【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第3章 公爵令嬢の選択

第31話 失脚

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 王城の謁見の間では、宰相テスタ・シャイニングが王へ弁明していた。
 レスティア邸への冤罪による襲撃及び、アデル・アーノルド準男爵邸へニクラス・レスター公爵を動かし襲撃した件についてを、多くの貴族たちを味方につけ。

「で、ありますので悪いのは全て、レスティア邸で雇われた冒険者の少女を、10年前に病死したローゼマリー王女だとでっち上げたルインズベリー家が元凶なのです。当主エクベルトと世継ぎのポールには、厳重な処罰を申し付けてくだされ」

 言い終わり、ニヤリとテスタは笑う。

 この俺に逆らえる存在など、この国にはいないと心底思っているゆえに。

 そのテスタの隣では、トール・カークスが実務的な処理をするべく、待機していた。

 珍しいことではない。
 宰相の右腕として、税の搾取や表に露見した悪事を法に則り、宰相側が嗤う結末にしている存在なのだから。

「ふむ。宰相の言い分はわかった。だがルインズベリー邸が燃えてしまい、多くの死者が出たそうだ。エクベルトもポールも安否不明という。宰相。これについて何か心当たりはあるか?」

 サリウス王は、真摯に無念そうに重臣である公爵家の惨事を悼んだ。

「アデル・アーノルド準男爵やニクラス・レスター公爵からの早馬による報せによると、ルインズベリー邸は灰燼に帰したそうです。何者かが焼き払ったのではないかと推測します」

 テスタが口を開く前に、サリウス王の横にて守護する近衛騎士団の隊長ラシルが進言した。

「ラシル殿下、横から口を挟むは無礼ですぞ。陛下が訊ねたのは宰相閣下でございます」

 トールに諭され、ラシルは申し訳ございませんと頭を下げた。

 エクベルトとポールの悪事を知るテスタは、このやり取りに心の中でほくそ笑んだ。
 ルインズベリー邸が灰燼に帰し、2人が安否不明なのも好都合、このまま、全ての悪事の命令者はルインズベリー家だったと押し通せると。

 その後、ルインズベリー家には一族の誰かに継がせれば良い。

 王が準男爵家に寝泊まりしていた事実によって覆された、レスティア公爵家と民衆や兵から人気の高いアデルを葬る策。
 失敗に終わって窮地に立たされたが、こうも簡単に権力が増大しようとは、まるで運命が己に味方しているようではないか。

 笑いが止まらなくなるとは、まさにこのことだ。

「そうですなあ。ルインズベリー公爵はよく商業ギルドに出入りしては、多額の金を受け取っていたとの噂もあります。裏で相当悪どいことに手を染めていたと、もっぱらの噂でして。その方面で恨みを買ったやもしれませぬな。如何でしょう? この宰相が自ら調査し、ルインズベリー家の悪事と、商業ギルドとの繋がりを暴いてみせましょう」

 テスタは恭しく頭を垂れ、王に進言する。

 その傍らにいた宰相派の貴族たちが、「是非お頼み申す。宰相閣下なら任せて大丈夫」と、ヨイショするかのように口々に述べた。

 テスタは内心ほくそ笑む。
 これでこの王のことだ、「相わかった任せる」と告げるはず。
 その一言で、この王は自分の完全なる傀儡と化すのだ! と。

 しかしサリウス王は、テスタの思惑とは違った言葉を紡ぎ出した。

「ときに宰相よ。このような手紙の数々がルインズベリー家から発見されており、余の元まで届けられておる。この手紙の束は何だ? 宰相の印が押されているのもあったのう」

 宰相派の貴族たちがざわめき始めた。
 なぜ、ルインズベリー家にあるはずの手紙が存在するのかと。
 それは全て、灰燼に帰した屋敷ごと燃えたはずではないかと。

「……は?」

「は? ではないぞ宰相。この手紙によると商業ギルドからの裏金は全て宰相に渡っているぞ。見返りとして、商業ギルドへの課税は免除したとも記されていた」

 テスタは呆然となる。
 紛れもなく、裏帳簿を探される証拠となる手紙だ。

 エクベルトが主導していた悪事の証拠が王の手にある事実に、テスタの身体は震え上がった。

「陛下、その手紙は何者かの陰謀かもしれませぬ。宰相の筆跡なら私がよく存じております。確認したく存じます」

 トールが前に出て王から手紙を受け取った。

 テスタはさすがトールよ。冷静な声色で手紙が偽物だと断定するのだな。
 それでこの件はおしまいよ。
 王が謀略に騙されて、臣下の心が離れるだけのオチとなるのだ。ざまあみろと内心ほくそ笑んだ。

 しかし、トールの答えは違った。
 無表情のまま手紙に目を通し終えると、怒声が王座の間に響き渡った。

「これは間違いなくテスタ宰相の筆跡! この手紙には確かに裏帳簿の存在とルインズベリー家に宰相が依頼した悪事の数々が書かれている! 他にも多くの貴族の名前と、ルインズベリー家に売り渡した物品とその数が記載されている! これはいかようなことか!」

 テスタは愕然とした。
 なぜトールが己の不利になることを告げるのかと。

 手紙に書かれている内容は全て真実であり、ここまで読み解かれてしまうと言い訳すらままならない。
 更にトールは続ける。

「陛下! このトール・カークス。宰相に拾われ信を得て、多くの法に反する悪事に加担した身なれど、これを見逃すわけにはいきませぬ。この手紙に書かれている内容はすべて事実! 法に則ればシャイニング家の取り潰しは確実。王国の財産を我が物とするための陰謀の数々! これは大逆罪でございます!」

 トールが謁見の間に響き渡るように叫んだ瞬間、テスタは膝から崩れ落ちた。

 何故だ⁉ 何故このようなことになったのだ?
 俺はただ、王になりたかっただけだというのに……

 いや、まだだ。貴族の大半は俺につく。
 この場で王を始末さえすればいい。

「おのれ! 謀ったな! 王よ! 先王が亡くなって10年もの長きに渡り政務に励んだ、このテスタ・シャイニングを陥れようとは王の器にあらず! ルインズベリー家を燃やしたのも王に違いないわ! そんな王を我等は断固として許すわけにはいかぬ! 皆の者! 王と裏切り者のトールを捕らえるのだ‼」

 テスタは腰に下げた剣を抜き、貴族たちに命令を出した。

 刹那、謁見の間の扉が開かれて近衛騎士団が雪崩込んで来る。

 こうなると予測し、王派はあらかじめ外で待機させていたのであった。

「この手紙に記載されている、シャイニング家当主とルインズベリー家当主以外の名については不問に付す」

 サリウス王のその一言が決定打となった。

 宰相派だった貴族たちはサリウス王のその言葉に安堵し、平伏した。
 捕らえられたのはテスタのみ。

「お、おのれ! このようなことをして、ただで済むと思うてか! サリウス! トールよ!」

 テスタは床に押し潰されながらも、王と裏切り者の名を叫び続けた。

「牢へ連れてゆけ。トールはこの場に残り、詳しく話すように。他の者は解散せよ。テスタ・シャイニングの圧政により、多くの民に被害が及んだ。余はこの国の王として、国民全てを守ることを誓おう」

 サリウス王は玉座から立ち上がり、手を前に翳して命令した。
 
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