受けた様だ。
「今日は違う娘を連れているのだな。冒険者の格好と言う事は新しい弟子か?」
「そうですね。弟子は弟子でもこのビアンカは軍師として育てるつもりです。」
「ほう?軍師とは面白いな。卿が育てた軍師と言うのは私も興味がある。」
「まだ育てている最中なので、どうなるかは判りませんよ?」
「それにしても軍師を育てるのに女性を選ぶとは君は変わっているな。」
まあ、そうだろうな。この王城に女性の官僚は居ない。居るのはメイド位だろう。貴族にしても官僚にしてもなれるのは男性だけだ。この世界での女性の地位は低い。だからと言って女性が知能で男性に劣ると言う事は無い。
実際、偉そうにしている貴族でさえ奥さんには頭が上がらないと言う例は山ほどある。まあ、僕もその一人なんだけどね。
「今日来たのは宝物庫についてです。単刀直入に聞きますが、あの中に救済の箱舟が欲しがりそうなアーティファクトとかありませんか?」
「ふむ、アーティファクトか。私も宝物庫の中身を全部把握している訳では無いので何とも言えんな。自分の目で確かめてみるか?」
ん?それって僕が宝物庫に入っても良いって事?
「えっと、僕が入っても大丈夫なのでしょうか?」
「お主、自分の立場を忘れて無いか?公爵と言えば王族だ当然の事、宝物庫に入る資格がある。」
「僕も王族に含まれるんですか?血筋的には王族ではありませんよ?」
「それを言ったら私の妻、王妃も血筋的には王族では無くなってしまうぞ?」
なるほど、姻戚関係なら王族扱いになるんだな。って事はビアンカは入れないって事になるな。
「僕は入れるとして、ビアンカの扱いはどうなるのでしょうか?」
「王族が従者も連れずに行動するのは、普通ではありえない。この部屋にも宰相と近衛兵が控えておるだろう?」
「なるほど、僕の従者と言う扱いなら入っても構わないんですね?」
「そう言う事だ。ただし、近衛兵を一人護衛として付けるぞ。意味は解るな?」
つまり監視役って意味か。まあ僕がその気なら監視役なんて意味が無い事は陛下も解って居るだろう。おそらく形式的な物なんだろう。
陛下に礼を言って、宝物庫へ向かう。宝物庫は地下にある。
地下と言っても薄暗さや息苦しさは無い。恐らく採光や換気システムがあるのだろう。
さて、入ったは良いが何を見れば良いんだ?鑑定で見た物は解るが、数が圧倒的だ。この中から目的の物を探すのは一苦労だな。しかも何が目的の物なのか解って居ないし。あまり時間を掛ける訳にも行かないよね。
宝物庫はその名の通り宝の倉庫だ。飾られて居る物もあるが、大部分は箱に入れられ仕舞われている。部屋の広さは20畳程はあるだろうか、所狭しと物が置かれている。
目的の物が解って居てもここから探し出すのはかなりの時間が掛かりそうだ。
とりあえずサーチを掛けながら宝物庫を一周してみる。ビアンカは見る物全てが珍しい様で時々立ち止まっては何かに見入って居る。
近衛兵は入り口で僕らの動きを眺めている。まあ、出口は一つだから、それが正解だろう。
サーチには何も引っ掛からなかった。僕はもう一周、今度は見た目で使い道の解らなそうな物を探してみた。
「あ、これ。」
入り口の反対側の壁面。つまり宝物庫の一番奥でビアンカが小さな声を上げた。静かなので、小さな声の割にハッキリと聞こえた。
「どうした?」
僕はビアンカの方へ音を立てない様に歩いて行く。別に図書館では無いので静かにする必要は無いのだが、何となく音を立てるのを憚られる空気がある。
ビアンカの視線の先を見ると1メートル位の船の模型があった。なんで、宝物庫に模型?
「これを見て下さい。」
ビアンカが展示物の下にあるプレートを指さした。そこには展示物の名前であろう文字が書かれている。王国語で『救済の箱舟』と。
「これは、ビンゴかもしれないな。だが、これは何なんだ?ただの模型じゃ無いよな?」
「解りません。ですが、意味もなく宝物庫に、しかも展示されていると言う事は無いと思います。もしかしたら魔道具かもしれません。」
魔道具か、魔力を流してみるのは不味いよな?これは一度陛下に相談してみる必要があるな。
一旦宝物庫を出て、陛下に再び会いたい事を近衛兵に伝える。近衛兵は宰相に聞いて参りますので先程の応接室でお待ち下さいと、僕らを応接室に押し込んでから何処かへ走って行った。
10分程で再び陛下と相まみえた。
「どうした?緊急の用件かな?」
「陛下は、宝物庫に飾られている、船の模型はご存じでしょうか?」
「船の模型?はて、その様な物があった記憶は無いが?」
「宝物庫の一番奥の中心、かなり目立つ場所に1メートル程の船の模型があるのですが、ご存じ無いと?」
陛下は一瞬何かを考える素振りを見せる。
「宝物庫の一番奥は、確か初代国王の鎧が飾ってあったはずだが。」
「鎧ですか?その様な物はありませんでしたよ?船の模型が飾ってあり、プレートに『救済の箱舟』と明記されておりました。」
「何だと?それは本当か?」
今度は陛下と宰相も一緒に宝物庫へ行く事になった。
応接室から宝物庫へはそれ程遠くない。一旦下に降りるので階段があるが、それでも5分は掛からない。
陛下も含め皆駆け足になって居る。宝物庫へ着くと頑丈な鍵を近衛兵が開ける。
「この一番奥です。」
陛下と宰相が右から回ったので僕とビアンカは左から回る。ほぼ同時に目的地に着いた。
「これは、どう言う事だ?」
「それが知りたいのですが、これは元々ここにあった物では無いのですね?」
「ああ、ここには初代国王の鎧があった。私も最後に見たのはかなり前の事だが、こんな模型が無かった事は断言できる。」
「となると、ここに忍び込んだ物が居ると言う事になりますね。」
あの爆破騒ぎの時だろうか?でも、そうなると爆破の能力を持った長老が生きている可能性が高くなる。
「この宝物庫の鍵は国王と宰相しか持つ事が許されない。誰がどうやって鎧と模型を入れ替えたんだ?」
「鍵は2本しか無いんですね?となると前国王の側近に犯人が居たと言う事になりますね。」
「兄上の側近が犯人だと?」
「ええ、そしてその者はかなりの確率で救済の箱舟の長老の1人だと思います。」
「救済の箱舟の長老が王城に居たと言うのか?」
「はい。前国王陛下の側近で身元が解らない遺体あるいは行方不明の者が居ましたらリストを作って貰えませんか?」
宰相が頷いた。陛下はショックを隠し切れない様だ。
僕とビアンカは一旦王城を辞する事にした。リストは後日届けてくれるそうだ。これで何かが解れば良いのだが。
帰り道、ビアンカに聞かれた。
「公爵様、何故前国王陛下の側近で身元が解らない遺体あるいは行方不明の者のリストを要求したのですか?」
「その中に犯人が居るからだ。」
するとビアンカは一瞬首を捻った。
「何で、生きている者の中には犯人が居ないと思うのでしょうか?」
しまった。何で僕はそう思い込んでしまったのだろう?言われてみればそうだ。前国王の側近なら生きていようが行方不明だろうが一緒だ。僕らは正体を知らないのだから、生きている人間も容疑者に変わりは無い。
勝手に長老は姿を隠しているとばかり思いこんでいた。更に言えば僕は長老の性別さえ知らない訳だ。メイドだって容疑者になる。
長老と言う単語に誤魔化されて居たのかもしれない。幾ら若返りの秘薬を飲んでいるとは言え、ある程度の年配の紳士を想像していた。
王城に潜り込むなら、若いメイドの方が正体がバレにくい。実際、家族団らんの場に居合わせるなら男性より女性の方が自然だ。
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