【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第14話 学校へ行こう

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 陽の光が差し始めるのがようやく遅くなり、涼やかな風も吹き始めた秋の朝。

 相変わらずリョウは早く起きて、朝の稽古で剣の鍛錬に余念がない。

 エマさんも同じく朝早いがリョウには負けたようで、ビュンビュンと鳴る音に敵襲かと勘違いして、寝ている私たちに報告に来たのが午前5時過ぎの出来事。

「申し訳ございません! 勘違いしてしまいました」

 叩き起こされて急行する私たちだったが、リョウの剣の稽古だったことに、エマさんは平謝りし、リョウもバツの悪そうな顔をする。

「リョウ様、稽古は立派ですが早朝です。ご配慮を」

「ま~ったく、傭兵ってば、何時から起きてるのよ~。私の眠りを妨げた罪は重いんだからね!」

「まあ、リョウ様で良かったっす。いや、良くないっすけど。……寝るっす」

 う~む。リョウの女子たちからの評価がまた下がっちゃったぞ。
 はあ~、後でフォローしておかないとな。

 朝食を頂いた後、私とリョウは用意された王立学校の制服に袖を通す。

 女子用は白のブラウスと紺のスカート。それに黄色のカーディガンだ。
 え? あんまりいつもと変わらないって?
 そんなことないぞ~。全然違うぞ~。

 男子用は黒のブレザーに白のスラックス、ネクタイが基本らしいが別にしなくても良いそうだ。

 フフン♪ この制服を着るのって、幼い時の憧れの一つだったんだよね~。
 まさかこんな展開で夢が叶うなんてね♪

「ローゼもリョウ様もお似合いですよ」

「ありがとヴィレッタ♪ ヴィレッタも似合ってるよ♪」

 はしゃぐ私と対照的なのはリョウ。
 マナー講座をエマさんに開かれて、顔を引きつっている。
 さらに学校にいる間は剣をエマさんに没収されるそうで、わかりやすく落ち込んでいった。

「学生の帯剣は認められておりませんので、仕方ありません。貴族の子弟が通う学校ですから」

「学校の中では教師や警備兵にお任せして大丈夫かと。馬車の準備をしてきますので暫しお待ち下さい」

 ヴィレッタとエマさんの説明に、リョウはため息を吐いた。

「ふ~ん。ローゼは馬子にも衣装ね! 傭兵はなんかやっぱり似合わないわね」

 と、ベレニスが悪気なくリョウを見て笑う。

「ベレニスとフィーリアは商業ギルドに行くんだっけ? もう行くの?」

「私はもうちょい遅くても良いけど、屋敷に鍵をかけて出かけるって面倒でしょ? だから、ローゼたちが出るタイミングで行くことにしたわ」

「まあ、エルフは目立つっすからねえ。無人の公爵邸から自分らが出て行って、変に疑われるのも面倒っすから」

「商業ギルドでどんな調べ方をするんだ?」

 リョウがフィーリアに疑問を投げかけた。

「公爵令嬢、それも王の側室となると発表されたヴィレッタさんを狙う暗殺未遂っす。ですので、裏で金の流れもおかしな点があると思うっすよ。まずはそこから調べるっす」

「よろしくお願いします。無理はせず、危険と感じたらすぐに逃げてください」

「大丈夫だってヴィレッタ。この私がフィーリアと調べるんだから♪」

 自信たっぷりなベレニスだが、不安だ。
 まあフィーリアがいれば大丈夫だと思うけど。

 馬車の準備が整い乗ろうとしていると、馬を走らせてくるラシルの姿が見えてきた。

 ん? 朝っぱらからなんだろう?
 切羽詰まった感じではなさそうだが。

「良かった。出発前に間に合ったようだ」

「ラシル殿下、おはようございます。何か進展あったのでしょうか?」

「いや、そちらは申し訳ないがまだだ。……少しアラン傭兵団のリョウ殿を借りていいかな? 彼に用がある」

 リョウはヴィレッタの頷きを確認してから了承する。

 少し離れた場所に移動し、何やら軽い感じでリョウの肩をパンパンしながら話しているが一体何だろ?
 リョウは警戒感は持っているが、なんか私たちといるより肩の力が抜けている気もするし。

 ぐぬぬ、ラシルめ。
 リョウを引き抜こうとかだったら許さんぞ。
 リョウが戻ってきて馬車に乗り込むと、ラシルは一礼して去っていった。

「それじゃあ私たちも行くわ」

 ベレニスとフィーリアも移動を開始し、エマさんが御者を務める馬車も動き出す。

「リョウ、ラシル……殿下とはどんな話をしたの?」

「わたくしも気になります。お話出来ないことでしょうか?」

「ああ、単にこの手紙を王立学校の教師、テシウス・ハーヴェスト殿に届けて欲しいと頼まれただけだ」

 揺れる馬車の中、私とヴィレッタのジト目にも関わらず、リョウは動ずることもなく懐から手紙を見せてきた。

 無記名の封……
 なるほど極秘のメッセンジャーって訳か。
 アランの傭兵のリョウが、今日学校へ護衛者として向かうから都合良く利用したって感じかな?

 テシウス・ハーヴェスト……どこかで聞いた名な気がするけど誰だったかなあ。

「テシウス先生にですか。……ラシル様も最上級生の時に1年お世話になっているはずですね。接点としてはそれくらいでしょうか?」

「ああ、恩師だと言っていた。ヴィレッタ嬢ではなく俺に託したのは、いざとなったら切り捨てるのに、都合の良い存在だからだろう。もしくは一蓮托生にする気なのかもな」

 リョウも、この手紙が単なる手紙ではないと気づいているみたい。
 ただ私はともかく、ヴィレッタはリョウを疑り深い根暗って思わないか心配になる発言だぞ。

 もうちょい言葉を選べってのに、もう。

「テシウス先生ってどんな人なの?」

「専門は歴史の教師ですが、あらゆる事象に精通しており、政治経済に軍事、さらに各国のあらゆる文化にも精通した、まさに天才ですね。よく他の教師が不在の時に駆り出されて、授業を代わりにやっています」

 それは凄い。そんな人が学校の教師ってそれはそれで問題な気もするけど。

「君と同じ平民出身だから気楽にって言われたな」

「ええ、15年前に王国で民間から幅広く人材を募集した時に採用され、文官として王宮で働いていました。平民出身では、武のアデル、知のテシウスと並び称された方でございます。わたくしの父がもっとも信頼し、常に側に置いていたそうです。……もっとも10年前の先王陛下、王妃殿下、王女殿下が身罷られる少し前、本人の家庭の都合もあって休職し、帰郷されたのです。政変で失職扱いにされ、その後、旅に出られたのです。今から3年ほど前に王都に戻ってきた際、アデル準男爵の推薦で教師職に就かれたと聞いています」

 アデルの推薦か。それに、10年前……ね。

「王宮で雇わなかったのが不思議な経歴だな」

「リョウ、昔のこの国ならそうかもだけど、この国は現状、テスタ宰相の貴族主義による独裁政治。多分、平民の教師を雇うことに対しても難色を示したと思うよ」

 そんな私の解説に、ヴィレッタは少し悲しげな表情をした。

「そこは色々あったと聞いております。今でも生徒の中には、テシウス先生を毛嫌いしている人がいるのも事実です。ですがローゼ、それにリョウ様。貴族にも貴族主義を良しとしない人もいます。それだけは忘れないでくださいませ」

 馬車に揺られること10分程、目的地である王立学校の敷地へと到着した。
 
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