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第8章 砂漠の英雄
第16話 犯人は誰?
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「もう一つの問題は、ジーニアらしき影が見えることね」
リョウとヘクターさんの正座の刑終了後、私はもう一つの問題を提示する。
「砂風呂の罠、宿屋の従業員エリさんの証言と、酒場の女将マリーナさんにノイズの噂話をした存在。いずれもオレンジ色の髪のシスター服の少女。特徴はジーニアを想起させます」
ヴィレッタもジーニアとの戦いで、大事な人を喪っている。声はいつもより震えと力がこみ上げている。
「まず、ジーニア本人と考えても目的が何かっすね。現状ですとこの地に留まってないで、とっとと早く南部へ行けって感じにしか思えないっす」
「はあ? ジーニアがそんなことするわけないじゃない、自分で罠にかかった獲物を仕留めるタイプよ」
「だからこそっすよベレニスさん。砂風呂ではローゼさんがいればどうとでもなるレベルの罠、ここで誰が犯人だってなって酒場でリョウ様がノイズの噂を耳にする。当然、ノイズの背後に邪教がいるっす。自分たちが居ても立ってもいられない状況にして、南部で待ってるぞ的な痕跡を残す。これをどう思うかっすね」
フィーリアの説明に、思考を整理する。
「考えられるのは決戦を南部諸国群とし、幾重にも策を巡らせている可能性かな。ただ、これは現状の情勢から不可能に近い。南部諸国の部族群は今日の敵は明日の味方、明日の味方は明後日の敵と言われるぐらい混沌としている。さらに砂地の大地という特性上、地面に魔法陣を描いて準備することも不可能。ジーニアが策を張り巡らせるなら、私たちに存在を教えてもメリットがない」
「ノイズがシャハール族を乗っ取ったならば、単純な力押し、戦争で勝負を仕掛けるってとこか? 邪教の魔女の謀略、暗殺、毒殺付きのな」
私の意見に、ヘクターさんも私見を述べ、リョウも口を開く。
「俺たちが、マーインに居てほしくないと考えれば辻褄が合うな」
「そっすね。リョウ様の考えに自分も賛同するっす。メリットは自分たちの排除。けれどそれは、この街からの排除のみっすね」
「それって、私たちがヘクターさんに同行して~、領主の不在の確認するなってこと~?」
クリスの疑問に、フィーリアが頷いて補足する。
「もう1人、魔女ヴィルマっすね。今のところ魔女の姿を確認できてないっすが、彼女が自分たちを邪魔だと思っても不思議じゃないっす」
「単純な話ですね! 私たちが居るのを恐れて、嫌がらせをして追い出そうって魂胆ですね! つまり、この街に何かある証拠ですよ!」
そこまで単純かどうかは疑問だけど、概ねレオノールの言う通りだろう。
「ならば、これからも揺さぶりをかけてくる恐れがあります。まだ警告程度ですが、より大きな策を講じている可能性もございます。ローゼ、ジーニアの潜伏先を探りますか?」
「ううん。現実的じゃないし、曖昧なのを追う時間は惜しい。まずは領主の不在確認に集中していこ。私たちに用があるなら次があるはず」
「そっすね。マーイン領に邪教の魔女がいるか、何を目的にしてるかを探るべきっす」
現状、街の人々におかしな様子はない。
活気のある、いい街だ。あり過ぎると言ってもいい。
だからこそ、ジーニアの影が異質になる。
「ところで、師匠はボルド・アルバースとハトリ・コーデリアと面識あるのでしょうか? ボルドはアランの傭兵で、ハトリはパルケニア人ですよね!」
ずっと聞きたくてウズウズしてたなレオノール。
声の張りがさっきまでと違うぞ?
まあ、私も興味あるからナイスだレオノール。
「ボルド殿はずっと南部諸国で活動していたから会ったことはない。ただ、噂は団長やテレサさんから聞いている。槍術の達人だそうだ」
「アルバースの姓ってことは、その人も孤児出身なの?」
ベレニスの質問に、リョウは小首を傾げた。どうやら知らないらしい。
アラン傭兵団は姓なしの団員に、アラン傭兵団の理念である七英雄のアラン・アルバースの姓を与えている。
リョウもそうだし、現団長のグレンさんもそうだ。
「ボルド・アルバースは南部部族のガンギル族出身っすよ。あのガンギル王の腹違いの弟っすね。姓を捨てたのは南部問題で、どの部族にも肩入れせずに平和を追求するって現れっすね」
情報通のフィーリアが補足してくれる。
ほへえ、それってあまり表に出てない情報じゃないの?
「もう1人のハトリ殿とは面識ある。旅の護衛専門の冒険者で、職務に信念を持っている青年だ。今、南部にいるのは知らなかった」
ハトリ・コーデリアか。リョウは悪感情抱いていないようだけど、彼には黒い噂もある。
「旅の護衛専門を謳うことで堂々と各国の領内に入る、パルケニア王国の密偵という噂がございますね。その辺は実際どうなのでしょう?」
ヴィレッタも噂を知っていたようだ。リョウではなく、フィーリアに訊く。
「まあ、その可能性あるってのを意図的に広められている感じはするっすが、真実は不明っすね」
「フィーリアちゃん! 広めているのはパルケニア王国ですか?」
レオノールの疑問に、フィーリアは「情報不足っす」と答えた。
ハトリはリョウと同じ庶民出身。密偵の噂を広めるのも、国家の所属意識を植え付ける目的かもしれないし、国益として動かないハトリに対する貴族の嫌がらせなのかもしれない。
「その2人とイリス・アーシャがどうなっているかだな。ノイズとの戦いで一旦退いたというが、それももう2ヶ月前の話だ……」
そこまで言って、ヘクターさんは口を閉じて扉を見た。
すでにリョウが立ち上がって、扉を開けようとしている?
ガシャリ。
「わわっ!」
リョウが扉を開けると、もたれかかっていたのか、女の人が転んだように飛び込んできた。
「誰⁉」
緊張が一気に走る。格好は剣士風の冒険者。茶髪の癖毛ショートヘアと、短パンから出ている足が特徴的で目に留まる。年齢は20歳前半ぐらいか?
「俺たちの会話を聞こうとしていたのか? 誰に雇われた?」
凄みのある声で訊ねるヘクターさん。さすが、こういう時の年季は違う。
私たちも警戒しながら相手を見続ける。
「ひいっ! 違うんです! さっきオレンジ色の髪のシスターさんから、『あの部屋、男2人に女6人で泊まってるけどナニしてんのかなあ?』なんて気になることを囁いてくるから……! そんなの、覗きたいと思うに決まってるじゃないですかあああああ!」
ん? 泣き崩れながら何を言ってるんだ? この人は。
「嘘は言ってなさそうよ」
いや、ベレニス。嘘って言ってくれよ。
「ああ、アレだね~。らんこ……モガっ!」
「クリスさん、拗れるからその単語を出しちゃ駄目っす。特にヴィレッタさんの耳に入ったらマズいっす。自分、まだ死ぬわけにいかないっす」
クリスはフィーリアに任せるとしよう。
私はしゃがんで、泣き崩れる彼女に語りかける。
「えっと……私は魔女のローゼ。仲間たちと一緒に商人の護衛でこの街にやってきた冒険者。今は作戦会議中だったんです。……えっと、あなたは?」
すると泣き顔で私を見上げ、グスッとしながら告げてくる。
「シオンです。この街で冒険者やってますううううう」
うん、これはシロだね。
「シオンさん、あなたに教えたというシスターの方は、今いずこにおられますか?」
「……さあ? 初めて会う人ですので知りません……ごめんなさい」
ヴィレッタの質問に、シオンさんは消え入りそうな声で回答した。
「嫌がらせでしかないけど、一体何を考えているのやら。ジーニア」
そんな私の呟きに「今日は解散だな」と言うヘクターさんに、みんな同意したのだった。
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「考えられるのは決戦を南部諸国群とし、幾重にも策を巡らせている可能性かな。ただ、これは現状の情勢から不可能に近い。南部諸国の部族群は今日の敵は明日の味方、明日の味方は明後日の敵と言われるぐらい混沌としている。さらに砂地の大地という特性上、地面に魔法陣を描いて準備することも不可能。ジーニアが策を張り巡らせるなら、私たちに存在を教えてもメリットがない」
「ノイズがシャハール族を乗っ取ったならば、単純な力押し、戦争で勝負を仕掛けるってとこか? 邪教の魔女の謀略、暗殺、毒殺付きのな」
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「俺たちが、マーインに居てほしくないと考えれば辻褄が合うな」
「そっすね。リョウ様の考えに自分も賛同するっす。メリットは自分たちの排除。けれどそれは、この街からの排除のみっすね」
「それって、私たちがヘクターさんに同行して~、領主の不在の確認するなってこと~?」
クリスの疑問に、フィーリアが頷いて補足する。
「もう1人、魔女ヴィルマっすね。今のところ魔女の姿を確認できてないっすが、彼女が自分たちを邪魔だと思っても不思議じゃないっす」
「単純な話ですね! 私たちが居るのを恐れて、嫌がらせをして追い出そうって魂胆ですね! つまり、この街に何かある証拠ですよ!」
そこまで単純かどうかは疑問だけど、概ねレオノールの言う通りだろう。
「ならば、これからも揺さぶりをかけてくる恐れがあります。まだ警告程度ですが、より大きな策を講じている可能性もございます。ローゼ、ジーニアの潜伏先を探りますか?」
「ううん。現実的じゃないし、曖昧なのを追う時間は惜しい。まずは領主の不在確認に集中していこ。私たちに用があるなら次があるはず」
「そっすね。マーイン領に邪教の魔女がいるか、何を目的にしてるかを探るべきっす」
現状、街の人々におかしな様子はない。
活気のある、いい街だ。あり過ぎると言ってもいい。
だからこそ、ジーニアの影が異質になる。
「ところで、師匠はボルド・アルバースとハトリ・コーデリアと面識あるのでしょうか? ボルドはアランの傭兵で、ハトリはパルケニア人ですよね!」
ずっと聞きたくてウズウズしてたなレオノール。
声の張りがさっきまでと違うぞ?
まあ、私も興味あるからナイスだレオノール。
「ボルド殿はずっと南部諸国で活動していたから会ったことはない。ただ、噂は団長やテレサさんから聞いている。槍術の達人だそうだ」
「アルバースの姓ってことは、その人も孤児出身なの?」
ベレニスの質問に、リョウは小首を傾げた。どうやら知らないらしい。
アラン傭兵団は姓なしの団員に、アラン傭兵団の理念である七英雄のアラン・アルバースの姓を与えている。
リョウもそうだし、現団長のグレンさんもそうだ。
「ボルド・アルバースは南部部族のガンギル族出身っすよ。あのガンギル王の腹違いの弟っすね。姓を捨てたのは南部問題で、どの部族にも肩入れせずに平和を追求するって現れっすね」
情報通のフィーリアが補足してくれる。
ほへえ、それってあまり表に出てない情報じゃないの?
「もう1人のハトリ殿とは面識ある。旅の護衛専門の冒険者で、職務に信念を持っている青年だ。今、南部にいるのは知らなかった」
ハトリ・コーデリアか。リョウは悪感情抱いていないようだけど、彼には黒い噂もある。
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「フィーリアちゃん! 広めているのはパルケニア王国ですか?」
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ハトリはリョウと同じ庶民出身。密偵の噂を広めるのも、国家の所属意識を植え付ける目的かもしれないし、国益として動かないハトリに対する貴族の嫌がらせなのかもしれない。
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そこまで言って、ヘクターさんは口を閉じて扉を見た。
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ガシャリ。
「わわっ!」
リョウが扉を開けると、もたれかかっていたのか、女の人が転んだように飛び込んできた。
「誰⁉」
緊張が一気に走る。格好は剣士風の冒険者。茶髪の癖毛ショートヘアと、短パンから出ている足が特徴的で目に留まる。年齢は20歳前半ぐらいか?
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私たちも警戒しながら相手を見続ける。
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ん? 泣き崩れながら何を言ってるんだ? この人は。
「嘘は言ってなさそうよ」
いや、ベレニス。嘘って言ってくれよ。
「ああ、アレだね~。らんこ……モガっ!」
「クリスさん、拗れるからその単語を出しちゃ駄目っす。特にヴィレッタさんの耳に入ったらマズいっす。自分、まだ死ぬわけにいかないっす」
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