【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第8章 砂漠の英雄

第21話 マーイン城

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 王国南部の国境付近にある重要拠点だけど、マーイン城はこじんまりとした外観だ。
 周囲が砂漠なため、大規模な兵士を常備兵として配備するには不向きな環境でもある。
 それでも、8年前のガンギル王侵攻の時に備えがあれば違う未来になっていたのでは? と想像してしまう。

「国境っていうとビオレールやファインダのラフィーネを思い出すけど、ここは兵士の数少ないのね。侵攻された時も地元兵しかいなかったって聞いたわ」

 ……確かに少ない。この数では城の防衛はおろか、領主の護衛すらままならないはず。

「侵攻時、南部諸国連合王国とは同盟関係にあったっすからね。さらにファインダ王国との戦争にも敗北してるっすし、ダーランド王国とはずっと仲が悪いっす。テスタ宰相政権ってのもあって、当時のベルガー王国に余裕はなかったっすよ」

 お城に入り、衛兵さんの後ろを歩きながらフィーリアがベレニスの疑問に解説した。

「ビオレールは古来より激戦地になる重要拠点。ラフィーネもファインダ王国要衝地です。それに対し、この地は交易の拠点になっておらず、隣国は紛争で手一杯の現状と、兵を増援して南部部族を刺激するのを、テシウス先生は危惧しているのかもしれません」

「それはちょっと弱気過ぎませんか! 民を守るには武力は必要です! 力なき正義は無力です! 平和はいつでも武力で崩壊するのですから、兵を配備したほうが民も安心できると思うのです!」

 追加のヴィレッタの説明に、レオノールが憤慨した。

「ファインダ王国は政治も軍事も安定しているから、レオノールがそう言うのもわかる。けれどここはベルガー王国。まだテスタ・シャイニングの10年間の失政の爪痕が根深く民たちに残ってる。各地の領主も、領地に関しては自兵だけでいいと考えているのが多いかな? 民もそう、食い扶持が増えて、それを養うのに金を取られるのは自分たちだ、という感情が強い。この件に関しては、時間をかけて信頼を取り戻すしかないかな」

「でも、マーイン領主ってさ~、大勢の兵士を雇ってやって来たって聞いたけど、そういう人、いなさそうだね~」

 私の説明にレオノールが、むむうと頭をフル回転させている中、クリスが何気なく呟く。

 ……そういえば、ベルガー王国王都兵は黒の鎧が正装。けれど1人もいない。

「もう8年経ってますからね。初期の兵たちは全員故郷に帰られています。今は地元出身の兵士だけですね」

 私たちを先導する衛兵さんが、苦笑いして答えた。

(嘘よ、今の前半部分)

 ベレニスの指摘に、私の緊張も高まる。
 故郷に帰っていないで、全員姿を見ない……か。

「隻眼の衛兵がいると思うのですが、彼とも話がしたいので、お会いすることは可能でしょうか」

 ヘクターさんの発言に、驚き振り返る衛兵。

「なぜ、彼と話を?」

「ああ、いえいえ、込み入った話ではありません。昨日、彼と街で会いましてね。商人ならこの街に還元する観光名所を見つけてくれと言われまして、その話をしようとしたまでです」

「……そういうことですか、伝えておきます」

 明らかに動揺してる。隻眼の衛兵クレバス。彼が重要人物なのは間違いなさそうだ。

「ねえ、隻眼ってクレバスさんのこと?」

「シオンさん、知り合いですか?」

「そりゃ、まあ。小さい街だし」

 おお、盲点だった。シオンさんから彼についての話が聞けるのはありがたい。

「どんな人物ですか?」

 けれど、そう口にした時に衛兵さんの足が止まり「どうぞ、こちらです」と大きな扉をノックする。
 はてさて、中にいるのはどんな人やら。

 執務室っぽいところに入り、机に膝をついて座る小太りのおっさんと目が合う。
 護衛の衛兵は左右に2人。クレバスではない若い青年だ。
 私たちをここに連れてきた衛兵も残り、扉の横で待機している。

「よく来られました。儂はマーイン伯爵様から政務を任されているロメーロ・ガヴァと申します。どうぞ、ソファにお座りください」

 テーブルには紅茶や南国の果物がある。
 ヘクターさんと、商人役のフィーリア、ヴィレッタ、レオノールが座り、挨拶して交渉スタート。

「それでは早速ですが、南部諸国群と交易ルートを結ぶのに、ここマーイン領に支店を持つことを許可していただけないでしょうか? 税率についてはこちらに」

 ヘクターさんが衛兵の1人に紙を渡し、ロメーロに渡す。

「ふむ……商業ギルドで折衝済みとのこと。特に問題はない。許可する。ただ、今はまだ南部諸国群との取引は無理だろうて」

「承知しております。気長に待つつもりです」

「支店を誰に任すのか決まっておるのかね?」

「ええ、こちらのフィーリアは小さいながらも商才は私より上でございます。彼女に任せようと思います」

 ヘクターさんの言葉にフィーリアは立ち上がる。

「フィーリア・メルトダと申します。誠心誠意、マーイン領の発展に貢献できる店にするつもりでございます」

「ハッハッハ、大きく出たな。小さいなりで大きな口、嫌いではないぞ。よろしい、フィーリア殿なら発言を実現できるでしょう」

 第2段階クリアかな? 当然だがこの会話はブラフ。領主一族と、魔女ヴィルマを炙り出すため。
 リョウの噂話が流れている以上、私たちの素性はバレているはず。
 嫌がらせから、私たちを街にいて欲しくないのは間違いない。
 さて……第3段階だ。

「ロメーロ様、私も冒険者を辞め、フィーリア殿のお店で働きたいと思います。この街マーインでは、常駐している魔女がいないとのこと。薬草を無料配布しているそうですが、占い師はいないそうですので、お店に来たお客様に無料で占いをしたいと思います」

 淀みなく言う私に、ロメーロだけではなく、衛兵たちも目を見開く。

「そ、それは……その」

「何か問題、あるのでしょうか?」

「ムムム……」

「ところで、無料配布されている薬草ですが、魔女の精製は痕跡が残るものなんです。お城に魔女の方がいるのではありませんか?」

「何が言いたいのだ?」

「テオ・マーイン伯爵は、この地に就任する際、冒険者をしていた魔女ヴィルマを同行させていたとのこと。彼女が薬草を作っているんじゃないのでしょうか? 素晴らしい善行をしている方ですので、是非同じ魔女としてお目にかかりたいのです」

 ヴィルマの名前を出した瞬間のロメーロたちの狼狽っぷり、これは確定だね。

「か、彼女は忙しいのだ。マーイン様が病床でな!」

「どっちも嘘ね。……端的に聞くわ、領主一族は全員生きてるの?」

 ベレニスが畳み掛けるが、ロメーロは口を噤む。

「では、なぜ善政を敷いている領主様、薬草を無料配布している魔女様は姿を現さないのでしょう。説明をしていただかないと、この街に支店を置くのに不安を覚えてしまいます」

 ヴィレッタもすかさず追い打ちを掛ける。

「薬草を無料配布しているのは、この街に他の魔女を常住させないため。お金を稼げなければ旨味ありませんからね。占いだけでは、よっぽど評判にならないと厳しいですし。……っていう理由なわけないですよね?」

 私のにこやかスマイルがとどめを刺す。

「……ふう。ここまでか」

 おっ? ロメーロの動揺と緊張の雰囲気が諦めに変わったぞ。

「魔女ヴィルマはすでに死んでいる。……助けてくれ! ローゼマリー姫様! 今、この街を支配している魔女は……!」

 そこまでロメーロが言った刹那、リョウとレオノール、クリスの剣が、ロメーロを狙った衛兵たちの剣と交差する!

「え? え? どういうこと!」

「シオンさん! ボーっとしてないで伏せて! みんな! リョウ、レオノールも!」

 この空気が収束していく感覚……魔法⁉

 私が叫んだ瞬間、執務室は大爆発を起こした。
 
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