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第4章 竜は泉で静かに踊る
第8話 クリス
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泉から上がった女性は、身体をブルッと震わせ水気を飛ばす。
そして私たちをジロジロと見てきた。
「な~に? なんか用~?」
顔つきから、私の少し上くらいの年齢かな?
敵意は感じないし、間延びした声から性格的にマイペースな人っぽいのが伝わってくる。
「えっと、ま、まずは服を着てほしいかな。ほら、こっちに男の人がいるし」
ヴィレッタとリョウの目を押さえながら言う私だったが、彼女はきょとんとした。
「ん~? おとこ? あ~オスか~。服ねえ、ちょっと待ってて~。あ~そうだ。持ってないんだったっけ。別に見られても問題ないから、このままでいいよ~」
「私たちが困るの! って、服を持っていないの?」
裸で気にする様子もないって彼女は何者⁉
あ~もう! こうなったら私のローブをあげるか。
ありがと~と言いながらニコニコ笑う彼女。
なんか調子が狂うなあ……
「ん~? どうやって着るの~?」
ほえ⁉ 服を着たことがない……だと⁉
「わたくしが着せましょう。ローゼ、リョウ様の目をお任せします。抵抗したら潰してくださいませ」
「うん、お願い、ヴィレッタ」
リョウが震える中、ヴィレッタがテキパキと服を着させていった。
すると彼女はベレニスとフィーリアに顔を向けた。
「そっちの2人、顔色が悪いよ~。大丈夫~?」
「だ、大丈夫よ! 気にしないで」
「そそそそっす。お気遣いなくっす」
2人とも顔を背けながら早口で言うも、ベレニスの顔色が本当に悪い。
大丈夫かな? 敵ではなさそうだし、とりあえず自己紹介しておきますか。
「私は魔女のローゼ。この男が傭兵のリョウ。彼女が聖女のヴィレッタ。耳が尖っているのがエルフのベレニスで、小さい子がドワーフのフィーリア。貴女の名前を教えてくれるかな?」
「クリス。まあちょっと待って~。今匂いで覚えるから~」
そう言ってクリスは目を閉じて鼻をヒクヒクさせた。
そして、うんと頷いた。
「覚えたよ~。それでなんだっけ?」
う~ん、これ絶対人ではないよねえ。
でも友好的だし問題ないよね?
「えっと、どうして服も持たないで、冬の泉の中にクリスはいたの?」
「ん~。住んでいるだけだよ~」
「住んでいるって、他に家族や仲間はいないの?」
「ん~。1人だよ~」
ヤバい。このペースだと全然話が進まない。
人ではなさそうだが、ひとりぼっちならここに放置してバイバイするのも気が引ける。
「じゃあ決めた。クリス。一緒に来てくれるかな? 近くにエルフの里があって、今そこでお世話になりながら森の異変を調べているんだけど、クリスにも協力してもらいたいんだ」
クリスはコクンと頷く。
とりあえず話が通じたっぽい?
まあ、断られても連れて帰るつもりだったけどね。
「ちょっ! ローゼさん! 人間にはわからないかもっすが、あのクリスってヤバいっす。ここら一帯の瘴気が薄いのも納得っす。瘴気すら怯えて逃げてしまう程の存在なんすよ!」
私の耳元に寄ってフィーリアが告げてくる。
「人じゃないのはなんとなくわかるけど、穏やかで素直だし、大丈夫じゃない?」
「そうですね。このような場所にポツンと置いておくのも気が引けますし、わたくしはローゼに賛成します」
「俺もローゼに賛成する。悪意は一切なさそうだしな」
そんな人間3人の意見に、フィーリアは嘆息して一言。
「エルフの里がパニックにならなければいいっすけど」
そこまでヤバいの? ベレニスも未だ硬直しているし。
でもまあ、もう約束しちゃったしなあ。
なんとかなるでしょ。
クリスと一緒にエルフの里へ向かう途中、魔獣は襲ってこなかった。
クリスが通り過ぎると、木々の葉が静かに揺れ、小鳥たちが一斉に飛び立った。
小動物はクリスと目が合っただけで気絶している。
そんな中、クリスはニコニコして歩いて、ベレニスは身体をカチコチにさせて歩いている。
大人しいベレニスって新鮮かも。
そして戻るエルフの里。
フィーリアが想定していた通り、里はパニックになった。
クリスを見て昏倒したり、一目散に家へと逃げていくエルフたち。
「べ、ベレニス様! その赤竜は一体⁉」
クーリンディアがクリスを指差しながら叫んできた。
へ? 赤竜?
「フッ。私の新たな下僕よ! みんな安心しなさい。このクリスという赤竜は私に忠実なのよ!」
フンスとベレニスは胸を張っていた。
あ、いつものベレニスに戻ったぞ。
ん? ガタガタ小刻みに震えているが、強がりだったのか。
女王としての威厳を、里のエルフたちに見せたかったってところかな?
クリスは、ニコニコしながら里を眺めていた。
「おお、さすがはベレニス様。竜を従えるとは。……それではこれにて失礼します」
そそくさ~と退散していくエルフたち。
なんか、面倒事に巻き込まれないようにしようという感が半端ないんですけど。
ていうか、ベレニスの言葉を信じているエルフがいなさそうなんだけど⁉
「赤竜とは七英雄のドラルゴの種族の赤竜でしょうか? たしか魔族との戦いで、赤竜はドラルゴ王以外死に絶えたと史書に伝わっておりますが?」
「そっすねえ。ドラルゴもまた魔王との戦いが終わると姿を消して、再び歴史に登場することはないっす。でも間違いなくクリスさんは赤竜っすよ。それだけはなんとなく自分らにはわかるっす」
ヴィレッタの問いに、フィーリアがちょっと落ち着いたのかいつもの口調で告げてきた。
私も赤竜の知識は多少はある。
特に七英雄のドラルゴなら、歴史学者も真っ青になる知識があるつもりだ。
「クリスって赤竜なの?」
まあそれはともかく、本人に聞くのが一番早いでしょ。
「そうだよ~」
「赤竜の寿命ってエルフと同じで数千年って聞くけど、もしかしてお父さんの名前ってドラルゴだったりする?」
「う~ん。ママならドラルゴだったよ~」
平然と告げるクリスに、リョウ以外が動きを止めた。
なんとね、驚きの真実だ。
そういや七英雄を題材にした小説はドラルゴを男扱いしているが、ドワーフの里で読んだ本には一言も性別について書いていなかったっけ。
「それでは、パパの名前はなんというのでしょう?」
「知らな~い。会ったこともな~い」
ヴィレッタに問われるも、クリスは興味もなさそうで考えたこともないって反応をした。
「じゃ、じゃあ、ドラルゴ……クリスのママは今どこに?」
「眠って起きなくなっちゃったよ~。眠る前に『いい男を見つけて子供産むんだよ』って言われた~」
なんかノリが軽いけど……そっか、フォレスタと同様、ドラルゴも近年まで生存していたのか。
く~! どっちにも会って話がしたかったなあ。
「お帰りなさいませ、ベレニス様。お食事になさいますか? お風呂になさいますか? ……それとも私ですか?」
ララノアさんが混乱中って感じで、クリスを見てガタガタ震えながら出迎えた。
ベレニスはニッコリ笑って一言。
「ララノアにするからお風呂よろしく」
あっ、ベレニスも未だ混乱中かも。
ていうか、赤竜ってエルフを食べるの?
そして私たちをジロジロと見てきた。
「な~に? なんか用~?」
顔つきから、私の少し上くらいの年齢かな?
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「ん~? おとこ? あ~オスか~。服ねえ、ちょっと待ってて~。あ~そうだ。持ってないんだったっけ。別に見られても問題ないから、このままでいいよ~」
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リョウが震える中、ヴィレッタがテキパキと服を着させていった。
すると彼女はベレニスとフィーリアに顔を向けた。
「そっちの2人、顔色が悪いよ~。大丈夫~?」
「だ、大丈夫よ! 気にしないで」
「そそそそっす。お気遣いなくっす」
2人とも顔を背けながら早口で言うも、ベレニスの顔色が本当に悪い。
大丈夫かな? 敵ではなさそうだし、とりあえず自己紹介しておきますか。
「私は魔女のローゼ。この男が傭兵のリョウ。彼女が聖女のヴィレッタ。耳が尖っているのがエルフのベレニスで、小さい子がドワーフのフィーリア。貴女の名前を教えてくれるかな?」
「クリス。まあちょっと待って~。今匂いで覚えるから~」
そう言ってクリスは目を閉じて鼻をヒクヒクさせた。
そして、うんと頷いた。
「覚えたよ~。それでなんだっけ?」
う~ん、これ絶対人ではないよねえ。
でも友好的だし問題ないよね?
「えっと、どうして服も持たないで、冬の泉の中にクリスはいたの?」
「ん~。住んでいるだけだよ~」
「住んでいるって、他に家族や仲間はいないの?」
「ん~。1人だよ~」
ヤバい。このペースだと全然話が進まない。
人ではなさそうだが、ひとりぼっちならここに放置してバイバイするのも気が引ける。
「じゃあ決めた。クリス。一緒に来てくれるかな? 近くにエルフの里があって、今そこでお世話になりながら森の異変を調べているんだけど、クリスにも協力してもらいたいんだ」
クリスはコクンと頷く。
とりあえず話が通じたっぽい?
まあ、断られても連れて帰るつもりだったけどね。
「ちょっ! ローゼさん! 人間にはわからないかもっすが、あのクリスってヤバいっす。ここら一帯の瘴気が薄いのも納得っす。瘴気すら怯えて逃げてしまう程の存在なんすよ!」
私の耳元に寄ってフィーリアが告げてくる。
「人じゃないのはなんとなくわかるけど、穏やかで素直だし、大丈夫じゃない?」
「そうですね。このような場所にポツンと置いておくのも気が引けますし、わたくしはローゼに賛成します」
「俺もローゼに賛成する。悪意は一切なさそうだしな」
そんな人間3人の意見に、フィーリアは嘆息して一言。
「エルフの里がパニックにならなければいいっすけど」
そこまでヤバいの? ベレニスも未だ硬直しているし。
でもまあ、もう約束しちゃったしなあ。
なんとかなるでしょ。
クリスと一緒にエルフの里へ向かう途中、魔獣は襲ってこなかった。
クリスが通り過ぎると、木々の葉が静かに揺れ、小鳥たちが一斉に飛び立った。
小動物はクリスと目が合っただけで気絶している。
そんな中、クリスはニコニコして歩いて、ベレニスは身体をカチコチにさせて歩いている。
大人しいベレニスって新鮮かも。
そして戻るエルフの里。
フィーリアが想定していた通り、里はパニックになった。
クリスを見て昏倒したり、一目散に家へと逃げていくエルフたち。
「べ、ベレニス様! その赤竜は一体⁉」
クーリンディアがクリスを指差しながら叫んできた。
へ? 赤竜?
「フッ。私の新たな下僕よ! みんな安心しなさい。このクリスという赤竜は私に忠実なのよ!」
フンスとベレニスは胸を張っていた。
あ、いつものベレニスに戻ったぞ。
ん? ガタガタ小刻みに震えているが、強がりだったのか。
女王としての威厳を、里のエルフたちに見せたかったってところかな?
クリスは、ニコニコしながら里を眺めていた。
「おお、さすがはベレニス様。竜を従えるとは。……それではこれにて失礼します」
そそくさ~と退散していくエルフたち。
なんか、面倒事に巻き込まれないようにしようという感が半端ないんですけど。
ていうか、ベレニスの言葉を信じているエルフがいなさそうなんだけど⁉
「赤竜とは七英雄のドラルゴの種族の赤竜でしょうか? たしか魔族との戦いで、赤竜はドラルゴ王以外死に絶えたと史書に伝わっておりますが?」
「そっすねえ。ドラルゴもまた魔王との戦いが終わると姿を消して、再び歴史に登場することはないっす。でも間違いなくクリスさんは赤竜っすよ。それだけはなんとなく自分らにはわかるっす」
ヴィレッタの問いに、フィーリアがちょっと落ち着いたのかいつもの口調で告げてきた。
私も赤竜の知識は多少はある。
特に七英雄のドラルゴなら、歴史学者も真っ青になる知識があるつもりだ。
「クリスって赤竜なの?」
まあそれはともかく、本人に聞くのが一番早いでしょ。
「そうだよ~」
「赤竜の寿命ってエルフと同じで数千年って聞くけど、もしかしてお父さんの名前ってドラルゴだったりする?」
「う~ん。ママならドラルゴだったよ~」
平然と告げるクリスに、リョウ以外が動きを止めた。
なんとね、驚きの真実だ。
そういや七英雄を題材にした小説はドラルゴを男扱いしているが、ドワーフの里で読んだ本には一言も性別について書いていなかったっけ。
「それでは、パパの名前はなんというのでしょう?」
「知らな~い。会ったこともな~い」
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「じゃ、じゃあ、ドラルゴ……クリスのママは今どこに?」
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なんかノリが軽いけど……そっか、フォレスタと同様、ドラルゴも近年まで生存していたのか。
く~! どっちにも会って話がしたかったなあ。
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