転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ

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 家に帰り、書斎でビアンカと今までの事を振り返りながら整理する。正直救済の箱舟には常に先手を取られている気がする。

「そう言えば公爵様。宝物庫の箱舟の模型はあのままにして置いて宜しいのですか?」

「ん?あれか、あれが何なのか解らないからなぁ。動かしても良い物かどうか。」

「でも、すり替えられたと言う事は誰かがあそこに運んだんですよね?」

 時限爆弾なら設置した後にスイッチを入れる事が出来る。魔道具でも同じでは無いだろうか?また、触れたら何かが起こると言う可能性もある。

 まあ、今まで何も起こらなかった事を考えると、後者の可能性が高い。無闇に動かすのは危険だと判断したが、ストレージに仕舞って時間を止めると言う方法もあると、今になって思い出す。
 
 どうも、あの箱舟の模型を見てから、僕の思考が鈍っている気がする。気のせいなら良いのだが。

 数日後には行方不明者のリストが届くだろう。だが、恐らくそこには長老の名前は載っていない。生きていて、新国王就任と共に王城を去った者の中にこそ長老は居る。まあ、リストは無駄にはならない。そこに名前が載って居る物は無実だと言う事になるからだ。

 しかし、既に長老は何処かに隠れてしまって居るだろうな。またしても先手を打たれたと言う事になる。

 翌日、王城に再び行き、事情を話して、箱舟の模型を預からせて貰う。アイテムボックスと違って、ストレージは目標物が決まって居れば手を触れずとも仕舞う事が可能だ。

 とりあえず、爆発する事も無く模型はストレージに収まった。後でじっくりとストレージの機能で解析するつもりだ。

 さて、完全な手詰まりだ。これからどうしよう?

 打つ手がないと言うより、僕の計画がことごとく相手に読まれている。ここは主導権を他の人間に託した方が良さそうだ。

「と、言う訳でビアンカ、ここからは君が主導で動く事に決めた。」

「いやいや、勝手に決めないで下さいよ。私より救済の箱舟に詳しい公爵様が駄目だったのに、私に指揮が務まる訳ないじゃ無いですか。」

「そうか?悪く無い選択だと思ったのだが?なまじ知っているから相手の掌で弄ばれているのだと思っている。なのであまり知らないビアンカの方が面白いアイデアを出すんじゃないかと期待しているんだが?」

 囲碁や将棋でもプロよりも初心者の方が相手をしづらいと言うのを聞いた事がある。ここは素人のビアンカの資質に賭けてみたい。

「では、唯一の手掛りである。箱舟の模型を調べてみては如何でしょう?」

 ふむ、それは僕も考えていたのだが、ストレージの中で調べないと万が一の時困るので、ここに出す訳には行かない。

「調べるのは構わないが、ここに出す訳には行かないぞ?何処か安全な場所で調べないと、危険な物だった時、対処出来ないからな。」

 と言う事でビアンカを書斎に残し、僕は転移で大山脈の比較的安全そうな場所を探し、そこで解析をする事にした。

 早速ストレージを使い。分析するが、魔道具では無さそうだ。魔石や魔法陣の類は使用されていない。

 色々と調べてみるが、ただの精巧な模型にしか見えない。これは何の為に作られたんだ?

 とりあえず安全性は確認したので、ストレージから出してみる。1メートル程の模型だが非常に良く出来ている。細部まで成功に作り込まれているのには感心した。

 待てよ、この時代にここまで精巧な模型を作る技術があったのだろうか?もしかしたらこれは、原寸で作られた物を縮小した物では無いだろうか?

 しかし、この世界の造船技術は遅れていると聞く。これが、元々どれ位のサイズかは判らないが、機能的には外洋を航海出来るだけのテクノロジーが使用されているのでは無いだろうか?

 あれ?そうなると謎が深まる。これは救済の箱舟に取って非常に貴重な物なのでは無いだろうか?それを何故、王城の宝物庫へ?

 僕は試しに魔法を使い、模型を5メートル位の大きさに拡大してみる。思った通り。船に必要な機能は全て再現してあった。

 サイズ感から行くと30メートル位の大きさが元のサイズだと思われる。

 まさに箱舟だが、これを何に使用するつもりだったんだ?

 僕は宗教には詳しく無いが。確か箱舟って洪水の時に様々な生物を助ける為に使用されたんだよな?まあ、あれは地球の話だから、この世界の箱舟はまた違う意味があるのかもしれないが。

 この結果を持って。公爵邸に転移で戻る。

 書斎ではビアンカが本を読みながら待っていた。

「何か解りましたか?」

「ああ、幾つか解った事があるが、更に謎が増えたぞ。」

「どう言う事です?」

「まず、箱舟だが、あれは模型じゃなくて本物の箱舟だ。魔法で縮小してあるが、拡大の魔法を使えば、きちんと作動する。この大陸から別の大陸まで航海出来るだけの能力を持っている。」

「外洋を航海出来る船なんて、今の技術力では作れませんよ?それってかなり貴重な物なのでは無いですか?」

「だろうな。で、謎が出て来る。何故、宝物庫に飾ったのだろう?」

「あくまでも仮定になりますが、同じ物が複数あるとしたらどうでしょう?」

「どう言う事だ?」

「各地に箱舟を置いておいて、何かがあった時に一斉に外洋に逃げる為に存在しているとか?」

「それでは、救済の箱舟は世界を救う組織と言う事になるぞ?」

「そもそも救済の箱舟って悪なんでしょうか?」

 ん?過激な組織ではあるが、悪と言う概念では考えた事が無かったな。

「しかし、王都で4万人もの死者を出しているぞ?」

「考え方の違いかもしれません。その犠牲は必要な犠牲だったとは考えらませんか?」

 必要な犠牲?まあ、僕も成人君子では無いから、全ての人を救って来た訳では無い。しかし、大量殺人を容認する程人間が出来ている訳でも無い。

「一方で人を殺し。一方で人を助ける。その基準は何なんだ?と言うか、人の命と言うのは平等ではないのか?」

「この王国では少なくとも人の命は平等ではありません。貴族と平民の命では金貨と銅貨位の違いがありますよ?」

 僕は衝撃を受けていた。現代日本で生きて来た僕は人の命は平等だと教わって来た。しかし、この世界では違う様だ。そもそも、日本の常識がこの世界でも通じると何時の間にか勘違いをしていたらしい。

 となると、善悪の概念も僕の物とこの世界の物ではズレが生じている可能性がある。

 これは問題だ。救済の箱舟が悪では無いのなら、それと戦っていた僕らこそが悪になってしまうのでは無いだろうか?

 いや、もしかしたら戦争と一緒で、どちらにも理があると言う事かもしれない。立場が違えば、信じる正義も変わって来る。

 僕は僕の信じる正義を貫くしか、今は選択肢がない。後世に悪人だったと言われる事になっても。

「なぁ、ビアンカ。ビアンカの善悪の概念から行くと、今回の救済の箱舟の事件はどう言う解釈になるんだ?」

「そうですね。お互いに相容れない主張があり。それが通らないなら武力で制すると言うのは昔からよくある事です。勝った方が正義と言うのは思う所もありますが、あながち間違って居るとも言い切れないんですよね。何故なら、人は自分が正義だと思う方に加担します。その人数が多い方が勝つ事が多い。すなわち民意による正義とも言えます。」

「なるほどなぁ。だが、僕やクラ―ネルみたいなイレギュラーが存在すると、その前提がひっくり返る事もあるんじゃないか?少なくとも、僕がその気になれば、一瞬で王都位消滅するぞ?」

「長い歴史の中、独裁者が居なかった時代と言うのは案外少ないんですよ。なので、そう言う存在が現れたのなら、時代がそれを求めたとも考えられますよね?」

 なるほど、ビアンカの考え方がこの世界では一般的なのかもしれない。だとすると、僕は独裁者として、この王国を治めるのが自然な流れと言う事になる。

 だが、日本生まれの僕に独裁者は務まらないだろうな?

 何にせよ、今回の事件で僕の中の価値観が若干だが変わったのは事実だ。

 これから救済の箱舟と戦うのに影響が出なければ良いが。
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