【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~

ハムえっぐ

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第4章 竜は泉で静かに踊る

第19話 レオノール姫の素朴な疑問は終わらない

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 転移魔法でエルフの里へ行けるかを試してみたが、やはり発動はかき消されてしまった。
 とこしえの森に入ったら二度と出られないという古来からの伝承は、こういう魔法の干渉もあったからなのだろう。

「にしても面倒よね~。クリスったら、自分1人で帰るなんて!」

 森に入り、再び道なき道を歩いているとベレニスがぼやいた。

「まあ、クリスからしたら、ラフィーネの街に降りて、警戒されながら人に囲まれるのを嫌がったってのはあるかも。面倒くさがりな性格だったから」

「ただでさえ竜は珍しいっすのに、千年以上歴史に登場しない赤竜っすからね。クリスさんが慎重になるのも無理ないっす」

「ですが、一言ぐらい告げてから去ってほしかったです。赤竜云々よりも、クリスさんは常識に欠けています」

「ふむふむ、皆さんの話からクリスさんはとってもいい人なのが伝わってきます! ますます早くお会いしたいです!」

 前回はベレニスの道案内で進んだが、今回はザイルーガが先頭で横にリョウ。後方に私たち女子5人。

 私たちも道を覚えているし、森に逃げた魔獣たちも姿を現さないので、1週間かかった前回よりもサクサク進めた。

 魔獣どもは北のほうまで逃げた可能性があるなとザイルーガは言ったが、もしそうなら生態系が変わって森の勢力図が崩れるかも。

 エルフの里やリザードマンの里に、迷惑がかかっていないといいけれど。

 森の枝葉の隙間から見える日の高さから、昼過ぎぐらいかな? と予想する森に入って2日目。
 私たち女子は沈黙を知らず喋り続けているが、リョウとザイルーガは相槌しか打っていない。

 リョウが喋ると地雷を踏む可能性があるから別にいいや。
 ザイルーガが、『女はなんで会話が途切れねえんだろうなあ』って辟易しているのはムカつくけど。

「ザイルーガ殿! 1つお聞きしたいのですが!」

 そんな中、ふとレオノールがザイルーガに話しかけた。

 ん? 真剣な顔だし種族間の事かな?
 でも、いくらレオノールはリザードマンに差別感情がなく、ザイルーガもレオノールに好感を抱いているけど、国と部族の運命を変えかねないぞ。
 私たちも何を聞きたいのか固唾を飲んで見守る。

「ザイルーガ殿は妻の尻に敷かれているそうですが、朝はどうなのでしょう! 我が母上も父上にしょっちゅう怒っていますが、朝は父上にデレデレで甘えていることが多いのです! ザイルーガ殿はどうなのです?」

 ……は?
 レオノール以外の全員の頭の上にクエスチョンマークが浮かんだ。

 朝にマーガレット妃の機嫌が良くて、夫のラインハルト王に甘えているって要するに、その前の夜に夫婦の夜の営みで仲直りしているってこと?

 どんな質問だよ!

「お、俺か? ま、まあそうだなあ~。朝は目覚めのキスをしてくれるなあ~」

 宙に視線を浮かせながら、ザイルーガは答えた。

 いや、リザードマン種族の生々しい夫婦生活なんて知りたくないからね?
 聞いている私たちも反応に困るから。

「コホン。レオノール。あまりそういった事情を詮索するのは失礼ですよ?」

「ですが、ヴィレッタさん! 昨日の夜を思い出してください! 今日の朝もです! 皆様、リョウ様に不機嫌だったじゃないですか! ですので、そうならない対策をですね! ザイルーガ殿からリョウ様に、姉様たちをご機嫌にする技を伝授してほしいのです!」

 伝授って……
 つまり性の技⁉ それをリョウがザイルーガから学ぶ?

 レオノール以外の女子が、リョウとザイルーガの絡みを連想したのは言うまでもない。

 ヴィレッタは汚物を見るような目でリョウを見て、ベレニスはアリねと呟き、フィーリアが紙とペンを用意した。

 ザイルーガとリョウは固まっている。
 理解できていないって感じだ。

「って! レオノール、余計なことを口走らないの! リョウは別に今のままでいいんだし!」

「ですが、姉様! 私も1日リョウ様と行動して思いました。リョウ様は女性にモテる行動を一切しません! 驚きです! 声に出して皆様を気遣いもしません! ですので、姉様たちが不機嫌になるのも当然だと思ったのです! このままでは今後の旅路に差し支えると考え、ザイルーガ殿に紳士な振る舞いをご教授いただければと思った次第であります! ……あれ? 皆さん、どうかされましたか?」

 あのさあ……紛らわしい質問をしないでよ。
 女子一同、大きなため息を吐いたのだった。

「あ~まあ~。俺が思ったのはリョウはモテたいとか、女子の前でカッコつけようって気がないんだよ。でも、お前さんたちのことは大事に思っていると感じるぜ?」

 しまった! ザイルーガに先にリョウをフォローされてしまった!
 その役目は私だぞ! 負けていられるかああああああ!

「そりゃそうでしょ。森の中を歩いている今だって、私たちが楽に歩けるように道を作りながら歩いてくれているからね。それで終始、四方八方に警戒を怠っていない。誰かが歩くスピードが遅れたら歩幅を合わせてくれてもいる。レオノール、リョウは街の中でもいつも、馬車が通るほうを歩いているんだよ? 街といえば、屋台で何か買う時とか何も言わなくても必ず私たちの分も買ってくれるのもあるかな。それから、お風呂も私たちを優先させてくれる。大事に思われているのは、私だけじゃなくて、みんなわかっているから」

 たまにはみんなの前で感謝の言葉を伝えないとね♪
 でないとリョウ、いつかストレスで倒れるかもだし。

 ん? あれ? なんでレオノールとリョウ以外はドン引きしているの?

「なんと! そうなのですか⁉ では、何故皆様リョウ様にいつも不機嫌になるのでしょう? 姉様! 何故なのでしょう?」

 それを聞くのか、レオノール!

「え~っと……ヴィレッタ! お願い!」

 思わず質問から逃げてしまう。
 いやだって、これは本人を目の前にして答えられないし。

「わたくしですか⁉ ……そうですね。リョウ様の戦いに関しては、期待していた以上で頼もしく思っております。ですが、戦い以外はいつも期待値を大きく下回っています」

 ちょっ⁉ ヴィレッタ⁉
 投げといてなんだが冷静に答えすぎ!
 ほら、リョウもなんかショックを受けた顔になっているし!

「次は私ね! 傭兵は言いたいことを言わないから駄目なのよね♪ あとムッツリでキモいし、イケメンじゃないのが駄目なのよ」

 ベレニス……身も蓋もなさすぎるぞ。

「自分っすか? う~ん、リョウ様はいい人っすけど、欲がないのはマイナス点っすね。あと、お金の遣い方が無頓着なのは駄目駄目っすかねえ」

 フィーリアは……無難な答えか?
 リョウはお金を遣う趣味もないから、食事代や宿代、床屋代や武具の修理費、手入れ道具で散財するぐらいだ。
 いつもリョウは言い値で買うのだが、本職が商人のフィーリアにすれば、信じられない金銭感覚なのだろう。

「ふむふむなるほど! では姉様! 締めにお願いします!」

 レオノールめ。逃がしてくれないか。

「私は……もう少しリョウとお喋りしたいかな? あとは教養をもっと身につけてくれたら嬉しい。例えば七英雄についてとか各国の歴史とかね」

 ふう、考える時間ができたお陰で無難な回答を引き出せたぞ。
 良かった良かった♪

 あれ? みんなが呆れた顔で私を見ているぞ?
 リョウは全員からの一言で落ち込んでいるし!
 ……なんでこんな空気になったんだ⁉

「なるほど! 皆様がリョウ様と一緒に旅をしている理由がわかりました! リョウ様に、皆様期待しているのですね! リョウ様! これからは是非、師匠と呼ばせてください!」

 レオノールの思考回路もどうなっているんだよ!
 リョウは、様で呼ばれるよりはマシだと了承した。
 でも、レオノールから師匠と呼ばれるたびに微妙な顔をしている。

「わっはっはっは、俺も期待しているぜ~。リザードマンの里にまで響く活躍をするんだぞ」

 ザイルーガはリョウの背中をポンと叩くと、別方向へ足を向けた。

「俺の里はこっちから行ったほうが早い。ここでお別れだな」

「クリスに文句があるんじゃないの?」

 私がそう言うと、ザイルーガは頬を掻いた。

「それは伝言を頼むわ。だが、俺は無断外泊して連れ合いがカンカンに怒っているだろうから、そっちのほうが怖えのよ」

 夫婦生活って、そういうものなのかな?

「なんと! お世話になりました! また会える日を心待ちにしております」

「ザイルーガ殿、俺も世話になった。貴殿の斧捌きは素晴らしかった。また手合わせをお願いしたい」

 レオノールが一礼し、リョウも別れの挨拶をする。
 私たちはザイルーガに手を振りながら先に進んだ。

 このリザードマンの戦士とは、これで二度と会わなくなるって気がしないなあ。
 私の勘は当たるんだ。
 それに中々面白い奴だったしね。

 ザイルーガと別れてから3日後、前回は1週間かかったエルフの里に到着した。

 ラフィーネでの戦闘が夢だったくらいに、何も変わっていないエルフの里の景色が懐かしく思える。

 ベレニスの再度の帰還に、クーリンディアさんやララノアさんが、ホッとした表情で出迎えてくれた。
 
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