【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第6話 オルガとポール

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 私たちに声をかけた赤髪の青年の歳は、20代くらいかな?
 古びた冒険者の鎧を身に着けている優男だ。

 あれ? でもこの人……もしかして?
 ん? 入口に、茶色い髪で短身痩躯で、アラン傭兵団の皮鎧を着ている人が、めっちゃ二日酔いっぽくふらついているんだけど⁉

「ポール……水をくれい」

「オルガさん。……少し待っていてください。あっ。受付嬢さん、私はルインズベリー家の者です。これが証拠です」

 ネックレスを受付嬢に見せて、二日酔いの人物に近づいていくポールとやら。

 ……この2人で間違いない。昨日、私の背後の席で、王女の噂話をしていたのは。

「ルインズベリー家⁉ は、はい! 承知しました。ではこちらにサインをお願いします」

 受付嬢に言われ、私はササッとペンを走らせる。
 それが終わると、ポールと呼ばれる青年が私の前に来た。

 肩を二日酔いの男に貸しているが、身長差から捕まえた獲物を担いでいるように見えるぞ。

 ……ポール・ルインズベリーか。
 シャルロッテのお兄さんで、たしか私たちの10歳年上だったっけ。

「ポール、俺はどうやらヤバいらしい。幻覚が見えてやがる……後輩の姿が見えてやがるぜ。はは……どうせ幻覚なら、裸のお姉さんが良かったぜ」

 んん? 何を言っているのだ、この酔っぱらいは。

「オルガさん、リョウです。お久しぶりです」

 リョウが律儀にお辞儀をする。

「ん~。その声、その態度。リョウじゃねえか? おいおい本物か?」

 どうやら酔いが覚めてきたらしい、オルガさんとやら。

「いや、偽物だな。本物が可愛い女3人を侍らせているなんてありえねえ。……リョウはなあ、俺がHなお店に連れて行こうとしても、必ず不運に見舞われて、女に縁がなかった奴なんだぞ!」

 んん? なんか凄いとんでもないことを口走っていない?

「オ、オルガさん! 本物ですよ。ファインダ王国に向かうオルガさんを見送った時に、勝負したじゃないですか! オルガさんの突きが、俺の喉元を寸止めしたんですよ。勝負は俺の負けだったじゃないですか⁉」

 リョウが慌てたようにまくしたてるが、な~んで慌てているのかな?

「おお! ってえことは本物か! まさかこんなところで会うとはな! 元気にしてたかよ! ダーランドでの活躍は俺も聞いているぜ!」

 パンパンとオルガさんはリョウの背中を叩いていく。

 う~ん、この青年の豪快さはまさに傭兵って感じはするなあ。

 オルガさんは、ポールさんから貰った水を一杯飲み干して、やっと落ち着いた。

「へえ~、傭兵の仲間ねえ。傭兵の変な過去をいっぱい知ってそうで面白そうね」

「ベレニスさん、ノリノリっすね。まあ自分も興味あるっすけど」

 ベレニスとフィーリア、聞こえているぞ?

「おっ! 聞きたいか! 耳の長いお嬢ちゃんとロリっ娘お嬢ちゃん! そうだなあ、俺が仕事中に女を抱いていたら、こいつ顔を真っ赤にしてよお。真っ赤に……はっ! 殺気⁉」

 何が面白いのか、オルガさんが爆笑する。
 だが、私が少し魔力を開放してバレないようにぶっ放そうとしたら気づいたらしく、キョロキョロ辺りを見回した。

 まったく、このオルガって傭兵はそういう人なのね。
 リョウが影響を受けないように注意しなくっちゃ。

「そ、そんなことよりオルガさんは、何故ベルンにいるのですか?」

「あ~、言ってなかったな。俺は元々ベルンの出身なのよ。そこにいるポールの家、ルインズベリー公爵家に仕えていた兵士の家柄でな」

 そう語ると、ポールと呼ばれた青年が会釈する。

「仕えていたって割には貴族にタメ口なんすね。どうしてっすか?」

 フィーリアの問いにポールさんは苦笑した。

「ハハ、オルガさんは私の2つ年上でね。幼き時から兄弟のように育った仲なんですよ。まあ、オルガさんの性格がアレ過ぎて、彼は父親の跡を継がずに飛び出して行っちゃったんですが」

「そんでもってファインダでの用を片付けた俺は、ついでに両親や妹の墓参りも兼ねて里帰りしたってわけよ」

 愉快そうに笑っていたオルガさんだったが、私をチラ見してからリョウの肩を抱いて後ろへ振り向いていった。

「なあリョウ、俺なんかマズったか?」

「何がです?」

「イヤだって、金髪の可愛子ちゃん、ずーっと俺を睨んでね?」

 ヒソヒソ声にしているつもりのオルガさんだが、声量が大きいので丸聞こえなんだよね。

 別に睨んでないし!

「コホン。それでリョウ殿以外の方々ですけど、ご紹介頂けるでしょうか?」

 ポールさんの当然の疑問に、私たちは表面上だけど自己紹介する。

「魔女のローゼです。ビオレールで冒険者登録をして、ここにいる皆とパーティーを組んで旅をしています」

「商人のフィーリアっす。縁があってリョウ様たちと一緒に旅をさせてもらっているっす」

 ベレニスが私の方をチラチラ見ている。
 何をしようとしているんだ?
 可愛い顔をしているんだから、普通に紹介して面倒を起こさないでよ。
 という私の願いは脆くも崩れ去る。

「エルフで冒険者のベレニスよ! フフン♪ 私たち女子はみ~んなこの傭兵に弄ばれているのよ。まあ、私は弄んでいるほうだけどね♪」

 ベレニスがそう言った瞬間、全員がリョウを凝視した。
 リョウも頭の中にハテナマークが溢れているのか、硬直して動かない。

 ベレニスめ、理解不能な発言をするからこういう展開になるんだよ。
 もう~、頭が痛くなってきた!
 とにかく話を逸らさないと……

 でも、私が発言するより先にオルガさんが口を開いた。

「リョウ……おめえ、こんな可愛い子たちを弄んでんのか? 羨ましいじゃねえか!」

 羨望の眼差しでリョウに言い寄るオルガさん。

 ……おいおい。

「俺なんてよ! 昨日の色街でのお姉さん、大ハズレ引いてよ! ちくしょう! 俺の気持ちも弄んでるのか?」

 いやいや、そういう弄び方じゃないだろ。
 というか、女遊びの激しい人だなあ。

「なんで貴族なのに冒険者の恰好をしているの?」

 ベレニスは気分を良くしたのか、ポールさんに気になっていることを質問した。
 ポールさんはクスリと笑う。

「まあ、変装ですね。私としては、久々に再会したオルガさんと屋敷でゆっくりしたかったんですが、我がルインズベリー家は公爵家。元使用人であるオルガさんでも早々簡単には屋敷に入れないので、平民街で会っていたのです」

 なるほど、まあ貴族だもんね。
 そこら辺の事情は理解できる。

「コホン。それで本題に戻りますが、皆さんが受けた依頼ですが……」

 ポールさんが咳払いをして、話を強引に戻した。

 この人も苦労しているんだなってわかるよ……

 私たちが受けたのは、貴族街にある教会のシスター、バネッサ・トルトリンが行方不明になったので、その調査と保護である。
 依頼主はその教会の、ターニアという名のシスターらしい。
 バネッサの行方がわからなくなって2週間が経過していて、誰も消息がわからないそうだ。

 そこで冒険者ギルドに依頼したのだが、依頼主がうっかりしていたのか、知りもしなかったのか、貴族街に入るには貴族か貴族の許可が必要なのだ。
 依頼内容に、その許可が書かれていなかったので、2週間経っても誰も依頼を受けようとしていなかったってわけである。

「ルインズベリーの名前はお貸ししましたが、お気になさらず皆様で存分に調査をなさってください」

「ふうん。一緒にやって、お金を分け合いたいって言われるかと思ったわ」

「ハハ、ベレニスさん。私たちは依頼を受けに来たのではなく、情報を求めに来ただけなのでお気になさらず。冒険者ギルドは情報のやり取りもしていますので」

「……情報ってなんでしょう?」

 と、私は嫌な予感しかしないが、話の流れ的にそう聞くしかなく口にする。

「そうそう。リョウさあ、お嬢ちゃんたちもこんな噂を知らねえか? ……ローゼマリー王女が生きてるって」

 オルガさんが、ニヤニヤしながら私たちに聞いてきた。

 やっぱりその噂か……

「いえ、初耳です」

「そっすねえ。自分も知らないっす」

 さらっとしらを切る私とフィーリア。
 だけど……

「さ、さあ。し、知らないわね」

「お、俺も初めて聞きました」

 ベレニスとリョウは嘘が下手くそか‼

「ローゼさん。そろそろ依頼人に会わないと、日が暮れるっすよ」

「そうね。ではポール様、オルガさん。私たちはこれで失礼させていただきます」

 フィーリアの誘導に乗っかり、そそくさ~っと出てゆく私たちであった。

 ***

 ローゼたちが去ったあとのギルド。

「どう見るよポール」

「良い子たちに見えますね。ただ剣や戦いだけならともかく、権謀術数に巻き込まれれば、あの者たちでは立ち回りできないでしょう」

「俺への皮肉にも聞こえるねえ」

「いえ、それは……」

「まあ、ともかくあの女の言われた通りに、王女らしいのをこの依頼に向かわせた。金と名誉と権力が手に入るんだ。そん時は、よろしくな」

「ええ、テスタ宰相を失脚させ、我がルインズベリー家が政権を手に入れたら」

 オルガとポールはお互いに、ニヤリと笑った。
 
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