【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第8章 砂漠の英雄

第20話 空白期間

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 私たちは当初の予定通り、商業ギルドで城に行き、直接領主にお目通りする手筈を整えた。
 交渉を担当しているヘクターさんと、フィーリア、ヴィレッタは、言葉巧みに目的は領主側が欲している品があるか、商人目線で城に足りないものは何か、南部諸国群と交易が始まった際の税収を相談するといった至極最もらしいことを告げていく。
 すると商業ギルドの人たちも「領主様はお忙しいからお目通り叶うか不明ですが、担当の者が話を聞いてくれるそうです」と返答してくれた。

 第一関門クリアだね。

「ローゼさん、シオンさんにはどこまで話をしてるっすか?」

 商業ギルドを出て、馬車に乗る直前にフィーリアが小声で尋ねてくる。

「特に詳しく話してないけど……やっぱりマズかったかな? 事情を話せない人をメンバーに加えたの」

 私がシオンさんを今日1日一緒に仕事をしてもらうとみんなに告げた時、反対されなかったし、ベレニスやレオノールやクリスは楽しそうに話しかけていった。
「普段何してんの?」とか、「剣の腕はどのくらいですか!」とか、「お勧めの御当地料理教えて~」、と和気あいあいに。
 ……ヴィレッタは露出度高い恰好のシオンさんに、「殿方がいますから、上着を羽織ってくださいませ」とリョウの目のやり場に注視していたけど。

「まあ、それは一長一短っすね。彼女がいたから、商業ギルドの人たちとの話がスムーズになったのは確かっす。デメリットについても、彼女と別れてから語ればいいだけっすから。……ただ」

 そこでフィーリアは、さらに声を小さくする。

「彼女、領外に出る仕事は引き受けないってのが、ちょっと引っかかるっす。剣の腕は相当実力あると思うっすよ」

「うん。それについては私も感じている」

「それに、シオンという名前はパルケニアやレアードに多いっすね。そこもちょっと引っかかってるっす」

 そんな話をしていると……。

「ちょっとお! 何してんのよローゼ、フィーリア! 置いていくわよ!」

 馬車に乗ったベレニスに大声で言われ、私とフィーリアは頷きながら、フタエゴとバラオビが引く馬車へと戻っていった。

「あっ、やばい。緊張してきた。うう~、領主様に、たかが冒険者の私がお目通りして大丈夫かなあ」

 リョウとヘクターさんが御者をしている揺れる馬車内で、いきなり不安そうに表情を曇らせるシオンさん。

「安心してください! この姉様は冒険者ですが、アポイントメントを取っていない偉い人にも、転移魔法で突然姿を現して話しだすという、とんでもないことを平然としているんです!」

 おいレオノール、自慢げに何を口走ってやがる。
 事実なのが言い返せないぞ。

「大丈夫だよ~。ローゼに平然としているんだから、千人の敵兵に囲まれたって生き延びれるよ~」

 クリス? 私は可愛い見た目してると自負してるんだけど? なぜに一騎当千の猛将のようなオーラを発して、圧かけてるように言うんだよ。

「フフン♪ シオンはまだまだね。大丈夫よ、ローゼを見なさい。露出度低いでしょ? おっぱいあるんだからビキニ姿でもすればいいのに。1年一緒にいるけど、男を落とした回数ゼロよゼロ。商業ギルドの男たちは上着羽織ってるシオンなのに鼻の下伸ばしていたわ。だからシオンの勝ちよ」

 ベレニス? あんただって男を落としたことないだろが。てか、何の勝ち負けだよ。

「そういう気分の時、ローゼさん見ると落ち着くっすからねえ。ローゼさんの内面知るともっとウケるっす」

 フィーリア? 落ち着くからウケるに変わってるんだけど? 何にウケてるんだ、何に。

「シオンさん、そういう時はお話をして気分を紛らすのが一番です。シオンさんはどうして冒険者になったのでしょう? よろしければわたくしたちに話をしてくれませんか? ちなみに、わたくしはローゼに悪い虫がつかないようにです」

 うんうん、さすがヴィレッタは気が利くねえ。嫌な気分はお喋りで紛らわすのが一番だよね。
 ……ヴィレッタ? 後半部分、どうして御者席のほう見ながら言ったのかな? あと今は商人役でしょ!

「えっと、私も興味あります。よければ話してください。ちなみに、私は魔女で生活のためって感じですけど」

 私もシオンさんに向かって告げる。
 本当はもっと色々あるけど、お金を稼いで生活するために冒険者になったのは嘘ではない。

「いやあ、人気者みたいで嬉しい。そうだね、ちょっと話そうかな?」

 私たちの視線に照れたように笑い、シオンさんは語りだす。

「私の父はアルベルト・エイエス様に仕える兵士でさ。8年前のガンギル王の侵攻で戦死しちゃってね。母親もすでに亡くなっていたから戦災孤児ってやつ。当時15歳だから孤児って言うには年増かな? だから1人で生きていくのにどうすればいいかなあと考えて、剣なら父さんに教わっていたから冒険者にでもなるかなあって感じ」

 意外と重い話に、馬車の中の空気がどんよりする。

「それで冒険者になって、8年間過ごすって凄いことです! もっと誇りを持つべきですよシオンさん!」

「レオノールの言う通りね。私も冒険者で稼いだお金がすぐ無くなるから、大変なの知ってるわよ」

 ベレニスは買い食い多いし、宿もふかふかベッドじゃなきゃ嫌っていうタイプだから意味は違うけど、私も冒険者の職業が大変なのは理解しているつもりだ。
 野宿とお風呂入れない旅路が一番キツいんだよね。体臭気にしてリョウと距離取っちゃうけど、それでリョウがどう思うか考えただけで頭から蒸気出てくるし。
 領外の仕事受けないシオンさんの理由もそうなのかな? 砂風呂好きだって話だけど。

「8年前、アルベルト・エイエス様が戦死して、領主が変わったっすよね? その時の街の様子はどうだったっすか?」

 フィーリアの質問は私たちが最も知りたいこと。さすがフィーリア、自然に話を振っていったね。
 さて、シオンさんの反応は?

「ああ、父さん死んで、一旦エイエス領から離れたんだ。オレンの街で1年ちょっとかなあ。マーイン領になって色々あったってのは知っている。でも、戻った時には特に変化なかったかな? アルベルト様が治めていた時と変わらない印象だったよ」

 1年、この街を離れていた……か。
 でも、シオンさんの話でだいぶ輪郭は見えてきた。
 7年前にはすでに、彼女が生まれ育ったエイエス領は変わらぬ雰囲気だった。
 テオ・マーインが領主に着任してから圧政があったのにも関わらずに、だ。
 その1年の間で、領主に何かあったのは間違いない。

「シオンさんは、領主の血脈が途絶えると土地が滅ぶという噂話は知っておられますか?」

 ヴィレッタの真剣な問いに、シオンさんも表情を引き締める。

「うん、知ってるよ。ただ、だから? って感じかなあ。平和だし、圧政あるわけでもないし、今の状態が続くなら大歓迎だね。怖いのは戦争で、アルベルト様の一族のように一族全員死亡することかな」

 そこでシオンさんは私に振り返る。

「私からも一つ聞きたい。魔女の視点から、そんな誓約可能なの?」

 私は静かに首を横に振る。

「伝説ではイフリートが使用して、統治していたアネクネーメ王国は完全に滅びたと記されている。けれどそれは、大魔族だったイフリートだからこそ使用できた魔法。人間の魔女には、術式を組む魔力が圧倒的に足りません」

 一つだけ盲点があるが、それは誓約書を見ない限り口にすることは憚れる。
 それに、マーインと契約したヴィルマという魔女に、そんな芸当できるとも思えない。

「へえ、それは安心したよ」

 私の回答に、シオンさんは穏やかに微笑んだ。
 
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