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第3章 公爵令嬢の選択
第18話 商人夫婦?
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「クスクス。ピンチみたいだから助けようと思ったけど、必要なかったみたいね。お久しぶりね、ベレニスちゃん。そっちのおチビちゃんは初めまして」
現れたのは、紫色の巻き毛で、異性を魅了する容姿の美女。
ただ着ている服は、いかにも駆け出し商人の妻のような格好であった。
「ディアナ、久しぶりね。何? その恰好?」
ディアナはベルガー王国北東の街ビオレールで騒ぎを起こし、領外追放処分を受けた魔女であり占い師だ。
それがなぜ王都ベルンにいるのか、ベレニスは訝しんだ。
「つもる話は後よ、まずはこちらへ来て」
2人が側に寄ると、ディアナは魔法を唱え、壁を修復した。
「では私の夫が出している店へ案内するわね。さあ、ついてきて」
「いや、いきなり夫って部分、嘘をつかれてもねえ。ま、ついて行くけど」
「クスクス。ベレニスちゃんは相変わらずね。そう、夫は嘘」
フィーリアは何かに気づいたような表情でディアナに向き合った。
「……その夫と偽った人物って、ヘクター・ロンメルって名っすかね?」
「あら、凄い。フィーリアちゃんって言ったかしら? 夫から聞いているわよ。とんでもなく頭が切れる少女だとね」
ディアナがクスリと笑うと、フィーリアは呆れたようにため息をついた。
それから一行は王都の路地裏を歩き続け、一軒の建物の前で止まる。
その建物の看板にはこう書かれていた。
“ファンシー魔導具ショップ“
「ファンシーって……」
「うわ! お洒落じゃない! しかも安い! おお! このネックレス良いかも!」
フィーリアが呆れている横で、ベレニスは目をキラキラさせながら店へ駆け込んだ。
店内はお洒落な小物やアクセサリーに溢れ、カウンターには1人の男性が立っている。
30半ばくらいの日焼けした肌に茶色い髪、剣で鍛えたであろう肉体。
「お久しぶりっすね、ヘクターさん」
「よおフィーリア。次に会う時は美人に成長しているって言っていたが、期待通りに成長してくれたな」
「あんまり背丈も変わってないっすけど」
「クックック、面構えは立派になったぜ。仲間ってやつに巡り会ったのか。良い目をしてる」
ヘクターは、フィーリアとベレニスを交互に見つめる。
「こうも早く気づかれるとはな。フィーリア、何で気づいた?」
「何でも何も、商業ギルドの取引リストに書かれていたっすからねえ。本名と元ハンセン商会という肩書、要件である店舗買取っすよ」
「普通王都に着いて3日目で、そんなとこ調べねえだろ」
苦笑しつつ、ヘクターは頭を掻いた。
「てっきり、ヘクターさんはハンセン商会に戻ったと思っていたっすよ。自分との盟約の指輪はまだはめたままのようっすね」
「ああ、俺は剣を持たないままだ。商人一本で生きていくさ」
ヘクターの右手の中指にはめられた指輪が光る。
リョウを仇として狙い、敗れたフィーリアとの盟約の証だ。
「ん? 私たちが王都に来て3日って、何で知ってるの?」
「ベレニスさん、単純っすよ。ずっと行動をマークされていたっす」
「ふうん? ディアナの占いで? でも何のため? ディアナともおっさんとも、もう決着はついているでしょ。それとも、ヴィレッタの暗殺計画や、邪教となんか関わりがあるって言うわけ?」
捲し立てるベレニスに2人は余裕の笑みのまま。
それを見てフィーリアは断言する。
「ローゼさんから聞いていて、ディアナさんの事情を知っているっす。だからはっきり言えるっす。10年前の、王と王妃が殺害されたのに病死とされた事実。その噂を撒いているのは貴方方っすね。魔女ディアナさん。それにヘクターさん。それに莫大な額を商業ギルドに献上しているっすが……ザガン近郊で盗賊のお宝を盗んだのも貴方方っすね」
フィーリアの断言に驚き、2人を見つめるベレニス。
だが、どちらも表情を変えないままだ。
「お宝はまあいいわ。それよりローゼが生きてるって情報も流したの?」
ベレニスの質問に、ディアナは余裕の笑みで答える。
「クスクス。ローゼちゃんは魔女ローゼとして生きているじゃない? 王女様であらせられるローゼマリー姫殿下の生存については一言も言っていないわ。どう? 嘘を言っているように見えるかしら?」
「……嘘ではないようね。何? 何がしたいのディアナ」
「騙されちゃ駄目っすよベレニスさん。王女様が生きていると思わせるように、誘導する噂を流しているっすよ」
ヘクターの眉毛がピクリと動いた。
「つまり、どーゆーことよ?」
「まあわかりやすく言うと、10年前に死んだはずの王女が、現政権を打破する象徴として担がれるように誘導されているって感じっすね。それもディアナさんとヘクターさん主導でっす」
ベレニスはそれは見過ごせないとばかりに睨みつける。
だが2人はまるで動じていない。むしろ当然といった様子だ。
「ローゼ本人が望んでいないのに?」
「ま、そーゆーことっす」
数秒の沈黙が場を支配する。
破ったのはディアナだった。
「いけないことかしら? 私はただ、誰もが幸せになれる王国を欲しているだけよ。ローゼちゃんなら、そうなるように動いてくれるでしょ? それにこうも思わないかしら? 王女の運命から逃れて好き勝手に生きて、この国の民の現状を放置しているローゼちゃん。宿命から逃げてお気楽でいいわねって」
「……その結果、数年に及ぶ内乱が起こってもっすか?」
「犠牲者を出さずに世の中を変えるなんて絵空事を言うつもりか? 俺はディアナに口説かれて協力を約束した。俺はサシでローゼって娘と話してねえが、なんつうかオーラはあったぜ。立派なベルガー王国女王になる器みたいな……な」
ヘクターはフッと笑う。
それは、ローゼに対しての憧れが混じっているようにも見える。
ベレニスは言葉が見つからないように黙したままだ。
「クスクス。別に貴方方と敵対するつもりはないし、寧ろ逆。追われていた貴女たちを助けるために、出向いたのを忘れないでほしいわ」
敵対はしないが魔女ローゼの味方もしない。
そんな2人だとフィーリアは理解した。
さらにこの2人を動かしている、何者かがいるのも察した。
でなければトントン拍子に、この者たちの都合良く事は運んでいないはずだ。
だが決して口を割らないだろう。
ならば……
「提案があるっす。ローゼさんが王女としてこの国を改革するために立ち上がらなくても、今のままでベルガー王国が住みやすい国になれば、ローゼさんは現状の冒険者で魔女というポジションのままで良い。そう思ってくれるっすかね?」
「フフ、構わないわよ」
「噂は取り消さないが、まあ好きにしな。どうせこの後は、立ち上がった王女に武器と資金を供給する腹づもりなだけだからな」
「それでいいっす。では本題に入るっす」
さらっと口にするフィーリアにベレニスは驚く。
「ちょっとフィーリア、本題って何よ。今のがどう聞いても本題だったじゃない」
「ベレニスさん。……自分たちの目的を忘れたんすか?」
「何を聞きたい?」
「商業ギルドについてっす。ヘクターさんのことっすから、どうせ工作ついでに色々情報を仕入れているんすよね?」
フィーリアは正当な情報料を払う約束もする。
すると低い声でヘクターは語り出した。
「王都の商業ギルドは真っ黒さ。公爵家であるルインズベリー家とズブズブな関係よ。そのルインズベリー家を操っているのがテスタ宰相。ここまで言えばフィーリアだ。概ねカラクリは見えただろう」
「ルインズベリー家の当主エクベルトが、ひと月姿を見せていないっす。これについては何か聞いているっすか?」
「……探りを入れているがまだだ。ただ、気になる情報は仕入れている」
フィーリアは追加の情報料を渡した。
「ルインズベリー家の公子ポールが、最近目まぐるしく動いている。アランの傭兵で鬼神と呼ばれる男を引き連れてな」
「オルガ・フーガさんっすね」
「オルガはルインズベリー家に恨みがあるはずだ」
「……恨みっすか」
「グレテという名の妹を、当主エクベルトに乱暴されて自殺に追い込まれている」
冒険者ギルドで出会った、オルガとポールのやり取りから想像できなかった情報。
フィーリアもベレニスも、ただただ絶句した。
「……貴族街の教会に、王女と因縁のある邪教の魔女ジーニアがいるのは知っているな?」
ベレニスがコクリと頷くと、ヘクターはフッと笑う。
「お前さんたちが王都に来る前に、ポールは何度か教会に行き、ジーニアと談笑していた。残念ながら、俺が盗み聞きしたのは単なる世間話だったがな」
「クスクス、邪教のやり口は地元で協力者を作ること。ビオレールでの私のようにね」
ヘクターとディアナからのさらなる情報に、ベレニスとフィーリアは愕然とした。
もし、ポールが、いやルインズベリー家が邪教の協力者だとしたら、自分たちの王都到着直後から、全てが仕組まれていたことになると。
「もう一つおまけに教えるわ。バネッサ・トリトリンという貴女たちが探すように依頼された名前。……私が幼い頃に、ここ王都で、孤児を保護していたノエルに協力していた貴族の家の子よ」
「……その人は今、どこにいるかわかるっすか?」
フィーリアの質問に、ディアナは悲しげに首を振った。
「だいぶ前に死んでいたとだけ、占いで出たわ。魔法の素質は私以上……特に魔力の流れを読むのが上手かったわ。それに優しくて真面目で、知識に剣術、料理も洗濯も、なんでもできる才媛だった」
在りし日の想い出を脳裏に浮かばせ、ディアナは遠い目をした。
「ありがとうっす。では、せっかくなんで買い物していくっすか」
そう言うとフィーリアは店にある魔導具を物色し十数個を手にして店主であるヘクターに告げる。
「これくださいっす」
現れたのは、紫色の巻き毛で、異性を魅了する容姿の美女。
ただ着ている服は、いかにも駆け出し商人の妻のような格好であった。
「ディアナ、久しぶりね。何? その恰好?」
ディアナはベルガー王国北東の街ビオレールで騒ぎを起こし、領外追放処分を受けた魔女であり占い師だ。
それがなぜ王都ベルンにいるのか、ベレニスは訝しんだ。
「つもる話は後よ、まずはこちらへ来て」
2人が側に寄ると、ディアナは魔法を唱え、壁を修復した。
「では私の夫が出している店へ案内するわね。さあ、ついてきて」
「いや、いきなり夫って部分、嘘をつかれてもねえ。ま、ついて行くけど」
「クスクス。ベレニスちゃんは相変わらずね。そう、夫は嘘」
フィーリアは何かに気づいたような表情でディアナに向き合った。
「……その夫と偽った人物って、ヘクター・ロンメルって名っすかね?」
「あら、凄い。フィーリアちゃんって言ったかしら? 夫から聞いているわよ。とんでもなく頭が切れる少女だとね」
ディアナがクスリと笑うと、フィーリアは呆れたようにため息をついた。
それから一行は王都の路地裏を歩き続け、一軒の建物の前で止まる。
その建物の看板にはこう書かれていた。
“ファンシー魔導具ショップ“
「ファンシーって……」
「うわ! お洒落じゃない! しかも安い! おお! このネックレス良いかも!」
フィーリアが呆れている横で、ベレニスは目をキラキラさせながら店へ駆け込んだ。
店内はお洒落な小物やアクセサリーに溢れ、カウンターには1人の男性が立っている。
30半ばくらいの日焼けした肌に茶色い髪、剣で鍛えたであろう肉体。
「お久しぶりっすね、ヘクターさん」
「よおフィーリア。次に会う時は美人に成長しているって言っていたが、期待通りに成長してくれたな」
「あんまり背丈も変わってないっすけど」
「クックック、面構えは立派になったぜ。仲間ってやつに巡り会ったのか。良い目をしてる」
ヘクターは、フィーリアとベレニスを交互に見つめる。
「こうも早く気づかれるとはな。フィーリア、何で気づいた?」
「何でも何も、商業ギルドの取引リストに書かれていたっすからねえ。本名と元ハンセン商会という肩書、要件である店舗買取っすよ」
「普通王都に着いて3日目で、そんなとこ調べねえだろ」
苦笑しつつ、ヘクターは頭を掻いた。
「てっきり、ヘクターさんはハンセン商会に戻ったと思っていたっすよ。自分との盟約の指輪はまだはめたままのようっすね」
「ああ、俺は剣を持たないままだ。商人一本で生きていくさ」
ヘクターの右手の中指にはめられた指輪が光る。
リョウを仇として狙い、敗れたフィーリアとの盟約の証だ。
「ん? 私たちが王都に来て3日って、何で知ってるの?」
「ベレニスさん、単純っすよ。ずっと行動をマークされていたっす」
「ふうん? ディアナの占いで? でも何のため? ディアナともおっさんとも、もう決着はついているでしょ。それとも、ヴィレッタの暗殺計画や、邪教となんか関わりがあるって言うわけ?」
捲し立てるベレニスに2人は余裕の笑みのまま。
それを見てフィーリアは断言する。
「ローゼさんから聞いていて、ディアナさんの事情を知っているっす。だからはっきり言えるっす。10年前の、王と王妃が殺害されたのに病死とされた事実。その噂を撒いているのは貴方方っすね。魔女ディアナさん。それにヘクターさん。それに莫大な額を商業ギルドに献上しているっすが……ザガン近郊で盗賊のお宝を盗んだのも貴方方っすね」
フィーリアの断言に驚き、2人を見つめるベレニス。
だが、どちらも表情を変えないままだ。
「お宝はまあいいわ。それよりローゼが生きてるって情報も流したの?」
ベレニスの質問に、ディアナは余裕の笑みで答える。
「クスクス。ローゼちゃんは魔女ローゼとして生きているじゃない? 王女様であらせられるローゼマリー姫殿下の生存については一言も言っていないわ。どう? 嘘を言っているように見えるかしら?」
「……嘘ではないようね。何? 何がしたいのディアナ」
「騙されちゃ駄目っすよベレニスさん。王女様が生きていると思わせるように、誘導する噂を流しているっすよ」
ヘクターの眉毛がピクリと動いた。
「つまり、どーゆーことよ?」
「まあわかりやすく言うと、10年前に死んだはずの王女が、現政権を打破する象徴として担がれるように誘導されているって感じっすね。それもディアナさんとヘクターさん主導でっす」
ベレニスはそれは見過ごせないとばかりに睨みつける。
だが2人はまるで動じていない。むしろ当然といった様子だ。
「ローゼ本人が望んでいないのに?」
「ま、そーゆーことっす」
数秒の沈黙が場を支配する。
破ったのはディアナだった。
「いけないことかしら? 私はただ、誰もが幸せになれる王国を欲しているだけよ。ローゼちゃんなら、そうなるように動いてくれるでしょ? それにこうも思わないかしら? 王女の運命から逃れて好き勝手に生きて、この国の民の現状を放置しているローゼちゃん。宿命から逃げてお気楽でいいわねって」
「……その結果、数年に及ぶ内乱が起こってもっすか?」
「犠牲者を出さずに世の中を変えるなんて絵空事を言うつもりか? 俺はディアナに口説かれて協力を約束した。俺はサシでローゼって娘と話してねえが、なんつうかオーラはあったぜ。立派なベルガー王国女王になる器みたいな……な」
ヘクターはフッと笑う。
それは、ローゼに対しての憧れが混じっているようにも見える。
ベレニスは言葉が見つからないように黙したままだ。
「クスクス。別に貴方方と敵対するつもりはないし、寧ろ逆。追われていた貴女たちを助けるために、出向いたのを忘れないでほしいわ」
敵対はしないが魔女ローゼの味方もしない。
そんな2人だとフィーリアは理解した。
さらにこの2人を動かしている、何者かがいるのも察した。
でなければトントン拍子に、この者たちの都合良く事は運んでいないはずだ。
だが決して口を割らないだろう。
ならば……
「提案があるっす。ローゼさんが王女としてこの国を改革するために立ち上がらなくても、今のままでベルガー王国が住みやすい国になれば、ローゼさんは現状の冒険者で魔女というポジションのままで良い。そう思ってくれるっすかね?」
「フフ、構わないわよ」
「噂は取り消さないが、まあ好きにしな。どうせこの後は、立ち上がった王女に武器と資金を供給する腹づもりなだけだからな」
「それでいいっす。では本題に入るっす」
さらっと口にするフィーリアにベレニスは驚く。
「ちょっとフィーリア、本題って何よ。今のがどう聞いても本題だったじゃない」
「ベレニスさん。……自分たちの目的を忘れたんすか?」
「何を聞きたい?」
「商業ギルドについてっす。ヘクターさんのことっすから、どうせ工作ついでに色々情報を仕入れているんすよね?」
フィーリアは正当な情報料を払う約束もする。
すると低い声でヘクターは語り出した。
「王都の商業ギルドは真っ黒さ。公爵家であるルインズベリー家とズブズブな関係よ。そのルインズベリー家を操っているのがテスタ宰相。ここまで言えばフィーリアだ。概ねカラクリは見えただろう」
「ルインズベリー家の当主エクベルトが、ひと月姿を見せていないっす。これについては何か聞いているっすか?」
「……探りを入れているがまだだ。ただ、気になる情報は仕入れている」
フィーリアは追加の情報料を渡した。
「ルインズベリー家の公子ポールが、最近目まぐるしく動いている。アランの傭兵で鬼神と呼ばれる男を引き連れてな」
「オルガ・フーガさんっすね」
「オルガはルインズベリー家に恨みがあるはずだ」
「……恨みっすか」
「グレテという名の妹を、当主エクベルトに乱暴されて自殺に追い込まれている」
冒険者ギルドで出会った、オルガとポールのやり取りから想像できなかった情報。
フィーリアもベレニスも、ただただ絶句した。
「……貴族街の教会に、王女と因縁のある邪教の魔女ジーニアがいるのは知っているな?」
ベレニスがコクリと頷くと、ヘクターはフッと笑う。
「お前さんたちが王都に来る前に、ポールは何度か教会に行き、ジーニアと談笑していた。残念ながら、俺が盗み聞きしたのは単なる世間話だったがな」
「クスクス、邪教のやり口は地元で協力者を作ること。ビオレールでの私のようにね」
ヘクターとディアナからのさらなる情報に、ベレニスとフィーリアは愕然とした。
もし、ポールが、いやルインズベリー家が邪教の協力者だとしたら、自分たちの王都到着直後から、全てが仕組まれていたことになると。
「もう一つおまけに教えるわ。バネッサ・トリトリンという貴女たちが探すように依頼された名前。……私が幼い頃に、ここ王都で、孤児を保護していたノエルに協力していた貴族の家の子よ」
「……その人は今、どこにいるかわかるっすか?」
フィーリアの質問に、ディアナは悲しげに首を振った。
「だいぶ前に死んでいたとだけ、占いで出たわ。魔法の素質は私以上……特に魔力の流れを読むのが上手かったわ。それに優しくて真面目で、知識に剣術、料理も洗濯も、なんでもできる才媛だった」
在りし日の想い出を脳裏に浮かばせ、ディアナは遠い目をした。
「ありがとうっす。では、せっかくなんで買い物していくっすか」
そう言うとフィーリアは店にある魔導具を物色し十数個を手にして店主であるヘクターに告げる。
「これくださいっす」
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