【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

文字の大きさ
91 / 314
第3章 公爵令嬢の選択

第11話 従兄妹

しおりを挟む
 湯船から出て着替えているときだ。
 ベレニスは得意気にヴィレッタに、リョウと同じ屋根の下で暮らす際の注意事項を喋り始めたんだが……

「え? お風呂場でばったり鉢合わせですか?」

「そうよ、気をつけてね♪ あいつはむっつりだから」

 キョロキョロしているヴィレッタは、かなり困惑した様子だ。
 もうベレニスめ。またリョウに風評被害を被らせよって。

「大丈夫だってヴィレッタ。リョウは私たちがお風呂だと知っていたら来ないから」

「ローゼも、ばったり鉢合わせしたことがあるのですか?」

「え? えっと、まあ……うん。で、でも、こっちも見ちゃったことあるし、共に旅しているから、そういうこともあるって感じかな?」

 思い出すのも恥ずかしいのだが、何やらヴィレッタは興味津々の様子。

「み、見ちゃったとは……」

「傭兵のアレよ。ヴィレッタは男のアレを見たことある?」

 って! ベレニス、余計なことを言うな!
 ヴィレッタが顔を真っ赤にしちゃったじゃないか!

「そ、そそそんなっ! 男の人の裸なんて見たことありません!」

 ヴィレッタは入浴時に、リョウが入ってくるという事態を想像してしまったようだ。
 リョウへの警戒心を強めていっているのが、手に取るようにわかるぞ。

 これは……ダメだ。このまま放っておいたら、ベレニスみたいにリョウをむっつりスケベな駄目男と認識してしまう恐れがある。
 それは困る。リョウは結構メンタルが弱いところがあるんだから。

「ローゼは、見て見られただけで内股になっていたわよね……って! 痛っ! なにするのよローゼ!」

「べ~レ~ニ~ス~? 余計なことは言わない!」

「ローゼは内股になるんですか……そうですか」

 おいおい、ヴィレッタ? 何故そこをインプットする。

「間違いが起きる前に去勢させるべきでしょうか? でも護衛として雇ってしまいましたし、アラン傭兵団と揉め事になるのは不都合ですね」

 お~いヴィレッタ~? ブツブツ物騒なことを呟かないでくれ~。

「と、とにかく! リョウと合流して護衛の打ち合わせをしよ! ね? フィーリア!」

 私は無理矢理話を終わらせた。
 ベレニスはぶ~っと膨れっ面をしているし、フィーリアは笑いを堪えている。
 うう……先が思いやられるよ。

「リョウ様には応接室で待つよう言ってあります。こちらです」

 着替え終わって、ヴィレッタの案内で応接室へ向かう。

 ん? リョウが席に座っているが、向かい側にも誰か座っている⁉
 あの金髪の後ろ姿って……もしや⁉
 その後ろで控えていたエマさんという、ヴィレッタの従者の女の人がこっちにペコリと頭を下げてきた。

「お嬢様、戻りました」

「ご苦労さまエマ。……それにご足労いただき感謝します、ラシル殿下」

 座ったまま振り向き、やあ、お邪魔しているよと手を挙げる金髪の青年。
 私は硬直してしまった。

「うわっ! 超イケメンね! ヴィレッタ! 誰なの⁉」

 ベレニスは目を輝かせながら、ヴィレッタに言い寄る。

「こちらはラシル・ブリュンヒルド様です。近衛騎士団の隊長にして王族の1人です。ラシル殿下、こちらは護衛に雇った冒険者のローゼとベレニスとフィーリアです。リョウ様とはもう、お話していたようですね」

 紹介され、慌てて頭を下げる。
 ベレニスはウキウキだ。この面食いめ。

「初めまして。王族といっても王位継承権は低いので気楽に接して構わないよ。事情はエマとリョウ殿にも聞いた。災難だったね」

「教会で死んだ襲撃者たちの身元や、その雇い主はわかったんすか? 女性はトリトリン子爵家だったバネッサ、という話だったっすが」

 フィーリアがラシルに聞くが、この子も恐れを知らないな。
 気楽にと言われたからって、王族に即疑問を投げかけるって普通はできないと思うぞ?
 リョウなんてめっちゃ居心地悪そうにしているし。

「……残念ながら4人共、素性のわからぬ者たちだったよ。トリトリン家の元従者を探して、本当にバネッサという子爵家だった女性か確認をしている最中だね」

「判明したら教えてほしいっす」

「約束しよう」

 どう見ても小柄な少女のフィーリアにも、ラシルは丁寧に応対する。
 家柄で傲慢に振る舞うタイプではないのは昔のまま、か。
 まあ、その点に関しては、こいつは信用してもいいだろう。

「フィーリア、それってバネッサという女性も偽物だった可能性があるってこと?」

 小声で確認すると、フィーリアはコクリと頷いた。
 その様子を見て、クスリと笑いながらラシルは話を続ける。

「緊急に我ら近衛騎士団で、ヴィレッタ・レスティア公爵令嬢を保護と考えていたのだが、頼りになる冒険者を4人雇ったようだね。身銭を切ってリョウ殿らを雇うか、国費で近衛騎士に護られるか、どっちにするかい?」

「わたくしは、現状の生活を維持して振る舞いたく思います。ですのでこの方々を雇うほうを選択します」

 ヴィレッタはハッキリとラシルへ答えた。

「わかった。陛下にはそう伝えておくよ」

 ラシルは優しげに微笑んだ。

「ただ、護衛に失敗したら全員極刑だから、そのつもりでお願いするよ」

 ラシルが笑顔のまま言葉を付け足して、ベレニスとリョウが硬直する。

「ラシル殿下、初対面の方々にそのような言い方は……」

 ヴィレッタが諫言するが、ラシルは笑って誤魔化していく。

 ……あ~、やっぱり三つ子の魂百までか。
 そういう意地悪な言い方をするのは、まさしく私が知っているラシル・ブリュンヒルドだわ。

「また何かあれば、遠慮なく相談して構わないよ」

 そう言い残して、ラシルはレスティア邸から去っていった。

「あ~、あのラシルって人、ローゼに似ているんだわ。ローゼを男にして、少し年齢をプラスした感じ? だから……モギュ」

 ベレニスがそんなことを呟くので、慌てて口を塞ぐ私であった。

「どうかしましたか?」

「な、なんでもないよヴィレッタ。ベレニスがちょっとトイレ行きたいって言うから私が連れていくね」

「トイレは廊下を出て右奥にございます。もしよろしければ、エマに案内させますが?」

「大丈夫お構いなく~」

 私はベレニスを捕まえたまま、廊下へ連れ出した。

「ついでに自分も行くっす」

 ついてきたフィーリアも含め2人に説明しないと、また変なことを口走られたら困るし。

「さっきのラシルは私の従兄妹。だから似ているのは当たり前なの! 私のことがバレたら一番厄介なのはラシルだから、絶対に言わないようにして」

 声を潜めて2人へ告げた。

「わかったけど、ローゼの親戚? だったら腹に一物ありそうでヤバそうね」

 おにょれベレニス。どういう意味じゃ。

「まあ、ラシルという人もそうっすが、ヴィレッタさんとエマさんにも気づかれずに護衛を続けるのって、骨が折れそうっすねえ」

「めんどくさいわねえ。いっそのこと元王女です! 今後も冒険者やっていきます! って宣言したら?」

「普通に王女の名を騙る偽物として処刑されるわ! そうならなくても政治的に利用しようとする連中が絶対出てくる。王侯貴族って、そういう連中が多いんだから。だから普通に冒険者として接してくれればいいの」

「ハイハイわかったわよ。あんたも色々苦労しているのよね」

 ツッコミを入れつつ説明すると、ベレニスは苦笑いしながらも納得するのであった。

「もう一つだけ確認っす。ローゼさんは今の王様とは事を荒立てたくない。そう考えているでいいっすか?」

「……うん。サリウス叔父さんとは数回しか会った記憶はないけど、優しい叔父さんだったし」

 もし私が先王の王女として擁立されたら、待っているのは叔父さんとの対立。
 骨肉の争いなんて絶対にしたくない。

「ローゼさんの正体がバレずに、ヴィレッタさんを護り、陰謀を暴く。邪教関連でジーニアの企みを探る。さらにローゼさんが知りたい先王夫妻を暗殺した、魔女ノエルを利用した存在の確認。さらにさらにリョウ様の復讐相手である、ノイズの行方を追っていく。これは当分、ベルンに滞在することになりそうっすねえ」

 やれやれと、フィーリアが嘆息した。

「まずはヴィレッタの問題に注力していく。2人共、いいかな?」

「お金が入るんならそれでいいわよ」

「無論、構わないっす」

 2人の了承を得てヴィレッタたちが待つ応接室へと戻ると、優雅にティータイムをしているヴィレッタに、完璧なメイドといった感じで寄り添うエマさんの姿が目に入る。

 リョウはなんか居心地悪そうにしているけど、なにかあったのかな?

「リョウ様。ローゼ様たちが戻ってきましたので、どうぞお風呂へ入ってくださいませ。ご案内します」

 エマさんに連れられ、リョウはバスルームへと消えていった。

 リョウめ、1人で護衛していた緊張感より、出会ったばかりの女性2人と同じ空間にいたことからの解放に、ホッとしたって感じだな?
 もう! 少しは女性に対して耐性をつけてほしいぞ。

「リョウと何か話したのかな?」

「いえ、特には。口数が少ない方のようでしたし」

 ……まあ、そうだろうなあ。

「いやらしい目で見られたりしなかった? 傭兵って、さっきも言ったけどむっつりだから気をつけなきゃ駄目よ。まあ、変なことされたら私が吹っ飛ばすから、遠慮なく言ってよね♪」

「ありがとうございますベレニス。今は大丈夫だったと思いますが、もし不埒なことをしてきたらお願いしますね」

 ヴィレッタは真顔で答えた。

 ……うん。リョウ。ごめん。ヴィレッタの認識するリョウもベレニス寄りになっちゃったみたい。
 大変そうだけど凹まないでよね。

 と、心の中でリョウに謝る私だった。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

クラス転移したからクラスの奴に復讐します

wrath
ファンタジー
俺こと灞熾蘑 煌羈はクラスでいじめられていた。 ある日、突然クラスが光輝き俺のいる3年1組は異世界へと召喚されることになった。 だが、俺はそこへ転移する前に神様にお呼ばれし……。 クラスの奴らよりも強くなった俺はクラスの奴らに復讐します。 まだまだ未熟者なので誤字脱字が多いと思いますが長〜い目で見守ってください。 閑話の時系列がおかしいんじゃない?やこの漢字間違ってるよね?など、ところどころにおかしい点がありましたら気軽にコメントで教えてください。 追伸、 雫ストーリーを別で作りました。雫が亡くなる瞬間の心情や死んだ後の天国でのお話を書いてます。 気になった方は是非読んでみてください。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...