【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第22話 ローゼ=ローゼマリー王女?

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 応接室では、ヴィレッタとアデルが向き合って座り、エマさんはティーセットを用意して、扉の前で待機の姿勢。
 ベレニスとフィーリアが窓際で待機。
 私とリョウが、ヴィレッタの背後に立った。

 邪教は街に協力者を用意するという情報、フィーリアとベレニスが襲撃された直後の夜。
 万が一を考慮したリョウの防衛布陣であった。

 私たちの配置に、刺客と疑われていると察したアデルが剣気を消していった。
 私がリョウに視線を向けると、彼も剣気を消した。

 アデルは、ヴィレッタに深く頭を下げたあと語り始める。

「ヴィレッタ様が民間の冒険者を雇ったと耳にし、もしやと思って参った次第です。軍に籍を置く身として、公爵令嬢様、それも陛下に嫁ぐ御方に何かあれば一大事ですからな」

「わざわざありがとうございます。ですが、まだ学生の身ですので、軍のお力を借りるつもりはございません。陛下にも了承を得て、私費にてこの方々を雇っております」

 ヴィレッタは平静に対応しているが、内心はどう思っているのだろう? う~ん、読めない。

「少年。アラン傭兵団の皮鎧を着ているな。その昔、儂もアラン傭兵団に所属していたことがある」

 おや? アデルの興味が、リョウの方へ向いていったぞ。

「はっ。存じております。俺の名はリョウ・アルバース。以後お見知り置きを」

「うむ。いい面構えだ。娘のオルタナから手紙で聞いておる、何でもとても腕が立つそうだな。そちらのお嬢さんが魔女のローゼさん。エルフのお嬢さんがベレニスさん。ビオレールでは娘が世話になったと聞いている」

「いえいえ、どっちかと言うとお世話になったのは私たちでして。……まあ、酷い目にも遭いましたけど」

 後半はボソッと囁く。

 純粋に戦闘を愉しみたいとリョウと一騎討ちした時は、ホント肝を冷やしたし。

「奇縁だな。王都でこうして、娘と縁があった者たちが公爵令嬢様の護衛をしているとは」

 アデルは微笑んでお茶に口をつける。
 ヴィレッタも、カップを手に取り優雅に啜る。

「ところで、もう一つ、ちと気になる噂を耳にしましてな。10年前の先王陛下の病死に関する疑惑の噂です」

 アデルの耳にも入っているということは、相当噂が広まっているということなのかも。

「わたくしも噂を耳にしております。王女殿下は、実は生存しているとも」

「……いかが思われますかな? 葬儀の時に、レスティア公爵令嬢様が王女殿下の棺に花を捧げた際、こう叫んだのを思い出しましてな。『ローゼ様ではない』と」

 え? そうなのヴィレッタ。

「幼き頃の、仕える主を喪った錯乱により発した戯言です。お忘れください」

 ヴィレッタは、強い意志を感じさせる口調で否定した。

 アデルは苦笑し、私は安堵するが……

「ローゼ様……ローゼマリー様だから愛称として、そうお呼びしてましたなあ。在りし日を懐かしく思います。……ところで、そなたもローゼと呼ばれているが愛称なのかね?」

 アデルの視線が私へと向けられる。

「いえ、ローゼ・スノッサがフルネームです」

 そう告げた私に、アデルは視線をヴィレッタへと戻す。

「ヴィレッタ様は、この魔女ローゼをいかがお思いですかな?」

 これは、私に疑惑を抱いて訪れたのだと確信する。
 ただ疑惑止まりなのだろう。
 確信したならば、こんな問答をアデルはしてこないはずだ。

「彼女は魔女であり、優秀な護衛者であると認識しております」

 ヴィレッタはカップを置き、アデルの目を見据えて告げた。

「ははあ、なるほど……魔女ローゼさんに最後に一つ質問よろしいかな? もし王女殿下が生存しているなら、野心を抱き王政に介入を企むであろうか? 似た名前のよしみで答えてくれないかね?」

 嘘はつけない。
 本心で話そう。

「……生存説があるにも関わらず、未だ存在を確認できないのは生存説そのものが間違いか、王女様自身に野心はなく、王族の身分を放棄しているのかと思います」

「ははあ、なるほど」

 アデルが納得したかどうかはわからなかった。
 ただ、夜分失礼しましたと告げて去るアデルの後ろ姿は、昔と変わらず頼もしく見えた。

 ふひ~、疲れた~。

「アデル・アーノルド殿が襲撃者ではなくて良かった。さすがはオルタナ殿の父君で、団長と並び称される七剣神。万に一つも勝てる気がしない」

 リョウも、どっと疲れた表情を浮かべていた。

「あんまり自分のことを喋らないから、嘘を言っているかよくわかんなかったわ。邪教の協力者って、どこにどう潜んでいるかわかんないのが難点ね」

「アデル準男爵という立場なのに単身で現れたっす。何か他に意図があったと考えておくべきっすね」

 ベレニスとフィーリアも緊張の糸を解いた。

「左様な疑いを、あの御仁にしたくはございませんが……何もなくて安心いたしました。さて、皆様。もう遅い時刻です。お休みして明日に備えて下さい」

 ヴィレッタが明るく振る舞いながら告げると、ベレニスとフィーリアが大きなあくびをした。

 ***

 一方、アデルはレスティア公爵邸を出るとポールとオルガと合流する。

「如何でしたかな? アデル殿から見て、魔女ローゼと名乗る者はローゼマリー王女で間違いなかったですか?」

 ポールが問いかけると、アデルは首を横に振った。

「いえ、別人でしょう。王女殿下の幼馴染であった、レスティア公爵令嬢の振る舞いも観察しました。ですが王女を匿って何かを企んでいる様子も、裏の組織と繋がっている様子もございません。陛下も了承して、魔女ローゼを雇っているとも申しておりました。ならば陛下の手の者も、あの冒険者たちを調べているはずです。本物の王女殿下でしたら、とっくに陛下が動いているでしょう」

「そうですかい。アデルの旦那がそう言うのであれば、残念だがそうなんでしょうねえ。王女生存という吉報を、民衆に届けられなくて残念でさぁ」

「急な申し出を引き受けていただき感謝します。アデル殿、何かあればルインズベリー家を頼ってください。出来うる限り、お力になりましょう」

「いえいえ公爵家のお力添えなど、儂には分不相応です。お気持ちだけ頂きます。ではこれにて」

 アデルはそう答え一礼して帰路に着いた。

 その後ろ姿を、ポールとオルガは口元を歪ませて見送るのだった。
 
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