【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
295 / 314
第8章 砂漠の英雄

第15話 正座

しおりを挟む
 宿に戻り、リョウが語った話を聞いて私は嘆息した。

「ふうん、そんな大事な話を黙ってたんだ」

 リョウは私たちに囲まれ、床の上で正座ってのをしている。
 ちなみに、彼の口から情報源がヘクターさんだとわかった瞬間、リョウへ口をあんぐりさせていた彼も、ヴィレッタの微笑みスマイル見て自ら正座中だ。

「まあ、リョウ様の性格っすから黙ってたのもわかるっす。第一、突然リョウ様が『ノイズは生きている』って告げてきても、要領得ない内容しか喋れず、半信半疑にしかならないっすからね。自分やヴィレッタさんで裏取りする必要があったっす」

 そうかもしれないけど……フィーリア、それ以前にリョウを軽くディスってるよね? リョウのことを世界を救う英雄と見て、一緒に旅してるんじゃなかったっけ?
 てか、裏取りメンバーに私を含めないのもなんで?

「トール・カークスさんと、姉様たちも色々あったと聞いています! 同郷の師匠に後事を託す! くっ! グッとくる話です!」

 レオノールが言うように色々あったのは確かだし、5歳で病死したとされる私が10年後に魔女修行終えて旅に出て冒険者やってたのに、私の存在を知って速攻テスタ政権打倒のために、王女生存説を流布したのも彼だ。

 そのお陰で私は元王女だと自ら名乗らなくても、大体の人が知っちゃう羽目になったし、それについて一切事前相談もされなかったのだ。
 テスタ処刑後に頭を下げられたけど、利用されたのはムカつくし、かといって事前にそう動いてくれと持ちかけられても、そんな餌みたいに扱われる役目なんて断っただろうから、トールさんの行動が正解なのは理解してる。
 でも、だからといってモヤッと感は消えないんだよね。

 私の叔父、サリウス王にとって、テシウスさんが清流のような智者に対し、トールさんは濁流のような智者。
 なんて評したのはフィーリアだが、言い得て妙でいて、実際に体験しないと首を傾げる例えだよ。

「どうせアレでしょ? 傭兵のことだからローゼが知ったら全力でノイズメインで動いて、それ以外おざなりにするのを恐れたんでしょ? ローゼは傭兵が絡むと、そっちに集中しちゃうから。ポイント稼ぎたいもんね♪ アダッ! ちょっ⁉ 何するのよローゼ!」

「ベ~レ~ニ~ス。余計なことは口にしない!」

 ポイントってなんだポイントって。
 ……どのくらい稼げば告白してくるとかわかるのかな?

「大丈夫だよローゼなら~。私のポイント分けてあげる~。口から炎出せるようにする~?」

「絵面がおかしいわ! てかクリス、そのポイントじゃない! あと、受け取れないわ!」

「では私が貰います! クリスさん、どうすればいいんですか!」

「まず竜に変身して~」

「あっ、無理です! 諦めました! 竜の手だと剣が握れる気がしません! 剣が振れない人生は嫌です!」

「無理なことないわよレオノール、気合で剣を握るのよ」

「赤竜が装備できる剣っすか? 代金払えば自分が用意するっすよ? ざっと見積もっても、国家予算並みと造るのに数年かかると思うっすが、父ちゃんに頼めば半分に短縮できると思うっす」

「ムムッ……私、お小遣い残り少ないんです。父上と母上が出してくれるでしょうか?」

 お~い、レオノール、クリス、ベレニス、フィーリア? そもそも人が竜に変身できるわけないでしょ? 話を脱線させるなよ。
 あと、絶対ラインハルト王とマーガレット叔母様に金の無心すんなよレオノール。
 フィーリアもドワーフの里に驚愕案件持ち込もうとすな。

「コホン。それでヘクターさん。あなたが掴んでいたノイズの情報について教えてくれませんか?」

 ふう、さすがヴィレッタ。私がみんなにツッコみを入れるのに忙しい間も冷静でいてくれているよ。
 ヴィレッタがいるから、私もみんなも安心してフリーダムにいられるんだよね。
 
 ……ん? ヴィレッタの視線がリョウとヘクターさんの正座している足を見て、彼女がフッと笑ったような?
 おお! 足の痺れが凄そうだよリョウもヘクターさんも! はっ⁉ まさか無駄話を止めなかったのはこのためか⁉
 ヴィレッタ、無茶苦茶怒ってる? リョウが私たちに隠し事をしていたのを! 足が痺れて我慢してるのを見ていい気味だって思ってる⁉

「えっと……足を元に戻していいかな?」

 ヘクターさん……ごめんなさい。もう私ではどうすることもできません。

「却下します。そのままの態勢で語ってください。リョウ様もです!」

 ひいっ! ヴィレッタ、完ッ全に怒ってるよ。
 ごめん、リョウと、ついでにヘクターさん。ヴィレッタの機嫌を直すために、そのまま正座の刑執行を続けてね。
 私のできることは、ベレニスたちが2人の足裏踏んづけようとするのを阻止するだけ!

「……南部の情勢はベルガー王国にとって懸念材料の一つ。テシウス殿はファインダ王国との交渉をトール殿に任せ、北の守りはレンゲル将軍に全権を委任して、自らは国内の安定と南部に尽力している」

 足の痺れを我慢にしながら涙目で語りだすヘクターさん。
 うん、とんでもなく凄い話が聞けそうなのに重たい空気にならないぞ。

「俺も商業ギルドのマスター職と、準男爵を拝命した身だ。情報を集めに人を放つし、多くの話も耳にする。その中に昨年のシャハール族とデゼルタ族の戦いで、シャハール族がデゼルタ族を滅ぼす寸前だったが、イリス・アーシャやボルド・アルバース、ハトリ・コーデリアがデゼルタ側に参戦して、逆にシャハール側を追い詰めた話がある」

 だが、イリスたちは撤退を余儀なくされた。
 アデルやラインハルト王、アラン傭兵団団長グレン・アルバースと並ぶ大陸七剣神の1人であるイリスですら、戦いに決着をつけられなかったのである。

「その時、シャハール族についた男と、イリスたちが全員で剣を交えたが、押されたのはイリスたちと戦いを目撃した奴が口にした」

「んな⁉ イリスさんの大剣と互角なだけでも驚くのに、アラン傭兵団の俊英ボルド・アルバース、パルケニアの至宝と呼ばれる冒険者ハトリ・コーデリアと一緒で防がれるって信じられません!」

 剣の世界に詳しく、ファインダに留学していたイリスさんと親しかったレオノールが驚愕の声を漏らす。

「ああ、だから俺も聞いたのさ。『どんな奴だ?』ってな。するとこう答えたのさ」

『体格優れ、黒髪に無精髭、ロングソードを軽々と扱う男です。口元は常に笑みを浮かべ、相手を挑発し戦いを楽しむ様子、腕前は七剣神のイリス含めた相手をしてなお余裕。……七剣神の1人にして大陸最悪の人物ノイズ・グレゴリオの情報と酷似していました。イリスが『生きていたのかノイズ』と問うのに対し、『俺が死ぬわけねえだろバ~カ』、と返答したのも耳にしております』

 シーンとしてしまう。
 語られた情報は、ノイズ本人だとはっきり悟るしかない内容だった。
 口調、声にしたセリフもノイズしか言いそうにない内容だ。

「俺があんたらに言わなかったのは、これも国家機密の一つだからだ。奴が引き起こした戦乱の数々に、人々は恐怖の対象でしかないからな。……俺は話したぞ! 足を自由にする!」

「許可します。では、リョウ様、ご回答を」

 あっ、ヘクターさん、ヴィレッタに許可されたからってすぐに足を伸ばそうとしちゃ駄目!
 ほら言わんこっちゃない……一気に痺れが下半身駆け巡って苦悶の表情でのたうち回っちゃったよ。
 血流が一気に解放されるとそうなるんだよね。
 こらこら~、ベレニスとフィーリア、ヘクターさんの足を触ろうとするんじゃなーい。

 そんなヘクターさんを傍目で見ながら、リョウは「ごめんなさい。反省してます。南部に入ってから告げるつもりでした」と正座姿勢のまま、頭を下げて涙を堪えて言うのでした。

 ふう~、ヴィレッタが満足してくれる回答してくれてよかったよ。

「リョウ様、あなたはわたくしたち、特にローゼに全て話す義務がございます。……次はありませんので、お気をつけくださいませ。言葉にするのが苦手でも、わたくしたちがリョウ様の意を汲みますので」

 うん、いつものヴィレッタの穏やかな表情に戻ったよ。
 ふう、良かった良かった。
 ……あれ? でもまだ疑問が出てきたぞ。

「リョウ、酒場で初めて聞いたようにケントって人に迫ってたよね? あれ、演技だったの?」

 私がちょっとした違和感を訊ねると、リョウは頭を上げない。
 ……こんにゃろ、演技じゃなくガチだったな。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...