【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
287 / 314
第8章 砂漠の英雄

第7話 ダーランド王国からの使者

しおりを挟む
「そんな怒っても、君たちは自ら魂を封じて殺されたと聞いていたさね。困ったねえ。プイッとしてないで、こっちを見てくれないかねえ。マツバがもしやそうかもと言うから、こうして会いに来たんだがねえ」

「……クラーク家の実験の副産物でしょうか? ……連れて帰りますか?」

「それはリョウ君に悪いさね。それに、この子たちがおとなしくしているとも思えないねえ」

 私たちが王都ベルンの王城に預けた馬車を迎えに厩舎へ向かうと、微かに女の人の声が聞こえた気がした。
 けれど実際に厩舎の中に入ると、私たちの馬車や王国所有の馬たちがいるだけ。

「どうかしましたか? ローゼ様」

 厩舎まで案内してくれた衛兵さんが、不思議そうに私を見てくる。

「いえ……女の人の声が、2人分聞こえた気がしたんですが……てか、フタエゴとバラオビ、なんか凄い怒ってね?」

 他の馬たちがのんびりしている中で、私たちの馬2頭は、なぜか鼻息荒くして興奮している。

「きっと置いてかれたのに拗ねてるのね。フフン♪ このベレニスがいっぱいよしよししてあげるわ!」

 ベレニスが胸を張って言うが、馬たちは「けっ!」と歯茎を見せてくる。

「こんのお! 相変わらずの態度ね! 今日こそどっちが上か、はっきりさせるわ!」

「どうどう、ベレニスさん! ここは馬術で発散させましょう! きっと馬車を引くのに飽きたんです! さあフタエゴにバラオビ! 私たちを背中に乗せて汗を流しましょう!」

「「へっ!」」

「んが! 姉様! つい最近気づいたんですが、フタエゴとバラオビは姉様とベレニスさんと私にだけ態度キツくないですか⁉」

 私に振るなよレオノール。てか、最近気づいたんかい。出会った時からずっとだぞ。
 まあ、それは単純に、ガチで怒らせたらご飯抜きかご飯にされそうな面子を敏感に察してるんだろうが、それはそれで賢すぎてムカつく。

「レオノール、落ち着いて。愛情注ぐのが大事なんだから怒らない怒らない。私も馬の世話をリョウに教わりながらしだしたけど、ブラッシングする時は気持ちよさそうに目を細めてくれるし。信頼してくれるよ? 舐められないようにするには信頼が大事。ね? フタエゴ、バラオビ」

 私は2頭にゆっくり近づいて、そっと鬣を撫でようとするんだけど?

 ベロリ。

「⁉ なんじゃこりゃー! 人の顔を舐めるなあああああ!」

 私の顔に、フタエゴとバラオビのザラザラした舌が直撃したのだった。

「ローゼ⁉ 大丈夫ですか⁉ フタエゴ、バラオビ! 何が気に入らなかったか存じませんが、これ以上拗ねていると夕飯抜きにします!」

 ヴィレッタの言葉に、2頭はビクッとする。

「プハッ! 災難っすね、ローゼさん。でもまあ、今のやりとりでフタエゴもバラオビも落ち着いたようっす。さすがローゼさん、ナイスっす」

「ナイスじゃないわ、フィーリア! ヴィレッタはタオルありがと。うう……臭いよ~」

 おにょれ、以前くらったくしゃみ直撃に比べればマシだけど、精神的ダメージ大きすぎる。

「あはは、フタエゴとバラオビはローゼのことが大好きなんだね~。ファーストキスおめでとう、ローゼ」

「こいつら雌だしノーカンだわ! 誰だクリスにファーストキスなんて変な知識覚えさせたの!」

 あっ、私だ。そういえば異性に見初められて言い寄られても、唇を重ねたいと思う人以外にオーケーしちゃ駄目だって教えてたっけ……。

「……相変わらずだなあ。リョウ、お前さんの苦労がわかるぜ……」

 おいこらヘクターさん、どういう意味だ?

「しっかし見事な馬たちだな。ファインダ王国王都リオーネで購入したと聞いたが、どこの商会で購入したんだ?」

「ダリム宰相に紹介された、ダーランド王国の馬商人です。……ただ、この2頭に関してはダーランド産ではなく、ファインダ国内で入手したと聞いております」

「ダーランドで、ファインダと交易している馬商人っていうとあそこかな? 俺ならファインダのラインハルト王に献上か、ダーランドの王族に献上する。そう思うぐらい並の馬ではねえぜ」

「血統証がないとは言っていましたが……」

「傭兵と縮れ毛、ちょっと何をごちゃごちゃ話してんの! 一旦オレンに行くんでしょ? ローゼ、転移魔法してちょうだい!」

 ベレニスに促され、リョウとヘクターさんも頷いて馬車に乗り込む。

「ローゼ様、ヴィレッタ様、お気をつけて」

 衛兵さんたちに見送られ、私は今日3度目の転移魔法を発動させる。
 さすがに今日はこれでぶっ倒れそうかな?
 でも目的がはっきりしているのだ。あとは突っ走るのみ!

 それにしても……フタエゴとバラオビに話しかけていた女性の声は本当に幻聴だったのだろうか?
 発動させた光りに包まれながら、私は懐かしい気持ちになる声が耳から離れなかった。

 ***

 騒がしいローゼたちが去った厩舎。

「ローゼ様、女の人の声を聞いたとか言っておられたけど、まさか幽霊とかじゃないよな?」

「おいおいビビらせるなよ。そんなわけあるか。……そういや女といえばダーランドから使者が来ているが、侍女1人連れている絶世の美女だったぜ」

「テシウス様の帰還待ちか? 今、賓客室か?」

「ああ、侍女もローゼ様やヴィレッタ様と同年代の少女だが、めちゃくちゃ可愛かったぜ。漆黒の髪だからパルケニア人かもな。女性を送ってくるなんて、ダーランドも何を考えているんだか」

 コホン。

 厩舎で駄弁っていた衛兵たちが、出入り口から咳払いが聞こえて慌てて敬礼する。

「こ、これはテシウス様! オルタナ様! お帰りなさいませ!」

「ローゼさんたちは、もう旅立ったのですね?」

「はっ! それからテシウス様、ダーランド王国から使者が来ております!」

「窺っております。応接室で会合の準備をしてもらっています。君たちも持ち場に戻りなさい」

「「はっ!」」

 衛兵たちは駄弁っていたことを咎められるかとビクビクしていたが、テシウスの穏やかな言葉にホッと安堵の息を漏らした。

「気になる話をしていましたね。ダーランドの親書に本物の印がありましたが、外見と名乗った名前に懸念すべき点があります。……ローゼちゃんにも会ってもらいたかったんですが」

 衛兵たちが持ち場に戻ったあと、オルタナもテシウスの背後で応接室に向かいながら、不安気に口を開いた。

「仕方がありません。……十中八九、厩舎にいたのは彼女たちでしょう。目的は不明ですが、フィーリア殿でしたら馬車に細工されていても気づくはず。それ以上のことでないのを祈るのみです」

「テシウス先生が、あの時去らずに一緒にローゼちゃんの転移魔法で帰る選択肢をしていれば……いえ、なんでもありません」

「あの場で私が残っても、ローゼさんたちの決断の邪魔にしかなりません」

「承知しています。ですが世界の根幹を揺るがしている邪教の問題、超法規的措置として、ローゼちゃんたちに協力しても良かったのでは?」

 オルタナの声に不満気な様子はない。単純に疑問を口にしただけである。

「……それですと、彼女はベルガー王国そのものを信じてしまうでしょう。彼女が信じるのは王国ではなく、大地に生きる者たちでなくてはなりません」

「……厳しすぎませんか? ローゼマリー姫様に」

 嘆息するオルタナにテシウスは無言で歩みを続け、ダーランド王国の使者が待つ応接室の扉を開けた。
 室内では見事に一礼する長い銀髪の美女と、黒髪ボブヘアの美少女の姿があった。
 姿格好は貴族の礼服ではない、冒険者の出で立ちである。

「……先生、お気をつけて。想像通りです。凄腕の二文字ではすみません」

 テシウスの耳に近づいてオルタナは囁く。

「急な来訪をお許しください。私はクレアと申します。こちらは侍女のマツバ。以後お見を知りください」

 丁寧に、優雅に挨拶する銀髪美女クレアに座るように促し、テシウスも対面のソファへと座った。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...